第52話 男同士の
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
明日で仕事納めというこの日、営業部はというと、優秀な社員たちのお陰でほとんどやるべき事は済まされており、あとは新年の仕事初めの準備のみという所まで来ていた。
心残りなく年末を迎えることができるなんざ、いつぶりだろうか。
いや、一つだけ気になっている事はある。
ナマエの様子がおかしい。時々情緒不安定になるのは今に始まった事ではないが、それはあくまでもプライベートでの姿だ。職場でこんなにも分かりやすく〝様子がおかしい〟と思わせるのは珍しい。
…そうでもないか。春頃からだろうか。本人が頑なに貫いていた〝会社での顔〟が崩れつつあったのは。理由なんか言われなくても分かっていた。
俺の目の前で済ました顔して淡々と業務報告をする、馬面の部下。こいつといる時のナマエは、よく表情を変えるようになった。
いつも穏やかで笑顔以外見たことがない、と100人に聞けば100人がそう答えただろう。しかし、最近では「ナマエさんでもあんな顔するんですね」「怒った顔初めて見ました」などと言われているのを耳にするようになった。ペトラ曰く、〝いつも笑顔で優しいけどどこか壁を感じる〟という印象だったらしいが、それも今ではほとんど感じることはないらしい。
別にナマエ自体が変わったとは思っていない。あいつは元々そういう奴だ。出会った時からずっと。
あいつが、〝職場での顔〟を作り出した理由を知っているし、それを咎めようとも思わなかった。むしろ、俺だけは素のナマエを知っていたから、それで良かった。いや、優越感もあったかもしれない。ナマエが会社で無理して〝ナマエ・ミョウジ〟を演じていることから目を背けていた。
いい意味でナマエが素の姿でで仕事ができるなら、俺のちっぽけな独占欲や優越感など俺自身が握りつぶして飲み込んでしまえばそれでいい。
だが、今のナマエはそういうことじゃない。明らかに無理をしている。表情も話し方も何もかもがわざとらしくぎこちない。
笑顔は堅いし、あまり目も合わせない。必要な会話以外一切なし。どうかしたかと聞いてみても、何もないですよと、目を逸らす。距離も拳一つ分いつもより遠い。
ジャンとのやり取りがおかしいのは、きっとまた痴話喧嘩のような事をしたんだろうと思っていた。しかし、俺に対してまでぎこちないのはどういう事だ。苦くも甘い誕生日を過ごしたのはほんの数日前だ。たった数日で何があった。
「-ーー以上が、今年一年の収益と来月から年度末までの見込みに関する報告です。」
「あぁ、ご苦労だったな。」
余計な事を考えながらもジャンの報告は聞いていた。資料の見やすさから要点を押さえた報告の仕方。またこいつは一歩成長したらしい。それに、この資料は見覚えのあるパターンだった。
「資料、お前が作ったのか?」
「作ったのは俺ですが、内容自体はほぼナマエさんの案ですよ。」
「そうか。」
やはりか。たとえお互いに何かあったとしても業務に支障を出さないあたりがこいつららしいとも思う。もういいぞ、と退席を促そうとしたが、ジャンが思いがけない事を口走った。
「課長、今夜空いてますか?」
「いきなりなんだ。」
「明日で仕事納めですし、話すなら今夜しかないなと思ったんで。今年の内に話しておきたいんですよ。」
「仕事の話ならもう済んだだろうが。」
何となく聞きたくない話のような気がしてあしらおうとした。それなのにジャンはまっすぐこちらを見てきて。
「違うって分かってますよね。それに、課長も俺に聞きたいことあるんじゃないっすか。」
「…相変わらずクソ生意気なガキだな。」
「ファーランさんの店でいいですか?」
「あぁ。」
俺の悪態を了承と取ったジャンは、また夜に、そう言って席を立った。
ふと、ナマエの方を伺うと、ジャンが席に戻ると同時に席を立ち、ナナバの方へ向かっていた。書類を手に持っていることから必要な離席だとは思うがタイミングが良すぎた。
ジャンはというと、無表情ながらも少し眉間に皺を作っている。避けられていると分かってるんだろう。
ナナバと話すナマエはとても穏やかな表情だ。それこそペトラの言う、壁のない笑顔だ。
そこにゲルガーが混じりさらにうるさくなる。
ゲルガーに返事をする際も特に違和感はない。
初めはまた、対男に壁を作り出したのかと思ったが、違うらしい。
〝様子がおかしい〟のは、俺とジャン限定のようだ。
おい馬面。何をしやがった。
心残りなく年末を迎えることができるなんざ、いつぶりだろうか。
いや、一つだけ気になっている事はある。
ナマエの様子がおかしい。時々情緒不安定になるのは今に始まった事ではないが、それはあくまでもプライベートでの姿だ。職場でこんなにも分かりやすく〝様子がおかしい〟と思わせるのは珍しい。
…そうでもないか。春頃からだろうか。本人が頑なに貫いていた〝会社での顔〟が崩れつつあったのは。理由なんか言われなくても分かっていた。
俺の目の前で済ました顔して淡々と業務報告をする、馬面の部下。こいつといる時のナマエは、よく表情を変えるようになった。
いつも穏やかで笑顔以外見たことがない、と100人に聞けば100人がそう答えただろう。しかし、最近では「ナマエさんでもあんな顔するんですね」「怒った顔初めて見ました」などと言われているのを耳にするようになった。ペトラ曰く、〝いつも笑顔で優しいけどどこか壁を感じる〟という印象だったらしいが、それも今ではほとんど感じることはないらしい。
別にナマエ自体が変わったとは思っていない。あいつは元々そういう奴だ。出会った時からずっと。
あいつが、〝職場での顔〟を作り出した理由を知っているし、それを咎めようとも思わなかった。むしろ、俺だけは素のナマエを知っていたから、それで良かった。いや、優越感もあったかもしれない。ナマエが会社で無理して〝ナマエ・ミョウジ〟を演じていることから目を背けていた。
いい意味でナマエが素の姿でで仕事ができるなら、俺のちっぽけな独占欲や優越感など俺自身が握りつぶして飲み込んでしまえばそれでいい。
だが、今のナマエはそういうことじゃない。明らかに無理をしている。表情も話し方も何もかもがわざとらしくぎこちない。
笑顔は堅いし、あまり目も合わせない。必要な会話以外一切なし。どうかしたかと聞いてみても、何もないですよと、目を逸らす。距離も拳一つ分いつもより遠い。
ジャンとのやり取りがおかしいのは、きっとまた痴話喧嘩のような事をしたんだろうと思っていた。しかし、俺に対してまでぎこちないのはどういう事だ。苦くも甘い誕生日を過ごしたのはほんの数日前だ。たった数日で何があった。
「-ーー以上が、今年一年の収益と来月から年度末までの見込みに関する報告です。」
「あぁ、ご苦労だったな。」
余計な事を考えながらもジャンの報告は聞いていた。資料の見やすさから要点を押さえた報告の仕方。またこいつは一歩成長したらしい。それに、この資料は見覚えのあるパターンだった。
「資料、お前が作ったのか?」
「作ったのは俺ですが、内容自体はほぼナマエさんの案ですよ。」
「そうか。」
やはりか。たとえお互いに何かあったとしても業務に支障を出さないあたりがこいつららしいとも思う。もういいぞ、と退席を促そうとしたが、ジャンが思いがけない事を口走った。
「課長、今夜空いてますか?」
「いきなりなんだ。」
「明日で仕事納めですし、話すなら今夜しかないなと思ったんで。今年の内に話しておきたいんですよ。」
「仕事の話ならもう済んだだろうが。」
何となく聞きたくない話のような気がしてあしらおうとした。それなのにジャンはまっすぐこちらを見てきて。
「違うって分かってますよね。それに、課長も俺に聞きたいことあるんじゃないっすか。」
「…相変わらずクソ生意気なガキだな。」
「ファーランさんの店でいいですか?」
「あぁ。」
俺の悪態を了承と取ったジャンは、また夜に、そう言って席を立った。
ふと、ナマエの方を伺うと、ジャンが席に戻ると同時に席を立ち、ナナバの方へ向かっていた。書類を手に持っていることから必要な離席だとは思うがタイミングが良すぎた。
ジャンはというと、無表情ながらも少し眉間に皺を作っている。避けられていると分かってるんだろう。
ナナバと話すナマエはとても穏やかな表情だ。それこそペトラの言う、壁のない笑顔だ。
そこにゲルガーが混じりさらにうるさくなる。
ゲルガーに返事をする際も特に違和感はない。
初めはまた、対男に壁を作り出したのかと思ったが、違うらしい。
〝様子がおかしい〟のは、俺とジャン限定のようだ。
おい馬面。何をしやがった。