第55話 うん。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
マルコの家で思いがけずナマエさんのプライベートを知った俺は、家に帰った後ひたすらSNSを見ていた。そこに写っていたナマエさんは、どれも幸せそうで家族仲がいいんだろうことが伺えた。
SNSにはナマエさんの親父さんが手掛けた公園や庭園の画像がいくつもあって、知識のない俺でも一目見てすげぇなって思うものばかりだ。ナマエさんの親父さんはすごい人だった。
画面をスクロールしていると、親父さんの作品の中に連名でナマエさんの名前が入っているものを見つけた。海外の田舎の小さな公園だ。投稿した日は数年前だが制作年は10年位前だった。つまり、ナマエさんが学生の頃だろう。という事はナマエさんも同じようにこの業界に関わっているという事だろうか。ネットでその公園を検索してみると、当時の記事が出てきた。
"ミョウジ氏の娘、デザイナーデビューか!?"
"ガーデンデザイナーミョウジ 愛娘と初のコラボ"
専門誌の記事のようだからそこまでメジャーではなさそうだが、確かに添付されているのはナマエさんの写真だ。おそらくハタチ前後のナマエさん…やばい。例えば同じ大学にこんな子いたとしたら、やばい。
…じゃなくて。今はそこじゃねぇ。ナマエさんはその道に進まずに一般企業に就職している。彼女の感じだと、腰掛就職って感じでもなさそうだ。その経緯はわからないが、本人に聞いてみてもいいことなんだろうか。
いや、その前に、今の気まずい状態を何とかするのが先だ。年末の数日間、ものすごく気まずかった。仕事に関する話はナマエさんも割り切っているのか全く問題なかった。仕事に支障はなくても、今のままは俺の方が持たない。あのいつもの軽口を叩ける気軽な関係に戻るにはどうしたいいんだろうか。
元日に彼女に送信した新年のメッセージの返事はちゃんと返ってきた。思った通り、形式ばったお決まりの文言だったが。まぁ、俺にできる事と言えば、"普通"に接することなんだろうな。そう結論を出して、酒が入ったことで襲ってきた眠気に素直に従うことにした。
実家に少し顔を出した以外、俺の正月は、寝正月だった。
―そして休み明け。いつもの電車に、ナマエさんは居なかった。想定内だったので少ししか気にしていない。少ししか。
「ナマエさん、おはようございます。あと、あけましておめでとうございます。」
「あ…おはよう、今年もよろしくね。」
普通に。あくまでも自然に。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
ナマエさんも、固いながらもある程度普通に話してくれている。よかった。
「今日はとりあえず来週からの訪問先のピックアップと人選っすかね。」
「そうだね、午前中は資料室での作業の方が効率がいいかも。」
「そうっすね、新年早々あの薄暗いとこに籠るのは気が滅入りますけど。」
俺の言葉にふふっと少し微笑んでくれた。会話は順調、年末よりはましになっている。よし、この調子だ。
「んじゃ、朝礼終わったら早速移動しますかね。」
「うん。」
相変わらず薄暗く天井いっぱいまでそびえ立つ書類棚。地震が起こったら一発アウトだな、なんて思いながら資料を探す。ナマエさんが自分が探すと言っていたが、彼女には届かない所にある資料ばかりだ。10センチ身長伸ばしてから言ってくださいと少しからかってから制した。
資料を片手にナマエさんの所へ戻ると、彼女は真剣に資料と睨めっこをしていた。俺が席に戻ってどうぞと資料を渡してもこっちを見ないまま受け取りそのまままた没頭し始めた。さっきから、この調子だ。休みの間に溜まった分を何とかしようと必死のようだ。真面目か。休みだったのはみんな同じで、作業が遅れるのは仕方がないことなのに。
「ナマエさん、俺はこっちの人選の方見ましょうか。」
「うん、お願い。」
「この間エルドさんたちが行ったトロストの新規、一年に回してもいいですよね。」
「うん。」
「これが終わったら、昼飯にしましょうか。」
「うん。」
さっきから「うん」しか言わねぇ。生返事かよ。自分の方で手一杯らしい。
「昼飯、何にしましょうか。」
「うん。」
「近所の定食屋、店主が入院して休業してたんすけど、また営業再開したらしいですよ。」
「うん。」
「じゃあそこにしましょうかね。」
「うん。」
絶対聞いてないやつだ。これは、あれだな。仕事に没頭して気まずい感じをごまかそうとしているのではないか。本当に没頭してこの状態じゃ世話ないが。少し腹が立ってきたのと、俺のいたずら心が疼いた。
「俺のこと、好きですか。」
「うん。」
「じゃあ、俺と付き合ってくれますか。」
「うん。………え?」
くつくつと笑う俺を見て、やっと気が付いたらしい。え?え?と慌てた様子のナマエさん。
「やっとこっち見た。」
「ごめん!違うの!あの、ちゃんと聞いてなくて…ごめん。」
「いいっすよ。生返事でもYESって言ってもらえたんで。」
「ごめん…。」
「分かってますよ。」
結果的にまたNOと言われたわけだが。どうやら俺は随分とメンタルが強くなったらしい。どれだけ断られても平気だという謎の無敵モードに入っている。
「さ、キリもいいですし、時間もいい感じですよ。飯、行きましょ。」
「あ、うん。」
「近所の定食屋でいいっすよね?」
「え?あそこって今休業中じゃなかった?」
…ほんとに何も聞いてなかったんだな。
SNSにはナマエさんの親父さんが手掛けた公園や庭園の画像がいくつもあって、知識のない俺でも一目見てすげぇなって思うものばかりだ。ナマエさんの親父さんはすごい人だった。
画面をスクロールしていると、親父さんの作品の中に連名でナマエさんの名前が入っているものを見つけた。海外の田舎の小さな公園だ。投稿した日は数年前だが制作年は10年位前だった。つまり、ナマエさんが学生の頃だろう。という事はナマエさんも同じようにこの業界に関わっているという事だろうか。ネットでその公園を検索してみると、当時の記事が出てきた。
"ミョウジ氏の娘、デザイナーデビューか!?"
"ガーデンデザイナーミョウジ 愛娘と初のコラボ"
専門誌の記事のようだからそこまでメジャーではなさそうだが、確かに添付されているのはナマエさんの写真だ。おそらくハタチ前後のナマエさん…やばい。例えば同じ大学にこんな子いたとしたら、やばい。
…じゃなくて。今はそこじゃねぇ。ナマエさんはその道に進まずに一般企業に就職している。彼女の感じだと、腰掛就職って感じでもなさそうだ。その経緯はわからないが、本人に聞いてみてもいいことなんだろうか。
いや、その前に、今の気まずい状態を何とかするのが先だ。年末の数日間、ものすごく気まずかった。仕事に関する話はナマエさんも割り切っているのか全く問題なかった。仕事に支障はなくても、今のままは俺の方が持たない。あのいつもの軽口を叩ける気軽な関係に戻るにはどうしたいいんだろうか。
元日に彼女に送信した新年のメッセージの返事はちゃんと返ってきた。思った通り、形式ばったお決まりの文言だったが。まぁ、俺にできる事と言えば、"普通"に接することなんだろうな。そう結論を出して、酒が入ったことで襲ってきた眠気に素直に従うことにした。
実家に少し顔を出した以外、俺の正月は、寝正月だった。
―そして休み明け。いつもの電車に、ナマエさんは居なかった。想定内だったので少ししか気にしていない。少ししか。
「ナマエさん、おはようございます。あと、あけましておめでとうございます。」
「あ…おはよう、今年もよろしくね。」
普通に。あくまでも自然に。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
ナマエさんも、固いながらもある程度普通に話してくれている。よかった。
「今日はとりあえず来週からの訪問先のピックアップと人選っすかね。」
「そうだね、午前中は資料室での作業の方が効率がいいかも。」
「そうっすね、新年早々あの薄暗いとこに籠るのは気が滅入りますけど。」
俺の言葉にふふっと少し微笑んでくれた。会話は順調、年末よりはましになっている。よし、この調子だ。
「んじゃ、朝礼終わったら早速移動しますかね。」
「うん。」
相変わらず薄暗く天井いっぱいまでそびえ立つ書類棚。地震が起こったら一発アウトだな、なんて思いながら資料を探す。ナマエさんが自分が探すと言っていたが、彼女には届かない所にある資料ばかりだ。10センチ身長伸ばしてから言ってくださいと少しからかってから制した。
資料を片手にナマエさんの所へ戻ると、彼女は真剣に資料と睨めっこをしていた。俺が席に戻ってどうぞと資料を渡してもこっちを見ないまま受け取りそのまままた没頭し始めた。さっきから、この調子だ。休みの間に溜まった分を何とかしようと必死のようだ。真面目か。休みだったのはみんな同じで、作業が遅れるのは仕方がないことなのに。
「ナマエさん、俺はこっちの人選の方見ましょうか。」
「うん、お願い。」
「この間エルドさんたちが行ったトロストの新規、一年に回してもいいですよね。」
「うん。」
「これが終わったら、昼飯にしましょうか。」
「うん。」
さっきから「うん」しか言わねぇ。生返事かよ。自分の方で手一杯らしい。
「昼飯、何にしましょうか。」
「うん。」
「近所の定食屋、店主が入院して休業してたんすけど、また営業再開したらしいですよ。」
「うん。」
「じゃあそこにしましょうかね。」
「うん。」
絶対聞いてないやつだ。これは、あれだな。仕事に没頭して気まずい感じをごまかそうとしているのではないか。本当に没頭してこの状態じゃ世話ないが。少し腹が立ってきたのと、俺のいたずら心が疼いた。
「俺のこと、好きですか。」
「うん。」
「じゃあ、俺と付き合ってくれますか。」
「うん。………え?」
くつくつと笑う俺を見て、やっと気が付いたらしい。え?え?と慌てた様子のナマエさん。
「やっとこっち見た。」
「ごめん!違うの!あの、ちゃんと聞いてなくて…ごめん。」
「いいっすよ。生返事でもYESって言ってもらえたんで。」
「ごめん…。」
「分かってますよ。」
結果的にまたNOと言われたわけだが。どうやら俺は随分とメンタルが強くなったらしい。どれだけ断られても平気だという謎の無敵モードに入っている。
「さ、キリもいいですし、時間もいい感じですよ。飯、行きましょ。」
「あ、うん。」
「近所の定食屋でいいっすよね?」
「え?あそこって今休業中じゃなかった?」
…ほんとに何も聞いてなかったんだな。