第二十七話 受肉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今 どういう状況?」
「「!!」」
立て続けに訳の分からない事が続いて頭の中がカオスと化していたナマエにとって、後ろから聞こえた声は、そして振り向いた時に視界に入った
「さと…悟くん!!」
「ナマエ〜これまた手酷くやられちゃって……せっかくのコスプレが台無しになってるよ。ぼろぼろじゃないの。」
「あの!あのね!!」
焦りに焦りまくったナマエに対して随分とのんびりしている五条。腰を抜かしているナマエの傍に寄りしゃがみ込んだ五条はナマエの頭に手を乗せてどうした?と優しげに問いかけた。
「あの!……指が!バァンてなって!呪霊も消えて!!ケヒヒって!!虎杖くんの声が!でも戻って!!」
(虎杖くんが指を食べちゃって、宿儺が受肉したと思ったら呪霊を一撃で倒して。でもその後に虎杖くんは元に戻ったかもしれなくて、もう良く分からないの!)
「……………………。」
ナマエと長い付き合いの五条でも、さすがに意味がわからない。五条が言葉を無くすのも当然だった。そんなナマエを放置してこれまで黙っていた恵が口を開いた。
「五条先生、どうしてここに…。」
「や!来る気なかったんだけどさ。…いやーボロボロだねー、2年の皆に見せよーっと!」
カシャカシャとボロボロになった恵の姿を写真に収める五条。こんな時に…と恵はイラッとしたがそれどころじゃないとグッと堪えた。
「さすがに特級呪物が行方不明となると上が五月蝿くてね。観光がてら馳せ参じたってわけ。――で?見つかった?……あと、ナマエの通訳もお願いしたいかな。」
その特級呪物を飲み込まれてしまった、などと。どう足掻いても上手い説明の仕方が分からなかった恵は気まずそうに黙るしかない。そんな中、申し訳なさそうに虎杖が小さく挙手をして名乗り出た。
「あのー……」
「?」
「ごめん、俺……それ食べちゃった。」
「………………マジ?」
「「マジ。」」
ケロリとした虎杖と、うんざりした様な恵の声が見事にハモった。さすがに予想外だったのか、少し考える様な素振りを見せた後に、五条は虎杖へと近づき……
「んー?……ははっ、本当だ。混じってるよ。ウケる。」
なんとも緊張感のない感想を漏らした。さすが五条と言うべきか。
「ははーん、やっと分かった。ナマエ。」
「……え?」
「この子が指を食べて宿儺が受肉した後にそれまで襲ってきてた呪霊を倒しちゃって、どうなる事かと思ったらこの子が自我を取り戻した。……これで合ってる?」
「……!うん!うんうん!!合ってる!」
なんという状況把握力とナマエの意味不明な説明に対する読解力。恵は、さすが特級…と絶対に違う解釈で五条の事をすごいと思った。さすがの恵も今の状況に少し頭をやられているのかもしれない。五条は虎杖に今の状況を確認するためにいくつか質問を投げかけた。
「体に異常は?」
「特に……」
「宿儺と代われるかい?」
「スクナ?」
「君が喰った呪いだよ。」
「あぁ、うん。多分できるけど……。」
そう言いながら大きく開いた両足に手を付いてグッグッと準備運動を始めた五条。恵とナマエは何を言い出すんだ、と懸念しかなかったが、大人しく見ていることしかできなかった。この男の余裕さが恐ろしい。
「じゃ、10秒だ。10秒経ったら戻っておいで。」
「え……でも。」
やっぱりか!と思った二人だったが、その後の五条のセリフに、もう任せるしかないと思った。
「大丈夫。僕、最強だから。」
これ持ってて、と五条が持っていた紙袋を恵に放り投げた。なんなんだと思い五条に質問した恵だったが、ナマエにはそれが何かすぐに分かった。
「喜久福じゃん!」
「そ!さっすがナマエ。」
「私がお土産に買って帰るよって言ったでしょ?」
「いやー、待ちきれなくてね。」
「……。(この人土産買ってから来やがった。人が死にかけてる時に……。)」
「土産じゃない。僕が帰りの新幹線で食べるんだ。」
信じられないと思っている恵の心の声が聞こえたのか。訂正する様に告げてきたが、宿儺と入れ替わったであろう虎杖が、五条の真後ろから飛びかかってきた。
「悟くん!後ろ!!」
――ザッ!
―――ブォ!!――ブォッ!!
まるで後ろが見えているかの様に軽々と避ける五条。その間にもいかに喜久福が素晴らしいかを力説している。宿儺と入れ替わった虎杖は完全に五条の掌の上だった。そしてスイスイとあしらいながら余裕の表情で宿儺に話しかけた。
「生徒の前なんでね。カッコつけさせてもらうよ。」
――バキィ!!!
――ダンっ!
宿儺を軽く往なして掌底を食らわせ地面に派手に転がす。が、宿儺もタフである。すぐに起き上がり次の攻撃を仕掛けてきた。フェンスを捻じ曲げ、地面を抉り、激しい攻防を繰り広げる。恵とナマエは五条の無限の後ろで庇われるのが精一杯だ。
「7」 「8」
――ドガガガガ!!
「9……そろそろかな。」
宿儺が思いっきり投げつけてきた瓦礫たちは、濛々と土埃を巻き上がらせたが、五条が指をクロスさせて広範囲に無限を展開させたことで五条はおろか、後ろの二人にもチリ一つ当たる事はなかった。
――ドクン!
グッと顔を顰めて少し苦しそうにした宿儺は、虎杖に押さえ込まれたのか。全身の紋様がすうっと引いていき……
「おっ!……大丈夫だった?」
――元の虎杖悠仁に戻った。