第50話 聖なる夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
メインゲートを抜けると最初に目に入る正面の大階段。壁には大きな振り子時計が鎮座しており、ゆっくりと時を刻んでいる。床一面深みのあるワインレッドの絨毯で統一されており、どこか異国の古城を思わせるここは、ローゼロイヤルガーデンホテル。
ナマエとの待ち合わせで指定されてやって来たが、王族であるフリッツ家も利用するというだけあって、格式高い佇まいだ。
任せて欲しいと言われたものの、ここは、高すぎるのではないだろうか。
当のナマエはまだ来ていない。というのも、仕事の後、一度帰って着替えたいと言われたからだ。
このまま来なかったら…漠然とした不安を抱えつつ、振り子がゆっくりと動く様を見ながら本人の到着を待った。
「お待たせ!ごめんね、待ったよね。」
「いや、そうでもねぇよ。」
実際そんなには待っていないと思う。漠然とした不安はナマエの顔を見たことでどこかへ消えていった。
オフィスで見た時と髪型が変わっていて、化粧も少ししっかり施されているなと思った。サイドに緩く流された栗色の髪に、いつもよりも発色の強い唇に色気を感じてゴクリと唾を飲んだ。コートを羽織っているため服装はまだわからないが、ホテルに合わせてドレスコードを合わせたんだろう。
「上のレストランで予約してるから、早速だけど行こっか!」
「ありがてぇが奮発しすぎじゃねぇか。」
「だって、記念すべき30歳のお誕生日だもん、これくらいしないとね!」
そうか、30か。自分の歳すら忘れるくらい、俺も歳をとったと言うことらしい。
ナマエに一言すまねぇなとだけ告げて、エレベーターで最上階へ向かった。
一面ガラス張りの店で、一番見晴らしの良い窓際の席へと案内された。今日はクリスマスだ。さすがに人が多い。その中でこの競争率の高いホテルで、さらには一番良い席を取ったナマエに脱帽だ。俺のために色々と手配してくれているという事実に頬が緩んだ。
「よく取れたな。こんな席。」
「実はね、ローゼカンパニーのピクシス専務のお陰なんだよ。ここの支配人とご友人らしくて。」
「じいさんに頼んだのか?」
「ううん、元々ご夫妻でっていう席だったんだけど、専務のご都合が合わなくて私にどうだってお話が来たの。丁度リヴァイから今日の事聞いたばっかりの時だったから、譲って貰うことにしたんだよ。」
「そうか、じいさんに今度礼を言わねぇとな。」
じいさんもわざわざ社外の人間であるナマエに話を持ってくるあたり、相当こいつの事がお気に入りらしい。ナマエの人柄が成せる技なんだろうが。
グラスにシャンパンを注がれナマエと向き合う。こうやって面と向かってかしこまって乾杯をする事なんて滅多にないせいか、少しむず痒い。
「リヴァイ、改めてお誕生日おめでとう。」
「あぁ。」
グラスを合わせる音が響く。
俺たちが乾杯を終えたタイミングを見計らって、前菜がやってきた。
パテ・ド・カンパーニュっつったか。皿の面積に対して申し訳程度のサイズでやってくるそれを見て、ナマエには絶対足りねぇなと思った。
「おいし!前菜でこの美味しさだよ。メインが楽しみだね!」
「足りんのか?」
「コースだとさ、ちょっとずつ時間を空けてくるでしょ?だからなんだかんだでお腹一杯になるんだよね。それに、今日は量よりも質だよ!」
そういうもんなのか。まぁ、本人が幸せそうな顔で料理を口にしているので良しとしよう。
ふと、思ったことを口にしてみた。
「黒。」
「ん?」
「珍しいな。」
「あ、この服のこと?これね、この間ミカサちゃん夫妻と会ったときにお買い物も一緒に行ったんだけどね、二人に選んでもらったの。たまにはいいかなと思って。」
今日のナマエの服装は、真っ黒なワンピース。普段のこいつは白や花柄など比較的明るめの配色のものを好んで着ているので珍しいと思ったら、あいつらが選んだのか。確かにミカサが選びそうなデザインだ。肩の部分の生地が透けているデザインになっているせいもあるのか、いつもより大人びた印象だ。
「よく似合ってる。」
「ふふっ。リヴァイが素直に褒めるなんてちょっと新鮮だね。ありがとう。」
俺の褒め言葉に照れてはにかんだりするのを予想していた分、少し拍子抜けだ。純粋に喜んだ様子なのは良かったが。
らしくもないストレートな褒め言葉が出たのも、ナマエの仕事上のパートナーであるあのクソガキがチラついたからかもしれない。
あいつの言葉に照れて俯いていたナマエを思い出して、内心で舌打ちが出た。
せっかくの料理、せっかくの二人きりの時間。
それでも会話の内容は残念ながら仕事の内容が多くなってしまう。そうなると、必然的にあの馬面のクソガキの話も出てくる。
『こんな時にあいつの話なんてするな。』
そう言えたらどんなに良いか。
言えない代わりに、いつもよりお高めの酒と一緒に、その言葉を喉の奥に流し込んだ。
ナマエとの待ち合わせで指定されてやって来たが、王族であるフリッツ家も利用するというだけあって、格式高い佇まいだ。
任せて欲しいと言われたものの、ここは、高すぎるのではないだろうか。
当のナマエはまだ来ていない。というのも、仕事の後、一度帰って着替えたいと言われたからだ。
このまま来なかったら…漠然とした不安を抱えつつ、振り子がゆっくりと動く様を見ながら本人の到着を待った。
「お待たせ!ごめんね、待ったよね。」
「いや、そうでもねぇよ。」
実際そんなには待っていないと思う。漠然とした不安はナマエの顔を見たことでどこかへ消えていった。
オフィスで見た時と髪型が変わっていて、化粧も少ししっかり施されているなと思った。サイドに緩く流された栗色の髪に、いつもよりも発色の強い唇に色気を感じてゴクリと唾を飲んだ。コートを羽織っているため服装はまだわからないが、ホテルに合わせてドレスコードを合わせたんだろう。
「上のレストランで予約してるから、早速だけど行こっか!」
「ありがてぇが奮発しすぎじゃねぇか。」
「だって、記念すべき30歳のお誕生日だもん、これくらいしないとね!」
そうか、30か。自分の歳すら忘れるくらい、俺も歳をとったと言うことらしい。
ナマエに一言すまねぇなとだけ告げて、エレベーターで最上階へ向かった。
一面ガラス張りの店で、一番見晴らしの良い窓際の席へと案内された。今日はクリスマスだ。さすがに人が多い。その中でこの競争率の高いホテルで、さらには一番良い席を取ったナマエに脱帽だ。俺のために色々と手配してくれているという事実に頬が緩んだ。
「よく取れたな。こんな席。」
「実はね、ローゼカンパニーのピクシス専務のお陰なんだよ。ここの支配人とご友人らしくて。」
「じいさんに頼んだのか?」
「ううん、元々ご夫妻でっていう席だったんだけど、専務のご都合が合わなくて私にどうだってお話が来たの。丁度リヴァイから今日の事聞いたばっかりの時だったから、譲って貰うことにしたんだよ。」
「そうか、じいさんに今度礼を言わねぇとな。」
じいさんもわざわざ社外の人間であるナマエに話を持ってくるあたり、相当こいつの事がお気に入りらしい。ナマエの人柄が成せる技なんだろうが。
グラスにシャンパンを注がれナマエと向き合う。こうやって面と向かってかしこまって乾杯をする事なんて滅多にないせいか、少しむず痒い。
「リヴァイ、改めてお誕生日おめでとう。」
「あぁ。」
グラスを合わせる音が響く。
俺たちが乾杯を終えたタイミングを見計らって、前菜がやってきた。
パテ・ド・カンパーニュっつったか。皿の面積に対して申し訳程度のサイズでやってくるそれを見て、ナマエには絶対足りねぇなと思った。
「おいし!前菜でこの美味しさだよ。メインが楽しみだね!」
「足りんのか?」
「コースだとさ、ちょっとずつ時間を空けてくるでしょ?だからなんだかんだでお腹一杯になるんだよね。それに、今日は量よりも質だよ!」
そういうもんなのか。まぁ、本人が幸せそうな顔で料理を口にしているので良しとしよう。
ふと、思ったことを口にしてみた。
「黒。」
「ん?」
「珍しいな。」
「あ、この服のこと?これね、この間ミカサちゃん夫妻と会ったときにお買い物も一緒に行ったんだけどね、二人に選んでもらったの。たまにはいいかなと思って。」
今日のナマエの服装は、真っ黒なワンピース。普段のこいつは白や花柄など比較的明るめの配色のものを好んで着ているので珍しいと思ったら、あいつらが選んだのか。確かにミカサが選びそうなデザインだ。肩の部分の生地が透けているデザインになっているせいもあるのか、いつもより大人びた印象だ。
「よく似合ってる。」
「ふふっ。リヴァイが素直に褒めるなんてちょっと新鮮だね。ありがとう。」
俺の褒め言葉に照れてはにかんだりするのを予想していた分、少し拍子抜けだ。純粋に喜んだ様子なのは良かったが。
らしくもないストレートな褒め言葉が出たのも、ナマエの仕事上のパートナーであるあのクソガキがチラついたからかもしれない。
あいつの言葉に照れて俯いていたナマエを思い出して、内心で舌打ちが出た。
せっかくの料理、せっかくの二人きりの時間。
それでも会話の内容は残念ながら仕事の内容が多くなってしまう。そうなると、必然的にあの馬面のクソガキの話も出てくる。
『こんな時にあいつの話なんてするな。』
そう言えたらどんなに良いか。
言えない代わりに、いつもよりお高めの酒と一緒に、その言葉を喉の奥に流し込んだ。