第七十三話 理論
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それから2日後、ナマエの解呪と相伝習得の為の修行が始まった。両親はナマエの決意を聞いて初めは悲しそうな顔を見せたが「ナマエが一度決めたことは必ず最後までやり遂げる強い子だということは高専入学の件でよくわかっているよ。…ありがとう。」そう言って認めてもらえた。
今日は修行初日。場所は先日も使った第三練武場。今後修行はほとんどこの場で行うことになるだろう。ヘタな場所で行うと建物崩壊では済まないかもしれない。そして今日の相手は五条、ただ一人だった。七海は相変わらず任務で、五条から聞かされていたもう一人も、今日は授業の為居ない。
「え?棘くんも?」
「そ、お願いしておいたからこれから時々参加すると思うよ。」
棘もメンバーに選ばれた理由。その1つは彼には“呪言”があるから。五条がいないときにナマエの術式が暴走しても今の棘なら止められるという五条の判断だった。そしてもう1つは、棘自身もナマエの呪力を抑えることで本人の修行になるから。普段の授業では体幹を鍛えたり知識を得ることはあったとしても、なかなか術式の強化をする機会がないのだ。仲間相手に呪言を掛ける訳にも行かず、どうしても任務での実践でしか術式を使うことがなかった。ナマエに呪言を掛けることに始めは否定的だった棘も、ナマエの為だからと言われ渋々といった感じで了承した。
「五条センセー!」
「ハイ!ミョウジサン!」
小学生が授業中に質問するときの様に大きく挙手をするナマエに、どこから持ってきたのか先端が指の形をした伸縮する指示棒(バラエティ番組でよく見かけるアレ)でビシッと指しながら応える五条。傍から見ればふざけている様に見えても、二人は至って真面目である。ツッコミ役が居ないとどうしてもこうなってしまうのだ。
「そもそも!呪いって普通はどうやって解くんですか!」
「んー、い~~~い質問ですねぇ。」
ここに恵か七海が居れば『授業ごっこはもういいですから真面目にやってください』と強制終了させていたことだろう。だが、ふざけている様に見えて、会話の内容はちゃんと修行に関わることなのだ。ツッコミ不在のこのやり取りにちょっと飽きたのか、指示棒をシャコシャコと伸縮させながらもようやく五条は普通に話し始めた。
「まずはそこから説明しようか。人に憑いた呪いをどうにかする方法、二通りあるんだけど分かる?」
「えーと…“祓う”か“解く”…?」
「せーいかい!で、今回ナマエは“解く”をしないといけないんだけどね。」
「うんうん!」
普段座学が嫌で嫌で仕方がないナマエだが、自分に必要と感じたことに関してはちゃんと話を聞くようだ。少し前に両面宿儺について授業で話した時がいい例で。いざ呪物の回収の任務を依頼した際に「リョーメンスクナ?」とまるで初めましてな様子のナマエには流石にがっかりしたものだった。五条は普段からこうやって真面目に聞いてくれれば…と思いつつも説明を続けた。
「“祓う”であれば名の通り呪力で消しちゃえばいいわけよ。片手でヒョイってね。でも翔ほどの呪力になるとそれはほぼ無理に等しい。だから通常の解呪手順ってなると、何千何万もの呪力の結び目を読んで1つずつほどいていくんだ。被呪者本人にしかできない地道な作業だよ。」
「地道……まぁそうなるよね。でもほどくって実際どうやるの?」
「そこで!これの登場でっす!!」
ごそごそと持ってきていたスーツケースをヤンキーのように座り込んで開け始めた五条。なんでここに?この後出張?と思っていたナマエだったが、やっと理由が分かった。じゃじゃーん!という五条の効果音付きでスーツケースの中から顔を出したのは、他でもないナマエ愛用の呪具だった。
「あー!!私の鉄扇!!」
「そ!これを使いまーす。」
「少年院でなくしたと思ってたの!悟くんが見つけてくれたの!?」
五条から鉄扇を受け取ったナマエはとても大事そうにぎゅうっと抱きしめた。生得領域の餌食となったあの第二宿舎は、領域が消えたのと同時に建物も崩壊したと聞いていた。だから正直ほとんど諦めていた。あの時の土埃や血痕も一切見当たらないそれは、きっと誰かがきれいに磨いてくれたんだろうと思った。
「いーや、鉄扇を探しに行って、見つけて持って帰ってきたのは……恵だよ。」
「え……」
「崩壊した宿舎の瓦礫の中から鉄扇に付いてたナマエの残穢を頼りに玉犬と一緒に掘り起こしたんだって。恵が見つけたことナマエには言うなって釘刺されてたけど、まいっか。」
五条のこういう所が恵から白い目を向けられる所以なのだが、当の五条本人は全く気にしていない。気付いていないのではく、気にしていないのだ。五条から聞かされたナマエは、鉄扇を胸に抱いたまま眉を下げて今にも泣きそうな顔をしていた。先日あれだけ凛とした表情を見せていたのに。あの時のナマエはどこへ行ったのやら。
「恵に……ありがとうって伝えて…ください…」
少し頬を染めながら話すナマエはいじらしく、恋する少女そのもので。でもそれを諦めると決めたのもナマエ本人で。そんなナマエを見て五条はどうしてももどかしい気持ちになるのだ。だから___
「やだよ。」
「え!なんで?」
「それ言ったら僕がナマエにバラしちゃったことが恵にバレちゃうじゃん。」
「えぇー…勝手にバラしたの悟くんじゃん。」
「それに、僕はナマエの伝言係じゃないよ?この間はさすがに協力したけどさ。」
「う゛。」
あの時は、ナマエの心情を優先して恵への伝言を代わりに伝えたが、それを聞かされた時の恵の様子を知っている五条としてはとても居た堪れない気持ちになったものだ。普段からどちらかと言わずとも最初 からナマエ派の五条だが、恵だって幼いころからずっと見守ってきた憎たらしくもありそして可愛いくもある存在なのだ。たまには恵の味方をしたって罰は当たらないだろう。
「直接会って言えなくてもさ、電話でもメールでもアプリでも方法はいくらでもあるでしょ。スマホ世代め。ありがとうは自分で言いなさい。わかった?」
「…………。」
「わ か っ た ?」
「…考えとく。」
これは言わないヤツだな、この頑固娘が。そう思った五条だったが、あまり無理強いする訳にも行かず、ここまでにした。もしかしたら翔の解呪よりも難易度が高いかもしれない、ため息交じりにそう思った五条だった。
今日は修行初日。場所は先日も使った第三練武場。今後修行はほとんどこの場で行うことになるだろう。ヘタな場所で行うと建物崩壊では済まないかもしれない。そして今日の相手は五条、ただ一人だった。七海は相変わらず任務で、五条から聞かされていたもう一人も、今日は授業の為居ない。
「え?棘くんも?」
「そ、お願いしておいたからこれから時々参加すると思うよ。」
棘もメンバーに選ばれた理由。その1つは彼には“呪言”があるから。五条がいないときにナマエの術式が暴走しても今の棘なら止められるという五条の判断だった。そしてもう1つは、棘自身もナマエの呪力を抑えることで本人の修行になるから。普段の授業では体幹を鍛えたり知識を得ることはあったとしても、なかなか術式の強化をする機会がないのだ。仲間相手に呪言を掛ける訳にも行かず、どうしても任務での実践でしか術式を使うことがなかった。ナマエに呪言を掛けることに始めは否定的だった棘も、ナマエの為だからと言われ渋々といった感じで了承した。
「五条センセー!」
「ハイ!ミョウジサン!」
小学生が授業中に質問するときの様に大きく挙手をするナマエに、どこから持ってきたのか先端が指の形をした伸縮する指示棒(バラエティ番組でよく見かけるアレ)でビシッと指しながら応える五条。傍から見ればふざけている様に見えても、二人は至って真面目である。ツッコミ役が居ないとどうしてもこうなってしまうのだ。
「そもそも!呪いって普通はどうやって解くんですか!」
「んー、い~~~い質問ですねぇ。」
ここに恵か七海が居れば『授業ごっこはもういいですから真面目にやってください』と強制終了させていたことだろう。だが、ふざけている様に見えて、会話の内容はちゃんと修行に関わることなのだ。ツッコミ不在のこのやり取りにちょっと飽きたのか、指示棒をシャコシャコと伸縮させながらもようやく五条は普通に話し始めた。
「まずはそこから説明しようか。人に憑いた呪いをどうにかする方法、二通りあるんだけど分かる?」
「えーと…“祓う”か“解く”…?」
「せーいかい!で、今回ナマエは“解く”をしないといけないんだけどね。」
「うんうん!」
普段座学が嫌で嫌で仕方がないナマエだが、自分に必要と感じたことに関してはちゃんと話を聞くようだ。少し前に両面宿儺について授業で話した時がいい例で。いざ呪物の回収の任務を依頼した際に「リョーメンスクナ?」とまるで初めましてな様子のナマエには流石にがっかりしたものだった。五条は普段からこうやって真面目に聞いてくれれば…と思いつつも説明を続けた。
「“祓う”であれば名の通り呪力で消しちゃえばいいわけよ。片手でヒョイってね。でも翔ほどの呪力になるとそれはほぼ無理に等しい。だから通常の解呪手順ってなると、何千何万もの呪力の結び目を読んで1つずつほどいていくんだ。被呪者本人にしかできない地道な作業だよ。」
「地道……まぁそうなるよね。でもほどくって実際どうやるの?」
「そこで!これの登場でっす!!」
ごそごそと持ってきていたスーツケースをヤンキーのように座り込んで開け始めた五条。なんでここに?この後出張?と思っていたナマエだったが、やっと理由が分かった。じゃじゃーん!という五条の効果音付きでスーツケースの中から顔を出したのは、他でもないナマエ愛用の呪具だった。
「あー!!私の鉄扇!!」
「そ!これを使いまーす。」
「少年院でなくしたと思ってたの!悟くんが見つけてくれたの!?」
五条から鉄扇を受け取ったナマエはとても大事そうにぎゅうっと抱きしめた。生得領域の餌食となったあの第二宿舎は、領域が消えたのと同時に建物も崩壊したと聞いていた。だから正直ほとんど諦めていた。あの時の土埃や血痕も一切見当たらないそれは、きっと誰かがきれいに磨いてくれたんだろうと思った。
「いーや、鉄扇を探しに行って、見つけて持って帰ってきたのは……恵だよ。」
「え……」
「崩壊した宿舎の瓦礫の中から鉄扇に付いてたナマエの残穢を頼りに玉犬と一緒に掘り起こしたんだって。恵が見つけたことナマエには言うなって釘刺されてたけど、まいっか。」
五条のこういう所が恵から白い目を向けられる所以なのだが、当の五条本人は全く気にしていない。気付いていないのではく、気にしていないのだ。五条から聞かされたナマエは、鉄扇を胸に抱いたまま眉を下げて今にも泣きそうな顔をしていた。先日あれだけ凛とした表情を見せていたのに。あの時のナマエはどこへ行ったのやら。
「恵に……ありがとうって伝えて…ください…」
少し頬を染めながら話すナマエはいじらしく、恋する少女そのもので。でもそれを諦めると決めたのもナマエ本人で。そんなナマエを見て五条はどうしてももどかしい気持ちになるのだ。だから___
「やだよ。」
「え!なんで?」
「それ言ったら僕がナマエにバラしちゃったことが恵にバレちゃうじゃん。」
「えぇー…勝手にバラしたの悟くんじゃん。」
「それに、僕はナマエの伝言係じゃないよ?この間はさすがに協力したけどさ。」
「う゛。」
あの時は、ナマエの心情を優先して恵への伝言を代わりに伝えたが、それを聞かされた時の恵の様子を知っている五条としてはとても居た堪れない気持ちになったものだ。普段からどちらかと言わずとも
「直接会って言えなくてもさ、電話でもメールでもアプリでも方法はいくらでもあるでしょ。スマホ世代め。ありがとうは自分で言いなさい。わかった?」
「…………。」
「わ か っ た ?」
「…考えとく。」
これは言わないヤツだな、この頑固娘が。そう思った五条だったが、あまり無理強いする訳にも行かず、ここまでにした。もしかしたら翔の解呪よりも難易度が高いかもしれない、ため息交じりにそう思った五条だった。