第四十四話 呼出
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高専へと戻り、車を降りて七海と挨拶をしてから別れた時、丁度伊地知の運転する車も戻ってきた。つまり自分以外の一年生たちも乗っている車だ。会いたくないわけではなかったが、突然の邂逅に正直戸惑ってしまう。車が入ってくることに気付いてしまった以上、向こうもこちらの姿は見ているだろう。今更寮に逃げ帰るのも不自然だ。これはもう覚悟するしかない。
「ナマエーー!!!」
「おっふ!」
最初に車から降りてきた…いや、飛び出してきたのは野薔薇だった。物凄い勢いで抱き着き…いや、飛びついて来た。
「野薔薇ちゃ…」
「アンタ何やってたの!?最近全然見かけないし!!」
「何って、任務…を…」
「ちっがーう!そうじゃなくて、任務終わってからも部屋とじこもってたし!」
「それは任務で…疲れて…」
「体は!?大丈夫なの?発作は!?あれから何ともない!?」
「おち……落ち着いて…野薔薇ちゃん。」
ナマエの肩を掴んでユサユサと揺らすためナマエはうまくしゃべれない。アワアワしている間に他の面々も車から降りてきた。
「釘崎!釘崎!ちょ…!ミョウジがグワングワンしてっから!泡吹くから!」
「え?…あぁごめんごめん。」
「だいじょぶ?ミョウジ。」
「うん…なんとか…皆、お疲れ様。怪我とかしてない?」
「おうっ!楽勝だった!なぁ伏黒?」
「まぁ……お前は?」
「うん、大丈夫。怪我してないよ。」
「そうか。」
「「……。」」
「「…………。」」
それだけで会話が終了してしまい黙ってしまった恵とナマエ。そんな二人を見て野薔薇と虎杖も目を見合わせて黙してしまった。
この空気をどうするかと面々が思っている所へ、伊地知も車から降りてきた。
「あ、伊地知さん。お疲れ様です、私に伝言ってなんですか?」
「お疲れ様ですミョウジさん、お兄様であるミョウジ特別一級術師からなんですが…」
「……………え?」
一瞬で顔色の変わったナマエを見て、伊地知が遠慮がちに言う。
「事務所で話しましょうか?」
「……いえ、ここで大丈夫ですよ。」
「そうですか、と言っても私も詳細は聞いておらず…明日、ご実家の方に帰られるように、とのことです。」
「でも…任務は…」
「それについても調整するよう言われています。ですから、明日の任務には別の呪術師が向かいます。明日の朝、遣いの方が迎えに来られるそうなので校門前で待つようにと。あと、必ずお一人で、とのことです。直接ミョウジさんに伝えるよう言われてましたので…。」
迎え…つまり何が何でも家に来させるつもりらしい。一人ということは、恵を連れてくるなという事だろう。実家に顔を出す際は恵についてきてもらう事も多かったから。
年下相手にそんなに恐縮しなくても…というくらい伊地知は遠慮がちに伝えてきた。兄から強く言づけられたらしい。任務の振り替えも無理をしたのかもしれない。申し訳なく思いながらもナマエは伊地知に気にしないようにと伝えた。
「…わかりました。伊地知さん、わざわざありがとうございます。」
「いえ…私は何も…。」
それでは、と言って伊地知は車を移動させるためその場を去った。口を挟むこともできず静観していた三人だったが。野薔薇がナマエにそれとなく聞いてきた。
「なに?実家に帰るってそんなオオゴトなの?」
「うーん、ていうか、一年以上家に帰ってないんだ。」
「え?一年って中学は??」
「修行に専念するために実家の近くにマンション借りて一人暮らししてたよ。」
「…へーぇ、すごいわね…。」
「生活費も何もかも家が出してくれてたから凄くもなんともないんだけどね。」
二人の会話を聞きながら、それまで黙っていた恵がここで初めてしゃべった。
「釘崎、そろそろ解散でいいか?」
「あ?…まぁ、そうね。」
「じゃあお疲れ。ナマエ借りてくぞ。」
「え?なに?」
「いいから。」
野薔薇の返事を聞いてすぐに恵はナマエの腕を掴んで歩き出した。先日と同じように何も言わずこちらの問いかけにも答えない。だが、先日と違うのは、その雰囲気に明らかに怒りが混じっているということ。ナマエは何も言えずついて行くしかなかった。