第七十七話 知覚
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「いたたたたた!!痛い痛い痛い!硝子ちゃん!もーちょい……っつー!優しく〰!!」
「喚くな。十分優しくしてるだろ。」
「嘘ばっかり!痛い〰〰!!」
「た……たかなー……」
一方のナマエと棘。ナマエが少々ハッスルしてしまったため家入の元で治療を受けていた。反転術式で治されるかと思いきや、消毒液のしみ込んだ脱脂綿をそこそこの強さで傷口に押し付けられている。肩は脱臼していたので先ほどゴキっと力技で入れられたばかりだ。無理やりハメたようにも見えるが、当然プロなので問題はない。術式じゃないのかと文句を言うナマエと、冷静に消毒を続ける家入。それをハラハラしながら見守る棘。家入はどうやらご立腹の様子だ。
「ったく。生傷ばっか作ってきやがって。私が居るからって怪我をしていいわけじゃないんだ。肩だって脱臼で済んで良かったがヘタしたら折れてもおかしくなかったんだぞ。罰として術式はナシだ。脱臼以外ただの擦り傷だしな。」
「だって棘くんが避けまくるから……」
「こんぶっ!?」
「人のせいにすんな。」
「ぁ痛っ!」
膝の傷にガーゼを充てて、これで終いと言うようにペシンとはたかれた。仮にも女なんだから肌には気を遣えという家入の言葉はナマエには右から左で、恨めし気に家入を見ていた。
「気を付けてるよ……一応は。」
「テンション上がって狗巻に向かって呪力纏ったまま突っ込んだんだろうが。どこが気を付けてるんだ。狗巻ももう少しナマエに厳しくしなさい。言うこと聞かないなら呪言使って問答無用でオトせ。」
「めんたいこ……」
野薔薇と話してからナマエは本来のナマエに戻りつつあった。野薔薇に話したことで何かが解決したわけではない。だが、吐き出したことでどこかスッキリとした気持ちになったのは確かだ。元来、どうでもいいことはペラペラとしゃべるくせに肝心なことは『嫌われたくない』という感情が先行して抱え込んでしまう性質のナマエ。『言ってもいいんだ』と気付けてからはどこか身体すら軽くなった気がしていた。
それが今日のように行動まで軽くなってしまう結果に繋がったのだが。
それでも、以前のようながむしゃらでどこか痛々しい感じではなくなっているので、家入はナマエを叱りながらもどこか安堵していた。
「でも、ありがと硝子ちゃん。」
「術式できれいさっぱり治したらまたこのあとすぐ同じことするだろうしな。怪我してる状態の方が傷の痛みで無茶しないだろ。」
「えー……ひどい……硝子ちゃんのドS。」
「確かにMではないな。」
「おかか……」
未成年相手に何言ってんだと二人の会話を聞きながら棘は肩を落とすしかなかった。そんな棘の様子に気付かないナマエはけろっとした顔で気になっていたことを家入に聞いた。
「あ、ねぇねぇ硝子ちゃん。今日ってさぁ、京都校の人来てたりする?」
「……なぜ?」
確かに、今日は京都から楽巖寺学長がこちらに来ている。交流会の打ち合わせで夜蛾と会う予定だ。だが、ナマエは知らされていないはずだ。
「なんか知らない呪力の人が高専に居るなーって。でもその中に真依ちゃんの呪力があったから京都校の人たちかな?って。でも交流会ってまだまだ先だよね?遊びに来たのかな??」
「すじこ??」
「ナマエ……分かるのか?」
「え?うん。えーっと、真依ちゃん入れて4人?かな。」
家入と棘はナマエの言葉に一瞬固まってしまった。術式を発動しているならともかく、ニュートラル状態の術師の存在に気付くなど、それこそ五条レベルの呪力知覚だったからだ。これもナマエの呪力の覚醒によるものだろうか。もしくは兄である翔の呪いの影響かもしれない。ナマエに詳しく聞いてみると、一度感じたことのある呪力はごくごく小さいものでも大抵識別ができるようになったらしい。
「全く……その内ナマエも特級にでも昇格するんじゃないか?」
「しゃけ。」
「え゛。やだよそんなの。それに悟くんと同列になんてなれるわけないじゃん。化け物級だよ?」
きっぱりと否定するナマエは五条を尊敬しているのかしていないのか。家入は苦笑いでそれもそうだな、と答えた。だが、目の前のナマエはというと、今現在は呪力が凪いでいるが内にある総量は家入から見ても底が見えない深さを感じていた。
(最近の若者はホント……末恐ろしいな。)
いつか五条が言っていた。「これからの世代は『特級』なんて物差しでは到底測れない」。全くその通りだと思った。五条の夢もあながち夢物語ではなくなりそうだ、と家入は遠い日 に想いを馳せた。
「…硝子ちゃん。ごめん、もう行くね。」
「どうした突然。」
「………」
家入が考え事をしている間に、先程までのぽわぽわした雰囲気から一転。ナマエの表情が変わった。西の方角をまるで睨みつけるようにしている。
「おい、ナマエ…」
「なんで高専の中 で殺気なんかが飛ぶのかな。」
「…は?」
家入が聞き返そうとしたその時、遠くで建物でも崩壊したかと思うような轟音が響いた。方角は、ナマエが見据えている西。
「なんだ?今の音は…」
「…ちょっと行ってくる。恵の呪力が……揺れてる。」
「は?おい!ナマエ!」
「たかな!」
ナマエは言うや否や家入の静止も聞かずにそのまま医務室を飛び出して行ってしまった。取り残された二人には何が何だか分からなかったために一拍遅れをとったがすぐに家入が叫んだ。
「狗巻!すぐにナマエを追ってくれ!」
「っ!しゃけ!」
「喚くな。十分優しくしてるだろ。」
「嘘ばっかり!痛い〰〰!!」
「た……たかなー……」
一方のナマエと棘。ナマエが少々ハッスルしてしまったため家入の元で治療を受けていた。反転術式で治されるかと思いきや、消毒液のしみ込んだ脱脂綿をそこそこの強さで傷口に押し付けられている。肩は脱臼していたので先ほどゴキっと力技で入れられたばかりだ。無理やりハメたようにも見えるが、当然プロなので問題はない。術式じゃないのかと文句を言うナマエと、冷静に消毒を続ける家入。それをハラハラしながら見守る棘。家入はどうやらご立腹の様子だ。
「ったく。生傷ばっか作ってきやがって。私が居るからって怪我をしていいわけじゃないんだ。肩だって脱臼で済んで良かったがヘタしたら折れてもおかしくなかったんだぞ。罰として術式はナシだ。脱臼以外ただの擦り傷だしな。」
「だって棘くんが避けまくるから……」
「こんぶっ!?」
「人のせいにすんな。」
「ぁ痛っ!」
膝の傷にガーゼを充てて、これで終いと言うようにペシンとはたかれた。仮にも女なんだから肌には気を遣えという家入の言葉はナマエには右から左で、恨めし気に家入を見ていた。
「気を付けてるよ……一応は。」
「テンション上がって狗巻に向かって呪力纏ったまま突っ込んだんだろうが。どこが気を付けてるんだ。狗巻ももう少しナマエに厳しくしなさい。言うこと聞かないなら呪言使って問答無用でオトせ。」
「めんたいこ……」
野薔薇と話してからナマエは本来のナマエに戻りつつあった。野薔薇に話したことで何かが解決したわけではない。だが、吐き出したことでどこかスッキリとした気持ちになったのは確かだ。元来、どうでもいいことはペラペラとしゃべるくせに肝心なことは『嫌われたくない』という感情が先行して抱え込んでしまう性質のナマエ。『言ってもいいんだ』と気付けてからはどこか身体すら軽くなった気がしていた。
それが今日のように行動まで軽くなってしまう結果に繋がったのだが。
それでも、以前のようながむしゃらでどこか痛々しい感じではなくなっているので、家入はナマエを叱りながらもどこか安堵していた。
「でも、ありがと硝子ちゃん。」
「術式できれいさっぱり治したらまたこのあとすぐ同じことするだろうしな。怪我してる状態の方が傷の痛みで無茶しないだろ。」
「えー……ひどい……硝子ちゃんのドS。」
「確かにMではないな。」
「おかか……」
未成年相手に何言ってんだと二人の会話を聞きながら棘は肩を落とすしかなかった。そんな棘の様子に気付かないナマエはけろっとした顔で気になっていたことを家入に聞いた。
「あ、ねぇねぇ硝子ちゃん。今日ってさぁ、京都校の人来てたりする?」
「……なぜ?」
確かに、今日は京都から楽巖寺学長がこちらに来ている。交流会の打ち合わせで夜蛾と会う予定だ。だが、ナマエは知らされていないはずだ。
「なんか知らない呪力の人が高専に居るなーって。でもその中に真依ちゃんの呪力があったから京都校の人たちかな?って。でも交流会ってまだまだ先だよね?遊びに来たのかな??」
「すじこ??」
「ナマエ……分かるのか?」
「え?うん。えーっと、真依ちゃん入れて4人?かな。」
家入と棘はナマエの言葉に一瞬固まってしまった。術式を発動しているならともかく、ニュートラル状態の術師の存在に気付くなど、それこそ五条レベルの呪力知覚だったからだ。これもナマエの呪力の覚醒によるものだろうか。もしくは兄である翔の呪いの影響かもしれない。ナマエに詳しく聞いてみると、一度感じたことのある呪力はごくごく小さいものでも大抵識別ができるようになったらしい。
「全く……その内ナマエも特級にでも昇格するんじゃないか?」
「しゃけ。」
「え゛。やだよそんなの。それに悟くんと同列になんてなれるわけないじゃん。化け物級だよ?」
きっぱりと否定するナマエは五条を尊敬しているのかしていないのか。家入は苦笑いでそれもそうだな、と答えた。だが、目の前のナマエはというと、今現在は呪力が凪いでいるが内にある総量は家入から見ても底が見えない深さを感じていた。
(最近の若者はホント……末恐ろしいな。)
いつか五条が言っていた。「これからの世代は『特級』なんて物差しでは到底測れない」。全くその通りだと思った。五条の夢もあながち夢物語ではなくなりそうだ、と家入は
「…硝子ちゃん。ごめん、もう行くね。」
「どうした突然。」
「………」
家入が考え事をしている間に、先程までのぽわぽわした雰囲気から一転。ナマエの表情が変わった。西の方角をまるで睨みつけるようにしている。
「おい、ナマエ…」
「なんで
「…は?」
家入が聞き返そうとしたその時、遠くで建物でも崩壊したかと思うような轟音が響いた。方角は、ナマエが見据えている西。
「なんだ?今の音は…」
「…ちょっと行ってくる。恵の呪力が……揺れてる。」
「は?おい!ナマエ!」
「たかな!」
ナマエは言うや否や家入の静止も聞かずにそのまま医務室を飛び出して行ってしまった。取り残された二人には何が何だか分からなかったために一拍遅れをとったがすぐに家入が叫んだ。
「狗巻!すぐにナマエを追ってくれ!」
「っ!しゃけ!」