第四十話 恋話
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ナマエが泣き止んで落ち着きを取り戻し、徐々にだが野薔薇と普通に会話ができるようになった頃――
「ねぇ、あれってピアス?可愛いの持ってるじゃない。」
「あ……あれは、貰ったの。」
「ふぅん。誰に?」
「え……っと。」
「?」
これまた古風な化粧台の上に少しミスマッチなアクセサリーケースがあったので野薔薇は興味本位で覗いてみた。大事そうに置かれていたのは小さな花をモチーフにしたピンクの可愛らしいピアスだった。出会ってたった2日だが、ナマエがアクセサリーをしているのを見たことがなかったので気になったのだ。
なぜか頬を染めて「貰った」と答えたナマエを見て、野薔薇はピンときた。
「ははーーん。伏黒ね?あいつにしちゃあいいセンスしてるわね。」
「な!……んで……」
「違うの?」
「違わないけど……」
「なんで照れるのよ。あんたら、そういう関係じゃないの?」
「!!」
野薔薇の言葉にナマエは目を丸くした。たった2日でなぜバレているのか…と。そして目を丸くした後、今度は眉を下げて少し悲しそうに野薔薇に言った。
「違うよ、恵は小さい頃からの幼馴染だよ。」
「ふーん?幼馴染があんなにイチャつくかねぇ?」
「イチャ……ゲホッ、ゴホッ。」
いつ見られたんだとナマエは思わず咽せ込んでしまった。野薔薇にあーあーと言われながらお茶を差し出されお礼を言ってお茶を口にした。野薔薇も虎杖から恋人じゃないらしいと聞いてはいたが、絶対に何かあると踏んでいたのだ。ナマエの少し悲しそうな顔を見て更に確信した。
「誰が見てもアンタらデキてるようにしか見えないわよ。それとも、幼馴染って言い張るのはなんかあるの?」
「デキ……それは……」
「まぁ、別に言いたくないならいいけど。」
「……。」
「聞くだけならできるわよ?」
「野薔薇ちゃん……」
友達になって早速、こんな話をするとは思ってなかったナマエだが、ずっと誰にも言えなかった事を話す機会ができたかもしれない。言っても仕方のない事だと思っていたし、どうにもならないと分かっていたから。それでも、話すだけでも少し楽になれるかもしれない、そう思った。
「……誰にも言わないでね?」
「ナマエがそう言うなら黙っとくわよ。私の口は鋼鉄よりも硬いわ。」
「ふふっ、ありがとう。えっとね、私……」
そうしてナマエから聞かされたのは、ナマエの身の上の事だった。術師の古い家系の未だに残る古いしきたり。古い考え。野薔薇の嫌いなタイプの人間の話だった。だが、ナマエが話す言葉の中にはナマエ自身の感情は一切出てこない。それが何だか腹が立つ。
「ねぇ。ナマエはどうしたいの?」
「え?どうしたいって……」
「ていうか、さっきから家のことばっかりで肝心なこと言ってないけど。好きなんじゃないの?伏黒のこと。」
「私、は…わた…し…」
「うん。」
「………。」
ナマエはそのまま口を閉じてしまった。口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返している。それだけで躊躇いが十二分に伝わってきた。たった二文字。それを言葉にする事ができないでいる。
「…………はぁ、ダメだ。」
「え?」
「口にしちゃったらね……全部、これまでの事が、崩れちゃいそうだから。」
「…私しか聞いてないわよ?」
「そうだね……それでも……。」
「……。」
続きを何も言わないナマエだったが、その瞳を見て、野薔薇は何も言えなくなった。ここで、諦めるな!と言えたらどれだけ良かったか。どうにもならない事が世の中に存在することくらい、まだ10代の野薔薇でもわかる。でも……
「どうにもならないの?本当に?」
「ならないよ。既に候補も何人かいるらしいし。」
「でもさぁ……」
「ありがとう、野薔薇ちゃん。いいんだよ。今すごく楽しいから。すごく幸せだから。」
「そんなの……」
おかしいわよ、という言葉は声に出る事なく飲み込まれた。
「アイツは……伏黒は何て言ってんの?」
「何も。この件について話した事ないし。」
「は?」
何を言ってるのか、と耳を疑った。その疑問がそのまま口から出てしまった。
「想いあってる癖になんでそんな大事な事話さないわけ?」
「そんなんじゃないよ。恵は優しいから私の我儘に付き合ってくれてるだけだよ。そういうのじゃない……。」
「……はぁ?」
何を言ってるのか……と再び思った。あれのどこが……まるっきりナマエにベタ惚れじゃないか。誰が見てもバレバレだ。
「ねぇ、一応聞くけど。あいつに好きだとか何とか、言われたことある?」
「ないよ。」
「あんたは?……って、言うわけないか。」
「そうだね。」
「………………ったく。」
なんだこの2人は。ますます訳がわからない。お互いの気持ちを確かめ合うことなく、『あれ』なのか。野薔薇は頭を抱えた。
「野薔薇ちゃん?」
「え?……あぁ、何でもない。ていうか、思ったんだけどさ。いつかその時が来るとして、それまでカレカノでいるのはダメなの?」
「ダメだよ。そんなの兄様が許さない。」
「兄様……あぁ、次期当主の?」
「うん。」
「親じゃなくて兄が許さないの?」
「実質家の事を任されてるのは兄様だから……結婚前に別の人とお付き合いなんて、許される訳がない。」
「ふーん……」
気のない返事をしながらも野薔薇は考えていた。本当に方法はないのか?と。でも野薔薇の頭では何もいい方法なんて思いつかなかった。
「ごめん。」
「え?どしたの?」
「なんか……嫌な事話させたかなーなんて。」
「全然だよ。初めて話した。誰にも言えなかったから。すごく楽になったよ。ありがとう、野薔薇ちゃん。」
眉を下げて笑うナマエに、野薔薇は何も言えなかった。だから……
「ねぇ、あのピアス、着けないの?」
「あー着けたいんだけど、私耳空けてないから……」
「空けてあげようか?私ピアッサー持ってるわよ?」
「え、どうしよう……」
「せっかく貰ったんなら着けなきゃ勿体無いわよ。伏黒だって着けてる所見たいんじゃない?」
「そう、かな。でも…恵が空けてやるって……。でも最近忙しかったからタイミングもなくて……」
「ふぅん?アイツ独占欲強そうだもんねー。あ、硝子さんにお願いしに行く?やっぱ素人がやるよりも医者の方が安心でしょ?」
「…確かに。」
「それに下手な所に空けちゃっても良くないらしいし。」
「え!そうなの?」
「そ!そうと決まれば善は急げよ!硝子さんとこ、行くわよ!」
「でも恵が……」
「いーのいーの!明日着けて行っておどろかせてやればいいの!」
「うー……」
「ほら!行くわよ!」
こうして勢いのまま硝子の所に行ってお願いをしたのだが、なぜか恵から貰ったものだとバレて生温い目で見られてしまった……。
そして、硝子から聞かされた男が女にピアスを贈る意味に、ナマエはリンゴよりも真っ赤に顔を染める事になる。
――いつも自分の存在を感じてほしい
そして……
――いつでも愛を囁いていたい
「ねぇ、あれってピアス?可愛いの持ってるじゃない。」
「あ……あれは、貰ったの。」
「ふぅん。誰に?」
「え……っと。」
「?」
これまた古風な化粧台の上に少しミスマッチなアクセサリーケースがあったので野薔薇は興味本位で覗いてみた。大事そうに置かれていたのは小さな花をモチーフにしたピンクの可愛らしいピアスだった。出会ってたった2日だが、ナマエがアクセサリーをしているのを見たことがなかったので気になったのだ。
なぜか頬を染めて「貰った」と答えたナマエを見て、野薔薇はピンときた。
「ははーーん。伏黒ね?あいつにしちゃあいいセンスしてるわね。」
「な!……んで……」
「違うの?」
「違わないけど……」
「なんで照れるのよ。あんたら、そういう関係じゃないの?」
「!!」
野薔薇の言葉にナマエは目を丸くした。たった2日でなぜバレているのか…と。そして目を丸くした後、今度は眉を下げて少し悲しそうに野薔薇に言った。
「違うよ、恵は小さい頃からの幼馴染だよ。」
「ふーん?幼馴染があんなにイチャつくかねぇ?」
「イチャ……ゲホッ、ゴホッ。」
いつ見られたんだとナマエは思わず咽せ込んでしまった。野薔薇にあーあーと言われながらお茶を差し出されお礼を言ってお茶を口にした。野薔薇も虎杖から恋人じゃないらしいと聞いてはいたが、絶対に何かあると踏んでいたのだ。ナマエの少し悲しそうな顔を見て更に確信した。
「誰が見てもアンタらデキてるようにしか見えないわよ。それとも、幼馴染って言い張るのはなんかあるの?」
「デキ……それは……」
「まぁ、別に言いたくないならいいけど。」
「……。」
「聞くだけならできるわよ?」
「野薔薇ちゃん……」
友達になって早速、こんな話をするとは思ってなかったナマエだが、ずっと誰にも言えなかった事を話す機会ができたかもしれない。言っても仕方のない事だと思っていたし、どうにもならないと分かっていたから。それでも、話すだけでも少し楽になれるかもしれない、そう思った。
「……誰にも言わないでね?」
「ナマエがそう言うなら黙っとくわよ。私の口は鋼鉄よりも硬いわ。」
「ふふっ、ありがとう。えっとね、私……」
そうしてナマエから聞かされたのは、ナマエの身の上の事だった。術師の古い家系の未だに残る古いしきたり。古い考え。野薔薇の嫌いなタイプの人間の話だった。だが、ナマエが話す言葉の中にはナマエ自身の感情は一切出てこない。それが何だか腹が立つ。
「ねぇ。ナマエはどうしたいの?」
「え?どうしたいって……」
「ていうか、さっきから家のことばっかりで肝心なこと言ってないけど。好きなんじゃないの?伏黒のこと。」
「私、は…わた…し…」
「うん。」
「………。」
ナマエはそのまま口を閉じてしまった。口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返している。それだけで躊躇いが十二分に伝わってきた。たった二文字。それを言葉にする事ができないでいる。
「…………はぁ、ダメだ。」
「え?」
「口にしちゃったらね……全部、これまでの事が、崩れちゃいそうだから。」
「…私しか聞いてないわよ?」
「そうだね……それでも……。」
「……。」
続きを何も言わないナマエだったが、その瞳を見て、野薔薇は何も言えなくなった。ここで、諦めるな!と言えたらどれだけ良かったか。どうにもならない事が世の中に存在することくらい、まだ10代の野薔薇でもわかる。でも……
「どうにもならないの?本当に?」
「ならないよ。既に候補も何人かいるらしいし。」
「でもさぁ……」
「ありがとう、野薔薇ちゃん。いいんだよ。今すごく楽しいから。すごく幸せだから。」
「そんなの……」
おかしいわよ、という言葉は声に出る事なく飲み込まれた。
「アイツは……伏黒は何て言ってんの?」
「何も。この件について話した事ないし。」
「は?」
何を言ってるのか、と耳を疑った。その疑問がそのまま口から出てしまった。
「想いあってる癖になんでそんな大事な事話さないわけ?」
「そんなんじゃないよ。恵は優しいから私の我儘に付き合ってくれてるだけだよ。そういうのじゃない……。」
「……はぁ?」
何を言ってるのか……と再び思った。あれのどこが……まるっきりナマエにベタ惚れじゃないか。誰が見てもバレバレだ。
「ねぇ、一応聞くけど。あいつに好きだとか何とか、言われたことある?」
「ないよ。」
「あんたは?……って、言うわけないか。」
「そうだね。」
「………………ったく。」
なんだこの2人は。ますます訳がわからない。お互いの気持ちを確かめ合うことなく、『あれ』なのか。野薔薇は頭を抱えた。
「野薔薇ちゃん?」
「え?……あぁ、何でもない。ていうか、思ったんだけどさ。いつかその時が来るとして、それまでカレカノでいるのはダメなの?」
「ダメだよ。そんなの兄様が許さない。」
「兄様……あぁ、次期当主の?」
「うん。」
「親じゃなくて兄が許さないの?」
「実質家の事を任されてるのは兄様だから……結婚前に別の人とお付き合いなんて、許される訳がない。」
「ふーん……」
気のない返事をしながらも野薔薇は考えていた。本当に方法はないのか?と。でも野薔薇の頭では何もいい方法なんて思いつかなかった。
「ごめん。」
「え?どしたの?」
「なんか……嫌な事話させたかなーなんて。」
「全然だよ。初めて話した。誰にも言えなかったから。すごく楽になったよ。ありがとう、野薔薇ちゃん。」
眉を下げて笑うナマエに、野薔薇は何も言えなかった。だから……
「ねぇ、あのピアス、着けないの?」
「あー着けたいんだけど、私耳空けてないから……」
「空けてあげようか?私ピアッサー持ってるわよ?」
「え、どうしよう……」
「せっかく貰ったんなら着けなきゃ勿体無いわよ。伏黒だって着けてる所見たいんじゃない?」
「そう、かな。でも…恵が空けてやるって……。でも最近忙しかったからタイミングもなくて……」
「ふぅん?アイツ独占欲強そうだもんねー。あ、硝子さんにお願いしに行く?やっぱ素人がやるよりも医者の方が安心でしょ?」
「…確かに。」
「それに下手な所に空けちゃっても良くないらしいし。」
「え!そうなの?」
「そ!そうと決まれば善は急げよ!硝子さんとこ、行くわよ!」
「でも恵が……」
「いーのいーの!明日着けて行っておどろかせてやればいいの!」
「うー……」
「ほら!行くわよ!」
こうして勢いのまま硝子の所に行ってお願いをしたのだが、なぜか恵から貰ったものだとバレて生温い目で見られてしまった……。
そして、硝子から聞かされた男が女にピアスを贈る意味に、ナマエはリンゴよりも真っ赤に顔を染める事になる。
――いつも自分の存在を感じてほしい
そして……
――いつでも愛を囁いていたい