第三十話 転入
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「——、————。」
「——…。————。」
隣の部屋から話し声が聞こえてきて、恵はうっすらと瞼を持ち上げた。腕の中にはすやすやと寝息を立てるナマエ。そういえば一緒に寝ていたんだった、と今の状況を思い出した。少し青白かったナマエの顔色は眠っているので定かではないがだいぶ良くなっているような気がする。完全に安心しきって眠りについているナマエに対して、嬉しさ半分憎さ半分の気持ちだ。
「気の抜けた顔しやがって…。」
一緒に寝るのはまだ数えるほどだが、恵は毎回煩悩と戦いながら目を閉じていた。だからこそ呑気に眠っているナマエにため息が出た。とは言っても今の今まで恵も熟睡できていたので、ナマエを腕の中に入れるのが恵にとっても睡眠導入剤となっているのかもしれない。
と、そこまで考えて、隣から聞こえる話し声のことを思い出した。この声はおそらく五条と虎杖だ。スマホで時間を確認して、あぁ…虎杖が高専 に来て部屋にでも案内されてるんだな…と思った。寮の部屋は壁が薄い。何を話しているかまでは分からないが、会話をしているという事実が分かる位の壁の薄さなのである。それが嫌だった恵は敢えて二年の先輩たちと違う階の部屋を自室に選んだのだが…。
(いや…待て!)
嫌な予感がした恵はガバッと起き上がった。まさかとは思うが…もしも虎杖が隣の部屋に住むことになればせっかくの静かな空間が台無しになってしまう。
「んん…めぐみ?」
恵が起き上がった振動でナマエも目を覚ましたようだ。眉をしかめながら片手で目をこすっている。
「あ、悪ぃ。…ちょっと外の様子見てくる。お前はもう少し寝てていいから。」
「んー?外…?」
「絶対部屋から出るなよ。面倒なことになるから。」
「??」
「いいから。絶対出てくるな。」
ナマエに念押しをした恵はもそもそとベッドから降りて入り口の扉へと向かった。扉を開けて外を覗くとちょうど五条と虎杖が隣の部屋から出てくるところだった。恵の嫌な予感は的中してしまった。そしてポロリと本音が零れた。
「げ。隣かよ。」
「おっ!伏黒!今度こそ元気そうだな!!」
「空室なんて他にいくらでもあったでしょ。」
人懐っこい笑顔で駆け寄る虎杖に恵の眉間には皺が寄った。恵の「げ。」は虎杖には聞こえていないか、効果がないか…。五条がにこにこと近寄りながら告げた言葉に、この人のせいか…と思わず睨んでしまった。
「だって賑やかな方がいいでしょ?良かれと思って。」
「授業と任務で十分です。ありがた迷惑。」
恵の明らかな拒否反応を物ともせずに虎杖が嬉し気に恵の部屋を覗いてきた。恵としては暗に別の部屋にしろ、とストレートに伝えたつもりだったのだが…虎杖の耳はどうなっているのか…。
「おほほぉ!ちゃんとしてるぅう。」
虎杖が恵をすり抜けて勝手に部屋を覗き込んできたと思ったら…ベッドの方を見てしまった。そこにはベッドの上に体を起こしたナマエが居る。そして二人の目が合う。
「……あれ?なんでここに……」
「っ!!だから!迷惑だっつーの!!」
「あ痛たっ!!」
やばい、見られた…と思った恵は思いっきり扉を閉めて虎杖の顔を扉ではさんだ、というよりもはや打撃を与えた。バチンといういい音がしたが恵は気にしないことにした。覗き込んできた虎杖 が悪い、と心の中で言い訳をした。
「ん?悠仁どした?」
「いや…部屋に……っ!!痛ぇぇぇ!!!」
素直に見たままの事を口走ろうとする虎杖に恵が今度は思いっきり足の甲を踏みつける。そしてごくごく小声で恵が「(いいから黙ってろ…)」と囁いたことでやっと虎杖も察した。
「な…ナンデモナイヨ…。」
「そう?まっ!いっか!それより明日はお出かけだよ!」
あまり気にしてない様子の五条はパンと一つ手を叩いてから気を取り直す様に二人に告げた。
「四人目の一年生を迎えに行きます!そういうことだから、恵。ナマエにも伝えておいてね。」
「…分かりました。」
そう言って踵を返した五条だったが、最後にこちらを振り向いてニヤっと笑った。
「まぁ、本人にも聞こえてるだろうけど。じゃ、また明日ねー。」
「「………。」」
ひらひらと手を振りながら去っていく五条に、二人とも何も言えなかった。
「なぁ、バレてんなら俺って足踏まれ損じゃね?」
「…うるさい。」
「——…。————。」
隣の部屋から話し声が聞こえてきて、恵はうっすらと瞼を持ち上げた。腕の中にはすやすやと寝息を立てるナマエ。そういえば一緒に寝ていたんだった、と今の状況を思い出した。少し青白かったナマエの顔色は眠っているので定かではないがだいぶ良くなっているような気がする。完全に安心しきって眠りについているナマエに対して、嬉しさ半分憎さ半分の気持ちだ。
「気の抜けた顔しやがって…。」
一緒に寝るのはまだ数えるほどだが、恵は毎回煩悩と戦いながら目を閉じていた。だからこそ呑気に眠っているナマエにため息が出た。とは言っても今の今まで恵も熟睡できていたので、ナマエを腕の中に入れるのが恵にとっても睡眠導入剤となっているのかもしれない。
と、そこまで考えて、隣から聞こえる話し声のことを思い出した。この声はおそらく五条と虎杖だ。スマホで時間を確認して、あぁ…虎杖が
(いや…待て!)
嫌な予感がした恵はガバッと起き上がった。まさかとは思うが…もしも虎杖が隣の部屋に住むことになればせっかくの静かな空間が台無しになってしまう。
「んん…めぐみ?」
恵が起き上がった振動でナマエも目を覚ましたようだ。眉をしかめながら片手で目をこすっている。
「あ、悪ぃ。…ちょっと外の様子見てくる。お前はもう少し寝てていいから。」
「んー?外…?」
「絶対部屋から出るなよ。面倒なことになるから。」
「??」
「いいから。絶対出てくるな。」
ナマエに念押しをした恵はもそもそとベッドから降りて入り口の扉へと向かった。扉を開けて外を覗くとちょうど五条と虎杖が隣の部屋から出てくるところだった。恵の嫌な予感は的中してしまった。そしてポロリと本音が零れた。
「げ。隣かよ。」
「おっ!伏黒!今度こそ元気そうだな!!」
「空室なんて他にいくらでもあったでしょ。」
人懐っこい笑顔で駆け寄る虎杖に恵の眉間には皺が寄った。恵の「げ。」は虎杖には聞こえていないか、効果がないか…。五条がにこにこと近寄りながら告げた言葉に、この人のせいか…と思わず睨んでしまった。
「だって賑やかな方がいいでしょ?良かれと思って。」
「授業と任務で十分です。ありがた迷惑。」
恵の明らかな拒否反応を物ともせずに虎杖が嬉し気に恵の部屋を覗いてきた。恵としては暗に別の部屋にしろ、とストレートに伝えたつもりだったのだが…虎杖の耳はどうなっているのか…。
「おほほぉ!ちゃんとしてるぅう。」
虎杖が恵をすり抜けて勝手に部屋を覗き込んできたと思ったら…ベッドの方を見てしまった。そこにはベッドの上に体を起こしたナマエが居る。そして二人の目が合う。
「……あれ?なんでここに……」
「っ!!だから!迷惑だっつーの!!」
「あ痛たっ!!」
やばい、見られた…と思った恵は思いっきり扉を閉めて虎杖の顔を扉ではさんだ、というよりもはや打撃を与えた。バチンといういい音がしたが恵は気にしないことにした。覗き込んできた
「ん?悠仁どした?」
「いや…部屋に……っ!!痛ぇぇぇ!!!」
素直に見たままの事を口走ろうとする虎杖に恵が今度は思いっきり足の甲を踏みつける。そしてごくごく小声で恵が「(いいから黙ってろ…)」と囁いたことでやっと虎杖も察した。
「な…ナンデモナイヨ…。」
「そう?まっ!いっか!それより明日はお出かけだよ!」
あまり気にしてない様子の五条はパンと一つ手を叩いてから気を取り直す様に二人に告げた。
「四人目の一年生を迎えに行きます!そういうことだから、恵。ナマエにも伝えておいてね。」
「…分かりました。」
そう言って踵を返した五条だったが、最後にこちらを振り向いてニヤっと笑った。
「まぁ、本人にも聞こえてるだろうけど。じゃ、また明日ねー。」
「「………。」」
ひらひらと手を振りながら去っていく五条に、二人とも何も言えなかった。
「なぁ、バレてんなら俺って足踏まれ損じゃね?」
「…うるさい。」