第七十九話 横槍
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まるで恵を庇うように東堂の正面に立ちふさがったのは、医務室から異変を感じて駆け付けたナマエだった。
「あぁ?誰だ、オマエは。」
「誰だっていいでしょ。質問に答えて。」
直後、バチバチとナマエの全身が放電を始め、その身体を雷が覆った。少年院で恵が
「おい、ナマエ……ゲホッ」
「恵は動かないで。」
「っ。」
こちらを一切見ることなくぴしゃりと発されたナマエの一言は、まるで狗巻の呪言を受けた時のように恵を金縛りにした。
「その呪力……雷……そうか。オマエが身内に呪われたっていう一年か。」
「……。」
「くっくっ……面白い。」
刊行令が敷かれているはずの一件を、なぜ目の前の男は知っているのか。いや、何も不思議なことではない。人の口に戸は立てられないのだから。
しかし、ナマエはグッと眉間に皺を寄せた。人ごとだと思って“面白い”などと言う目の前の男を許せなかったから。
「……あなた、誰。さっきまで真依ちゃんと一緒に居た人よね。」
「ん?なんだ見てたのか?まぁいい。俺は京都三年、東堂葵だ。ナマエ、とか言ったか。次はオマエが相手になれ!」
「遠慮……します。」
三年と分かり、ナマエの中のなけなしの冷静さが少しだけ顔を出し、言葉遣いが改まった。
「乙骨の代わり足りうるのかわざわざ東京に出向いてみたもののつまらん奴ばかりで退屈していたところだ。」
「……は?」
「オマエは多少退屈凌ぎにはなりそうだからな。」
「そんな理由で……」
「お?」
「そんなくだらない理由で、恵をここまでボロカスにした……んですか?」
ナマエにまで手を出そうとする東堂に食ってかかりそうになった恵だったが、ナマエに“ボロカス”と言われてしまいグッと口を噤んだ。そしてナマエを覆っていた雷はさらに威力を増していき、そのうちバリバリと地面を削る勢いになるまで膨らんだ。
「ほぉ……中々の呪力量だ。」
「……」
「死んだオマエの兄とは、確か……ミョウジ翔、だったな。」
「……」
「彼奴の実力については
「…………」
人の死を、それも身内の死を……軽々しく口にした東堂に、ずっと黙ってはいるがナマエの理性の糸は今にもキレそうだった。だが、ナマエの背後には怪我をして血塗れの恵が居る。どうにか穏便に納めて一刻も早く家入に診せなければ。その思いだけでどうにか自分を抑え込んでいた。
「なんだ?やらないのか?やらないなら、後ろに隠してる伏黒を出せ。まだ本当の実力を出していないようだからな、少しは楽しめるだろ。せめてこの溜まりに溜まったストレスだけでもどうにかしてもらわんとな。」
「っ!」
____プチン。
この期に及んでさらに恵を痛めつけるつもりの東堂に、かろうじて繋がっていたナマエの理性の糸は簡単に千切れてしまった。
「……後で文句言わないでくださいね。まぁ、終わった後にまだその減らず口が聞ければ、ですけど。」
「待て!ナマエ!!」
「ッハ!!オマエ、俺に勝つつもりか!ますます面白い!」
「負けるつもりで挑発に乗るバカがどこにいるってのよ。」
「くっくっくっ……違いない。さぁ、楽しませてくれよ!ミョウジナマエ!!!!」
「ナマエ!やめろ!!!」
頭に血が上り完全に戦る気を出してしまったナマエには、恵の制止は残念ながら届かなかった。まっすぐに東堂を見据えたナマエは右手の人差し指と中指を胸の前で突き立て、そして呪いを込めた。
「__降神呪法、『風神』『雷じ__』」
“動くな”
だが、ナマエの術式は不発に終わった。そして東堂も、強制的に静止させられた。
「何!やっ…………てんのーーー!!!」
制止した東堂は思いっきり頬を殴られ、そして数メートル後方に飛ばされた。呪言で強制的に止められた状態で不意打ちの攻撃をうけたにも関わらず両足で踏ん張って耐えた東堂は流石と言うべきだろう。
そんな東堂を後退させたのは__やっとナマエに追いついた棘と、真希に言われ駆け付けたパンダだった。