第七十八話 挑発
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恵は内心辟易としていた。何がどうなってこのパイナップル頭とよりにもよって女の好みの話をすることになるのか。現実逃避したい気持ちでいっぱいだった。
「なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか。」
「そうよ。ムッツリにはハードル高いわよ。」
「オマエは黙ってろ。ただでさえ意味わかんねー状況が余計ややこしくなる。」
*
既に日々のルーティンになりつつある自販機パシリ。今日は釘崎も同行していた。最初こそ文句の一つや二つも溢していたがそれすら面倒になるほど回数をこなしたせいで気づけばいつの間にか諦めていた。
「なんで東京 いるんですか。禪院先輩。」
「あっやっぱり?雰囲気近いわよね。姉妹?」
「嫌だなぁ伏黒君、それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで。」
「コイツらが乙骨と三年の代打……ね。」
そんな中背後から声をかけられ、振り返るとそこには見知らぬ男と真希の双子の妹である禪院真依。真依と一緒にいるという事は隣の男は同じ京都の高専生だろうか。なぜ東京 にいるのかは真依の言葉で分かった。何かしらの用事でやってきた京都の学長に付いてきたようだった。同じ高専生という事は同世代のはず。それにしてはガタイが良く妙な威圧感と謎の存在感がある男だと恵は思った。
「アナタ達が心配で学長に付いてきちゃった。同級生が死んだんでしょう?辛かった?___それとも、そうでもなかった?」
「……何が言いたいんですか?」
「いいのよ、言いづらいことってあるわよね。代わりに言ってあげる。“器”なんて聞こえはいいけど要は半分呪いの化け物でしょ。そんな穢らわしい人外が隣で不躾に“呪術師”を名乗って、虫唾が走っていたのよね?死んでせいせいしたんじゃない?」
「「……………………」」
「あぁ、それから……聞いたわよぉ。ナマエちゃん、あの子も大変そうね。よりにもよってお兄さんのせいでナマエちゃんまで化け物になっちゃうだなんて。そんな子と幼馴染みなんて……伏黒君がかわいそう。」
「アンタ……最低ね。」
「……“禪院”先輩。言っていい事と悪い事ってのがあるんですよ。わざとですか。」
「やだわ伏黒君、そんな怖い顔しないで?」
「真依、どうでもいい話を広げるな。」
真依の癪に触る物言いに(一応)先輩ながら隠すことなく苛立ちを露わにしていると、隣のパイナップル頭がそれを遮りとんでもないことを言い出したのだ。自分たちが乙骨と三年の代わりに足りうるのかを知りたいと。つまり来月の姉妹校交流戦のことを言っているのだろうが、それは別にいい。問題はここからだ。
「伏黒…とか言ったか。」
「どんな女がタイプだ!!」
*
ビリビリとシャツを破り捨てながら話すこの男は三年の東堂葵という名らしい。東堂のセリフに一瞬、時が止まったが破り捨てたあと帰りどうすんだよと割と冷静な自分がいる事にも恵は密かに驚く。
性癖がどうのこうのと言っているがつまりは女のタイプを聞いて恵を見定めるつもりのようだ。
(何だコレ大喜利かよ。マジで意味わかんねー。)
恵は今すぐここから立ち去りたい気持ちに駆られた。だが、釘崎は丸腰。釘崎の様子だと割と呑気に構えており危機感も無さそうだ。揉め事はできるだけ避けたいところである。
意味は未だに分からないままだが東堂の問いに何かしら答えないと立ち去ることすらできない。
何か答えなければ。そんな恵の頭に過ったのは――
“人を許せないのは悪いことじゃないよ
それも恵の優しさでしょう?”
“誰かに言われたからじゃない
これは私が自分で決めたことなの”
いまだ目覚めることのない義姉と、今日も己と戦っているであろう、幼馴染の表情 だった。
「……別に。好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません。」
「んふふ。」
「悪くない答えね。巨乳好きとかぬかしたら私が殺してたわ。あ、あの子は別に巨乳じゃなかったか。」
「うるせぇ。」
それを聞いた女子二人は恵の回答をお気に召した様子だったが、肝心の東堂は違った。
「やっぱりだ。退屈だよ……伏黒。」
そう言った東堂は何故か泣いていたがその目と恵の目が合った瞬間。“マズイ”と思った。咄嗟に構えを取ったが間に合わなかった。
――ドガッ!!
いや、間に合った。ガードの意味なく吹っ飛ばされてしまっただけだ。恵の身体はいとも簡単に軽く10以上はメートルは吹っ飛んだ。
「伏黒!!」
思わず駆け寄ろうとした釘崎だがそれは叶わない。後ろから抱きつくように真依にホールドされてしまったから。
「あーあ、伏黒君かわいそっ!あの子と一緒に二級術師として入学した天才も一級の東堂先輩相手じゃただの一年生だもん。後で慰めてあげよーっと。」
「……へーぇ。アンタ伏黒 がタイプなんだ。ここにも物好きが居たわ。でも残念だったわね。伏黒 でもアンタじゃ全然役不足。同じ二級の“あの子”くらいの“揺るがない人間性”を身につけてから出直しなさいよ。まぁその腐った性格じゃ無理だろうけど?」
「……言ってくれるじゃない。」
「それに。似てるって思ったけど全然だわ。真希さんの方が100倍美人。寝不足か?毛穴開いてんぞ。」
煽る気満々の真依に対して先程の虎杖とナマエへの侮辱の分もしっかり3倍返しで煽り返した釘崎。その言葉にカチンときたらしい真依は己の武器を取り出し釘崎に突きつけた。
それは撃鉄を起こしたリボルバー式の銃だった。ジャギっという嫌な音が釘崎の耳に届いた。
「……口の利き方、教えてあげる。」
「なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか。」
「そうよ。ムッツリにはハードル高いわよ。」
「オマエは黙ってろ。ただでさえ意味わかんねー状況が余計ややこしくなる。」
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既に日々のルーティンになりつつある自販機パシリ。今日は釘崎も同行していた。最初こそ文句の一つや二つも溢していたがそれすら面倒になるほど回数をこなしたせいで気づけばいつの間にか諦めていた。
「なんで
「あっやっぱり?雰囲気近いわよね。姉妹?」
「嫌だなぁ伏黒君、それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで。」
「コイツらが乙骨と三年の代打……ね。」
そんな中背後から声をかけられ、振り返るとそこには見知らぬ男と真希の双子の妹である禪院真依。真依と一緒にいるという事は隣の男は同じ京都の高専生だろうか。なぜ
「アナタ達が心配で学長に付いてきちゃった。同級生が死んだんでしょう?辛かった?___それとも、そうでもなかった?」
「……何が言いたいんですか?」
「いいのよ、言いづらいことってあるわよね。代わりに言ってあげる。“器”なんて聞こえはいいけど要は半分呪いの化け物でしょ。そんな穢らわしい人外が隣で不躾に“呪術師”を名乗って、虫唾が走っていたのよね?死んでせいせいしたんじゃない?」
「「……………………」」
「あぁ、それから……聞いたわよぉ。ナマエちゃん、あの子も大変そうね。よりにもよってお兄さんのせいでナマエちゃんまで化け物になっちゃうだなんて。そんな子と幼馴染みなんて……伏黒君がかわいそう。」
「アンタ……最低ね。」
「……“禪院”先輩。言っていい事と悪い事ってのがあるんですよ。わざとですか。」
「やだわ伏黒君、そんな怖い顔しないで?」
「真依、どうでもいい話を広げるな。」
真依の癪に触る物言いに(一応)先輩ながら隠すことなく苛立ちを露わにしていると、隣のパイナップル頭がそれを遮りとんでもないことを言い出したのだ。自分たちが乙骨と三年の代わりに足りうるのかを知りたいと。つまり来月の姉妹校交流戦のことを言っているのだろうが、それは別にいい。問題はここからだ。
「伏黒…とか言ったか。」
「どんな女がタイプだ!!」
*
ビリビリとシャツを破り捨てながら話すこの男は三年の東堂葵という名らしい。東堂のセリフに一瞬、時が止まったが破り捨てたあと帰りどうすんだよと割と冷静な自分がいる事にも恵は密かに驚く。
性癖がどうのこうのと言っているがつまりは女のタイプを聞いて恵を見定めるつもりのようだ。
(何だコレ大喜利かよ。マジで意味わかんねー。)
恵は今すぐここから立ち去りたい気持ちに駆られた。だが、釘崎は丸腰。釘崎の様子だと割と呑気に構えており危機感も無さそうだ。揉め事はできるだけ避けたいところである。
意味は未だに分からないままだが東堂の問いに何かしら答えないと立ち去ることすらできない。
何か答えなければ。そんな恵の頭に過ったのは――
“人を許せないのは悪いことじゃないよ
それも恵の優しさでしょう?”
“誰かに言われたからじゃない
これは私が自分で決めたことなの”
いまだ目覚めることのない義姉と、今日も己と戦っているであろう、幼馴染の
「……別に。好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません。」
「んふふ。」
「悪くない答えね。巨乳好きとかぬかしたら私が殺してたわ。あ、あの子は別に巨乳じゃなかったか。」
「うるせぇ。」
それを聞いた女子二人は恵の回答をお気に召した様子だったが、肝心の東堂は違った。
「やっぱりだ。退屈だよ……伏黒。」
そう言った東堂は何故か泣いていたがその目と恵の目が合った瞬間。“マズイ”と思った。咄嗟に構えを取ったが間に合わなかった。
――ドガッ!!
いや、間に合った。ガードの意味なく吹っ飛ばされてしまっただけだ。恵の身体はいとも簡単に軽く10以上はメートルは吹っ飛んだ。
「伏黒!!」
思わず駆け寄ろうとした釘崎だがそれは叶わない。後ろから抱きつくように真依にホールドされてしまったから。
「あーあ、伏黒君かわいそっ!あの子と一緒に二級術師として入学した天才も一級の東堂先輩相手じゃただの一年生だもん。後で慰めてあげよーっと。」
「……へーぇ。アンタ
「……言ってくれるじゃない。」
「それに。似てるって思ったけど全然だわ。真希さんの方が100倍美人。寝不足か?毛穴開いてんぞ。」
煽る気満々の真依に対して先程の虎杖とナマエへの侮辱の分もしっかり3倍返しで煽り返した釘崎。その言葉にカチンときたらしい真依は己の武器を取り出し釘崎に突きつけた。
それは撃鉄を起こしたリボルバー式の銃だった。ジャギっという嫌な音が釘崎の耳に届いた。
「……口の利き方、教えてあげる。」