第四十三話 距離
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医務室を出て談話室へと向かう間、恵は何を言うでもなく。だが時折後ろをついてくるナマエの方を振り返りその様子を確認していた。体調を心配しての行動だった。ナマエはというと、何も言わない恵に不安こそ覚えたが。話しかけてもおそらく返答はないだろうという何となくの思いから恵同様何も言葉にすることはなかった。
談話室につき、ナマエは気まずさから入室を少々躊躇ったが、そんなナマエの様子を知ってか知らずか。お構いなしにその扉を開いた。先程の医務室と違い遠慮も何もなく突然開かれた扉に、中に居た二人は驚きつつも入り口に目をやったが、恵の後ろに心配していたナマエの姿を認めた途端、弾けるように同時に立ち上がった。
「ナマエ!!」「ミョウジ!!」
「っはいっ!!」
先ほど恵がグラウンドに戻った時と全く同じ反応をする二人。まだ付き合いが短い二人だが息がぴったり過ぎる。ナマエは思わずピシッと背筋が伸びた。虎杖に早く入れよと促されて、おずおずと室内に足を踏み入れた。
「えっと…ご迷惑をおかけしました…。」
「迷惑なんかかかってないわ。それより、体は大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫だよ。あの、虎杖くん。…ごめんね、ビックリしたよね。」
「あーまぁ、気にすんなよ!それよか、あん時怪我とかしてねぇ?おもっきし地面に転がしちゃったし。」
「あのね、これだけはちゃんと言っとかないとと思って。さっきのは虎杖くんのせいじゃないから。私自身の問題だから、その…ホントに気にしないでね?怪我もしてないし、ほんとに大丈夫だから!」
過呼吸の原因などはやはり話すつもりはないらしい。大丈夫、心配するなの一辺倒だ。野薔薇たちも無理に聞き出すつもりはなかったので特に追及することもなかった。が、思った通りすぎて野薔薇は内心ため息をついた。
「なぁなぁ!もう体大丈夫ならさ、これからみんなで飯食いに行かね?五条先生にさんざん扱かれてさーめちゃくちゃ腹減ってんだよね。」
空気を変えようと努めて明るく提案した虎杖だったが、ナマエは申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、今日は念のため部屋で大人しくしとくよ。」
「そっかー、伏黒はどうする?」
「俺もパス。疲れた。」
「えー。」
「言っとくけど私も行かないわよ。」
「まだ何も言ってないじゃん…しゃーねぇな。コンビニでも行くかぁ…」
「ごめんね、あの…」
「いいっていいって!ミョウジはゆっくり休めよ!」
「うん、ありがとう。」
「ナマエはって、私らは!怪我してんですけど?」
「二人ともかすり傷じゃん。元気じゃん。」
「「お前と一緒にすんな。」」
宿儺の影響か何なのか、虎杖の擦り傷はもうすっかりきれいに治っていた。そもそもが頑丈な虎杖。授業での疲れもすっかり吹き飛んでいるようだ。本物の体力バカである虎杖は無視して、恵はナマエに部屋に戻るよう促した。
「俺ももう部屋に戻る。行くぞ。じゃあな、お疲れ。」
「え、ちょ…」
残った二人への挨拶もそこそこに恵はナマエの腕を取りそのまま談話室を出た。