第四話 組手
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グラウンドのすぐ側の階段に腰掛け膝の上で頬杖をつきボーッとするナマエと、そのすぐ側で片手を腰に当て不機嫌そうな顔で佇む恵。
「ねー。集合時間間違えた?」
「いや合ってる。」
ちゃんと時間通りに着いた2人だったが、五条が来る気配が全くない。夜蛾曰く『責めるほどでもない遅刻』の7〜8分は、10分ほど前に過ぎた。つまり、既に20分近く待たされている。
「授業だし体術って言ってたしスマホ持ってきてないよ。連絡取りようもないし。」
「あと少し待って来なかったら事務所行ってみるか。」
そーだねー、と気のない返事を恵に返した所で階段の上から声がした。
「あのバカなら来ねぇよ。」
後手を付いてそのまま声のした方を仰向けに振り返ると、ナマエの目には数少ない一年上の先輩術師、禪院真希が逆さまに写った。
「真希ちゃん!」
「真希先輩と呼べ!」
真希の小言など聞こえていないのか、そのまま体を器用に捻らせて真希の方へ駆け寄った。
「他のみんなは?」
「もうすぐ来るよ。……ほら。」
真希が顎でクイッと指した方向を見ると確かにこちらに向かって歩いてくる面々が見えたナマエは、これでもかと目を輝かせてそちらに向かって駆け出した。
(…またか!)
恵はナマエの目的がすぐに分かり急いで階段を駆け上がったが間に合いそうもない。
咄嗟に一番最適な人物(?)に向かって声を張り上げた。
「パンダ先輩!!」
「お?……あぁ、なるほどな。任せとけ!」
恵の意図することが分かったパンダは真っ直ぐ突き進むナマエの前に瞬時に立ち塞がり、その巨体で受け止めた。
「わぶっ!……あたたたた、あれ?パンダくん?」
「ふうっ。セーーーフ!」
パンダの腹で顔面を強打したナマエは、鼻の頭をさすりながらその巨体を見上げた。
「危ないなぁ。なんでいきなり出てきたの?」
「危ないのはオマエだ。棘に飛びかかろうとするからだろ?」
そう、ナマエの目的は呪言師の末裔、おにぎりの具しか語彙のない、狗巻棘その人だった。ナマエにとって高専の人たちは皆大好きな人ばかりだが、中でも棘に対しての好意が飛び抜けていた。
「高菜っ。」
パンダの後ろからひょこっと顔を出した棘を見たナマエはヘラヘラと笑いながら棘に手を振った。
「えへへ……棘くん今日もかわいい。」
恵と真希が遅れて着いた時には、ナマエはパンダに拘束された状態ながら気持ち悪い笑い方の上に顔が緩んでだらしなくなっていた。
(間に合ったか。)
これが、ナマエが棘の事を大好きな理由だ。柔らかそうな髪にクリっとした大きくキレイな瞳、おにぎりの具で話す所はほんわかするし、口元を隠している姿もたまらないらしい。それなのに呪言を使う時に見せるあの一瞬が、ナマエにとってカッコ良すぎて、本人曰くギャップ萌えなんだそうだ。
まだ二人が入学する前に時々見学(遊び)に来ていた時、何度か同じやり取りがあった為それは周知の事実だった。だからこそ恵は「またか」と思ったし、パンダも恵のたった一言ですぐに意味を理解する事ができた。
「ナマエー、棘だって男の子なんだぞ?かわいいとか言っちゃダメなんだぞ?」
「しゃけしゃけ!」
「うー…ごめんなさい。」
一応は謝りながらも、ぷりぷり怒ってる棘くんもかわいい…とナマエは全く反省していなかった。
三人の会話を聞きながら、真希が心底呆れた様にため息を零しながら言った。
「恵、お前も大変だな。」
「俺は別に…。」
「よく言うよ。あんだけ必死に叫んどいて。」
「…あれは、狗巻先輩にナマエが迷惑かけたらいけないと思っただけです。」
「ふーん。ま、どうでもいいけどな。」
(どうでもいいなら放っておいて欲しい。)
「そんなことより。五条先生が来ないってどういうことですか。」
「五条先生は急な任務が入ったらしいよ。だから今日は僕達と合同演習だね。」
「乙骨先輩。」
居たんすか、という言葉は既のところで飲み込んだ。恵が二年生の中で唯一尊敬できる存在、特級術師の乙骨憂太は「入学おめでとう」と二年の誰も言ってくれなかった祝いの言葉と共ににこやかな笑みでこちらに歩いてきた。乙骨の登場にナマエもやっと気付いた様で。
「あ!憂太先輩!居たんだね!」
「(…バカ。)おい、ナマエ。」
「あはは!相変わらずだねぇ。里香ちゃんが居るし気配を出来るだけ消す癖がついちゃったみたいなんだ。」
なるほど、それでか。決して乙骨の存在感の問題ではないという事が分かった恵は、こっそりホッとした。
「ナマエー、なんで憂太だけ先輩呼びなんだよ。私らの事も先輩って呼べよ。」
「あれ?なんでだろう。……先輩っぽいから?」
「うちらが先輩っぽくないって言ってんのか?」
「あ痛っ!」
どこまでも正直者のナマエはポコンと真希の持つ棍棒で頭を小突かれた。
「さて。さっき憂太が言った通り悟のバカは来ねぇからうちらと近接やるぞ。揃っていきなり二級で入学したエリートさんたちのお手並み拝見だな。」
((怖っ。))
棍棒を肩に乗せて不敵な笑みで挑戦的な言葉を吐く真希に、二人揃って嫌だな……とこれからの時間を思いげんなりした。
「あ!じゃあ私棘くんと近接する!」
「「「ダメだ。」」」
「なんで!?」
そのまま真希に首根っこを掴まれながらグラウンドに連れて行かれるナマエを恵はやれやれと思いながら見送った。
「……大変だね。」
「すじこ。」
ポンっと両肩にそれぞれの手が乗り、目をやると二人ともなんとも言えない顔をしていた。
「乙骨先輩、狗巻先輩…憐れまないでください。」
「ねー。集合時間間違えた?」
「いや合ってる。」
ちゃんと時間通りに着いた2人だったが、五条が来る気配が全くない。夜蛾曰く『責めるほどでもない遅刻』の7〜8分は、10分ほど前に過ぎた。つまり、既に20分近く待たされている。
「授業だし体術って言ってたしスマホ持ってきてないよ。連絡取りようもないし。」
「あと少し待って来なかったら事務所行ってみるか。」
そーだねー、と気のない返事を恵に返した所で階段の上から声がした。
「あのバカなら来ねぇよ。」
後手を付いてそのまま声のした方を仰向けに振り返ると、ナマエの目には数少ない一年上の先輩術師、禪院真希が逆さまに写った。
「真希ちゃん!」
「真希先輩と呼べ!」
真希の小言など聞こえていないのか、そのまま体を器用に捻らせて真希の方へ駆け寄った。
「他のみんなは?」
「もうすぐ来るよ。……ほら。」
真希が顎でクイッと指した方向を見ると確かにこちらに向かって歩いてくる面々が見えたナマエは、これでもかと目を輝かせてそちらに向かって駆け出した。
(…またか!)
恵はナマエの目的がすぐに分かり急いで階段を駆け上がったが間に合いそうもない。
咄嗟に一番最適な人物(?)に向かって声を張り上げた。
「パンダ先輩!!」
「お?……あぁ、なるほどな。任せとけ!」
恵の意図することが分かったパンダは真っ直ぐ突き進むナマエの前に瞬時に立ち塞がり、その巨体で受け止めた。
「わぶっ!……あたたたた、あれ?パンダくん?」
「ふうっ。セーーーフ!」
パンダの腹で顔面を強打したナマエは、鼻の頭をさすりながらその巨体を見上げた。
「危ないなぁ。なんでいきなり出てきたの?」
「危ないのはオマエだ。棘に飛びかかろうとするからだろ?」
そう、ナマエの目的は呪言師の末裔、おにぎりの具しか語彙のない、狗巻棘その人だった。ナマエにとって高専の人たちは皆大好きな人ばかりだが、中でも棘に対しての好意が飛び抜けていた。
「高菜っ。」
パンダの後ろからひょこっと顔を出した棘を見たナマエはヘラヘラと笑いながら棘に手を振った。
「えへへ……棘くん今日もかわいい。」
恵と真希が遅れて着いた時には、ナマエはパンダに拘束された状態ながら気持ち悪い笑い方の上に顔が緩んでだらしなくなっていた。
(間に合ったか。)
これが、ナマエが棘の事を大好きな理由だ。柔らかそうな髪にクリっとした大きくキレイな瞳、おにぎりの具で話す所はほんわかするし、口元を隠している姿もたまらないらしい。それなのに呪言を使う時に見せるあの一瞬が、ナマエにとってカッコ良すぎて、本人曰くギャップ萌えなんだそうだ。
まだ二人が入学する前に時々見学(遊び)に来ていた時、何度か同じやり取りがあった為それは周知の事実だった。だからこそ恵は「またか」と思ったし、パンダも恵のたった一言ですぐに意味を理解する事ができた。
「ナマエー、棘だって男の子なんだぞ?かわいいとか言っちゃダメなんだぞ?」
「しゃけしゃけ!」
「うー…ごめんなさい。」
一応は謝りながらも、ぷりぷり怒ってる棘くんもかわいい…とナマエは全く反省していなかった。
三人の会話を聞きながら、真希が心底呆れた様にため息を零しながら言った。
「恵、お前も大変だな。」
「俺は別に…。」
「よく言うよ。あんだけ必死に叫んどいて。」
「…あれは、狗巻先輩にナマエが迷惑かけたらいけないと思っただけです。」
「ふーん。ま、どうでもいいけどな。」
(どうでもいいなら放っておいて欲しい。)
「そんなことより。五条先生が来ないってどういうことですか。」
「五条先生は急な任務が入ったらしいよ。だから今日は僕達と合同演習だね。」
「乙骨先輩。」
居たんすか、という言葉は既のところで飲み込んだ。恵が二年生の中で唯一尊敬できる存在、特級術師の乙骨憂太は「入学おめでとう」と二年の誰も言ってくれなかった祝いの言葉と共ににこやかな笑みでこちらに歩いてきた。乙骨の登場にナマエもやっと気付いた様で。
「あ!憂太先輩!居たんだね!」
「(…バカ。)おい、ナマエ。」
「あはは!相変わらずだねぇ。里香ちゃんが居るし気配を出来るだけ消す癖がついちゃったみたいなんだ。」
なるほど、それでか。決して乙骨の存在感の問題ではないという事が分かった恵は、こっそりホッとした。
「ナマエー、なんで憂太だけ先輩呼びなんだよ。私らの事も先輩って呼べよ。」
「あれ?なんでだろう。……先輩っぽいから?」
「うちらが先輩っぽくないって言ってんのか?」
「あ痛っ!」
どこまでも正直者のナマエはポコンと真希の持つ棍棒で頭を小突かれた。
「さて。さっき憂太が言った通り悟のバカは来ねぇからうちらと近接やるぞ。揃っていきなり二級で入学したエリートさんたちのお手並み拝見だな。」
((怖っ。))
棍棒を肩に乗せて不敵な笑みで挑戦的な言葉を吐く真希に、二人揃って嫌だな……とこれからの時間を思いげんなりした。
「あ!じゃあ私棘くんと近接する!」
「「「ダメだ。」」」
「なんで!?」
そのまま真希に首根っこを掴まれながらグラウンドに連れて行かれるナマエを恵はやれやれと思いながら見送った。
「……大変だね。」
「すじこ。」
ポンっと両肩にそれぞれの手が乗り、目をやると二人ともなんとも言えない顔をしていた。
「乙骨先輩、狗巻先輩…憐れまないでください。」