第二十四話 逢瀬
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翌朝。ナマエは頬に当たる感触に違和感を感じて目を覚ました。枕の柔らかさではない。むしろちょっと固い。それに何やらもぞもぞと動いている。うっすらと目を開くと、眼前には肌色。ぼんやりしていた視界がはっきりした時、それが自分にはない男性特有のごつごつした喉仏と、すっと通った顎だと分かった。
「ぅわっ。」
「あ…悪ぃ。起こしたか。」
「めぐみ…?」
視線を上げると、まだ少し眠そうな恵の目と合った。朝だからか。カーテンから差し込む光が恵の髪を照らして、少し青みがかって見えた。
「…おはよう。」
「あぁ、おはよ。」
頬に当たる違和感と固さは恵が腕枕をしてくれていたからだったようだ。腕枕が動いたのは、恵の微妙な動きに合わせて筋肉が動いたせいだろう。一晩中このままだったのなら、痛くなかっただろうか。申し訳ない気持ちもあるが、乙女の憧れ腕枕。まだしばらく堪能しようと頬を摺り寄せた。
「っ、あんま動くな。」
「あ、ごめん、痛かった?」
「いや、そうじゃないけど…」
朝日に照らされた恵の顔はなぜかちょっと照れていたけど穏やかで、昨夜の炎を宿したような瞳はどこにもない。…と、昨夜のことを思い出したナマエは一気に恥ずかしくなった。随分とあられもない声をあげてしまった気がする。ここ最近、どんどんと『エッチなこと』のレベルが上がっている。ついに昨日は裸の上半身を見られた上に…さんざん触れ合って、そして初めて果てるという経験をしてしまった。その時の感覚が少しだけよみがえって、下半身がぞくっとしてしまった。今の顔を見られたくなかったナマエは恵の胴体に抱き着いて胸元に顔を埋めた。
「…どした。」
「ううん。なんでもないよ…。」
「ふぅん。」
興味ないとでも言いそうな声で返事をした恵だったが、ナマエの頭を撫でるその手は、ひどく優しい。同じベッドで目を覚まして、その腕に抱きしめられて、撫でられて。今までだったら考えられなかった状況に、どこか大人に近づいたような気がした。それと同時に、なんだか悪いことをしているような気持ちにもなった。こんなこと、兄がもし知れば大変なことになる。だからこその罪悪感と、背徳感なのかもしれない。
「ナマエ、どっちがいい?」
「んぇ?何が?」
考え事をしていたせいか、変な声が出てしまった。さして気にしていない様子の恵は、ナマエの体を離してグルンと反対側にひっくり返した。
「うわわ。」
「これ、こっちのフレンチ出身シェフの店か、初めて牛タンたたきを出した店か。」
恵と同じ方向に向くと、スマホを操作していた。だから腕がもぞもぞ動いていたんだ…と今更思った。
「あ!牛タンのお店?」
「…行くんだろ。」
昨夜の学校での言葉を実行してくれていたらしい。恵に背を向けていることをいいことに、ナマエは顔がニヤけてしまった。でも、堪えきれず声が漏れた。
「んふふ。」
「……なんだよ。」
「んーん。なんでもないよ。えっとねー、こっちの、老舗感満載な方がいいな。やっぱ麦トロご飯食べなきゃ。」
「分かった。」
「ずんだ餅のお店は?」
「それは言うと思って先に調べた。牛タン屋から割と近いぽい。」
「さすが恵!ありがとう!」
「ん。……ふぁー……、ねみぃ。まだ時間あんだろ。もーちょい寝るぞ。」
「え?まだ寝るの?」
「………。」
ナマエに興奮して寝付けなかった…などとは言えない恵は、そのまま後ろからぎゅっと抱きしめて後頭部にキスをしてごまかした。
「え……無視?ていうか、寝た?」
「…………。」
「ねぇ、……って、んぁ。」
「……。」
寝ると言いながらもナマエの腹に手を這わせてだんだん胸元へと上っていく。気づけばうなじに唇を這わす恵。
「……ちょ、っと!」
「……ん。」
結局、昨夜と同じ状況になり、またシャワーを浴びるハメになったナマエに、恵は怒られてしまった。
が、真っ赤になり蕩けた顔をするナマエのお説教は、全く説得力がなかった。