第53話 それぞれの新年
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三人だったリビングが一気に騒がしくなった。エレン達の突然の来訪にもクシェルは嬉しそうに迎え入れ、お節いっぱいあるわよ、とキッチンへと立つ。ミカサとナマエも手伝うといって今は三人で和気あいあいとキッチンで楽しそうに話している。
カルラ経由で今日のことを聞いたエレンが俺たちに挨拶したいと言い出し、やめろと止めるミカサを振り切ってやってきたらしい。ミカサはミカサでちゃっかり楽しんでやがるが。家に来る前にカルラとグリシャの所に行けよ。
男側はというと、ケニーがさっそくエレンを捕まえて隣に座らせてどんどん酒を飲ませている。俺は巻き込まれたくなかったので同じくキッチンへと向かったが。
「あら、お手伝いしてくれるの?でもだめよ。今日は女性だけの領域なんだから。ね?ナマエちゃん。」
「ふふっ。そうですね。リヴァイ大丈夫だよ。おじ様達とゆっくりしてて?」
「あぁ、だが…」
その手元の包丁が…
「ナマエさん、包丁貸して。これは私が切るからナマエさんはこっちの盛り付けをしてほしい。」
「え?私がやるよ?」
「今にも指を切り落としそう。」
「えー?」
「ナマエちゃんほら、ここに手を当てて少し指を…そうそう、上手よ!」
…確かに俺は邪魔らしい。過保護なミカサに、丁寧に教える母親。それに嬉しそうに応えるナマエ。
この光景を見ているのも悪くないと思った俺はリビングには戻らずにキッチンカウンターで三人を眺めながら酒を楽しむことにした。
頬杖をつきながらぼんやりと眺めながら、これがもし本当の家族だったら…などどらしくもない想像をしてしまうのは先ほどのケニー達との会話があったからだろう。ふとミカサの方を見ると鮮やかな包丁捌きでローストビーフの薄切りを作っている。そういえば特技は肉を削ぎ落すことだと物騒な物言いをしていたことを思い出した。
ナマエはというと、結局包丁をミカサに取り上げられ不服そうに料理の温め担当になっている。それでもクシェルと味見をしながら楽しそうに笑っているので大丈夫だろう。
休日にやってきた義母 と義妹 (正確には違うが。)と共にキッチンで料理をするナマエ…これがもし未来の自分達の姿だとしたら…悪くない。
「なあにリヴァイ、そんなに見つめられたら穴が開いちゃうわ。」
「気持ち悪い。」
「おいミカサ。」
「あはっ、もうちょっと待っててね?」
ナマエよ、笑い事じゃねぇ。ミカサは昔からやたらと俺に突っかかってくる。幼少の頃ならかわいいもんだと思えるが、高校の頃を境に更に激化した気さえする。しまいにゃケータイ番号を変えたことさえ隠されていた時にはどうしたもんかと思った。エレンだけでなくナマエに対してまでとことん過保護っぷりを発揮しているので、この差は何だといつも思っていた。
運ぶのは手伝ってねと言われ、三人と共にリビングに戻ると、既にエレンが出来上がってしまっていた。ケニーが調子に乗って飲ませすぎたようだ。
「かちょ~ぉ。おそいですよーはやくいっしょにのみましょ~。」
「エレン、あなたはもう飲んではいけない。」
「なんだよみかさ、とめるなよ」
こいつはもうダメだ。夏ごろに家で酔い潰れて殴っても蹴っても起きなくなったことを思い出し嫌な予感がした。
「お!ナマエ、やっと来たか!エレンじゃ話にならねぇ。こっち来い!」
「あ、そうだ!ちょっと待っててくださいね。」
思い出したように紙袋を持ち出してきて、中身をケニーに差し出した。
「ユトピアで作られた醸造酒です。温泉で有名なだけあってお水が違うんですよ。辛口なのに口当たりは滑らかなのでおじ様のお口にもきっと合うと思って持って来ちゃいました!リヴァイもここのお酒大好きだよね?」
ナマエが取り出したそれは、俺が行きつけの居酒屋でしか拝めない希少な酒だった。特に好きだという話はしたことがなかったが。毎回注文していたことでバレていたらしい。ぜひおじ様に、と言われたケニーは気分を良くしてナマエと酒を楽しんでいた。
先程釘を刺していたおかげか、特に余計なことを漏らすことなく楽しそうに酒を飲むケニーを見てそっと息を吐いた。クシェルが用意した節料理に、ミカサ達が持参した品々も人数が増えたこともあり綺麗さっぱり平らげた。ナマエがいたことも大きいが。最初は遠慮していたナマエも、残してもいけないからと言われた後は幸せそうにそれぞれの料理を頬張っていた。
各々が思い思いに過ごしたこの時間もあっという間で、夕食はケニーがどうしても寿司が食いたいと言い出して出前を取ることになった。復活したエレンとケニーが一緒になってちゃっかり特上を注文していた。しかも一番ででかい皿だ。窘めるクシェルに対して任せろと言っていたケニーだったが、財布を出すことになったのはなぜか俺だった。
夕食後に腹いっぱいになったエレン夫妻は満足そうに帰っていき、私もそろそろ…と言うナマエを引き留めたのは意外にも母親クシェルだった。
「ナマエちゃん、こんな時間だし一人は危ないわ。今日は泊まっていったら?」
「え、ご家族の団らんにさすがにそこまでできませんよ。」
「俺もリヴァイもこの通り酔っぱらっちまってるからな、送ってやれねぇんだ。遠慮せず泊まってけ。」
「でも…」
「そうしろ。正月早々心配かけんな。」
「うー、うん…お世話になります。」
まさかの二人のアシストでナマエを引き留めることができた。寝室掃除をした甲斐があったというもんだ。だが、さすがに俺たちが一緒に寝るわけにはいかないだろう。
ナマエはクシェルと一緒に客間で寝てもらって、ケニーは寝室に布団を敷いて雑魚寝でもしてもらうしかない。文句を言われそうだが。ケニーもナマエを引き留めた一人だ。なんとか納得するだろう。
―と、思っていたのは俺だけだったようだ。
カルラ経由で今日のことを聞いたエレンが俺たちに挨拶したいと言い出し、やめろと止めるミカサを振り切ってやってきたらしい。ミカサはミカサでちゃっかり楽しんでやがるが。家に来る前にカルラとグリシャの所に行けよ。
男側はというと、ケニーがさっそくエレンを捕まえて隣に座らせてどんどん酒を飲ませている。俺は巻き込まれたくなかったので同じくキッチンへと向かったが。
「あら、お手伝いしてくれるの?でもだめよ。今日は女性だけの領域なんだから。ね?ナマエちゃん。」
「ふふっ。そうですね。リヴァイ大丈夫だよ。おじ様達とゆっくりしてて?」
「あぁ、だが…」
その手元の包丁が…
「ナマエさん、包丁貸して。これは私が切るからナマエさんはこっちの盛り付けをしてほしい。」
「え?私がやるよ?」
「今にも指を切り落としそう。」
「えー?」
「ナマエちゃんほら、ここに手を当てて少し指を…そうそう、上手よ!」
…確かに俺は邪魔らしい。過保護なミカサに、丁寧に教える母親。それに嬉しそうに応えるナマエ。
この光景を見ているのも悪くないと思った俺はリビングには戻らずにキッチンカウンターで三人を眺めながら酒を楽しむことにした。
頬杖をつきながらぼんやりと眺めながら、これがもし本当の家族だったら…などどらしくもない想像をしてしまうのは先ほどのケニー達との会話があったからだろう。ふとミカサの方を見ると鮮やかな包丁捌きでローストビーフの薄切りを作っている。そういえば特技は肉を削ぎ落すことだと物騒な物言いをしていたことを思い出した。
ナマエはというと、結局包丁をミカサに取り上げられ不服そうに料理の温め担当になっている。それでもクシェルと味見をしながら楽しそうに笑っているので大丈夫だろう。
休日にやってきた
「なあにリヴァイ、そんなに見つめられたら穴が開いちゃうわ。」
「気持ち悪い。」
「おいミカサ。」
「あはっ、もうちょっと待っててね?」
ナマエよ、笑い事じゃねぇ。ミカサは昔からやたらと俺に突っかかってくる。幼少の頃ならかわいいもんだと思えるが、高校の頃を境に更に激化した気さえする。しまいにゃケータイ番号を変えたことさえ隠されていた時にはどうしたもんかと思った。エレンだけでなくナマエに対してまでとことん過保護っぷりを発揮しているので、この差は何だといつも思っていた。
運ぶのは手伝ってねと言われ、三人と共にリビングに戻ると、既にエレンが出来上がってしまっていた。ケニーが調子に乗って飲ませすぎたようだ。
「かちょ~ぉ。おそいですよーはやくいっしょにのみましょ~。」
「エレン、あなたはもう飲んではいけない。」
「なんだよみかさ、とめるなよ」
こいつはもうダメだ。夏ごろに家で酔い潰れて殴っても蹴っても起きなくなったことを思い出し嫌な予感がした。
「お!ナマエ、やっと来たか!エレンじゃ話にならねぇ。こっち来い!」
「あ、そうだ!ちょっと待っててくださいね。」
思い出したように紙袋を持ち出してきて、中身をケニーに差し出した。
「ユトピアで作られた醸造酒です。温泉で有名なだけあってお水が違うんですよ。辛口なのに口当たりは滑らかなのでおじ様のお口にもきっと合うと思って持って来ちゃいました!リヴァイもここのお酒大好きだよね?」
ナマエが取り出したそれは、俺が行きつけの居酒屋でしか拝めない希少な酒だった。特に好きだという話はしたことがなかったが。毎回注文していたことでバレていたらしい。ぜひおじ様に、と言われたケニーは気分を良くしてナマエと酒を楽しんでいた。
先程釘を刺していたおかげか、特に余計なことを漏らすことなく楽しそうに酒を飲むケニーを見てそっと息を吐いた。クシェルが用意した節料理に、ミカサ達が持参した品々も人数が増えたこともあり綺麗さっぱり平らげた。ナマエがいたことも大きいが。最初は遠慮していたナマエも、残してもいけないからと言われた後は幸せそうにそれぞれの料理を頬張っていた。
各々が思い思いに過ごしたこの時間もあっという間で、夕食はケニーがどうしても寿司が食いたいと言い出して出前を取ることになった。復活したエレンとケニーが一緒になってちゃっかり特上を注文していた。しかも一番ででかい皿だ。窘めるクシェルに対して任せろと言っていたケニーだったが、財布を出すことになったのはなぜか俺だった。
夕食後に腹いっぱいになったエレン夫妻は満足そうに帰っていき、私もそろそろ…と言うナマエを引き留めたのは意外にも母親クシェルだった。
「ナマエちゃん、こんな時間だし一人は危ないわ。今日は泊まっていったら?」
「え、ご家族の団らんにさすがにそこまでできませんよ。」
「俺もリヴァイもこの通り酔っぱらっちまってるからな、送ってやれねぇんだ。遠慮せず泊まってけ。」
「でも…」
「そうしろ。正月早々心配かけんな。」
「うー、うん…お世話になります。」
まさかの二人のアシストでナマエを引き留めることができた。寝室掃除をした甲斐があったというもんだ。だが、さすがに俺たちが一緒に寝るわけにはいかないだろう。
ナマエはクシェルと一緒に客間で寝てもらって、ケニーは寝室に布団を敷いて雑魚寝でもしてもらうしかない。文句を言われそうだが。ケニーもナマエを引き留めた一人だ。なんとか納得するだろう。
―と、思っていたのは俺だけだったようだ。