第三十五話 共有
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出発前に伊地知、虎杖、釘崎とそれぞれ自己紹介をした上で車に乗り込んだ。今回の任務地は神奈川県。湘南にほど近い海岸線だ。何でも、これから海開きという時に窓による呪霊発生の報告を受けたそうだ。発生場所は主に岩場。くれぐれも海に落ちないようにと注意を受けた。
「3級以下の複数の呪霊の中に、2級相当の確認もされています。今回は探索範囲も広いので二手に分かれて祓霊に当たって下さい。伏黒くんと虎杖くん、ミョウジさんと釘崎さんで組むのがいいでしょう。」
「「……。」」
2級が確認されている、という理由からこの分かれ方なんだろう。伊地知の采配は間違っていない。さすがベテラン補助監督である。……が、よりにもよってだ。
「なぁなぁ伊地知さん、なんでこのペアなん?」
やはり何も分かっていなかった虎杖が素直に質問をした。
「先ほども言ったように、2級相当の呪霊が確認されています。伏黒くんもミョウジさんも2級術師ですからね。ペアを組むなら必然的にそうなります。」
「へー、ニキュウ……。じゃあ、俺は?」
「虎杖くんは……ちょっと特殊なので今はまだ等級はありませんよ。」
「え゛、そうなの!?知らんかった……」
「ふふん、雑魚ってことじゃない?」
「なんだと!?そう言う釘崎は何級なんだよ!」
「……3級よ。悪い?」
「てことは偉そうに言いながら伏黒たちよりは下じゃんか!」
「黙れ雑魚。そもそも一年の最初から2級って方が普通じゃないの!」
さっきから助手席と後部座席とで繰り広げられる二人のやりとりにヒヤヒヤさせられる。虎杖よ…頼むから余計なことは言わないでくれ……と恵は思わずにはいられなかった。隣のナマエも案の定、なんとも言えない表情だ。
恵もナマエも2級で入学したことを優位に思ったことはないし、鼻にかけるつもりもない。
だが、この会話の流れはあまり良くないと思った。
「はは、二人とも優秀ですからね。」
(おい!!余計なことを言うのはオマエか!!)
恵は心の中で伊地知に失礼ながらも暴言を吐いた。ここで自分たちが受け入れても、謙遜しても、絶対にいい方向には転ばない。だからこそ、ナマエも何も言わずに黙っている。が、それさえも正解ではない。というか、きっと正解はない。
「へー!お前ら凄いんだな!釘崎、俺らも頑張って二人に追いつこうな!!」
「!……そうね、チャッチャと昇級してやるわ!」
「そうだね、二人ならきっとすぐだよ。」
(……すごいな。)
ここで初めて口を開いたナマエは、比較的自然な笑みで二人に向かって話した。それを見て、恵は素直に虎杖の前向きさに感心した。この毒気の無い性格は、ナマエと釘崎にとっていい潤滑剤になるのでは、とさえ思った。
「おーーー!!海!!任務の後さ、泳いで行こうぜ!」
「アホか。まだ冷たいに決まってんだろうが。」
「えー、ケチ。」
(イラっ。)
6月になり気温はかなり上がってきたが、泳ぐにはまだ早いに決まっている。しかも、水着もないのにどうするつもりなのか。恵にバッサリ却下されても、虎杖はめげる事なく「じゃあ波打ち際で青春ごっこしよう!」とはしゃいでいる。青春ごっことは、打ち寄せる波に追いかけられながらキャッキャウフフする事らしい。ナマエの脳裏には、カラオケで出てくる安っぽい背景映像が思い浮かんでちょっと面白くなってしまった。
「ふふっ。」
「お!ミョウジ!後で一緒にやる??」
「やらなーい。」
「ちぇっ、なんだよー。青春しよーぜー。」
「……オホン。虎杖くん、あなたたちは遊びに来ているのではありませんよ。」
「あ、はーい。」
「ぷぷー!怒られてやーんのー!」
まるで小学生のようなやりとりだ。伊地知も呆れたようにため息を吐いている。今回は平日、しかも岩場ということで人があまり立ち入らない場所のため、帳なしで行うらしい。広範囲のため岩場の両端から中央に向かって探索することが決まった。
「怪我すんなよ。」
「恵も気をつけてね。」
同じ任務とはいえ、別行動は初めてだった。ペアの決め方に思うところはあるものの、任務は任務。恵と一言だけ会話を交わした後、ナマエは大きく深呼吸を一つして、今回の任務の相方の元へと意を決して向かった。
「釘崎さん、任務の前に聞いておきたいことがあるんだけどいいかな?」