第49話 けじめ
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そして夜。待ち合わせ場所である居酒屋へ向かうと、既にエリーは先に店内で待っていた。
「ジャン!お疲れ様〜!」
「おぅ、待たせて悪かったな。」
全然だよー!と言いながらおしぼりを渡してくれる。こういう所はやっぱり女らしいなとは思うが、ちゃっかり座敷の上座に座っているエリーを見て昼間の事を思い出してほらな、と思った。
お互いの近況などを話しながら酒を飲む。こいつとこうやって話すのは楽だ。流石は客商売というだけあって、聞き上手であり話し上手だ。体の関係さえ無ければ友人としてうまくやっていけるタイプの女だなと少し寂しくも思う。
「そういえばね、魔術師さんなんだけどさ。」
「ぶっ!」
「え?大丈夫ー?」
慌てておしぼりを渡してくれたが、言い方。
「だってお前、呼び方。」
「あははっ!だってその方が分かりやすいでしょ?」
「で?あの人がどうしたって?」
「それがさぁ、うちの店に相変わらず来ることは来るんだけど、あたし一切指名されなくなっちゃった。まぁ嬉しいからいいんだけどさ。」
「あー…そうか。」
まぁそうなるだろうな。エリー経由で俺が仕返ししたと最初は思ってたみてぇだし。
「その代わりにずっとヒストリアちゃんって子にご執心みたい。」
そりゃまた…ドンマイライナー。
「つーか、客の話なんてそんなホイホイしてていいのか?一応顧客情報ってやつじゃねぇの?」
「だってジャンだもん。誰にも言ったりしないでしょ?」
「まぁ、言わねぇけどだな。」
信頼してもらってるのは有難いが、そういう問題ではない気もするんだが。
「あとね、気になってたんだけどさ、ジャンの会社ってさ、お給料そんなに凄いの?」
「あ?どういう意味だ?」
「魔術師さんの落としていくお金がねー、毎回結構な額なんだよねー。」
「へぇ、どのくらい?」
「えっとねー、これくらい。」
そう言って数字を示された指を見て思わず目を見開いた。
「それを、どのくらいのペースで落としてくんだ?」
「大体週に3回か4回かなぁ。」
確かにエリーが不思議に思うのも頷ける額だ。俺よりも社歴が長い分多く貰ってるだろうが所詮は同じ平社員だ。そこまで差があるとは思えない。
そういう店の相場はよくは知らないが、ライナーだって月に数回通っているだけでヒーヒー言っているくらいだ。
「そこまで高給でもねぇよ。実家が裕福とかじゃねぇの?」
エリーにはこう言ったが、少し気になる。今日の経理部に頼んだ件も含めてちよっと調べる必要がありそうだ。
「まぁいっか。魔術師さんのことはどうでも。」
「ひでぇな。」
エリーはあははーと言いながらビールに口をつける。こいつの飲みっぷりも中々なもんだ。ナマエさんには負けるが。
「そういやお前なんか話したいことあるって言ってなかったか。」
「あ、そうそう!」
エリーはパァッと明るい表情になり、嬉しそうに俺に向かって言った。
「あのね!あたし、彼氏ができたの!」
「へぇー、、、あ?」
「だからね、これからはジャンとプライベートでエッチなことができなくなっちゃったの。ごめんね?」
「………。」
その代わり、お店に来てくれたらいつでもできるよ!そう言って語尾にハートでもつける勢いで話すエリーに絶句した。開いた口が塞がらないとはこの事らしい。
なんで俺が振られた風になってんだ。解せん。
「そうか、良かったな。仕事は辞めねぇの?」
「まだまだお金がいるからねー。すぐには辞められないよ。彼氏もね、それは分かってくれてるんだー。」
エリーがこの仕事をしている理由。弟2人の学費の為だそうだ。両親を早くに亡くしている為エリーが稼ぎ頭となって頑張っているらしい。正直、偉いと思う。俺は何だかんだで何不自由なく大学まで行かせて貰ったからこいつの苦労を本当の意味では理解してやることは出来ないだろう。
それにしても、彼氏。物分かりいいな。俺ならちょっと、いやかなり嫌だ。事情があるとはいえ自分の女が他の男に足を開いてるなんて、想像しただけで吐きそうだ。
愛ゆえの理解なのか、あまり気にしないタイプなのか…前者であることを祈ろう。
「そういやジャンも何か話あるって言ってたよね?」
「あぁ、まぁな。」
言った。了承の返事のついでに確かに言ったが。
言う必要がなくなってしまった。
大した事じゃねぇよと言ってはぐらかそうとしたが、何故か食い下がってくる。なになにー?としつこいので観念して言うことにした。
「まぁ、俺も、お前とそういうことできなくなったって言うつもりだったんだよ。」
「え!ジャンにも彼女できたの!?」
「できてねぇ。」
「じゃあなんでー?」
「…。」
なんて説明しろっつーんだ。今更だが小っ恥ずかしいなんてもんじゃねぇ。
「あ!分かったぁ!好きなコでもできたー?」
「な…っ!」
「あはっ、やっぱりそうだ!ジャン真っ赤だよ?」
「…うるせぇよ。」
エリーはニコニコしながら嬉しそうに続ける。
「もう一個、当ててあげようか?その好きなコって、この間ジャンの会社のロビーで会ったかわいいお姉さんでしょ?」
「…!」
「やっぱりねー!ふふっ、ジャンて意外とわかりやすいよね。」
エリーの言葉に目を見開いた。あの時は少なくとも自覚はしていなかったから。ファーランさんにも言われたが俺はそんなに分かりやすいんだろうか。
「でもジャンも律儀だよねー。付き合ってないんでしょ?それなのに身辺整理なんかしちゃってさー。」
「何となくだよ。」
「でもジャンのそういう所、好きだよ!」
「それはどうも。そういう事は自分の男に言ってやれ。」
「あ、毎日言ってるからだいじょーぶ!」
「そうかよ。」
こいつと彼氏の甘々な様子が想像できてしまって苦笑いだ。
「そっかぁ。そっかそっかぁ。」
「…何だよ。」
「んーん。うまくいくといいね!」
「ありがとな。」
「振られたらいつでもお店に来てね?慰めてあげるよ!」
「お前は一言余計なんだよ。」
ヘラヘラ笑うエリーを小突いてその後の食事と酒を楽しんだ。
そして、当然だが俺たちの間にそれ以上の事はなく、健全に解散した。
店を出て空を仰ぐと、曇っているせいか月は見えない。空も心なしかどんよりしている。エリーと話してスッキリしたはずなのにもやもやと霞がかったような俺の内心とリンクしているようだった。
それもこれも、もうすぐやってくるクリスマスのせいだ。
食事に行くとは言っていたがそれだけとは思えない。忘れたいのに忘れられないエレンのあの余計な一言が頭をぐるぐる巡る。
同じシャンプーの匂いって何だよ。
気心知れた親友とそういう事できんのかよ。
酒が入ったせいか女々しい事ばかりが頭に浮かんでくる。
あぁ---
クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに。
「ジャン!お疲れ様〜!」
「おぅ、待たせて悪かったな。」
全然だよー!と言いながらおしぼりを渡してくれる。こういう所はやっぱり女らしいなとは思うが、ちゃっかり座敷の上座に座っているエリーを見て昼間の事を思い出してほらな、と思った。
お互いの近況などを話しながら酒を飲む。こいつとこうやって話すのは楽だ。流石は客商売というだけあって、聞き上手であり話し上手だ。体の関係さえ無ければ友人としてうまくやっていけるタイプの女だなと少し寂しくも思う。
「そういえばね、魔術師さんなんだけどさ。」
「ぶっ!」
「え?大丈夫ー?」
慌てておしぼりを渡してくれたが、言い方。
「だってお前、呼び方。」
「あははっ!だってその方が分かりやすいでしょ?」
「で?あの人がどうしたって?」
「それがさぁ、うちの店に相変わらず来ることは来るんだけど、あたし一切指名されなくなっちゃった。まぁ嬉しいからいいんだけどさ。」
「あー…そうか。」
まぁそうなるだろうな。エリー経由で俺が仕返ししたと最初は思ってたみてぇだし。
「その代わりにずっとヒストリアちゃんって子にご執心みたい。」
そりゃまた…ドンマイライナー。
「つーか、客の話なんてそんなホイホイしてていいのか?一応顧客情報ってやつじゃねぇの?」
「だってジャンだもん。誰にも言ったりしないでしょ?」
「まぁ、言わねぇけどだな。」
信頼してもらってるのは有難いが、そういう問題ではない気もするんだが。
「あとね、気になってたんだけどさ、ジャンの会社ってさ、お給料そんなに凄いの?」
「あ?どういう意味だ?」
「魔術師さんの落としていくお金がねー、毎回結構な額なんだよねー。」
「へぇ、どのくらい?」
「えっとねー、これくらい。」
そう言って数字を示された指を見て思わず目を見開いた。
「それを、どのくらいのペースで落としてくんだ?」
「大体週に3回か4回かなぁ。」
確かにエリーが不思議に思うのも頷ける額だ。俺よりも社歴が長い分多く貰ってるだろうが所詮は同じ平社員だ。そこまで差があるとは思えない。
そういう店の相場はよくは知らないが、ライナーだって月に数回通っているだけでヒーヒー言っているくらいだ。
「そこまで高給でもねぇよ。実家が裕福とかじゃねぇの?」
エリーにはこう言ったが、少し気になる。今日の経理部に頼んだ件も含めてちよっと調べる必要がありそうだ。
「まぁいっか。魔術師さんのことはどうでも。」
「ひでぇな。」
エリーはあははーと言いながらビールに口をつける。こいつの飲みっぷりも中々なもんだ。ナマエさんには負けるが。
「そういやお前なんか話したいことあるって言ってなかったか。」
「あ、そうそう!」
エリーはパァッと明るい表情になり、嬉しそうに俺に向かって言った。
「あのね!あたし、彼氏ができたの!」
「へぇー、、、あ?」
「だからね、これからはジャンとプライベートでエッチなことができなくなっちゃったの。ごめんね?」
「………。」
その代わり、お店に来てくれたらいつでもできるよ!そう言って語尾にハートでもつける勢いで話すエリーに絶句した。開いた口が塞がらないとはこの事らしい。
なんで俺が振られた風になってんだ。解せん。
「そうか、良かったな。仕事は辞めねぇの?」
「まだまだお金がいるからねー。すぐには辞められないよ。彼氏もね、それは分かってくれてるんだー。」
エリーがこの仕事をしている理由。弟2人の学費の為だそうだ。両親を早くに亡くしている為エリーが稼ぎ頭となって頑張っているらしい。正直、偉いと思う。俺は何だかんだで何不自由なく大学まで行かせて貰ったからこいつの苦労を本当の意味では理解してやることは出来ないだろう。
それにしても、彼氏。物分かりいいな。俺ならちょっと、いやかなり嫌だ。事情があるとはいえ自分の女が他の男に足を開いてるなんて、想像しただけで吐きそうだ。
愛ゆえの理解なのか、あまり気にしないタイプなのか…前者であることを祈ろう。
「そういやジャンも何か話あるって言ってたよね?」
「あぁ、まぁな。」
言った。了承の返事のついでに確かに言ったが。
言う必要がなくなってしまった。
大した事じゃねぇよと言ってはぐらかそうとしたが、何故か食い下がってくる。なになにー?としつこいので観念して言うことにした。
「まぁ、俺も、お前とそういうことできなくなったって言うつもりだったんだよ。」
「え!ジャンにも彼女できたの!?」
「できてねぇ。」
「じゃあなんでー?」
「…。」
なんて説明しろっつーんだ。今更だが小っ恥ずかしいなんてもんじゃねぇ。
「あ!分かったぁ!好きなコでもできたー?」
「な…っ!」
「あはっ、やっぱりそうだ!ジャン真っ赤だよ?」
「…うるせぇよ。」
エリーはニコニコしながら嬉しそうに続ける。
「もう一個、当ててあげようか?その好きなコって、この間ジャンの会社のロビーで会ったかわいいお姉さんでしょ?」
「…!」
「やっぱりねー!ふふっ、ジャンて意外とわかりやすいよね。」
エリーの言葉に目を見開いた。あの時は少なくとも自覚はしていなかったから。ファーランさんにも言われたが俺はそんなに分かりやすいんだろうか。
「でもジャンも律儀だよねー。付き合ってないんでしょ?それなのに身辺整理なんかしちゃってさー。」
「何となくだよ。」
「でもジャンのそういう所、好きだよ!」
「それはどうも。そういう事は自分の男に言ってやれ。」
「あ、毎日言ってるからだいじょーぶ!」
「そうかよ。」
こいつと彼氏の甘々な様子が想像できてしまって苦笑いだ。
「そっかぁ。そっかそっかぁ。」
「…何だよ。」
「んーん。うまくいくといいね!」
「ありがとな。」
「振られたらいつでもお店に来てね?慰めてあげるよ!」
「お前は一言余計なんだよ。」
ヘラヘラ笑うエリーを小突いてその後の食事と酒を楽しんだ。
そして、当然だが俺たちの間にそれ以上の事はなく、健全に解散した。
店を出て空を仰ぐと、曇っているせいか月は見えない。空も心なしかどんよりしている。エリーと話してスッキリしたはずなのにもやもやと霞がかったような俺の内心とリンクしているようだった。
それもこれも、もうすぐやってくるクリスマスのせいだ。
食事に行くとは言っていたがそれだけとは思えない。忘れたいのに忘れられないエレンのあの余計な一言が頭をぐるぐる巡る。
同じシャンプーの匂いって何だよ。
気心知れた親友とそういう事できんのかよ。
酒が入ったせいか女々しい事ばかりが頭に浮かんでくる。
あぁ---
クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに。