第十二話 限限
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「軽井沢ぁ!?」
「避暑地でバカンスかよ。」
「ここからだと二時間はかかるぞ。」
裃条が高専を出てからの時間を考えると、現地に着いてからそんなに時間は立っていないようだ。ナマエが現時点で無事な理由もそれだろう。しかし…
「二時間…手籠めにするには十分な時間だな。」
「おい、真希…もう少しやんわりとだな…」
「事実だろうが!さっさとしねぇとナマエが!!」
声を荒げる真希の言葉にグッと拳に力を入れた恵だったが、こうやって悩んでいる時間すら勿体ない。それに。
「そこはどうにでもなります。こっちには五条先生が居ますから。現地にトべばいい。場所さえわかれば…ですが。」
「恵…六眼使いが荒くない?」
「そんなこと今はどうでもいいでしょ。」
そう、場所さえわかればどうにでもなる。だが、軽井沢といっても広い。適当な場所にトんでもしょうがない。
「翔に連絡するよ。恵、僕から伝えたんでいいよね?」
「はい…お願いします。」
「伊地知、お前は軽井沢に裃条家所有の物件がないか調べて。わざわざそこを選んでるってことは絶対何かあるはずだから。マジ早で。」
「は、はいっ!!」
伊地知に指示を出しながら五条はスマホを取り出し部屋の外へと向かった。外で話すようだ。伊地知もスマホとパソコンで何かを調べはじめた。
(早くしないと…。今この瞬間もナマエは…)
今、自分が何もできないという事実が恵を苦しめる。一秒でも早くナマエの元へ向かいたいのに。固く握りしめた拳で思いっきり机を叩き付けた。
「くそ…。」
「恵…。」
その後、誰も声を発することの無くなった会議室では伊地知がパソコンを叩く音と、壁にかかっている振り子時計がカチカチと時を刻む音だけが響いた。
___しばらくして、五条が会議室へと戻ってきた。
「五条先生…ミョウジさんは…」
「とりあえず、今わかっている事はすべて話したよ。あっちはあっちで裃条家に何らかのアクションを起こすだろうね。」
「あの人はナマエの救出に向かわないんですか…そもそもはあの人の…」
「恵。」
「…っ!」
「その話は後だ。伊地知、裃条の別荘が軽井沢に一軒だけあるらしい。おそらく二人はそこに居る。」
「別荘…!すぐに確認します!」
「恵、もうすぐだ。すぐに動けるようにしときな。お前がナマエを助けるんだ。」
「……はい。」
五条に諭されて大人しくなった恵をポンポンとあやす様に肩に手を置いたパンダが、控えめに五条に尋ねた。
「なぁ、悟。俺らは?」
「現地には僕と恵の二人で行くよ。大人数で行っても仕方ないしね。パンダたちはナマエが帰ってきた時にゆっくり休めるよう準備しといて。念の為に硝子にも待機してもらえると助かるかな。」
「…分かったよ。」
「五条さん!分かりました!!別荘の住所!!」
「おっけー。行くよ、恵。」
「はいっ!」
___
観光地として栄える温泉街から少し離れた閑静な場所に、その建物はあった。川沿いに位置するそれは、別荘というには少し場違いな建物だ。ゴテゴテした装飾が目立ち、目がチカチカして落ち着かない。幸いというか、周りに他の建物はなく、少々派手に動いても問題なさそうだ。というか、誰もこの近くには建てたくないだろうな…と恵は思った。
「ここ…ですか。」
「そうだね。…趣味わるっ。」
「別荘なんて所詮は金持ちの道楽でしょ。そいつのセンスがこうやって反映されるんですね。」
「裃条家、あんまり金回り良くないって聞いてたんだけどね。…って、今はどうでもいいか。」
「表側と裏側から同時に行きますか?」
「それよりも僕の〝赫〟で吹っ飛ばせば早くない?」
「アンタ…バカですか。中にはナマエも居るんですよ。」
「だから、ある程度力抑えて…」
「殴りますよ。」
このやり取りの時間も惜しい。そのまま五条を無視して、別荘の入り口に近付いた。玄関の扉にそっと手を伸ばしてノブを回すとそんなり開いた。誰も来るはずがないと思ってカギを掛けていなかったらしい。手間が省けた。
「五条先生、先生の目なら二人がどの部屋にいるかわかりますか?」
「分かるよー。………二階の角部屋だね。ナニしてるかまでは分かんないけど。」
「……入ります。」
極力音を立てないように、そして気配も絶って、二人は二階の角部屋を目指した。