第51話 宣戦布告
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「こんな悪天候の日にわざわざすまんかったのう。」
「いえ、ピクシス専務には今年も一年お世話になったので年末のご挨拶には絶対伺うつもりでしたので。」
「ほっほっ。相変わらずじゃの。」
和やかな雰囲気で話すピクシス専務とナマエさんをぼんやりと眺めていた。ナマエさんの事が大好きなピクシス専務は俺の事は放置してずっと楽しそうに話している。いつもの事なので気にしていないが。
「して、昨夜はどうじゃった?あそこは景色も食事も文句なしじゃったろう?」
昨夜?と思っていると、ナマエさんがチラッと少しだけこちらを気にした後にピクシス専務に返事をした。
「そうですね。とても素敵なお店でした。奥様にもありがとうございましたとお伝えください。」
「かまんよ。行けなくなった分をそなたに譲っただけじゃからのう。リヴァイと行ったのか?」
「そう…ですね。」
「そうかそうか!リヴァイには今回の礼に今度酒の席に付き合えと伝えておいてくれ。」
「分かりました。」
会話の内容から何となく察した俺はモヤモヤした気持ちを抱えながらもその場から逃げ出すわけにもいかないのでじっと大人しくしていた。
他愛ない話から来年の予定など、一通り話した俺たちがピクシス常務への挨拶を終え、帰路につく時の事だ。
ローゼカンパニーのエレベーターに乗り込んで最初に声を発したのはナマエさんの方だった。
「お天気少しは回復したかな?雷もなかなか鳴りやまないね。」
「そうっすね。」
一階へのボタンを押すナマエさんに対して俺はそっけない返事しかできなかった。
「キルシュタインくん?どうかした?」
「…いや、別に。」
「そう?」
「………あの、ナマエさん。昨日は…リヴァー」ーーーードン!ーーー
「うわっ!」
「きゃ!」
俺がナマエさんに話そうとした瞬間、地震かと思うほどの振動と同時にエレベーターの中が真っ暗になった。かろうじて非常灯が薄ぼんやりと点いているだけだ。
…停電か?動き出したばかりのエレベーターも止まってしまったらしい。
「ナマエさん?大丈夫ですか?」
「………」
「ナマエさん?」
どうしたのだろうか。一向に返事がない。恐怖の余り声が出ないのかもしれない。
非常灯はかなり小さく、ナマエさんがどこにいるのかまでは分からない。心配になり手探りで真っ暗の中ナマエさんを探した。
〝キルシュタインくん…怖い〟
ーーー背中に感じる小さな温もり。
〝暗いのが怖いんすか?可愛い人ですね。〟
〝からかわないで…〟
〝大丈夫っすよ。俺が付いてます。ほらこっち向いて。〟
ーーー背中にしがみつく彼女を正面からギュッと抱きしめる。
〝あったかい…〟
〝ナマエさん、俺…〟
ーーーパッ!
「うおっ!」
ナマエさんがスマホのライトを点けたことで俺の妄想は強制終了させられた。
俺は…なんつー妄想を…でもさっきのナマエさん可愛かった…と余韻に浸っていた。
ガキか俺は。妄想のレベルが低すぎる。
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃった?バッグの中のスマホ探すのに必死だったよ。」
「…そうっすか。」
真っ暗の中スマホのライトを点けたナマエさんの怪談話をする時の様な照らし方に気が抜けてしまった。
何一つ慌てることなく緊急連絡ボタンを長押しするナマエさんを冷静かよ…と思いながら頭を振り先ほどの妄想をかき消した。
『はい、ローゼエレベーターサービスです。』
「あ、すみません。急にエレベーター止まっちゃったみたいなんですけど。」
管理会社の話では、大きな雷が近くに落ちたらしく、システムダウンしたらしい。復旧まで30分はかかりそうだとのこと。そして照明は回復したが暖房が機能しないらしいことが分かった。
管理会社との会話を終わらせた後、ナマエさんが困ったように見上げてきた。言われた通り照明は復活した。そして案の定換気口からは冷たい風しか入ってこない。
「…コート、車の中だ。」
「…ですね。」
そう、ナマエさんは荷物になるからとコートやマフラーを社用車の中に置いてきたのだ。俺は車から建物に入る間も寒いのは嫌だったのでコートを持ったままだった。
「コート脱いで渡してやりたいのは山々なんすけど、それだと俺も寒ぃんで。こっち来てもらえます?」
コートを広げてナマエさんを迎える体勢を取ると、え、でも、と戸惑っている様子だ。
「普段の電車でもこれくらいの距離だから何ともないでしょ。」
「そうだけど…。」
「ナマエさんのカッコ見てるだけで寒いんで。早く。」
「…うん、ありがとう。」
躊躇いながらもこちらに近寄ってきて、背中を向けてコートの中に入った。正面から抱きしめられるのは恥ずかしいらしい。俺からすると思いがけずバックハグ状態になりラッキーだ。
寒くないっすか?と聞きながらコートでナマエさんを包むように抱きしめると、香ったのはいつもと違うシャンプーの匂いだった。
途端に、いつかのエレンのバカ発言が蘇る。
本当は気付いていた。今朝同じ電車じゃなかった理由も、見たことのないネックレスをしている理由にも。
そして、ナマエさん本人には見えない首の後ろ。項のあたりに付いた誰かさんの独占欲の赤い印にも。
後ろから抱きしめたことでここからしっかり見える。
気付かない振りをしていたのに、このシャンプーの匂いのせいで全てが台無しだ。
さっきのピクシス専務との会話でもダメ押しされた。
「昨日、リヴァイ課長と一緒だったんですよね。」
「あ、うん。」
言うな言うなと頭が警鐘を鳴らしているのに俺の口は残念ながら止まってくれないようだ。
「気心知れた親友…でしたっけ。」
「キルシュタインくん?…どうしたの?」
やめろ。聞いたっていいことない。
「親友と、こういうことするんだ。」
「っ!…何?」
言いながら、誰かさんの所有印の上を指でなぞると、ナマエさんはびくっと首を竦めた。
「付いてますよ。キスマーク。ナマエさんからは見えない所に。」
「…!」
バッと効果音が付きそうな勢いで首に手を回し、そのまま俺から離れようとしたので更に強く抱きしめた。
「ねぇナマエさん。気心知れた親友とこういうことできるなら、俺は?気心知れた部下 ともできる?」
「何…言ってる…の?」
違う。俺は別に彼女とシたいわけじゃない。いや、シたいけど。そうじゃない。
いかん。このままだと変な方向になる。
「いや…すんません。変なこと言いました。でも。ナマエさん、俺がこんな事言い出す理由、分からないんですか?」
「………分からない。」
「いや、それ分かってるやつだろ。」
ヘタクソなナマエさんの言い方に思わず笑ってしまった。
本人に気付かれてないと思えるほど俺だって鈍くはない。でも、この関係をもう少し続けるのも悪くないと思っていた。
5分前までは。
頭の中で響く警鐘もどこかへ行ってしまった。
「結構分かりやすくしてたつもりですけどね。」
「……。」
「俺だって、さすがに自分の惚れた女が違う男と一晩過ごしてたこと知って冷静でいられる程できた男じゃないんすよ。今猛烈にリヴァイ課長なにやってんだって掴みかかりたい気持ちで一杯ですよ。」
「……。」
ナマエさんは何も言わない。何も言えないのかもしれないが。それでも俺は言いたいことを我慢つもりなんかとっくになかった。
「一応聞きますけど。リヴァイ課長と付き合ってます?」
「…付き合ってない。」
やっと口を開いてくれた。
「付き合ってねぇのにそんなことすんのかよ、とは言いません。男女の関係なんてそれぞれ、でしたよね。」
「……。」
「も一個。一応聞きますけど。課長のこと好きですか?もちろん恋愛的意味で。」
「………。」
「分かりました。じゃあまだ俺にもチャンスはありますよね。」
「まだ、何も言ってない…。」
「即答できないってことはそういう事でしょ。好きって言っときゃすんなり俺のこと振れたのに。バカですね。」
嘘が付けないナマエさんらしいなと思った。リヴァイ課長とどうして今のような関係になったか知りたい気持ちには今回とりあえず蓋をした。
ここまで言ってしまった。もうどうにでもなれと思った。
「俺が好きですって言ったら。ナマエさん、応えてくれます?」
「…ごめんなさい。」
「ですよね。」
分かってはいても堪えるもんだな。想像以上にHPを削られた気がした。
「まぁ。諦めませんけど。」
「…え?」
「俺の事、好きになればいいんですよ。そしたら応えてくれるでしょ?」
「え、ちょっと。」
「これからは容赦しないんで。覚悟しておいてくださいね。」
どこにもそんな自信はない。むしろリヴァイ課長に勝てる所なんて身長以外一つも思いつかない。
自分でもなんつー勝気な宣言をしたんだと馬鹿らしくなる。
でも、敵対視するべきはリヴァイ課長じゃないことも何となく分かっている。
そのことを言及するのは今はやめておいた方がいいと、俺の直感がそう言っていた。
「あの…キルシュター」
ナマエさんが何かを言いかけた時、エレベーターが復旧したのか、ブゥンという機械音がして動き出した。
「直ったみたいですね。意外と早かったな。」
「そう、だね。」
「さ、本社戻りましょう。」
「…うん。」
抱きしめていたナマエさんを解放して、いつも通りに接した。
俺自身は言いたいことを言ってしまって妙にすっきりしていたが、帰りの車の中でも、本社に戻ってからも。
ナマエさんは明らかに俺に対してぎこちなくなっていて。
就業時間までそれは続き。
やっちまった、と思った。
「いえ、ピクシス専務には今年も一年お世話になったので年末のご挨拶には絶対伺うつもりでしたので。」
「ほっほっ。相変わらずじゃの。」
和やかな雰囲気で話すピクシス専務とナマエさんをぼんやりと眺めていた。ナマエさんの事が大好きなピクシス専務は俺の事は放置してずっと楽しそうに話している。いつもの事なので気にしていないが。
「して、昨夜はどうじゃった?あそこは景色も食事も文句なしじゃったろう?」
昨夜?と思っていると、ナマエさんがチラッと少しだけこちらを気にした後にピクシス専務に返事をした。
「そうですね。とても素敵なお店でした。奥様にもありがとうございましたとお伝えください。」
「かまんよ。行けなくなった分をそなたに譲っただけじゃからのう。リヴァイと行ったのか?」
「そう…ですね。」
「そうかそうか!リヴァイには今回の礼に今度酒の席に付き合えと伝えておいてくれ。」
「分かりました。」
会話の内容から何となく察した俺はモヤモヤした気持ちを抱えながらもその場から逃げ出すわけにもいかないのでじっと大人しくしていた。
他愛ない話から来年の予定など、一通り話した俺たちがピクシス常務への挨拶を終え、帰路につく時の事だ。
ローゼカンパニーのエレベーターに乗り込んで最初に声を発したのはナマエさんの方だった。
「お天気少しは回復したかな?雷もなかなか鳴りやまないね。」
「そうっすね。」
一階へのボタンを押すナマエさんに対して俺はそっけない返事しかできなかった。
「キルシュタインくん?どうかした?」
「…いや、別に。」
「そう?」
「………あの、ナマエさん。昨日は…リヴァー」ーーーードン!ーーー
「うわっ!」
「きゃ!」
俺がナマエさんに話そうとした瞬間、地震かと思うほどの振動と同時にエレベーターの中が真っ暗になった。かろうじて非常灯が薄ぼんやりと点いているだけだ。
…停電か?動き出したばかりのエレベーターも止まってしまったらしい。
「ナマエさん?大丈夫ですか?」
「………」
「ナマエさん?」
どうしたのだろうか。一向に返事がない。恐怖の余り声が出ないのかもしれない。
非常灯はかなり小さく、ナマエさんがどこにいるのかまでは分からない。心配になり手探りで真っ暗の中ナマエさんを探した。
〝キルシュタインくん…怖い〟
ーーー背中に感じる小さな温もり。
〝暗いのが怖いんすか?可愛い人ですね。〟
〝からかわないで…〟
〝大丈夫っすよ。俺が付いてます。ほらこっち向いて。〟
ーーー背中にしがみつく彼女を正面からギュッと抱きしめる。
〝あったかい…〟
〝ナマエさん、俺…〟
ーーーパッ!
「うおっ!」
ナマエさんがスマホのライトを点けたことで俺の妄想は強制終了させられた。
俺は…なんつー妄想を…でもさっきのナマエさん可愛かった…と余韻に浸っていた。
ガキか俺は。妄想のレベルが低すぎる。
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃった?バッグの中のスマホ探すのに必死だったよ。」
「…そうっすか。」
真っ暗の中スマホのライトを点けたナマエさんの怪談話をする時の様な照らし方に気が抜けてしまった。
何一つ慌てることなく緊急連絡ボタンを長押しするナマエさんを冷静かよ…と思いながら頭を振り先ほどの妄想をかき消した。
『はい、ローゼエレベーターサービスです。』
「あ、すみません。急にエレベーター止まっちゃったみたいなんですけど。」
管理会社の話では、大きな雷が近くに落ちたらしく、システムダウンしたらしい。復旧まで30分はかかりそうだとのこと。そして照明は回復したが暖房が機能しないらしいことが分かった。
管理会社との会話を終わらせた後、ナマエさんが困ったように見上げてきた。言われた通り照明は復活した。そして案の定換気口からは冷たい風しか入ってこない。
「…コート、車の中だ。」
「…ですね。」
そう、ナマエさんは荷物になるからとコートやマフラーを社用車の中に置いてきたのだ。俺は車から建物に入る間も寒いのは嫌だったのでコートを持ったままだった。
「コート脱いで渡してやりたいのは山々なんすけど、それだと俺も寒ぃんで。こっち来てもらえます?」
コートを広げてナマエさんを迎える体勢を取ると、え、でも、と戸惑っている様子だ。
「普段の電車でもこれくらいの距離だから何ともないでしょ。」
「そうだけど…。」
「ナマエさんのカッコ見てるだけで寒いんで。早く。」
「…うん、ありがとう。」
躊躇いながらもこちらに近寄ってきて、背中を向けてコートの中に入った。正面から抱きしめられるのは恥ずかしいらしい。俺からすると思いがけずバックハグ状態になりラッキーだ。
寒くないっすか?と聞きながらコートでナマエさんを包むように抱きしめると、香ったのはいつもと違うシャンプーの匂いだった。
途端に、いつかのエレンのバカ発言が蘇る。
本当は気付いていた。今朝同じ電車じゃなかった理由も、見たことのないネックレスをしている理由にも。
そして、ナマエさん本人には見えない首の後ろ。項のあたりに付いた誰かさんの独占欲の赤い印にも。
後ろから抱きしめたことでここからしっかり見える。
気付かない振りをしていたのに、このシャンプーの匂いのせいで全てが台無しだ。
さっきのピクシス専務との会話でもダメ押しされた。
「昨日、リヴァイ課長と一緒だったんですよね。」
「あ、うん。」
言うな言うなと頭が警鐘を鳴らしているのに俺の口は残念ながら止まってくれないようだ。
「気心知れた親友…でしたっけ。」
「キルシュタインくん?…どうしたの?」
やめろ。聞いたっていいことない。
「親友と、こういうことするんだ。」
「っ!…何?」
言いながら、誰かさんの所有印の上を指でなぞると、ナマエさんはびくっと首を竦めた。
「付いてますよ。キスマーク。ナマエさんからは見えない所に。」
「…!」
バッと効果音が付きそうな勢いで首に手を回し、そのまま俺から離れようとしたので更に強く抱きしめた。
「ねぇナマエさん。気心知れた親友とこういうことできるなら、俺は?気心知れた
「何…言ってる…の?」
違う。俺は別に彼女とシたいわけじゃない。いや、シたいけど。そうじゃない。
いかん。このままだと変な方向になる。
「いや…すんません。変なこと言いました。でも。ナマエさん、俺がこんな事言い出す理由、分からないんですか?」
「………分からない。」
「いや、それ分かってるやつだろ。」
ヘタクソなナマエさんの言い方に思わず笑ってしまった。
本人に気付かれてないと思えるほど俺だって鈍くはない。でも、この関係をもう少し続けるのも悪くないと思っていた。
5分前までは。
頭の中で響く警鐘もどこかへ行ってしまった。
「結構分かりやすくしてたつもりですけどね。」
「……。」
「俺だって、さすがに自分の惚れた女が違う男と一晩過ごしてたこと知って冷静でいられる程できた男じゃないんすよ。今猛烈にリヴァイ課長なにやってんだって掴みかかりたい気持ちで一杯ですよ。」
「……。」
ナマエさんは何も言わない。何も言えないのかもしれないが。それでも俺は言いたいことを我慢つもりなんかとっくになかった。
「一応聞きますけど。リヴァイ課長と付き合ってます?」
「…付き合ってない。」
やっと口を開いてくれた。
「付き合ってねぇのにそんなことすんのかよ、とは言いません。男女の関係なんてそれぞれ、でしたよね。」
「……。」
「も一個。一応聞きますけど。課長のこと好きですか?もちろん恋愛的意味で。」
「………。」
「分かりました。じゃあまだ俺にもチャンスはありますよね。」
「まだ、何も言ってない…。」
「即答できないってことはそういう事でしょ。好きって言っときゃすんなり俺のこと振れたのに。バカですね。」
嘘が付けないナマエさんらしいなと思った。リヴァイ課長とどうして今のような関係になったか知りたい気持ちには今回とりあえず蓋をした。
ここまで言ってしまった。もうどうにでもなれと思った。
「俺が好きですって言ったら。ナマエさん、応えてくれます?」
「…ごめんなさい。」
「ですよね。」
分かってはいても堪えるもんだな。想像以上にHPを削られた気がした。
「まぁ。諦めませんけど。」
「…え?」
「俺の事、好きになればいいんですよ。そしたら応えてくれるでしょ?」
「え、ちょっと。」
「これからは容赦しないんで。覚悟しておいてくださいね。」
どこにもそんな自信はない。むしろリヴァイ課長に勝てる所なんて身長以外一つも思いつかない。
自分でもなんつー勝気な宣言をしたんだと馬鹿らしくなる。
でも、敵対視するべきはリヴァイ課長じゃないことも何となく分かっている。
そのことを言及するのは今はやめておいた方がいいと、俺の直感がそう言っていた。
「あの…キルシュター」
ナマエさんが何かを言いかけた時、エレベーターが復旧したのか、ブゥンという機械音がして動き出した。
「直ったみたいですね。意外と早かったな。」
「そう、だね。」
「さ、本社戻りましょう。」
「…うん。」
抱きしめていたナマエさんを解放して、いつも通りに接した。
俺自身は言いたいことを言ってしまって妙にすっきりしていたが、帰りの車の中でも、本社に戻ってからも。
ナマエさんは明らかに俺に対してぎこちなくなっていて。
就業時間までそれは続き。
やっちまった、と思った。