第三十五話 共有
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一緒に任務に挑むにあたり、ナマエが知っておきたかったこと。それは協力して遂行するためには必要不可欠で、そして基本的なことだった。
「なに?」
「私たち、お互いの術式しらないでしょう?いざ呪霊と戦うって時にお互いのこと分かってないと不便だと思って…。全部じゃなくていいの。基本的な戦闘スタイルだけでも分かってたらやりやすいと思うんだけど、どうかな?」
昨日祓霊の瞬間は見たものの、ビルの外からということもあり仕組みは全く分からなかったのだ。任務でペアを組むという事は、場合によっては自分の命を預けることになる。お互いの事が分かっていないとそれこそ命取りになりかねない。
「確かにそうね、分かったわ。私の術式は……」
釘崎はナマエの言い分をすぐに理解して、術式についてすんなり開示をしてくれた。釘崎の術式は
「なるほど…てことは、釘さえ当たれば遠距離でもいけるし、呪霊の一部を切り落とせばこっちの勝ちみたいなものってことで合ってる?」
「だいたい合ってるわ。でも釘も藁人形も数に限度があるから無駄打はできないし、当たらなきゃ意味がないわ。それで?あんたのは?ミョウジ家の術式なら私の耳にも入るくらいには有名だけど。」
釘崎からミョウジ家の話が出てきたことに少し驚いた顔をした後、ナマエは眉を下げた。
「ミョウジの事知ってるんだね。」
「そりゃ有名だもの。あんたあそこの娘なんでしょ?」
「うん、そうだよ。でも私は相伝を受け継がなかったから。」
「……。」
実の所、有名なのはミョウジ家そのものではなく兄である翔だ。ミョウジ家始まって以来の天才と呼ばれ、相伝の術式だけでなく高い身体能力、人並み外れた呪力量に冷静な判断力。ナマエが適うものなど何一つとして無い。
「私ができるのは呪力を風に変換することだけだよ。
そう言いながら鞄から鉄扇を取り出して撫でながら続けた。
「ほんとは呪具がなくても攻撃ができるようにならないといけないんだけど、今は練習中かな。」
釘崎は、眉を下げたナマエを見て初めは野暮なことを言ってしまったと思ったが。ナマエの様子からは術式を受け継がなかったことを残念そうには言うものの、嘆いたり卑屈になっていたりする様子は見受けられなかった。自分の能力をさらに上げるために努力している様子はむしろ好感が持てた。だから――
「いいんじゃない?それで祓霊ができるなら。私の術式よりよっぽど使い勝手は良さそうじゃない。」
「釘崎さん……。」
「さ、行きましょ。さっさと討伐して帰るわよ。」
「……うんっ!」
(あれ、私。ちゃんと会話できてる……?)
任務について必要な話だったからという理由のせいか。緊張はしたもののスムーズに会話のキャッチボールができた気がする。このまま少しずつでもコミュニケーションが取れればいつか友達になれるのでは…と前向きな気持ちを抱きながらナマエは目的の岩場へと向かった。