第三十三話 初見
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「それで、今日からここが釘崎さんのお部屋だよ。私の部屋、お隣だから何かあったら言ってね。」
「分かったわ。」
大騒ぎの一年ズでの食事会を終えて、高専に帰ってきた後。釘崎の案内を任されたのはやはりというか同性であるナマエだった。
食事中も主に騒ぐのは虎杖と釘崎で、恵とナマエは黙々と食事をしているだけだった。そんな状態でまともに親睦など深まるはずもなく。
「え……と、明日は正門集合だったよね。じゃあ……おやす「ねぇ。」……え?」
ナマエは出来るだけ早く部屋に戻りたかったのだが、切り上げるための挨拶は釘崎のたった一言でかき消されてしまった。
「……どしたの?」
「それ、何とかならないの?」
「え……。」
「普通に話しなさいよ。」
「……変、かな。普通に話してるつもりなんだけど……。」
「何を怖がってんのか知らないけど。私、ビクビクオドオドしてるの、嫌いなのよね。」
「っ、」
「明日、校門だっけ?じゃ、おやすみ。」
――パタン。
こちらの返事を待たずに釘崎は部屋に入ってしまった。早く部屋に戻りたかったという願いが、叶ったのに。ナマエの気持ちは、鉛のように重く沈んでしまった。
こちらとしては、あたらず、触らず、無難に。下手に刺激をしないようにしていただけなのに。何がいけなかったのか。早速「嫌い」だと言われてしまった。
初日から、失敗してしまった。
それでもこのまま釘崎の部屋の前でずっと突っ立っているわけにもいかない。ナマエも部屋に戻った。
(今日は…お風呂場行くのやめよう……)
女子寮には、各部屋簡易のシャワールームが備え付けられている。人一人が入るだけで精一杯の狭さだが、疲れた時や入浴が面倒な時は重宝している。家入の時代には無かったらしいが、月経時などに共同の風呂場は使いたくないと、意見が出たことで途中で改装されたらしい。
今日に至ってはもしも釘崎と風呂場でバッティングしたら、どうしたらいいか分からないから。
シャワールームがあって本当に助かった。
ナマエは浮かない気持ちのままシャワールームに入った。
――釘崎の部屋では……
「何なのあの子。気ぃ使ってますみたいな態度。」
釘崎は釘崎で、別にナマエの事が「嫌い」だと言いたかった訳ではなかった。これから長い付き合いになるだろう同級生。しかも同性。普通に接したらいいのに、どこか遠慮したような怯えたような。
そもそもの性格がそういうヤツなら、釘崎だって不満には思わなかった。それなりの付き合いの仕方を考えるのだ。だが、たった数時間の付き合いでも分かった。あれは、本来の性分を隠していた。
現に、時折五条や伏黒と会話する時は素の部分が見え隠れしていたから。だから余計に腹が立ったのだ。だからといって釘崎も別に喧嘩を売ったつもりはない。ただ単に思ったことを言っただけなのだ。
初日から暗雲立ち込めるが……。そもそも『初日』である。全く違う土地、違う環境で育ってきた人間が、初めから大親友のようになるはずなどない。元から癖のある我が道を行くタイプの釘崎と、中学時代孤立していたせいで友達の作り方が分からないナマエ。二人ともそれが分かっていない。
「「あー……、もう…。」」
女子寮では同じような、ため息とも嘆きとも言えない、二種類の声が重なっていた。
そして、何も気付いていない鼻歌交じりの呑気な人間が男子寮某部屋に約一名。
「明日は四人ではっつにっんむ~。どこ行くんだろーなぁ。」