第三十八話 勃発
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医務室で家入に治療を施されて回復したナマエは恵に言われた通り男子寮の談話室へとやって来てその扉を開いたのだが……驚き、困惑、焦りと三者三様の表情で注目を浴びて戸惑った。
「え?……来てよかった……んだよね?」
「お、おぅ!おかえりミョウジ!怪我の具合は?」
「あ、うん。大丈夫だよ。おでこの傷も数日で消えるだろうって。」
「そっか!良かったな!ほら、突っ立ってないで入ってこいよ!」
「……うん。」
どこかぎこちない虎杖の態度に不思議に思ったナマエだったが言われるがまま室内に足を踏み入れた。
「冷蔵庫。お前の分のジュースあるから。」
「ほんと?ありがとー!」
恵に言われて冷蔵庫を開けると確かにキンキンに冷えたオレンジジュースが入っていた。任務後そのまま医務室へ向かったので喉が渇いていたナマエは嬉しそうにそれを取り出した。
テレビに向かってコの字型に配置されたソファにそれぞれ1人づつ座っていたので、ナマエは恵の横に腰掛けることにした。プシュっとプルタブを開けて喉を潤したナマエは、周りをキョロキョロと見渡しながら感想を漏らした。
「へぇー男子寮の談話室も女子寮と間取りとかほぼ同じなんだね。」
「でっかいテレビいいよな!今度何か映画でも見ようぜ!」
「うん、そだね。」
妙に明るいテンションで話しかけてくる虎杖。それに対して残りの2人のテンションの低さ。ナマエにはさっぱり意味が分からなかった。
「恵?なんかあった?」
「いや……。」
一応ダメ元で恵に聞いてみたが想像通りの答えが返ってきた。それもそのはずで。恵の頭の中は今この場をどうしたらいいか、そればかりだからだ。〝今〟は2人が一緒にいない方がいい。分かっているのに切り抜け方が分からない。それなのにうっかりジュースあるぞ、なんて腰を落ち着かせるコースへの誘導まがいな事もしてしまった。いろんな事を恵がグルグルと考えていると、釘崎がナマエにねぇ、と話しかけた。恵と虎杖は何を言い出すのかと気が気じゃなかった。
「怪我、本当に大丈夫なの。左腕は?」
「大丈夫だよ。左腕も、ただの打撲だったから。硝子ちゃんに診てもらって骨に異常はないって。術式で直してもらったからもう平気。」
「硝子ちゃん?」
「あ…えっと、高専の専属医師でね、反転術式を相手に施せる凄い人なの。」
「そう……。」
釘崎はまだ会ったことがなかったが、ナマエの言い方からするとその医師は女性で、そしてその呼び方から親しい間柄だろうことも伺えた。ますます釘崎は考え込んでしまう。
「釘崎さん……?」
「…私がヘマして捕まらなかったら、アンタが怪我する事はなかったかもしれない。だから……」
「それは違うよ!私がちゃんと避けられなかっただけだから、釘崎さんのせいじゃない。それに、釘崎さんの術式がなかったらあの呪霊にとどめを刺すことはできなかった。だから…その、釘崎さんは何にも悪くないよ。」
今回の任務でナマエに負担を掛けたのは確かだったので思うところはあったものの謝ろうと思っていた。だが、その前に説き伏せられてしまった。そして、明らかに気を使われてしまった。別にアンタのせいだと言われたかった訳ではない。それでも……やはりモヤモヤとしたものがどうしても拭えない。だが、いくら謝ろうとしても恐らくナマエは受け入れないだろうと思った。
その様子を息を呑んで見守っていた男子2人。釘崎が何を言い出すのかと緊張しながら見ていたが、想像よりも普通の会話をしていた。だから2人してコッソリとホッとしていた。……だが、その安堵は一瞬だった。
「分かったわ。今回の任務のことはもう言わない。でも……ひとつだけどうしても納得がいかないことがあるの。」
何を言い始めるのか大体の想像ができた男子2人の溜飲は一気に下がった。