第四十二話 助言
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
家入と別れた後に恵がグラウンドに戻ると、ちょうど五条がこちらに気付きヒラヒラと手を振ってきた。……のだが、その足元にはまるで屍かのようにピクリとも動かない虎杖と釘崎が無残にも転がされていた。当然のことながら五条に関しては息一つ乱すことなく、砂埃一つ付かず身綺麗なまま余裕の表情で佇んでいる。組み手で無限を使ったんだとすれば少々大人げない。
「……。(どんだけ扱いたんだよ。)」
「おかえりー。」
「こいつら…生きてますか。」
「んー。たぶん。」
「まさか
「使うわけないじゃん。勝負にならないでしょ。」
悔しいがそりゃそうか…と思いながら恵が地面に視線を向けると、会話に反応して恵が戻ってきたことに気付いたのか、屍二人が同時にぴくっと反応した。
「「伏黒!!ナマエ(ミョウジ)は!?」」
「ぅおっ。」
突然勢いよく起き上がった二人に恵は思わずビクッとなってしまった。…元気そうで何よりだ。
「医務室に置いて来た。今は落ち着いてるし家入さんが付いてるから大丈夫だ。」
「よかった…」
二人してホッと胸を撫でおろした。さっきから面白いくらいに同じ反応をする二人はまるで双子のようだ。それだけナマエのことを心配していたんだろうと恵は思った。
「なぁ、伏黒…俺…」
「心配すんな。虎杖のせいじゃねぇ。」
「でもさぁ…。」
思った通りで虎杖は自分のせいではないかと気に病んでいたが、これは本当に虎杖のせいではない。ナマエから何も聞けてはいないがそれだけは間違いない。
「本当に違うから気にすんな。タイミング悪く嫌なことを思い出してパニックになっただけだと思う。悪かったな。あいつもお前に悪いことしたって謝ってたぞ。」
そうは言ってもと虎杖は納得がいかないようだった。そこで野薔薇も心配そうに恵に尋ねてきた。
「さっき先生も同じこと言ってたけど。私たちは聞かない方がいい話なの?あの子…いろいろ抱えすぎてない?大丈夫なの?」
野薔薇とナマエの喧嘩(と言っていいかどうかは分からないが)の理由になった中学時代の事とはまた別件だろうというのは野薔薇にも分かった。それに詳しくは聞いていないにしても家の事でも何か抱えてそうで、更に今回に関してはあの時のナマエの反応からするとセンシティブな内容では…と野薔薇の女の勘が働いたのだ。
「……。」
野薔薇の言う通り過ぎて恵が答えに窮していると、それまで何も言わなかった五条がパンパンと手を叩いてから割って入ってきた。
「こらこら。みんなさぁ、仮にも今は授業中って事わかってるー?」
「それどころじゃないでしょ!ナマエがあんな風になったのに!」
「気持ちは分かるけどあんまり騒ぎ立てないようにね。周りが気にすればするほどナマエも気にしちゃうと思うよ。本人が話したくなるまで大人しく見守るのが友達としてできる事じゃない?いつも通りにしてた方がナマエも気が楽だと思うけどね。」
「なんか五条先生が先生みたいなこと言ってる…。」
「僕はいつだって生徒思いのナイスガイだからね!」
「「へー……。」」
「……。」
てへぺろよろしく舌を出しながらピースサインを決めた五条に、虎杖と野薔薇は疑いの目で相槌を打ち、恵に至っては無言を貫いた。軽薄目隠しの戯言はひとまず置いておくとして、それでも五条の言う通りだった。自分たちが慌てるほどにナマエは気を揉んでしまうだろう。五条の言う通りにするのも少々癪だった恵ではあったが。いつも通りにしよう、三人はそう結論付けた。
「さて!二人とも十分休憩できたよね!恵もまだまだ動き足りないでしょ。三人まとめてかかってきていいよ。」
「「「げ。」」」
まだやるのか……と、五条の言葉に血の気が引いた三人は顔を引き攣らせたが……
「全然手応えなくてさー二人がかりでもつまんないんだよねー。一発も入んないし。優秀だと思ってた僕の見込み違いだったのかなー。まぁ恵が入ったとしても大して変わんないかぁ。」
(((イラッ)))
分かりやすい挑発に眉を寄せながら分かりやすく反応した三人。野薔薇と虎杖はゆらりと体を起こし、恵もポケットに突っ込んでいた手をスッと抜き、構えを取った。
「伏黒ぉ…虎杖ぃ、意地でもイッパツ食らわせるわよ。」
「「おぅ。」」
三人の様子にニンマリと笑みを浮かべた五条は更に挑発するように人差し指をクイクイと曲げる。そして……
――この日の授業は、五条の足元に屍の数がもう一つ増えた事で終了した。