第五話 過信
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裃条が驚きながらもナマエの腕に目を向けると、そこからはポタポタと真っ赤な血がしたたり落ちていた。
裃条の呪力を吸収して強化された呪霊の攻撃は、ナマエの風ではギリギリ防ぎきれなかったのだ。
「…ナマエ…ちゃん…。」
「ナマエ!………くそっ!………『大蛇』!!!」
ズウウウウウウウウウウン!
恵の出した大蛇に噛みつかれ吹き飛ばされた呪霊は後ろの家屋に突っ込んだが、おそらくは無傷だろう。
「ナマエ!大丈夫か!!」
「うん、かすり傷…だよ。」
「嘘つけ!見せてみろ!!!」
「痛っ!」
怪我した腕を隠そうとするナマエに恵は苛立ちその腕をグッと引っ張ると、ナマエは痛そうに呻いた。特に左腕の傷が深いのか、ダラダラといつまでも血が止まらない。
「…どこがかすり傷だ。どっか大きい血管やっちまってるかもな。とりあえず止血すんぞ。」
急いでハンカチを取り出した恵はナマエの左の二の腕をギュウギュウに縛った。
「痛い!!!痛い痛い!キツ過ぎだよ!」
「うるさい。こんぐらいしないと血が止まんねぇんだ。我慢しろ。」
ガララララ…ドゴォン…!
そうこうしているうちに吹き飛ばした呪霊が起き上がってきた。チッと舌打ちしながら呪霊の方を見たが、恵はその様子に片眉を上げて、ナマエは「あれ?」とつぶやいた。
((呪力が増えていない。))
大蛇は恵の式神の中でも攻撃力に特化している。それなのに吸収しなかったのか。それどころか、呪霊の腕からは紫色の血のようなものまでダラダラと流れている。つまり、恵の攻撃が効いているのだ。
「オ゛コ゛メ゛ーーーーーー!!!」と怒り狂った様子の呪霊を見ながら恵は考える。もしかしたら、牙などの攻撃なら効くのではないだろうか。
「ナマエちゃん…。僕としたことが不甲斐ない。君の綺麗な肌に傷をつけてしまった。今度こそ見ていてくれ。僕の最大出力の風で今度こそ吹き飛ばしてみせるよ。」
「いや…あの。」
裃条はまだ気づいていなかった。ナマエは困惑し、恵は本人にも聞こえるのを厭わず、ため息を吐いた。この人は本当に二級なのか、と。
「裃条さん。あの呪霊はおそらく呪力を吸収するタイプです。今の時点ですでに二級以上なのにこれ以上吸収させたら俺たちには手が負えなくなります。」
「なん…だって?」
この期に及んで気づいていなかった裃条に、でもちゃんと理解してもらうために、できるだけやんわり伝えた。
「あの血みたいなのを見る限り、牙や刃物の攻撃なら効くと思います。ここは俺に任せてもらえませんか。」
「待って恵!私もまだいけるよ!」
「怪我してんだろうが。鉄扇振れねぇだろ。」
「こんなの片腕で余裕!」
ナマエの頑固な部分がまた出てきた。時間が惜しいと思った恵は「じゃあフォローを頼む。」とナマエの言い分を受け入れることにした。それに待ったを掛けたのは、未だしりもちをついたままの裃条だった。
「ちょっと待ってくれ!ナマエちゃんも風だろう?伏黒君の見解が本当なら、これ以上吸収させるわけには…!」
「それなら大丈夫ですよ、要は、吸収させずに切ってしまえばいい。」
そういった恵は、そのままナマエに「いけるか?」と一声掛けてから手で影絵の形を取り構えた。
「いつでもどうぞ。」
そう言ってナマエも鉄扇を開き、怪我の度合いがまだましな右腕だけで構えた。
未だ訳の分からない裃条は、その光景を見守るしかなかった。
___『蝦蟇』______『大蛇』!
まずは二匹の蝦蟇を出し、その長い舌で呪霊の両腕を掴み固定した。先程存分に呪力を吸収したこの呪霊は、蝦蟇では抑えきれない。それが分かっている恵は蝦蟇で止めたその一瞬の隙に、大蛇による攻撃で畳みかけた。頭から噛みつかせ、そのまま大きく振り回して地面に叩き付けた。
ドゴォンっ!
ガアアアァァァァ!
大きく悲鳴を上げた呪霊は上半身から大量の血を流しながらもふらふらと立ち上がった。
(やっぱまだ足りないか。)
「ナマエ!」
大きく名前を叫んだ恵に応えるようにして「大蛇解除して!」と叫んだナマエはそのまま右腕で鉄扇を振りかざした。
___『風切り!!!』
鉄扇から放たれたその風は弓状の大きな刃となって呪霊に襲い掛かった。無数の刃状の攻撃をする鎌鼬と違い、風切りは一本だけだ。それでも一つに集約されたそれの威力は凄まじく、呪霊の体に袈裟状の大きな傷を与えた。
ギャアアアァアアア!
ナマエとしては両断するつもりで放った技だったが、やはり片腕ということもあり、致命傷を与えることはできなかったようだ。それでも仰向けで奇声を発しながらのたうち回る呪霊を見る限り、かなりの手傷は負わせることができた。
「もう!真っ二つにするつもりで切ったのに!!」
悔しがるナマエを見て、裃条は唖然とした。そして、ようやく理解した。自分が恵よりも、そしてナマエよりも格下だということを。二人よりも何年も前から呪術師として経験を積んできたし、自信もあった。
禪院の血筋で、相伝の術式を受け継いでいる恵ならまだしも(それでも自分の方が強いと思っていたが)、ミョウジ家の術式を受け継がなかった落ちこぼれの筈のナマエに自分が劣るはずがない。頭では理解しても、到底受け入れられない。
それでも今の裃条にはどうすることもできない。ただ地面に座り込むことしかできなかった。
「ナマエ、大丈夫か。」
「平気。初戦の時みたいに呪力切れなんかもう起こさないよ。それより、もう少しだと思うの。だいぶ弱ってきた。」
「ああ。もう一回、今度はパターンを変えていくぞ。」
「りょーかいっ!」
高専に入学して約一か月。この間にナマエは呪力コントロールの精度を上げていた。七海による特別レッスンのお陰でもあるだろう。だんだんと疲労が蓄積されては来たが、七海の扱きに比べたらかわいいものだと、ナマエは口端を上げた。
のたうち回っていた呪霊はやはり起き上がりブルブルと震えながら一度体を丸めた。その妙な動きを見て嫌な予感がした恵は、すぐに大蛇で攻撃を仕掛けようとしたが、呪霊の方が一瞬早かった。
ゴ…!ゴハン!ゴハンーーー!
突然叫んで体を大きく伸ばしたと思えば、今度は周りにいた低級呪霊がズズズ…と吸い寄せられるように二級呪霊の方へ集まりだしたのだ。
「…なに?あれ。吸い込まれるみたいに…」
「おい、やめろ…嘘だろ。」
恵たちは自分たちの目を疑った。呪霊が……呪霊を貪り食いだしたのだ。悲鳴を上げる低級呪霊を、バリバリと嫌な音を立てて食べる様子は明らかに異様だった。
「え…共食い?」
「それだけじゃない。マズいな。ナマエ!雑魚を減らせ!これ以上あいつに食わせるな!」
「え!?どういうこと?」
その質問に答えるより早く、恵は『玉犬』と叫び二匹に低級呪霊を襲わせた。訳が分からないナマエだったが、言われた通りに呪霊を払うため、吸い寄せられる奴らに鎌鼬を放ちその数を減らした。
「くそっ。だいぶ食わせちまった。」
「ハァ、ハァ…ねぇ、どういうこと?」
さすがに息切れしてきたナマエに対して、恵は顎でクイッと呪霊を差し「見たらわかるだろ。」と少し投げ槍に言った。
そして、その意味がすぐにナマエにも分かった。そいつらがナマエたちの周りを何もせずにただ囲んでいた理由も。共食いをしていたのは、自分の呪力強化を図るため。そのためにあの低級呪霊たちがいたのだ。呪力攻撃を吸収するだけでなく、捕食することでも強化されるタイプの呪霊らしい。
オ゛コ゛メ゛!!コ゛ハ゛ン゛ーーーーー!
___カッ!
その瞬間、三人とも思いっきり吹き飛ばされた。術式ではない。おそらくはただ呪力を飛ばしただけだ。
ナマエは咄嗟に鉄扇で防御しようとしたが、間に合わなかった。ただし、そのおかげで裃条はそこまで大きな衝撃を受けずに済んだが。
「ガッ!」
「ゴボッ!」
恵は後ろの家屋に突っ込み、ナマエも別の家屋に背中を打ち付け口から血を吐いた。裃条だけがただ土の上をゴロゴロと転がるだけだった。
「ハァ……ハァ……無理だ……こんなの……!」
唯一動ける裃条は、ガクガクと震えながら地面をズリズリと這いつくばりながら出口の方へ逃げようとした。
後ろからはゴハンゴハンと気持ち悪い声でゆっくりと呪霊が近づいてくる。動かない恵とナマエを後回しにして、ターゲットを裃条に絞ったらしい。
「ゲホっ!裃……条さ……ん……」
意識が朦朧とした様子のナマエの声を、裃条は聞かないフリをした。このままでは自分が一番に殺されてしまう。それどころではなかったのだ。
何とか逃げようとそれでも地面を這っていると、目の前に影が差した。
「何をしている。瀕死の二人を置いて何処へ行くつもりだ。」
裃条の呪力を吸収して強化された呪霊の攻撃は、ナマエの風ではギリギリ防ぎきれなかったのだ。
「…ナマエ…ちゃん…。」
「ナマエ!………くそっ!………『大蛇』!!!」
ズウウウウウウウウウウン!
恵の出した大蛇に噛みつかれ吹き飛ばされた呪霊は後ろの家屋に突っ込んだが、おそらくは無傷だろう。
「ナマエ!大丈夫か!!」
「うん、かすり傷…だよ。」
「嘘つけ!見せてみろ!!!」
「痛っ!」
怪我した腕を隠そうとするナマエに恵は苛立ちその腕をグッと引っ張ると、ナマエは痛そうに呻いた。特に左腕の傷が深いのか、ダラダラといつまでも血が止まらない。
「…どこがかすり傷だ。どっか大きい血管やっちまってるかもな。とりあえず止血すんぞ。」
急いでハンカチを取り出した恵はナマエの左の二の腕をギュウギュウに縛った。
「痛い!!!痛い痛い!キツ過ぎだよ!」
「うるさい。こんぐらいしないと血が止まんねぇんだ。我慢しろ。」
ガララララ…ドゴォン…!
そうこうしているうちに吹き飛ばした呪霊が起き上がってきた。チッと舌打ちしながら呪霊の方を見たが、恵はその様子に片眉を上げて、ナマエは「あれ?」とつぶやいた。
((呪力が増えていない。))
大蛇は恵の式神の中でも攻撃力に特化している。それなのに吸収しなかったのか。それどころか、呪霊の腕からは紫色の血のようなものまでダラダラと流れている。つまり、恵の攻撃が効いているのだ。
「オ゛コ゛メ゛ーーーーーー!!!」と怒り狂った様子の呪霊を見ながら恵は考える。もしかしたら、牙などの攻撃なら効くのではないだろうか。
「ナマエちゃん…。僕としたことが不甲斐ない。君の綺麗な肌に傷をつけてしまった。今度こそ見ていてくれ。僕の最大出力の風で今度こそ吹き飛ばしてみせるよ。」
「いや…あの。」
裃条はまだ気づいていなかった。ナマエは困惑し、恵は本人にも聞こえるのを厭わず、ため息を吐いた。この人は本当に二級なのか、と。
「裃条さん。あの呪霊はおそらく呪力を吸収するタイプです。今の時点ですでに二級以上なのにこれ以上吸収させたら俺たちには手が負えなくなります。」
「なん…だって?」
この期に及んで気づいていなかった裃条に、でもちゃんと理解してもらうために、できるだけやんわり伝えた。
「あの血みたいなのを見る限り、牙や刃物の攻撃なら効くと思います。ここは俺に任せてもらえませんか。」
「待って恵!私もまだいけるよ!」
「怪我してんだろうが。鉄扇振れねぇだろ。」
「こんなの片腕で余裕!」
ナマエの頑固な部分がまた出てきた。時間が惜しいと思った恵は「じゃあフォローを頼む。」とナマエの言い分を受け入れることにした。それに待ったを掛けたのは、未だしりもちをついたままの裃条だった。
「ちょっと待ってくれ!ナマエちゃんも風だろう?伏黒君の見解が本当なら、これ以上吸収させるわけには…!」
「それなら大丈夫ですよ、要は、吸収させずに切ってしまえばいい。」
そういった恵は、そのままナマエに「いけるか?」と一声掛けてから手で影絵の形を取り構えた。
「いつでもどうぞ。」
そう言ってナマエも鉄扇を開き、怪我の度合いがまだましな右腕だけで構えた。
未だ訳の分からない裃条は、その光景を見守るしかなかった。
___『蝦蟇』______『大蛇』!
まずは二匹の蝦蟇を出し、その長い舌で呪霊の両腕を掴み固定した。先程存分に呪力を吸収したこの呪霊は、蝦蟇では抑えきれない。それが分かっている恵は蝦蟇で止めたその一瞬の隙に、大蛇による攻撃で畳みかけた。頭から噛みつかせ、そのまま大きく振り回して地面に叩き付けた。
ドゴォンっ!
ガアアアァァァァ!
大きく悲鳴を上げた呪霊は上半身から大量の血を流しながらもふらふらと立ち上がった。
(やっぱまだ足りないか。)
「ナマエ!」
大きく名前を叫んだ恵に応えるようにして「大蛇解除して!」と叫んだナマエはそのまま右腕で鉄扇を振りかざした。
___『風切り!!!』
鉄扇から放たれたその風は弓状の大きな刃となって呪霊に襲い掛かった。無数の刃状の攻撃をする鎌鼬と違い、風切りは一本だけだ。それでも一つに集約されたそれの威力は凄まじく、呪霊の体に袈裟状の大きな傷を与えた。
ギャアアアァアアア!
ナマエとしては両断するつもりで放った技だったが、やはり片腕ということもあり、致命傷を与えることはできなかったようだ。それでも仰向けで奇声を発しながらのたうち回る呪霊を見る限り、かなりの手傷は負わせることができた。
「もう!真っ二つにするつもりで切ったのに!!」
悔しがるナマエを見て、裃条は唖然とした。そして、ようやく理解した。自分が恵よりも、そしてナマエよりも格下だということを。二人よりも何年も前から呪術師として経験を積んできたし、自信もあった。
禪院の血筋で、相伝の術式を受け継いでいる恵ならまだしも(それでも自分の方が強いと思っていたが)、ミョウジ家の術式を受け継がなかった落ちこぼれの筈のナマエに自分が劣るはずがない。頭では理解しても、到底受け入れられない。
それでも今の裃条にはどうすることもできない。ただ地面に座り込むことしかできなかった。
「ナマエ、大丈夫か。」
「平気。初戦の時みたいに呪力切れなんかもう起こさないよ。それより、もう少しだと思うの。だいぶ弱ってきた。」
「ああ。もう一回、今度はパターンを変えていくぞ。」
「りょーかいっ!」
高専に入学して約一か月。この間にナマエは呪力コントロールの精度を上げていた。七海による特別レッスンのお陰でもあるだろう。だんだんと疲労が蓄積されては来たが、七海の扱きに比べたらかわいいものだと、ナマエは口端を上げた。
のたうち回っていた呪霊はやはり起き上がりブルブルと震えながら一度体を丸めた。その妙な動きを見て嫌な予感がした恵は、すぐに大蛇で攻撃を仕掛けようとしたが、呪霊の方が一瞬早かった。
ゴ…!ゴハン!ゴハンーーー!
突然叫んで体を大きく伸ばしたと思えば、今度は周りにいた低級呪霊がズズズ…と吸い寄せられるように二級呪霊の方へ集まりだしたのだ。
「…なに?あれ。吸い込まれるみたいに…」
「おい、やめろ…嘘だろ。」
恵たちは自分たちの目を疑った。呪霊が……呪霊を貪り食いだしたのだ。悲鳴を上げる低級呪霊を、バリバリと嫌な音を立てて食べる様子は明らかに異様だった。
「え…共食い?」
「それだけじゃない。マズいな。ナマエ!雑魚を減らせ!これ以上あいつに食わせるな!」
「え!?どういうこと?」
その質問に答えるより早く、恵は『玉犬』と叫び二匹に低級呪霊を襲わせた。訳が分からないナマエだったが、言われた通りに呪霊を払うため、吸い寄せられる奴らに鎌鼬を放ちその数を減らした。
「くそっ。だいぶ食わせちまった。」
「ハァ、ハァ…ねぇ、どういうこと?」
さすがに息切れしてきたナマエに対して、恵は顎でクイッと呪霊を差し「見たらわかるだろ。」と少し投げ槍に言った。
そして、その意味がすぐにナマエにも分かった。そいつらがナマエたちの周りを何もせずにただ囲んでいた理由も。共食いをしていたのは、自分の呪力強化を図るため。そのためにあの低級呪霊たちがいたのだ。呪力攻撃を吸収するだけでなく、捕食することでも強化されるタイプの呪霊らしい。
オ゛コ゛メ゛!!コ゛ハ゛ン゛ーーーーー!
___カッ!
その瞬間、三人とも思いっきり吹き飛ばされた。術式ではない。おそらくはただ呪力を飛ばしただけだ。
ナマエは咄嗟に鉄扇で防御しようとしたが、間に合わなかった。ただし、そのおかげで裃条はそこまで大きな衝撃を受けずに済んだが。
「ガッ!」
「ゴボッ!」
恵は後ろの家屋に突っ込み、ナマエも別の家屋に背中を打ち付け口から血を吐いた。裃条だけがただ土の上をゴロゴロと転がるだけだった。
「ハァ……ハァ……無理だ……こんなの……!」
唯一動ける裃条は、ガクガクと震えながら地面をズリズリと這いつくばりながら出口の方へ逃げようとした。
後ろからはゴハンゴハンと気持ち悪い声でゆっくりと呪霊が近づいてくる。動かない恵とナマエを後回しにして、ターゲットを裃条に絞ったらしい。
「ゲホっ!裃……条さ……ん……」
意識が朦朧とした様子のナマエの声を、裃条は聞かないフリをした。このままでは自分が一番に殺されてしまう。それどころではなかったのだ。
何とか逃げようとそれでも地面を這っていると、目の前に影が差した。
「何をしている。瀕死の二人を置いて何処へ行くつもりだ。」