第52話 男同士の
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「お!リヴァイ!久しぶりじゃん!来るなら一言連絡しろっての。一人?」
「すまねぇな。もうすぐジャンも来る。」
業務後、ファーランの店先に着いたのは俺の方だった。同じ職場、同じ部署でも何となく一緒に来るのは憚られた。
「珍しいな、お前らが一緒にって。」
「話があるらしい。」
「あー…なるほどね。」
ファーランは訳知りらしい。納得したように頷いた。ジャンは俺よりも頻繁にここに来ているらしいし、何か聞いているかもしれない。
「何か知ってんのか。」
「いや?知ってるような知らない。ような?俺から話すべきじゃねぇだろうし。まぁ、本人から聞けよ。」
ご本人もお出ましだ。そう言った後、ウエスタンドアが軋んだ音を出した。
「お疲れ様です。お待たせしてすみません。」
「いや、俺も今来た所だ。」
ファーランが二人分のおしぼりとつきだしを置いた後にジャンに向かって茶化すように話しかける。
「俺に対する話し方と随分違うじゃん。ひどくない?」
「そりゃ、尊敬してる人にはそれなりの話し方をしますよ。」
「はぁ?何お前喧嘩売ってんの?」
「とりあえずいつものやつお願いします。」
「聞けよ!」
俺がしばらく来ていない間にこいつらは随分と仲が良くなったみたいで。二人ともタイプは違うのに馬は合うようだ。ファーランも文句を言いつつ酒を作っている。
「あ、課長はどうしますか?」
「お前と一緒でいい。」
「わかりました。ファーランさん。」
「聞こえてるよ。待ってろ。」
出されたのはウイスキー。ロックだ。俺自身もよく口にする銘柄だが、少し癖の強いタイプだ。クソガキの癖に飲む酒だけは一人前か。グラスを寄せてきたので、カチンと端を合わせた。
「では、今年一年、お疲れ様でした。」
「あぁ、お疲れ。」
乾杯後、しばらく無言が続く。話があると言ったのはジャンの方だ。それでも、さっき少し気になったことを口に出してみることにした。
「尊敬…か。どうだかな。」
「疑ってます?本音ですよ。尊敬も信頼もしてます。凄すぎて一生勝てねぇって思ってます。仕事ぶりに関しては。」
「含んだ言い方をしやがる。」
「今日は腹を割って話そうって決意してきてるんで。まぁ、酒の力が無いと無理そうなんで強めの酒にしたんすけどね。」
眉尻を下げて笑うジャンはそのまま一気にグラスを空けた。大丈夫か?かなり強い酒だ。
「いつもこんな強ぇの飲んでんのか。」
「ナマエさんに合わせてたら自然とこうなるんですよ。お陰で大分強くなりました。」
「そうか。」
ナマエといつも一緒だと暗に言われているようで眉根が寄ってしまう。ジャンがお代わり、と言うとファーランはボトルごと置いて自分で勝手にしろ、と別の客の所へ行ってしまった。
「ほら、扱いが雑でしょ?お互い様ですよね。まぁ、俺たちが話しやすいよう席を離れたんだとは思いますけど。」
そう言ってボトルを手にしたので貸せ、と言ってグラスに注いでやった。
それからしばらくファーランとの最近のやり取りや忘年会と称して同期の男共をここに連れてきた時の話を続けるジャン。
痺れを切らしたのは、こちらの方だった。
「おいジャン。何か、俺に言いたいことがあったんじゃねぇのか。」
「課長…クリスマス、楽しかったですか。」
「は?」
質問に質問で返してきやがった。酔ったのかと思ったが俺を見てくる目はしっかりしている。何かを確信しているような顔だ。
「何が言いてぇ。」
「わざとですよね。ナマエさんからは見えない所にわざわざ付けなくてもいいでしょ。教えてやった時ものすごい慌てようでしたよ。笑えるくらいに。」
あの日付けた所有印の事だとすぐに分かった。これまで何度体を重ねても、見える所につけた事は一度も無かった。痕を付けるのをナマエ本人が嫌がっていたのもある。だがあの日はどうかしていた。
誰かに、いや、こいつに。ナマエは俺の物だと示したかったのだ。一見分かりにくい場所に、でもジャンなら確実に気づく場所に。案の定ジャンは気付いた。だが、まさかこうやって打って出てくるとは思っていなかった。
何も言わずに黙っていると、ふーっと大きく息を吐いたジャンが口を開く。
「まぁ、薄々はそうじゃねぇかなとは思ってました。決定的証拠見せつけられて、頭鈍器で殴られた気分でしたよ。」
「……。」
「ナマエさんみたいなタイプはそういう事に縁がないと思ってましたからね。理由、あるんですよね。セフレ紛いなことしてる理由。」
「恋人関係を隠してたとは思わねぇのか。」
「ナマエさん見てたら分かります。それに、本人からも付き合ってないと聞きました。」
「そうか。」
分かっていても否定された事実が刺さった。第三者から聞くのも現実を突きつけられているようでキツいものがある。
「課長は、違うでしょうけど。」
「……。」
「課長だって見てたら分かりますよ。だから、課長も分かりますよね。俺の事。」
「…そうだな。」
惚れた女を見てたら、そいつに向けられる好意にも気づく。お互い様という事らしい。
「何やってんすか。なんでナマエさんにセフレみたいなことさせてるんですか。体だけ手に入れても意味ないことくらい、あんたが一番分かってるでしょう!」
ジャンの語気に怒りや苛立ちが混じっているのが分かった。それでも俺は、あくまでも冷静である事に努めた。
「お前には関係のない事だ。」
「…課長は、俺をキレさせようとしてますか。」
そんなつもりはないが、こう言うしかない。こうなってしまった理由を話せば、ナマエを傷つけることになるだけだ。
「まさか快楽の為って訳でもないでしょう。理由、あるんですよね。」
「悪ぃが、お前に話せる事は何もねぇよ。」
そのまま、またしばらく無言が続いた。
無言でもお互いグラスが空けば注ぎ合う。周りが楽しそうに酒を飲んでいる間、俺たちはずっと黙ったままだった。その後沈黙を破ったのはジャンの方だった。
「…課長も、俺に聞きたいことありますよね。」
「そうだな。お前、ナマエと何があった。数日前…あれはクリスマスの翌日か。あれから様子がおかしい。お前と、俺に対してだけあいつの態度が違うのは何故だ。」
思っていた事を一度に聞いた。ジャンにだけならまだしも俺自身にまで降りかかってくる意味がわからなかったからだ。
「それは俺のせいですね。ナマエさんに、好きだって言いました。まぁ、勢いですけど。」
「っ。」
思わずヒュッと息を呑んだ。こいつは、俺が何年かかっても伝えられていない事を、勢いとはいえあっさりとやってのけた。
「心配しなくても、振られましたよ。」
「…そうか。」
「諦めませんって言ったら、あんな感じになりました。」
それでか。恐らく、どう接したらいいか分からなくなったんだろうな。俺はまた、そうか、としか言えなかった。
「分かりやすいですよね、ナマエさん。意識してますって顔に書いてましたよ。」
そう言ってジャンは自嘲気味に笑った。いや待て、それが何故俺にまで飛び火するんだ。
「じゃあ何で課長にまで、ですよね?あくまでも俺の予想なんですけど、俺に課長との関係がバレたせいで課長との距離感も掴み兼ねてるんじゃないですかね。」
それは…つまり。ジャンに誤解されたくないからではないだろうか。俺とナマエが親しそうにするところを、こいつに見られたくない、と。深読みしすぎかもしれないが。こんな事、口が裂けてもジャンには言えない。
俺が何も言わないでいると、それに関してはすみませんと一言添えて、でも…と続けた。
「課長とナマエさんとの関係を知った上で失礼を承知で言わせてもらいます。どんな事情があって今みたいな関係を続けてるのかはもう聞きません。それでも課長が今の関係を続けるつもりなら、ナマエさんが課長に対して恋愛感情を持ってない以上は俺は諦めるつもりはありません。なんとか振り向かせるつもりですし、もちろん二人の関係もやめさせます。」
一息で言い切った後、フーッとまた大きく息を吐いた。そして、またグラスの酒を一気に飲み干した。こんなに飲んで大丈夫か?こいつ。一応ボトルを傾けると、「流石にもうやめておきます。」と手で制してきた。
「…課長、何か言ってくださいよ。目の前でクソガキが生意気な事ほざいてんですよ。」
仕事の時もそうだ。こいつは、ここぞという時に胆力を見せてくる。曖昧な返事ではジャンに失礼だろう。ジャンの方に傾けていたボトルを自分のグラスに傾け継ぎ足した後、グイッと一気にそれを煽った。コンっとコースターに置いた後、ジャンの方を向き、真っ直ぐに目を見て話すことにした。
「そうだな。クソガキが一丁前に噛み付いてきたんだ。何も言わねぇのは無粋だろうな。」
ジャンが目を丸くしたのを見て少し笑ってしまった。真っ直ぐ向き合ってくるとは思ってなかったんだろう。
「俺たちの関係については、悪ぃがお前に話せることは何もねぇ。俺があいつに伝えてねぇ理由もお前に話す事じゃねぇ。だがな、俺はずっとあいつを見てきた。お前がナマエと出会うよりもずっと前からだ。ぽっと出のお前なんかにハイそうですかと譲れるほど軽い気持ちじゃねぇよ。それだけは覚えておけ。」
ジャンは驚いた表情で固まっている。そんなに俺の言葉が意外だったんだろうか。
「…やめさせようとしてるんですよ。ブチ切れ覚悟してたんですけど。」
「それは俺が決める事じゃねぇ。選ぶのはナマエだ。」
「そう…っすね。」
それから一言、二言会話をした後、ジャンは明日早いからと先に席を立った。財布を出そうとしたので、部下に払わせる上司がいるかと、それを制して帰らせた。
ジャンが帰った数分後、見計らった様にファーランがやってきた。
「話は終わった?」
…しっかり聞いてやがった癖に、よく言う。
「すまねぇな。もうすぐジャンも来る。」
業務後、ファーランの店先に着いたのは俺の方だった。同じ職場、同じ部署でも何となく一緒に来るのは憚られた。
「珍しいな、お前らが一緒にって。」
「話があるらしい。」
「あー…なるほどね。」
ファーランは訳知りらしい。納得したように頷いた。ジャンは俺よりも頻繁にここに来ているらしいし、何か聞いているかもしれない。
「何か知ってんのか。」
「いや?知ってるような知らない。ような?俺から話すべきじゃねぇだろうし。まぁ、本人から聞けよ。」
ご本人もお出ましだ。そう言った後、ウエスタンドアが軋んだ音を出した。
「お疲れ様です。お待たせしてすみません。」
「いや、俺も今来た所だ。」
ファーランが二人分のおしぼりとつきだしを置いた後にジャンに向かって茶化すように話しかける。
「俺に対する話し方と随分違うじゃん。ひどくない?」
「そりゃ、尊敬してる人にはそれなりの話し方をしますよ。」
「はぁ?何お前喧嘩売ってんの?」
「とりあえずいつものやつお願いします。」
「聞けよ!」
俺がしばらく来ていない間にこいつらは随分と仲が良くなったみたいで。二人ともタイプは違うのに馬は合うようだ。ファーランも文句を言いつつ酒を作っている。
「あ、課長はどうしますか?」
「お前と一緒でいい。」
「わかりました。ファーランさん。」
「聞こえてるよ。待ってろ。」
出されたのはウイスキー。ロックだ。俺自身もよく口にする銘柄だが、少し癖の強いタイプだ。クソガキの癖に飲む酒だけは一人前か。グラスを寄せてきたので、カチンと端を合わせた。
「では、今年一年、お疲れ様でした。」
「あぁ、お疲れ。」
乾杯後、しばらく無言が続く。話があると言ったのはジャンの方だ。それでも、さっき少し気になったことを口に出してみることにした。
「尊敬…か。どうだかな。」
「疑ってます?本音ですよ。尊敬も信頼もしてます。凄すぎて一生勝てねぇって思ってます。仕事ぶりに関しては。」
「含んだ言い方をしやがる。」
「今日は腹を割って話そうって決意してきてるんで。まぁ、酒の力が無いと無理そうなんで強めの酒にしたんすけどね。」
眉尻を下げて笑うジャンはそのまま一気にグラスを空けた。大丈夫か?かなり強い酒だ。
「いつもこんな強ぇの飲んでんのか。」
「ナマエさんに合わせてたら自然とこうなるんですよ。お陰で大分強くなりました。」
「そうか。」
ナマエといつも一緒だと暗に言われているようで眉根が寄ってしまう。ジャンがお代わり、と言うとファーランはボトルごと置いて自分で勝手にしろ、と別の客の所へ行ってしまった。
「ほら、扱いが雑でしょ?お互い様ですよね。まぁ、俺たちが話しやすいよう席を離れたんだとは思いますけど。」
そう言ってボトルを手にしたので貸せ、と言ってグラスに注いでやった。
それからしばらくファーランとの最近のやり取りや忘年会と称して同期の男共をここに連れてきた時の話を続けるジャン。
痺れを切らしたのは、こちらの方だった。
「おいジャン。何か、俺に言いたいことがあったんじゃねぇのか。」
「課長…クリスマス、楽しかったですか。」
「は?」
質問に質問で返してきやがった。酔ったのかと思ったが俺を見てくる目はしっかりしている。何かを確信しているような顔だ。
「何が言いてぇ。」
「わざとですよね。ナマエさんからは見えない所にわざわざ付けなくてもいいでしょ。教えてやった時ものすごい慌てようでしたよ。笑えるくらいに。」
あの日付けた所有印の事だとすぐに分かった。これまで何度体を重ねても、見える所につけた事は一度も無かった。痕を付けるのをナマエ本人が嫌がっていたのもある。だがあの日はどうかしていた。
誰かに、いや、こいつに。ナマエは俺の物だと示したかったのだ。一見分かりにくい場所に、でもジャンなら確実に気づく場所に。案の定ジャンは気付いた。だが、まさかこうやって打って出てくるとは思っていなかった。
何も言わずに黙っていると、ふーっと大きく息を吐いたジャンが口を開く。
「まぁ、薄々はそうじゃねぇかなとは思ってました。決定的証拠見せつけられて、頭鈍器で殴られた気分でしたよ。」
「……。」
「ナマエさんみたいなタイプはそういう事に縁がないと思ってましたからね。理由、あるんですよね。セフレ紛いなことしてる理由。」
「恋人関係を隠してたとは思わねぇのか。」
「ナマエさん見てたら分かります。それに、本人からも付き合ってないと聞きました。」
「そうか。」
分かっていても否定された事実が刺さった。第三者から聞くのも現実を突きつけられているようでキツいものがある。
「課長は、違うでしょうけど。」
「……。」
「課長だって見てたら分かりますよ。だから、課長も分かりますよね。俺の事。」
「…そうだな。」
惚れた女を見てたら、そいつに向けられる好意にも気づく。お互い様という事らしい。
「何やってんすか。なんでナマエさんにセフレみたいなことさせてるんですか。体だけ手に入れても意味ないことくらい、あんたが一番分かってるでしょう!」
ジャンの語気に怒りや苛立ちが混じっているのが分かった。それでも俺は、あくまでも冷静である事に努めた。
「お前には関係のない事だ。」
「…課長は、俺をキレさせようとしてますか。」
そんなつもりはないが、こう言うしかない。こうなってしまった理由を話せば、ナマエを傷つけることになるだけだ。
「まさか快楽の為って訳でもないでしょう。理由、あるんですよね。」
「悪ぃが、お前に話せる事は何もねぇよ。」
そのまま、またしばらく無言が続いた。
無言でもお互いグラスが空けば注ぎ合う。周りが楽しそうに酒を飲んでいる間、俺たちはずっと黙ったままだった。その後沈黙を破ったのはジャンの方だった。
「…課長も、俺に聞きたいことありますよね。」
「そうだな。お前、ナマエと何があった。数日前…あれはクリスマスの翌日か。あれから様子がおかしい。お前と、俺に対してだけあいつの態度が違うのは何故だ。」
思っていた事を一度に聞いた。ジャンにだけならまだしも俺自身にまで降りかかってくる意味がわからなかったからだ。
「それは俺のせいですね。ナマエさんに、好きだって言いました。まぁ、勢いですけど。」
「っ。」
思わずヒュッと息を呑んだ。こいつは、俺が何年かかっても伝えられていない事を、勢いとはいえあっさりとやってのけた。
「心配しなくても、振られましたよ。」
「…そうか。」
「諦めませんって言ったら、あんな感じになりました。」
それでか。恐らく、どう接したらいいか分からなくなったんだろうな。俺はまた、そうか、としか言えなかった。
「分かりやすいですよね、ナマエさん。意識してますって顔に書いてましたよ。」
そう言ってジャンは自嘲気味に笑った。いや待て、それが何故俺にまで飛び火するんだ。
「じゃあ何で課長にまで、ですよね?あくまでも俺の予想なんですけど、俺に課長との関係がバレたせいで課長との距離感も掴み兼ねてるんじゃないですかね。」
それは…つまり。ジャンに誤解されたくないからではないだろうか。俺とナマエが親しそうにするところを、こいつに見られたくない、と。深読みしすぎかもしれないが。こんな事、口が裂けてもジャンには言えない。
俺が何も言わないでいると、それに関してはすみませんと一言添えて、でも…と続けた。
「課長とナマエさんとの関係を知った上で失礼を承知で言わせてもらいます。どんな事情があって今みたいな関係を続けてるのかはもう聞きません。それでも課長が今の関係を続けるつもりなら、ナマエさんが課長に対して恋愛感情を持ってない以上は俺は諦めるつもりはありません。なんとか振り向かせるつもりですし、もちろん二人の関係もやめさせます。」
一息で言い切った後、フーッとまた大きく息を吐いた。そして、またグラスの酒を一気に飲み干した。こんなに飲んで大丈夫か?こいつ。一応ボトルを傾けると、「流石にもうやめておきます。」と手で制してきた。
「…課長、何か言ってくださいよ。目の前でクソガキが生意気な事ほざいてんですよ。」
仕事の時もそうだ。こいつは、ここぞという時に胆力を見せてくる。曖昧な返事ではジャンに失礼だろう。ジャンの方に傾けていたボトルを自分のグラスに傾け継ぎ足した後、グイッと一気にそれを煽った。コンっとコースターに置いた後、ジャンの方を向き、真っ直ぐに目を見て話すことにした。
「そうだな。クソガキが一丁前に噛み付いてきたんだ。何も言わねぇのは無粋だろうな。」
ジャンが目を丸くしたのを見て少し笑ってしまった。真っ直ぐ向き合ってくるとは思ってなかったんだろう。
「俺たちの関係については、悪ぃがお前に話せることは何もねぇ。俺があいつに伝えてねぇ理由もお前に話す事じゃねぇ。だがな、俺はずっとあいつを見てきた。お前がナマエと出会うよりもずっと前からだ。ぽっと出のお前なんかにハイそうですかと譲れるほど軽い気持ちじゃねぇよ。それだけは覚えておけ。」
ジャンは驚いた表情で固まっている。そんなに俺の言葉が意外だったんだろうか。
「…やめさせようとしてるんですよ。ブチ切れ覚悟してたんですけど。」
「それは俺が決める事じゃねぇ。選ぶのはナマエだ。」
「そう…っすね。」
それから一言、二言会話をした後、ジャンは明日早いからと先に席を立った。財布を出そうとしたので、部下に払わせる上司がいるかと、それを制して帰らせた。
ジャンが帰った数分後、見計らった様にファーランがやってきた。
「話は終わった?」
…しっかり聞いてやがった癖に、よく言う。