第57話 あるモブは見た
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僕はそもそも別にミーハーな性格でもなんでもない。そんな僕でも思う。なんて面白い状況になっているんだ。
--年が明けてしばらく。今日は営業部全員参加の新年会だ。なんという幸運か、目の前にはナマエ主任がいるという幸せな状況下にあるのだ。眼福、目の保養である。
ナマエ主任は営業部の、延いては進撃商事の華だ。可愛くて優しくておまけに仕事までできる人で。この人に憧れない人は誰一人居ないのではないだろうか。僕もその内の一人で、目の前に居る、それだけなのに既に酔ってしまったかのような高揚感で少し体が熱い。今自分の顔がだらしなく緩んでいないかが心配だ。
隣の同期と雑談をしながらもどうしても視野に入れたくてチラチラ見てしまっていると、気付かれてしまったのかナマエ主任と目が合ってしまった。
「あれ?グラス空いてるよ!お代わりどうぞ?」
そう言ってビール瓶を傾けてくれたのは他でもないナマエ主任。仕事の話をする時も緊張してまっすぐ見ることのできないご尊顔が今は僕の目一杯に写っている。あ!ありがとうございます!と、緊張しながらも両手でグラスを主任の方へ傾けると、注がれたのは正面からではなく、斜め右からだった。
「お前、結構いける口?注いでやるからもっと飲め。」
「……ありがとうございます。」
……ジャンさん。せっかくナマエ主任から注いでもらえると思ったのに。ジャンさんは、ん?と言いながらも片方の口端をニヤリと上げている。
わざとだ。絶対わざとだ。
でも僕には恐ろしくて文句なんて言えるはずもない。ジャンさんに一度みんなの前で詰められてからというもの、どうにも苦手意識ができてしまった。
そう、ナマエ主任とジャンさんが口論になって営業部全体に気まずい空気が流れたあの時だ。
あの日僕はあまり考えずにナマエ主任に助けを求めた。確かに緊急の案件でも困った状況でもなかったが、周りのみんなと同じようにしただけだった。ナマエ主任に助けを求めたら一緒に仕事ができるかもしれないという下心がこれっぽっちもなかったとは……言えないけれど。
あの時ジャンさんに詰められて怖かったけど、その後ちゃんと僕の案件が問題なく進んでるかを確認してくれたし、アドバイスも貰えた。ジャンさんは何も悪くない、むしろ尊敬すらしている。
……ちょっと怖いだけで。
「ナマエさんこそ、空いてますよ。ほら、グラス。」
「あ、うん。ありがt「ナマエ。グラス寄越せ。」」
ジャンさんが瓶を傾けようとした時に遮ったのは、反対側に座るリヴァイ課長だった。ビール瓶を傾けてナマエ主任のグラスを持つ手を取った。
「え?あ、ありがとうございます……。」
「俺がナマエさんに注ごうとしてたんですけど。課長自らそんなことしなくても大丈夫ですよ。」
「お前もさっき遮ってただろうが。なぁ?」
「え!あの……僕は別に……。」
僕に振らないでください。ジャンさんのお顔が怖いことになっています。
「もう、何で言い合いになっちゃうんですか?自分で注ぐので大丈夫です!」
そう言ってナマエ主任は呆れたように自分でビールを注いだ。両サイドの二人は「あ。」という表情で瓶を持ったまま固まっている。
ナマエ主任はそのままゴクゴクとビールを飲んで「うん、おいしい。」と、呑気なもんだ。
両端のピリついた空気なんか物ともしていない。
ビールとナマエ主任。似合わない。
ふと気になったことを聞いてみた。
「ナマエ主任、お酒お強いんですか?」
「え?……あー、まぁ、お酒は好きな方かな。」
はにかんだように話すナマエ主任。かわい過ぎる。そのお顔で何杯でも飲めそうです。
「好きな方、じゃなくてむちゃくちゃ好き、でしょ?何隠そうとしてんですか。」
「あ、こら!あんまり言わないでって言ったでしょ?」
「この間だって俺のキープしてたボトル全部空けちまった癖に。」
「飲んでいいって言ったじゃん……。」
頬を膨らませて文句を言うナマエ主任。かわいすぎる。そのお顔で(以下略)。
実は酒好きとか、イメージと違い過ぎる。ギャップ萌えしそうだ。ボトルキープするジャンさん。これまた何だか大人の男って感じでかっこいいな。僕もボトルキープとか…似合わないのでやめておこう。
それに、お二人は仕事上パートナーというせいもあるのか一緒に飲みに行く仲らしい。羨ましい。
何だかただ単にイチャイチャしているだけのような光景をぼんやり見ていると、課長も会話に参加してきた。
「昔はクソ弱かったけどな。毎回連れて帰るのも一苦労だった。」
「課長!それも言っちゃだめなやつです!」
「あんだけ飲んでりゃ強くもなる。毎回毎回付き合わされてグズるお前を家まで送ってやってた俺の身にもなってみろ。」
「それは……ごめんなさいですけど。」
そういえばお二人は同期だった。頻繁に飲みに行ってても何の不思議もない。二人の普段の様子だと一緒に飲みに行くような関係性には見えなかったけど。オンとオフを分けてる、ということなんだろうか?
でも、課長の話が暗に『昔のナマエをよく知っている』と言っているように聞こえるのは僕だけか?
眉尻を下げて謝るナマエ主任の横で明らかに不機嫌になったジャンさんにも、そう聞こえたのかもしれない。
え?ちょっと待て。これって所謂、三角関係ってやつ?なんだこれ。もしかして、ものすごく興味深い状況になってないか?
「まぁ、昔はどうあれ今はナマエさんが飲む時は俺が付き合ってますし、今後課長にご迷惑をお掛けすることはないんで。」
安心してください-そう言いながら課長に笑顔を向けるジャンさん。……怖い。目が笑ってない。
「気にすんな。お前だけに負担を掛けるつもりはねぇよ。こいつだって同世代の昔馴染みと飲む方が気が楽だろう。なんせ高校からの付き合いだ。なぁ?ナマエ。」
負けじと課長もニヤリと笑ってジャンさんに対抗している。……さらに怖い。二人とも人相が悪……いや、目つきが鋭いので見ているこちらは冷や汗をかいてしまう。
でも二人とも気づいているのだろうか。言い合っている内容がひどくしょうもないことに。
「あの。」
そこへ飛び込んだ少し低くなったナマエ主任の声。
「さっきから何なんですか?迷惑とか、負担?」
「「いや……。」」
「無理して付き合っていただかなくても結構ですよ。」
ぷいっと効果音がつきそうな様子でナマエ主任はそっぽを向いてしまった。怒った顔もかわいいけど。
「違うんですよナマエさん」「おいナマエ、機嫌なおせ」と両サイドから困った様子でナマエ主任に話しかけるお二人には普段の威厳がカケラも見当たらない。
その後も、「ナマエさん、大好きなエビチリきましたよ!」「ナマエ、アイス食うか?」とあからさまな二人をジト目で見ながらも「……食べる。」と言いながら餌付けされているナマエ主任。やっぱりかわいい。
しばらくして少し離れた席から声がかかった。
「ナマエさぁーーん!こっち来て飲みましょー!」
ペトラさんだ。その隣にはナナバさんもいる。
両サイドの餌付け攻撃に流石に嫌気がさしていたのか、少しホッとした様子のナマエ主任は「はーい!……じゃ、行ってきます。」と言って席を立ってしまった。
「「…………。」」
残された男二人は揃って黙りこくってしまった。
「おい、お前のせいだぞ。」
「何言ってんすか。先に言い出したのは課長ですからね。」
……どっちもどっちだと思います。口が裂けても言えないが。
「何見てんだ。」
「いえ!なんでもないです!」
さっと目を逸らした。
危ない。ここはもう知らないふりをしよう。こっちまで飛び火されたらたまらない。
それにしても、なんで今まで気づかなかったんだろう。こんなに面白い状況になってるなんて全く知らなかった。同じく状況を見ていた隣の同期に「知ってた?」とコソコソと聞くと。
「知ってた。あの人たち割と分かりやすいよ。」
とのこと。これまで知らなかったことを勿体ないと思ってしまった。きっとこれまでも興味深い状況がたくさんあったんだろうな。でも、これからの楽しみが一つできた。
とりあえず、僕の中の『リヴァイ課長は営業部最強説』は呆気なく崩れ去った。
誰が最強か。もはや言うまでもないだろう。
--年が明けてしばらく。今日は営業部全員参加の新年会だ。なんという幸運か、目の前にはナマエ主任がいるという幸せな状況下にあるのだ。眼福、目の保養である。
ナマエ主任は営業部の、延いては進撃商事の華だ。可愛くて優しくておまけに仕事までできる人で。この人に憧れない人は誰一人居ないのではないだろうか。僕もその内の一人で、目の前に居る、それだけなのに既に酔ってしまったかのような高揚感で少し体が熱い。今自分の顔がだらしなく緩んでいないかが心配だ。
隣の同期と雑談をしながらもどうしても視野に入れたくてチラチラ見てしまっていると、気付かれてしまったのかナマエ主任と目が合ってしまった。
「あれ?グラス空いてるよ!お代わりどうぞ?」
そう言ってビール瓶を傾けてくれたのは他でもないナマエ主任。仕事の話をする時も緊張してまっすぐ見ることのできないご尊顔が今は僕の目一杯に写っている。あ!ありがとうございます!と、緊張しながらも両手でグラスを主任の方へ傾けると、注がれたのは正面からではなく、斜め右からだった。
「お前、結構いける口?注いでやるからもっと飲め。」
「……ありがとうございます。」
……ジャンさん。せっかくナマエ主任から注いでもらえると思ったのに。ジャンさんは、ん?と言いながらも片方の口端をニヤリと上げている。
わざとだ。絶対わざとだ。
でも僕には恐ろしくて文句なんて言えるはずもない。ジャンさんに一度みんなの前で詰められてからというもの、どうにも苦手意識ができてしまった。
そう、ナマエ主任とジャンさんが口論になって営業部全体に気まずい空気が流れたあの時だ。
あの日僕はあまり考えずにナマエ主任に助けを求めた。確かに緊急の案件でも困った状況でもなかったが、周りのみんなと同じようにしただけだった。ナマエ主任に助けを求めたら一緒に仕事ができるかもしれないという下心がこれっぽっちもなかったとは……言えないけれど。
あの時ジャンさんに詰められて怖かったけど、その後ちゃんと僕の案件が問題なく進んでるかを確認してくれたし、アドバイスも貰えた。ジャンさんは何も悪くない、むしろ尊敬すらしている。
……ちょっと怖いだけで。
「ナマエさんこそ、空いてますよ。ほら、グラス。」
「あ、うん。ありがt「ナマエ。グラス寄越せ。」」
ジャンさんが瓶を傾けようとした時に遮ったのは、反対側に座るリヴァイ課長だった。ビール瓶を傾けてナマエ主任のグラスを持つ手を取った。
「え?あ、ありがとうございます……。」
「俺がナマエさんに注ごうとしてたんですけど。課長自らそんなことしなくても大丈夫ですよ。」
「お前もさっき遮ってただろうが。なぁ?」
「え!あの……僕は別に……。」
僕に振らないでください。ジャンさんのお顔が怖いことになっています。
「もう、何で言い合いになっちゃうんですか?自分で注ぐので大丈夫です!」
そう言ってナマエ主任は呆れたように自分でビールを注いだ。両サイドの二人は「あ。」という表情で瓶を持ったまま固まっている。
ナマエ主任はそのままゴクゴクとビールを飲んで「うん、おいしい。」と、呑気なもんだ。
両端のピリついた空気なんか物ともしていない。
ビールとナマエ主任。似合わない。
ふと気になったことを聞いてみた。
「ナマエ主任、お酒お強いんですか?」
「え?……あー、まぁ、お酒は好きな方かな。」
はにかんだように話すナマエ主任。かわい過ぎる。そのお顔で何杯でも飲めそうです。
「好きな方、じゃなくてむちゃくちゃ好き、でしょ?何隠そうとしてんですか。」
「あ、こら!あんまり言わないでって言ったでしょ?」
「この間だって俺のキープしてたボトル全部空けちまった癖に。」
「飲んでいいって言ったじゃん……。」
頬を膨らませて文句を言うナマエ主任。かわいすぎる。そのお顔で(以下略)。
実は酒好きとか、イメージと違い過ぎる。ギャップ萌えしそうだ。ボトルキープするジャンさん。これまた何だか大人の男って感じでかっこいいな。僕もボトルキープとか…似合わないのでやめておこう。
それに、お二人は仕事上パートナーというせいもあるのか一緒に飲みに行く仲らしい。羨ましい。
何だかただ単にイチャイチャしているだけのような光景をぼんやり見ていると、課長も会話に参加してきた。
「昔はクソ弱かったけどな。毎回連れて帰るのも一苦労だった。」
「課長!それも言っちゃだめなやつです!」
「あんだけ飲んでりゃ強くもなる。毎回毎回付き合わされてグズるお前を家まで送ってやってた俺の身にもなってみろ。」
「それは……ごめんなさいですけど。」
そういえばお二人は同期だった。頻繁に飲みに行ってても何の不思議もない。二人の普段の様子だと一緒に飲みに行くような関係性には見えなかったけど。オンとオフを分けてる、ということなんだろうか?
でも、課長の話が暗に『昔のナマエをよく知っている』と言っているように聞こえるのは僕だけか?
眉尻を下げて謝るナマエ主任の横で明らかに不機嫌になったジャンさんにも、そう聞こえたのかもしれない。
え?ちょっと待て。これって所謂、三角関係ってやつ?なんだこれ。もしかして、ものすごく興味深い状況になってないか?
「まぁ、昔はどうあれ今はナマエさんが飲む時は俺が付き合ってますし、今後課長にご迷惑をお掛けすることはないんで。」
安心してください-そう言いながら課長に笑顔を向けるジャンさん。……怖い。目が笑ってない。
「気にすんな。お前だけに負担を掛けるつもりはねぇよ。こいつだって同世代の昔馴染みと飲む方が気が楽だろう。なんせ高校からの付き合いだ。なぁ?ナマエ。」
負けじと課長もニヤリと笑ってジャンさんに対抗している。……さらに怖い。二人とも人相が悪……いや、目つきが鋭いので見ているこちらは冷や汗をかいてしまう。
でも二人とも気づいているのだろうか。言い合っている内容がひどくしょうもないことに。
「あの。」
そこへ飛び込んだ少し低くなったナマエ主任の声。
「さっきから何なんですか?迷惑とか、負担?」
「「いや……。」」
「無理して付き合っていただかなくても結構ですよ。」
ぷいっと効果音がつきそうな様子でナマエ主任はそっぽを向いてしまった。怒った顔もかわいいけど。
「違うんですよナマエさん」「おいナマエ、機嫌なおせ」と両サイドから困った様子でナマエ主任に話しかけるお二人には普段の威厳がカケラも見当たらない。
その後も、「ナマエさん、大好きなエビチリきましたよ!」「ナマエ、アイス食うか?」とあからさまな二人をジト目で見ながらも「……食べる。」と言いながら餌付けされているナマエ主任。やっぱりかわいい。
しばらくして少し離れた席から声がかかった。
「ナマエさぁーーん!こっち来て飲みましょー!」
ペトラさんだ。その隣にはナナバさんもいる。
両サイドの餌付け攻撃に流石に嫌気がさしていたのか、少しホッとした様子のナマエ主任は「はーい!……じゃ、行ってきます。」と言って席を立ってしまった。
「「…………。」」
残された男二人は揃って黙りこくってしまった。
「おい、お前のせいだぞ。」
「何言ってんすか。先に言い出したのは課長ですからね。」
……どっちもどっちだと思います。口が裂けても言えないが。
「何見てんだ。」
「いえ!なんでもないです!」
さっと目を逸らした。
危ない。ここはもう知らないふりをしよう。こっちまで飛び火されたらたまらない。
それにしても、なんで今まで気づかなかったんだろう。こんなに面白い状況になってるなんて全く知らなかった。同じく状況を見ていた隣の同期に「知ってた?」とコソコソと聞くと。
「知ってた。あの人たち割と分かりやすいよ。」
とのこと。これまで知らなかったことを勿体ないと思ってしまった。きっとこれまでも興味深い状況がたくさんあったんだろうな。でも、これからの楽しみが一つできた。
とりあえず、僕の中の『リヴァイ課長は営業部最強説』は呆気なく崩れ去った。
誰が最強か。もはや言うまでもないだろう。
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