第五十六話 兄妹
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—— 降神呪法 極ノ番
『
ズンッ!!!………ゴゴゴゴゴゴ………
直下型の地震でもきっとここまで揺れることはないだろう。翔の命懸けの攻撃は、大きな大きな塊になって特急呪霊に直撃した。その巨大さ故に、呪霊は避けることさえできなかった。自身は台風そのものだと言っていたが。極ノ番とは、領域を除いた呪術における謂わば奥義そのもの。翔の渾身の一撃は天災である台風が可愛く見えてしまうほどの規模だったと言えるだろう。そもそもが極ノ番自体が術師にとって最上級の技である上、翔はそこに自分の命の力を上乗せしたのだ。
御三家にも引けを取らないというのも強ち間違っていない。
「ハッ……ハッッッ……ゴフッ…!」
(これで、もしも効いてなければ…他に手段はないぞ……頼むから…これで……!!)
極ノ番によって崩された建物の瓦礫がガラガラと音を立てる。土埃も立ち込めて正面がまだハッキリと見えない。
どうにか呼吸を整えながら前を見据えていれば、ようやく土埃が晴れて視界がハッキリしてきた。完全に祓えたと思えるほど翔は自信過多ではない。正確に力量を把握しているつもりだ。…だが、せめて戦闘不能になっていなければ翔もナマエも後がない。
「………極…ノ番…。ここ……まで……」
「!!」
土煙の中から見えた呪霊は…。
腰から上の右半身がゴッソリと抉り取られ消え失せていた。どうにか立とうとしているが、力が入らないのか。ドシャッと地面に崩れては起き上がりを繰り返している。
「はぁっ、、はぁっ………フーー……」
(何とか……なったか………)
ここまで痛めつけられたなら今逃げても追い付かれることはないだろう。トドメを刺さないとこの呪霊はきっと回復してしまう。
しかし…翔にはトドメを刺す力もなければ、翔自身の時間すらもうほとんど無いのだ。
一刻も早くナマエを連れてここから離れなければならない。
息も絶え絶えに、ギシギシと軋む体をどうにか引き摺りながら、翔は地に臥しているナマエの元へゆっくりと向かった。すぐ側に膝をついてナマエの様子を見てみると、気を失っていながらもその顔は苦悶の表情に満ちていた。
「ナマエ……私は………」
目尻の涙を拭いながら意識のないナマエに独り言のように話しかけようとした時、これまで生きてきた中で感じたことのない、邪悪、奸悪…悪辣……どんな言葉を並べても当てはまらないだろう、とにかくとんでもない呪力を全身で浴びる事になった。
「グッ……なん……だ………これ、は……」
どうにか体を後ろに向けたが、『それ』と視線を合わせた事を翔は後悔した。
「ほう?何やら面白そうだと思い来てみれば。お前だったか。」