第四十一話 発作
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「はいっ、そこまでー。ナマエの勝ちー!」
五条の声で虎杖はハッとした。いつの間にかうつ伏せでナマエに組み敷かれている。左腕は背中に馬乗りになっているナマエの手により後ろに捻り上げられていた。
「……まじ?」
――梅雨に入ったと気象予報士が告げていた割にはからりと晴れたその日、体術の授業の為一年生と五条は朝からグラウンドにいた。
一通り準備運動をこなした後、五条の発言に虎杖は異論を唱えた。
「んじゃ、恵は野薔薇と。悠二はナマエと組んでね!」
「え!ちょい待ち!俺の相手は伏黒の方がいいんじゃね?」
そんな虎杖に五条はきょとんと首を傾げて「なんで?」と不思議そうにしている。「大の大人のしかも男のキョトンはキツいわ……」と零した野薔薇の一言は五条には聞こえていない。
「いやいや……なんでって、ミョウジ女の子じゃん!」
「女の子でもナマエは歴とした術師だよ、それに体術は僕が直々に叩き込んでるからね。舐めてかかると痛い目見るよ〜。」
「いや、いくら鍛えてるっていってもさー……」
中学の時は『西中の虎』というダサい異名を付けられていた虎杖。これまで喧嘩に負けたことなど一度も無かった。ナマエの実力は確かに知らないが、明らかに線の細い女の子らしい体型で、そんな子を相手に怪我させてもいけない、そう思っての発言だったのだが。
「……だって。どうする?ナマエ。」
「うーん。流石に虎杖くん相手はキツイよ……恵相手ならまだしも……。」
「おいコラ、どう言う意味だ。」
「だってこの間私恵に勝ったもん!」
「あの時はお前得物持ってただろうが。」
「それでも勝ちは勝ちだよ。」
「へぇ〜ナマエより伏黒の方が弱いんだ。男の癖にダッサ!」
「おい……釘崎……」
「ハイハイそこまでー」
パンパンと手を叩いた五条により子供のようなやり取りは強制終了させられた。
「ま、とにかくやってみなよ。悠二みたいなパワーファイターはナマエタイプは苦手だと思うよー?」
「ミョウジタイプってどんなんよ。」
「それはやってみてからのお楽しみ。」
語尾にハートを付けながらホラホラ構えてーと言う五条に少しだけムッとしながら虎杖は構えた。
「ちょっと伏黒!面白そうだから私たちは後にしましょ!」
「…………。」
それからナマエも五条に促されて虎杖に向き合った。
「わかったよー。じゃあ虎杖くん、よろしくお願いします。」
「!」
そう言ったナマエの目を見た虎杖は息を呑んだ。さっきまでの頼りなさそうな表情から一変、獲物を狙う狩人のように鋭くなったから。
「――初め!」
――――――そして冒頭の有様である。
ナマエの攻撃はやはり女の子という事もあって、虎杖には大した効果は無かった。ガードすればなんて事なかったのだ。そこに呪力が伴えば話は別だが今回は体術のみ。だから虎杖は何だかんだで余裕だと思っていた。だが、こちらの攻撃が全くと言っていいほど当たらない。全て躱されるか往なされるか。そしてその動きは、
当たらない攻撃に痺れを切らした虎杖の動きが乱れた所をナマエが見逃すはずもなく、そのまま後ろを取られて膝を落とされご覧の通りだ。
うつ伏せのまま虎杖が呆然としていると、背後から少し苛立ちを含んだナマエの声がした。
「虎杖くん、手ぇ抜いたでしょ。」
「え……いや、まぁ。」
…バレている。女の子相手にどうしても力を入れられなかった虎杖は冷や汗をかいた。馬乗りになっていたナマエは虎杖を解放して腕を差し出し起き上がらせたが、その表情はムスッとしている。
「悟くんもう一回!こんなの勝ちじゃない!」
「ははっ!面白くなってきたねぇ。悠二ー、こうなったナマエは本気出すまでやめてくれないよー?」
「ええぇ……」
それを離れたところで見ていた野薔薇はピュウっと口笛を鳴らした。
「やるわねーあの子。よくまぁあんだけちょこまかと。」
「体術だけは子供の頃からやってたからな。」
「あれ?訓練始めたの最近って言ってなかったっけ。」
「五条先生が護身術としてナマエが5歳の頃から扱いてたんだよ。」
「………護身術の範疇超えてない?」
「まぁ…五条先生だしな。」
「なるほど。」
妙に納得した野薔薇はそのまま虎杖とナマエのやりとりを見ていたが。
「ほらほら、見てばっかいないで野薔薇もやるんだよ。恵も、準備して!」
「えー。」
「えーじゃない!野薔薇は体術あまりしてこなかっただろうからまずは基礎からね。動きは僕が教えてあげるから恵は野薔薇のを受けてあげてね。」
「分かりました。」
「ナマエたちは見なくていいの?」
「だいじょーぶ!ナマエがああなったらしばらく終わらないから放っておいても構わないよ。」
五条の言う通り、ナマエはまた構えをとって虎杖に続きを促している。
「ほらほら、野薔薇も負けてらんないよ!」
「わーかってるわよ!伏黒ぉ!何サボってんの!!さっさと始めるわよ!」
「…お前があいつらの見るっつったんだろーが……」
理不尽な野薔薇に息を吐きながら恵も立ち上がった。