第三十一話 羨望
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————翌朝。
毎朝毎朝。飽きることなく恵の部屋へと忍び込んだのは、他でもないナマエだ。いつものようにそーっと扉を開けて中に入る。足音を立てないよう慎重にベッドへと近づいて恵の寝顔をそっと覗き込んだ。
ナマエは、恵の寝顔を見るのが好きだ。普段は険しい顔をしていることが多い恵の、この力の入っていない緩い顔が見たいがために毎朝忍び込む。今日もうっすらと開いた口元ですうすうと寝息を立てる寝顔を見て、ナマエの口角は緩んだ。
さて、と右手に持つそれで恵の寝顔にいたずらをしようとゆっくりと近付いた時——いきなりガッとその手首を掴まれて引っ張られたと思ったら。ナマエの視界がぐるりと反転して、さっきとは正反対の眉間に皺を寄せた不機嫌そうな顔を拝むことになった。
「……何か言う事は。」
「お、おはよー…」
「あぁ、おはよう。それから?」
「今日も、いい天気だね…?」
「ハァ…。」
恵によりベッドに引きずり込まれたナマエは恵に押し倒されているような体勢になった。視界には天井と少しだけまだ眠そうな、でもムスッとした恵の顔だけが写っている。
「あれ、なんか怒ってる?」
「怒ってねぇ。けど、お前がしようとしてたことの内容によっては、お仕置きが必要だな。」
「ただ起こしに来ただけだよ?」
「へぇ。じゃあ、この右手に持ってるもんは何だ?」
「え?あー……はははは…」
ぐいっと引っ張られたナマエの右手には、油性のマジックペン。ちなみに極太。こんなものを持ち出して何をしようとしたのか。考えられるのは一つしかない。
「このマジックで、どこに、何を書こうとしてたんだろうなぁ?」
「……。」
「わざとらしく目ぇ逸らしてんじゃねぇ。」
「え………って!ひゃぁ!——っははははははは!やだ!やだぁ!っはははは!」
ナマエが突然笑い出したのは、恵によるこちょこちょの刑が始まったから。掴んでいた右手を離して両手でナマエの脇腹への攻撃を仕掛けた。恵はこちょこちょと擽りながらも無表情。
「あっひゃひゃひゃひゃ…!や、やめ……っははははは!やぁっ!くすぐった……ひゃひゃひゃひゃ…!」
「そんな大声出したらお隣さんの迷惑になるぞ。」
「ひゃっ!そんっ……な!ははははは…こと!ふふふふっ!言ってもー!ぅあっ!」
「何か言う事は?」
「ごめ、ごめん…あひゃひゃひゃ……っなさいッ!!もうっ…あぁっ、やめっ!」
「……よし。」
ナマエの謝罪を聞いて、ようやく擽る手を止めた恵。——と言うより、擽られて笑い転げるナマエが時折漏らす少し色っぽい声に、ちょっとムラムラとしたものがこみ上げてきたから。
「はぁ、はぁ、……っ疲れたぁ~。もぉ、朝から腹筋やばいー。」
「っ。」
笑いすぎて涙目になったナマエは指で目尻を拭いながら恵の顔を見上げてきたのだが、息が荒く吐息交じりで話すその声を聞いて、恵はたまらずゆっくりと顔を近づけた。
「どしたの?めぐ…………んっ。……んっ、はぁ…っ。」
「……ん。…………くち。」
「ふぁ……ん…。」
「そう………はぁ……。」
恵の短い一言で素直に口を開けるナマエに、満足そうに口づけを落としていく恵。時折ナマエから漏れるなまめかしい声に恵もだんだんその気になってきた。
昨晩は隣の部屋に虎杖が居るからと、いつものように触れ合うことがなかったので余計にナマエが恋しくなったのかもしれない。
「あっ……、ちょっ…と…、んんっ。やぁっ!」
「声……あんま出すな。隣に聞こえるから。」
「んんんっ、そんっ…なの!むりぃっ!」
恵の手はスウェットの中に。そして顔は首元から鎖骨の方へ。声を出すなと言いながらもその動きが止まることは無い。
結局恵が止まることなく、ナマエは朝っぱらから体力を消耗することになった。