第三十六話 共闘
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それからというもの、唯一の攻撃手段である鉄扇を失ったナマエは文字通り防戦一方だった。次々と繰り出されるタコ足の攻撃に翻弄されている。風の盾を作り出すことは元々できたので、それで凌いでいたが、タコの方もいたぶるのが目的なのか。決定打は打ってこない。まるで面白がっているようだ。
決定打を打ってこないにしても、ジワジワと体力は削られる。体力バカのナマエもさすがに疲労が見えてきて、おまけに頭を怪我したことにより時折視界もグラつく。全て躱していたナマエだったが、だんだんと動きが鈍くなりついにタコの攻撃を受けてしまった。
「ぐぅっ!」
「ミョウジ!!」
「…っ大丈夫…だよ。これくら…い、なんとも、ないから。もうちょっと待っててね…。その気持ち悪い足、ぶった切るから。」
肝心の武器もなしにどうするつもりなのか。タコ足に縛られたまま動けない釘崎には何もできない。このままではナマエもやられてしまう。だから、思いっきり叫んだ。
「逃げろ!いったん退避して!
「っそんなことっ!できるわけ、ないでしょう!!」
増援を呼んでくるように叫んだ釘崎だったが、縛られた状態の釘崎を放って逃げ出すなんてナマエにできるわけがない。
「じゃあどうするっていうのよ!鉄扇ないと攻撃もできないでしょ!このままじゃあんたも私もやられちゃうの!」
「うるさい!!」
「え?」
「ちょっと黙ってて!!今、集中してるんだから!」
いきなり暴言を吐かれた釘崎は黙り込むしかなかった。あのナマエからこんな言葉が出るなんて思わなかったのだ。集中している…と言っていたナマエは、よく見れば先程から風の盾を出すのをやめて逃げに徹している。そして、手元は両手を合わせるようにしたまま動かさない。
「もうちょっと…!!」
ナマエは、合掌した手の中に呪力を溜めて研ぎ澄ませていた。去年、加茂家に遊びに行ったときに一度見せてもらってから、もしかしたら自分にも同じようなことができるかもしれないと思っていた。もちろん実践したことなどないし、そもそも加茂家のように血を操るなんてナマエにはできない。そう、ナマエが操るのは…風だ。
「薄く……細く……すり合わせるように……」
ぶつぶつと何かを言いながらも呪霊の攻撃はうまく避けている。相手のパターンが見えてきたようだ。そして、手の平の中の呪力を硬く、強く押しとどめていたナマエは、自分の中で何かを掴んだ。
(いける!!)
手の平を合わせたまま真っすぐ呪霊の丸い頭らしき場所に向けて腕を伸ばして焦点を定めたナマエは、思いっきり叫んだ。
「(見様見真似だけど…!)なんちゃって穿血!!」
————バシュ!!
『グアアアアァァァァアアアァァアアアァ!!』
「はぁっ、はぁっ…でき…た。」
釘崎の目にも映るほどに圧縮されたナマエの風は、真っすぐ矢のように呪霊に向かってそのまま頭を貫いた。大きな呻き声を上げた呪霊は、ジタバタと暴れながらナマエの鉄扇を手放した。その瞬間を見逃すナマエではない。落ちてくる鉄扇をうまくキャッチしてそのまま鎌鼬を放つために構えたが……
「え?ちょっと!待ってよ!!」
ナマエの叫びも空しく、タコ呪霊はすぅっと徐々に半透明になり、そのまま完全に見えなくなってしまった。呪力は感じられるのでまだこの場に留まっているのは分かる。だが、これでは焦点が定まらない。
————バキッ!!
「うぐっ!!」
見えない場所からの攻撃。ナマエはまたもや打つ手が無くなってしまった。もう一つの技、風切りもあるが、あれは細かい風の刃を広範囲にわたって縦横無尽に飛ばす技だ。直ぐ近くに釘崎がいるこの場では使えない。万事休す、と思った時に釘崎の方を見ると、タコ足が釘崎に巻き付いたまま消えていなかった。本体が透明になっても切り離された一部にまでは適用されないのかもしれない。もう、これしかないと思ったナマエは釘崎の方に鉄扇を構えて思いっきり振りかぶった。
「は!?ちょっと!アンタ!何する気よ!」
何の説明もなく鉄扇で攻撃してこようとするナマエに焦った釘崎だったが、ナマエはお構いなしに鉄扇を振り下ろした。