第六十六話 青天
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時刻は午前10時。講堂前の石造りの階段で恵と野薔薇が待機していた。野薔薇は一晩しっかり体を休めたことで完全復活していた。そして今は二人とも五条を待っているのだが、分かっていたことだが、来ない。
「伏黒。ナマエの具合ってどうなの?」
「命に別状はないらしい。けど…」
「お兄さん、の事よね。」
「…………。」
野薔薇が五条から聞かされているのは、ナマエの兄、翔があの場で殉職したということだけ。昨日ナマエが気を失うように眠ったあとに五条は、恵にナマエの被呪の件は現時点では他言無用だと告げた。また、そのことを知っている人についても伝えた。
『なんで狗巻先輩が…』
『棘には狗巻家から伝わったみたいだよ。』
『あー…それで…』
『恵も心配だろうけど、ナマエの件は一旦僕に預けてくれるかな。悪いようには絶対しないから、任せてよ!』
『はい…お願いします。』
『素直な恵なんて何年振り!?』
『殴りますよ。』
『冗談だって!ゴメンゴメン。あとさ、事が落ち着くまで___』
「_い!おい伏黒!聞いてんの!?」
「……あ?」
「だから、あれからナマエには会ったのかって聞いてんのよ!」
「……いや。」
「は?なんで?」
『事が落ち着くまで、ナマエのことはそっとしておいてやってよ。オマエも今はキツイだろ?少しの間だけだからさ。』
「……家の事で忙しいだろ。」
「なっさけない!そんなんだからアンタはダメなのよ!どうせ拗れてるからって気まずいだけなんでしょ!」
「…違ぇよ。」
(そんな理由じゃない。会いたくても、近づきたくても。…触れたくても。無理なんだから。)
恵の様子に思うところがあったのか、野薔薇はそれ以上突っ込むのをやめた。そして、聞きたいと思っていたもう一つの話をすることにした。
「ねぇ伏黒。」
「何だよ。」
「……虎杖の、最期に……立ち会ったんでしょ。」
「…………あぁ。」
「なんか、言ってた?」
「……あぁ。」
恵は、あの時のことを思い出しながら、虎杖の最期の言葉を野薔薇に伝えた。
「…………。」
それを聞いた野薔薇は、しばらく黙ったままだった。午前中特有の澄んだ空気が通り抜けた気がした。昨日の天気が嘘のように、今日は明らかな晴天だった。そして次に野薔薇が発した言葉は、まさしく彼女らしいものだった。
「長生きしろよって…自分が死んでりゃ世話ないわよ。」
「……」
「…アンタ、仲間が死ぬの初めて?」
「同級生 は初めてだ。」
「ふーん。その割に平気そうね。」
「オマエもな。」
「当然でしょ。会って二週間かそこらよ。そんな男が死んで泣き喚く程、チョロい女じゃないのよ。」
「……。」
彼女らしいいつもの強気な発言は、言葉とは裏腹に少し揺れていて。視線をよこした恵には、頬杖を付きそっぽを向いている野薔薇の表情こそ分からなかったが。その口元は、震えながら嚙み締められていた。素直じゃない同級生にこれ以上何かを言ってしまうのは不躾だと思ったのか、話をそらしてやることにした。
「暑いな」
「………そうね。夏服はまだかしら。」
澄んでいたはずの空気は、時間が経つにつれだんだんと熱気を帯びてきた。いつもは微妙に遅れてくる五条も今日はまだ来ない。
「伏黒。ナマエの具合ってどうなの?」
「命に別状はないらしい。けど…」
「お兄さん、の事よね。」
「…………。」
野薔薇が五条から聞かされているのは、ナマエの兄、翔があの場で殉職したということだけ。昨日ナマエが気を失うように眠ったあとに五条は、恵にナマエの被呪の件は現時点では他言無用だと告げた。また、そのことを知っている人についても伝えた。
『なんで狗巻先輩が…』
『棘には狗巻家から伝わったみたいだよ。』
『あー…それで…』
『恵も心配だろうけど、ナマエの件は一旦僕に預けてくれるかな。悪いようには絶対しないから、任せてよ!』
『はい…お願いします。』
『素直な恵なんて何年振り!?』
『殴りますよ。』
『冗談だって!ゴメンゴメン。あとさ、事が落ち着くまで___』
「_い!おい伏黒!聞いてんの!?」
「……あ?」
「だから、あれからナマエには会ったのかって聞いてんのよ!」
「……いや。」
「は?なんで?」
『事が落ち着くまで、ナマエのことはそっとしておいてやってよ。オマエも今はキツイだろ?少しの間だけだからさ。』
「……家の事で忙しいだろ。」
「なっさけない!そんなんだからアンタはダメなのよ!どうせ拗れてるからって気まずいだけなんでしょ!」
「…違ぇよ。」
(そんな理由じゃない。会いたくても、近づきたくても。…触れたくても。無理なんだから。)
恵の様子に思うところがあったのか、野薔薇はそれ以上突っ込むのをやめた。そして、聞きたいと思っていたもう一つの話をすることにした。
「ねぇ伏黒。」
「何だよ。」
「……虎杖の、最期に……立ち会ったんでしょ。」
「…………あぁ。」
「なんか、言ってた?」
「……あぁ。」
恵は、あの時のことを思い出しながら、虎杖の最期の言葉を野薔薇に伝えた。
「…………。」
それを聞いた野薔薇は、しばらく黙ったままだった。午前中特有の澄んだ空気が通り抜けた気がした。昨日の天気が嘘のように、今日は明らかな晴天だった。そして次に野薔薇が発した言葉は、まさしく彼女らしいものだった。
「長生きしろよって…自分が死んでりゃ世話ないわよ。」
「……」
「…アンタ、仲間が死ぬの初めて?」
「
「ふーん。その割に平気そうね。」
「オマエもな。」
「当然でしょ。会って二週間かそこらよ。そんな男が死んで泣き喚く程、チョロい女じゃないのよ。」
「……。」
彼女らしいいつもの強気な発言は、言葉とは裏腹に少し揺れていて。視線をよこした恵には、頬杖を付きそっぽを向いている野薔薇の表情こそ分からなかったが。その口元は、震えながら嚙み締められていた。素直じゃない同級生にこれ以上何かを言ってしまうのは不躾だと思ったのか、話をそらしてやることにした。
「暑いな」
「………そうね。夏服はまだかしら。」
澄んでいたはずの空気は、時間が経つにつれだんだんと熱気を帯びてきた。いつもは微妙に遅れてくる五条も今日はまだ来ない。