第二十二話 夜行
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ナマエが任務に復帰してから少し経った六月のある日。いつものように任務を終えた二人は、五条から事務所への呼び出しが掛かった。そこで聞かされたのは、次の任務についてだった。
「りょーめんすくな?」
「おい、お前マジか。ついこの間習っただろうが。」
「……そうだっけ?」
「ハァ…。」
初耳としか思えない発音で言うナマエに、信じられないと言わんばかりの顔で息を吐いた恵。相変わらず通常運転である。
「この間の授業絶対聞いてないだろうなと思ってたけど、やっぱりか。ナマエー、呪術の筆記試験もあることちゃんと分かってる?」
「えへ。ごめんね悟くん。それで?そのりょーめんすくながどうしたの?」
全く悪びれていないナマエに呆れながらも五条は続けた。
「呪いの王『両面宿儺』の指。とある場所に保管されてるそれを、二人に回収に行ってもらいたいんだよね。」
「え゛。指ぃ!?なんでそんなもんがあるの?」
「ナマエ。後で教えてやるから一旦黙ってろ。……五条先生。ただの回収にわざわざ二人で向かうんですか?」
ナマエに合わせていたらいつまで経っても終わらない。そう判断した恵は、ナマエを黙らせて五条に先を促した。
「ただの回収と言えばそうなんだけどさ。封印が古くなって解けかかっちゃってんだよねー。特級呪物である宿儺の指の封印が万が一解けたりしたら……」
「…周りの呪いが引き寄せられるって事ですね。」
「そーゆーこと。いやー、持つべきものは優秀な生徒だね!」
パンっと両手を叩いてわざとらしく言う五条に少しイラッとした恵だったが、いちいち構っていても仕方がない。
「それで、どこに回収に行けばいいんですか?」
「仙台だよ。」
「遠っ。…さっきの口ぶりだと五条先生は一緒じゃないんですよね?誰が引率ですか?」
「今回は討伐任務じゃなくて呪物の回収だからね。二人だけで行ってきてよ。」
「仙台行けるの?やったぁ!牛タン!ずんだ!!喜久福!」
「ナマエ……」
東北への遠征と分かった瞬間、ナマエが飛び跳ねるように喜んだ。任務の詳細はまだよく分かっていないはずなのに。さっそく旅行気分だ。
「悟くん、喜久福のずんだ生クリーム、お土産に買って来るね!」
「お、ナマエわかってるねー!」
「…それで、いつからですか。」
「ん、今からだよ。」
「はぁ!?」
「夜には向こうに着くでしょ。新幹線の手配はできてるよ。学校に保管されてるようだから生徒たちが居ない時間帯の方がいいしね。」
「え!じゃあ急いで準備して来る!!」
言うや否やナマエはそれこそ風のように去っていった。
「くくっ。さっすがこういう時のナマエは順応が早いよね。」
「…今から行ったって今日中には帰ってこれませんよ。」
「そりゃそうだろうね。ホテルも手配してるから翌日帰ってきたんでいいよ。」
「……。」
泊まりがけの任務。当然ながら二人にとって初めてである。五条がニヤニヤしながら恵の肩に腕を回して寄りかかりながら耳元で囁いた。
「一応二部屋取ってあるから。一応、ね。」
「……。」
「いくら旅先だからって、あんまりナマエを無理させちゃダメだよ?あ、もちろん任務じゃなくて〝夜〟の方ね。」
語尾にハートをつけて内緒話をするようにコソコソと話す五条。どうせ気付かれているだろうとは思っていたがやはりだった。それでも、揶揄われること必至と思っていたのに五条はこれまで一度も言って来ることは無かった。
「…教師の発言とは思えないんですが。」
「まぁまぁ、僕と恵の仲じゃーん。」
「嘘くさ。」
「――ま、どういう心境の変化かは知らないけど、腹。括ったんだろ?」
「……。」
「ナマエに手を出すことの意味、分かってるんだよね?」
「――分かってますよ。」
おちゃらけた雰囲気から一転。五条にしては珍しく、真面目なトーンで話されるので。恵も潔く認めることにした。
「僕はどんなことがあっても味方だよ。――ナマエのね。」
「ナマエのかよ。」
「当然でしょ。だからさ、ナマエを傷つけるようなことがあったら……例え恵でも。許さないよ。」
「…………はい。」
こうして、東京から新幹線で約3時間。恵とナマエは、宮城県仙台市に降り立った。着いたときにはすでに20時を過ぎていた。