第六十四話 告知
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目が覚めてだんだんと覚醒してきたナマエは、まさに困惑していた。今の自身の状況が何もわからなかったから。今自分が寝ているベッドが高専の医務室のものであることは、周りを見渡して理解できた。だがそれ以外が何もわからないのだ。そもそもなぜベッドに、しかも医務室で横になっているのか。多少頭痛がするものの、それはきっと目を覚ましたばかりだからだろう。体はどこも痛くないし、怪我をしているという実感もない。だがなぜか着衣は制服でも私服でもなく病衣になっていて、いつのまに着替えさせられたんだと、着替えないといけない状態になったのだろうかと、さらに困惑した。
「よ……っこいしょ」
「すじこっ。」
「あ、ありがと。」
年寄りじみた掛け声で起き上がろうとしたら棘が背中を支えて起こしてくれた。いや、そもそもなぜここに棘がいるのか?ナマエの謎は深まるばかりだ。
「ねぇ棘くん。私って、怪我かなにかしたの?いや、どこも痛くはないんだけどね。なんでここで寝てたの?」
「………」
ナマエは軽い気持ちで棘に質問しただけなのだが、当の棘はというと。一度こちらを見た後、悲しそうな顔をして目を伏せてしまった。それから、何かを言いたげにこちらを見ては逸らす、見ては逸らすを繰り返すのだ。ナマエはもしかしたら棘との任務で何か迷惑をかけてしまったのかもしれないと思った。
「ねぇ、任務で何か…………え?…ちょっと待って…任務?………………あれ?私……………」
「め、めんたいこ!」
頭の中に霧がかかったかのようにどこかモヤモヤとするものを感じたナマエが何かを思い出しそうになった時、棘は慌てたように待ってくれと言った。そして、五条先生に連絡する、と。
なぜ五条にわざわざ連絡するのか。いや、担任なんだから何もおかしくはないが。ますますナマエはわけが分からなくなった。そして同時に胸がザワザワとしてきて、ナマエは胸元の病衣をぎゅっと握りしめた。
「なんで…?何か、あったの…?」
「おかか…」
棘はそのまま何も話さなくなった。そうこうしているうちにすぐに医務室の扉がノックされた。どうやら五条はすぐ近くにいたらしい。そして、医務室へとやってきたのは五条だけではなかった。はじめに視界に移ったのは医務室の主、家入だった。
「ナマエ、起きたのか。体は?なにも違和感はないか?」
「硝子ちゃん、うん、なんともないよ。悟くん…と、え?建人くんまで!?え?何事!?」
家入に五条に七海。この三人がわざわざ自分の元へ足を運んできたという事実だけでも十分驚きだったのに、ナマエはさらに輪をかけて驚くことになる。七海が後方に向かって「こちらです、どうぞ。」と声を掛けた。五条、七海の高身長組にすっかり隠れていたようだが、さらに来客は居たらしい。七海の後ろから顔を出したのは……
「ナマエ…」
「…え?…父様?母様まで!?」
そう、本来であれば呪術高専 では絶対に会うはずのない、ナマエの父と母であった。目を見開くナマエを余所に、母が駆け寄ってきて、ナマエをぎゅっと抱きしめた。抱きしめられる直前に見た母の顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
「…母様?どうしたの?」
「うぅっ…!ナマエ……ナマエっ!!」
ただただ泣きじゃくる母にナマエはどうしたらいいのかさっぱりわからなかった。そして、ゆっくりと近づいてきた父。父も目が赤くなっていて、既に一度泣いたのかもしれない、と思った。
「父様…?」
「ナマエ…何も…覚えていないのか?」
「なに…が?」
「ナマエ、翔の…」
「ま!待ってくれ!五条君!」
普段温厚な父が突然声を張り上げたことで、ナマエは驚いて肩が跳ねてしまったが、その肩ごと泣きじゃくる母にぎゅうぎゅうと締め付けられる。わけが分からないまま、とりあえずナマエは母の背を摩ることにした。
「待つって…まさかミョウジさん。ナマエが覚えてないことを利用してこのまま黙っているつもりですか?」
「そんなつもりはない…だがいくらなんでも…急すぎる。もう少し落ち着いてから…」
「急も何も…ナマエは当事者ですよ。早い方がいい。それに、この状況だ。ナマエだって何かあったことくらいもう分かってる。…だよね?ナマエ。」
「待て、五条。…言葉は選べよ。」
「分かってるさ。」
五条が誰かを敬称で呼ぶのも、敬語で話しているのも初めて聞いたかもしれない。なんてどうでもいいことで一瞬意識が逸れたが、五条の言う通りだった。そして、家入の言葉から何かよくないことが起こったんだということも理解した。でも、この頭のモヤモヤの理由をちゃんと知りたかった。
「うん…。悟くん、教えて。硝子ちゃん、大丈夫だから。」
「ナマエ…」
覚悟を決めたような様子のナマエを見た父は、「そうか…」とだけ発してそのまま俯いてしまった。
「教えると言ってもね、ナマエ。実のところ僕は見てはいないんだよ。」
「え?」
「見たのは……ナマエ。おまえ自身だ。」
「……え?」
「今日、ナマエ達一年生は…英集少年院に緊急招集されただろ?」
「えいしゅう……」
(しょうねん……いん………)
その言葉を聞いた瞬間、ナマエの目の前が弾けるように真っ白になった。そして、なぜこんな大事なことを今まで忘れていたのか。ナマエの脳内に濁流のような勢いで記憶が流れ込んできた。
『『受刑在院者第二宿舎』。5名の在院者が現在もそこに受胎とともに取り残されており、受胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に成ると予想されます。』
『伊地知くん、今回は私も同行させてもらうよ。』
『…兄様?どうして…』
『正は、息子は大丈夫なんでしょうか……』
『伏黒、釘崎、ミョウジ………………助けるぞ。』
『自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする!』
『じゃあ!なんで!俺は助けたんだよ!!』
『僕の名前は風磨。僕自身が台風そのものだと思った方がいい。』
『来るな!!!』
『兄様!!!』
『兄様を…ゲホッ、こんなに゛!傷つけ…たこと…絶対…ゆるざない゛……!!!』
『ナマエ……お前はもう…動くな。』
『に…いさ………』
「よ……っこいしょ」
「すじこっ。」
「あ、ありがと。」
年寄りじみた掛け声で起き上がろうとしたら棘が背中を支えて起こしてくれた。いや、そもそもなぜここに棘がいるのか?ナマエの謎は深まるばかりだ。
「ねぇ棘くん。私って、怪我かなにかしたの?いや、どこも痛くはないんだけどね。なんでここで寝てたの?」
「………」
ナマエは軽い気持ちで棘に質問しただけなのだが、当の棘はというと。一度こちらを見た後、悲しそうな顔をして目を伏せてしまった。それから、何かを言いたげにこちらを見ては逸らす、見ては逸らすを繰り返すのだ。ナマエはもしかしたら棘との任務で何か迷惑をかけてしまったのかもしれないと思った。
「ねぇ、任務で何か…………え?…ちょっと待って…任務?………………あれ?私……………」
「め、めんたいこ!」
頭の中に霧がかかったかのようにどこかモヤモヤとするものを感じたナマエが何かを思い出しそうになった時、棘は慌てたように待ってくれと言った。そして、五条先生に連絡する、と。
なぜ五条にわざわざ連絡するのか。いや、担任なんだから何もおかしくはないが。ますますナマエはわけが分からなくなった。そして同時に胸がザワザワとしてきて、ナマエは胸元の病衣をぎゅっと握りしめた。
「なんで…?何か、あったの…?」
「おかか…」
棘はそのまま何も話さなくなった。そうこうしているうちにすぐに医務室の扉がノックされた。どうやら五条はすぐ近くにいたらしい。そして、医務室へとやってきたのは五条だけではなかった。はじめに視界に移ったのは医務室の主、家入だった。
「ナマエ、起きたのか。体は?なにも違和感はないか?」
「硝子ちゃん、うん、なんともないよ。悟くん…と、え?建人くんまで!?え?何事!?」
家入に五条に七海。この三人がわざわざ自分の元へ足を運んできたという事実だけでも十分驚きだったのに、ナマエはさらに輪をかけて驚くことになる。七海が後方に向かって「こちらです、どうぞ。」と声を掛けた。五条、七海の高身長組にすっかり隠れていたようだが、さらに来客は居たらしい。七海の後ろから顔を出したのは……
「ナマエ…」
「…え?…父様?母様まで!?」
そう、本来であれば
「…母様?どうしたの?」
「うぅっ…!ナマエ……ナマエっ!!」
ただただ泣きじゃくる母にナマエはどうしたらいいのかさっぱりわからなかった。そして、ゆっくりと近づいてきた父。父も目が赤くなっていて、既に一度泣いたのかもしれない、と思った。
「父様…?」
「ナマエ…何も…覚えていないのか?」
「なに…が?」
「ナマエ、翔の…」
「ま!待ってくれ!五条君!」
普段温厚な父が突然声を張り上げたことで、ナマエは驚いて肩が跳ねてしまったが、その肩ごと泣きじゃくる母にぎゅうぎゅうと締め付けられる。わけが分からないまま、とりあえずナマエは母の背を摩ることにした。
「待つって…まさかミョウジさん。ナマエが覚えてないことを利用してこのまま黙っているつもりですか?」
「そんなつもりはない…だがいくらなんでも…急すぎる。もう少し落ち着いてから…」
「急も何も…ナマエは当事者ですよ。早い方がいい。それに、この状況だ。ナマエだって何かあったことくらいもう分かってる。…だよね?ナマエ。」
「待て、五条。…言葉は選べよ。」
「分かってるさ。」
五条が誰かを敬称で呼ぶのも、敬語で話しているのも初めて聞いたかもしれない。なんてどうでもいいことで一瞬意識が逸れたが、五条の言う通りだった。そして、家入の言葉から何かよくないことが起こったんだということも理解した。でも、この頭のモヤモヤの理由をちゃんと知りたかった。
「うん…。悟くん、教えて。硝子ちゃん、大丈夫だから。」
「ナマエ…」
覚悟を決めたような様子のナマエを見た父は、「そうか…」とだけ発してそのまま俯いてしまった。
「教えると言ってもね、ナマエ。実のところ僕は見てはいないんだよ。」
「え?」
「見たのは……ナマエ。おまえ自身だ。」
「……え?」
「今日、ナマエ達一年生は…英集少年院に緊急招集されただろ?」
「えいしゅう……」
(しょうねん……いん………)
その言葉を聞いた瞬間、ナマエの目の前が弾けるように真っ白になった。そして、なぜこんな大事なことを今まで忘れていたのか。ナマエの脳内に濁流のような勢いで記憶が流れ込んできた。
『『受刑在院者第二宿舎』。5名の在院者が現在もそこに受胎とともに取り残されており、受胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に成ると予想されます。』
『伊地知くん、今回は私も同行させてもらうよ。』
『…兄様?どうして…』
『正は、息子は大丈夫なんでしょうか……』
『伏黒、釘崎、ミョウジ………………助けるぞ。』
『自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする!』
『じゃあ!なんで!俺は助けたんだよ!!』
『僕の名前は風磨。僕自身が台風そのものだと思った方がいい。』
『来るな!!!』
『兄様!!!』
『兄様を…ゲホッ、こんなに゛!傷つけ…たこと…絶対…ゆるざない゛……!!!』
『ナマエ……お前はもう…動くな。』
『に…いさ………』