第三十六話 共闘
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呪霊が確認された岩場は、分かっていた事ではあったが足場が悪い。こちらの存在に気付いた呪霊が襲ってくるたびに足元がグラつく。たいしたことない相手なのに足場の悪さのせいで思うように討伐が進まなかった。
「チッ。ちょこまかと…うっとうしい!!」
「釘崎さんっ!」
釘崎が手元を狂わせて攻撃を外した呪霊をナマエの風が刈り取ってフォローする…というのも既に何度かあった。今も岩場に手を付いた瞬間に向かってきた呪霊をナマエが祓ったことで事なきを得た。
息を切らして疲労が見えてきた釘崎に対してナマエはピンピンしている。それこそ呼吸一つ乱していない様子のナマエに釘崎は自分との差に釘崎は焦りを感じ始めていた。3級と2級でここまで違うのかと。
「報告にあった本命、なかなか出てこないね。…立てる?」
「っ。大丈夫よ。これくらい。」
心配そうにのぞき込みながら座り込んだ釘崎に差し出されたナマエの手は、掴まれることなく終わった。釘崎はスカートに着いた汚れを払いながら自力で立ち上がった。ナマエは掴まれなかった手を所在なさげに握るしかなかった。
「もう少し奥、行ってみましょう。」
「…うん。」
起伏の激しい岩場は平坦な道に比べて体力が削られる。さっさと終わらせたいのに肝心の呪霊は出てこずに雑魚ばかりの相手をしないといけない。釘崎の苛立ちは岩場の険しさに比例して募っていった。だから、注意力が欠けてしまっていた。周りが、見えていなかった。
「釘崎さん!!後ろ!!」
「え?……ぐっっ!!」
一瞬の出来事だった。半透明の触手のようなものが伸びてきたと思えばあっという間に釘崎に巻き付いてそのまま高く持ち上げられる。上半身に巻き付いたそれは、腕ごと巻き付いたせいで頼みの釘も使えない。
半透明だったそれはだんだんと色を持ち始めて、はっきりと姿を現したのは、全長5メートルは超えるだろうという巨体で見た目はタコそのものの呪霊だった。おそらくこいつが報告にあった2級呪霊だろう。これまで現れていた雑魚とは桁違いのサイズに桁違いの呪力量だ。なかなか姿が見えなかったのは、体を透明にする能力を持っていたからだったようだ。ぎょろりとした目玉がナマエの方をとらえた。
「釘崎さん!待ってて!今切り離すから!」
————ザンッ!
「ぐぅっ!」
タコの足ごと切り取られた釘崎はドカッと岩場に落とされた。打ち付けたお尻に強い痛みが走って思わず呻いた釘崎だったが、大事はなさそうだ。だが、切り離された後もタコの足は力を緩めることなく、むしろ逆に強まっているようにも感じた。
「なにこれ気持ち悪っ!吸盤!!」
「無事!?」
「何でか解けないけどとりあえず大丈夫!アンタは呪霊に集中して!!」
「っ!分かった!後でそれ外すから!!」
自分が足手まといになってしまったことが悔しくてたまらない釘崎だったが、今はどうすることもできない。鉄扇を構えるナマエの方を見ながら歯を食いしばった。
「鎌いた…………きゃぁっ!!」
ナマエの十八番である
「ミョウジっ!!!」
「……つー!!痛っったい!」
頭から血をダラダラと流しながらもググっと立ち上がって呪霊を睨みつけたナマエは、今までの印象を覆す程に闘志を漲らせた目をしていて、釘崎は目を丸くして見るしかなかった。ファーストインプレッションと違いすぎる。
「あー、マジで許せない。怪我するなって言われてるのに。後で恵に怒られるじゃん!!怒ったらめちゃくちゃめんどくさいのに!!!」
「………(そこなの…?)」
怪我をさせられたことに対する怒りには違いないがどこかズレている気がする。
「マジでもう手加減しないから。………ってあれ…鉄扇………」
「足!あいつの足!」
これから反撃だ、というときに手元にあるはずの鉄扇が見当たらない。釘崎の言葉に呪霊の方を見ると————
目を細めてこちらを見てくる呪霊の、タコのようなその足に…取り上げられてしまっていた。
「っ嘘でしょ……」