第48話 俺の名前は
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「ってわけで、あの人の幼稚な策略にナマエさんは巻き込まれただけってことですね。」
「なんでそれで係長になれると思ったんだろう…。」
そうだったのか。ジャンの話でやっと全容が分かった。現係長が今年いっぱいで退職するのは聞いていたが。それがこんな事になるなんて。それにしても。
「(ねぇ、あの人って、バカなの?)」
「(…だな。)」
ペトラはそれはもう心底呆れたというような表情で呟いた。ナマエさんの言う通りだ。そんなことで人事が決まるわけないだろうに。
「それにさ、私をターゲットにしても意味ないよね?係長候補はキルシュタインくんなのに。」
え?そうなのか?
ペトラの方を見たが、知らない知らないと首をブンブン振っている。
「それもまだ分からないでしょ。俺よりも相応しい人なんて沢山いますし。」
「でもリヴァイも言ってたよ?あいつは周りをよく見てるって。人を動かすことにも長けてるからマネジメント向きだって。私もキルシュタインくんが上司だったらもっと仕事がやりやすいだろうなって思うもん。」
「買い被りすぎっすよ。」
ジャンは少し照れ臭そうにグラスに口を付けている。課長がジャンのことをそんな風に評価していたことにも少し驚いたが、現在部下であるジャンが自分の上司になるかもしれないのに、それを嬉しそうに話すナマエさんの方に驚きだ。
懐が深いのか、昇格への向上心がないのか…。
「ナマエさんは、俺が昇格しても平気なんすか?俺はただの平社員で、ナマエさんより経験も実績もないのに。」
「適材適所ってあると思うの。リヴァイ班の皆みたいにプレーヤーとしてガンガン前に出る人たちや、リヴァイみたいに人の上に立って全体を見て、時には自らがやって見せるっていうプレイングマネージャー。そして、私自身は皆のフォローとかサポート役が向いてるって思ってる。キルシュタインくんはね、色んな人の立場に立って物事が考えられるでしょ?上の人の立場も、一般社員の立場も。だから、そういう人こそ上に立つべきだって私は思うな。」
ナマエさんの言葉はジャンにどう聞こえただろうか。もちろん本心だとは思うが、彼女の言葉は人を前向きにさせる不思議な力を持っている。そう思った。
「まぁ、ちゃんと俺も考えてみますよ。」
ナマエさんがせっかくジャンにちゃんと向き合って話をしているのにジャンはそっけなく返事をした。ペトラも(はぁ!?)と少し怒りを露わにしたが、ジャンをよく見ると耳が真っ赤だ。
照れているだけらしい。
その証拠にナマエさんもニコニコとジャンを見ながら満足そうだ。
「話は戻るけどね、今回のこと、キルシュタインくんはなんでそんなに詳しいの?誰かから聞いたの?」
「アルミンから聞いたんですよ。あとは秘書課に俺の同期結構多いんで。」
アルミンというジャンの同期は人事部で、そこから聞いたらしい。なるほどな。人事部ならいろんな情報が集まりそうだ。人事部の情報通ってのも気になるが。
「そっかぁ。ふふっ。アルミンくんとこの情報通さんってどうやって情報仕入れてるんだろうね。」
「それ。」
「え?」
「アルミン。」
「ん?」
楽しげに話すナマエさんにいきなりジャンは不機嫌になったようだ。なぜだ?
「なんでアルミンの事は普通にアルミンって呼ぶんすか。」
「なんでって…」
「ナマエさんて、基本苗字で呼びますよね。特に男性社員。俺の事も。職場では課長の事も。」
「あ、うん。」
「でもアルミンの事は最初からアルミンだった。なんで?」
たかが名前の呼び方くらいでと思うかもしれないが、ジャンが気にするのは当然だと思った。好きな女の事だから尚更だ。ペトラは横で、(ちっさ。)と呟いたが。俺には分かるぞ。ジャン。
「えーっと…何でだろう。」
「え?理由ないんすか?」
「言われるまで気づかなかった。」
「まじか。」
「ミカサちゃんとかが当たり前に呼んでるからかな?」
「それは他のやつらも一緒でしょ。」
「うーん…。」
ナマエさん自身もよく分かってないらしい。当然ジャンは納得がいかないらしい。
「じゃあ、なんで苗字で呼ぶんですか?」
「え?」
「なんか理由あるんでしょ?今まで聞いたこと無かったけど。」
「あー、うん。恥ずかしい話なんだけど…私ね、男性とお話するのがあんまり得意じゃないんだ。だから、何となく壁を作っちゃうというか何というか…。その人が嫌いとかではもちろんないんだけど…。」
そんな理由だったのか。誰とでも分け隔てなく接している印象だったから、少し驚いた。得意じゃないというか、もしかしたら男が苦手なのかもなと、何となく思った。あんなにモテるのに。いや、モテるからか?
「俺と話すのもまだ壁あります?」
「ううん、それはないよ。じゃなかったら一緒に飲みに来たりなんかしないよ。」
「良かった。じゃあ大丈夫ですね。」
「ん?なにが?」
先程とは違い、ジャンは何やらニコニコしている。カウンターに肘を付き、頬杖を付くような姿勢でナマエさんに微笑みかけた。
「ナマエさん、俺の名前は何ですか?」
「え?キルシュ…」
「じゃなくて。」
「…えっ…と。」
分かってますよね?と言わんばかりの顔で見つめるジャン。ナマエさんは少し顔を赤くして瞬きをした。
「(ちょっと!何これ!こっちが恥ずかしいんだけど!!)」
「(しーっ!聞こえるぞ!)」
「ナマエさん?ほら。」
「えっ…と。ジャン・キルシュタインくん。」
「そうじゃなくて。」
「ジャンくん。」
「くんはいらねぇ。」
「…っ、ジャン。」
「良くできました。」
「~~~~ッ!!」
大満足のジャンを見てナマエさんは居た堪れなくなったのか俯いてしまった。そんなナマエさんの落ちてきた髪をジャンは耳に掛けながら嬉しそうに笑った。
「うっわ、何あれ。ゲロ甘かよ。」
!!!
すぐ傍で声が聞こえて俺とペトラが驚いて振り向くと、すぐ近くにマスターの顔があった。心臓に悪い。やめてくれ。
「(なぁなぁ、さっきからコソコソしてると思ったら、あんたらジャンの知り合い?)」
驚きすぎた俺たちはコクコクと頷くことしかできなかった。ジャンたちにバレないようにマスターも小声で話してくれている。
「(つーかあれ何。なぁ?恥ずかしくねーの?あいつ。)」
そこは激しく同意だ。2人の周りだけピンク色に見える気がする。
徐に立ち上がったマスターは2人の元へ向かってしまった。まさか、バラされる?
「おいおいお前ら、何俺の前でイチャイチャしてくれてんの。」
「ファーランっ!そんなんじゃないから!」
「そんな事言ってお前顔ヤバいくらい真っ赤だからな。」
「…!私、お手洗い行ってきます!」
ナマエさんは恥ずかしさが限界突破したらしい。逃げてしまった。
「ジャン。」
「…なんすか。」
「イチャイチャすんのはいいけど、他の客がいるってことも忘れんなよ。」
「は?」
そう言ってマスターは俺たちの方を顎でクイッと差した。あーーー…バレた。
「な!…んでここに…!」
「よ、よぉジャン!」
「アハハ…ぐうぜーーん!」
俺たちはぎこちなく挨拶をするしかなかった。
「はぁー…偶然な訳ないでしょ…」
ナマエさんには黙っておいたほうがいいですよ、ジャンがため息をつきながら額に手を当てて項垂れている所へ、ナマエさんが帰ってきてしまった。
「え?ラルさん?ジンくん?」
「こんばんは〜お二人からこのお店のこと聞いて私たちも来たくなっちゃったんですよー!」
「ナマエさん、せっかくなんで一緒に飲みませんか?」
「あ…うん。ねぇ、さっきの…見てた?」
隣のペトラから面白いくらいにドキーンという効果音が聞こえた気がした。
「な、何がですか?私たちもお二人がいることにさっき気づいたばっかりなんですよぉ〜」
「そう…なの?それならいいんだけど…。」
明らかに態とらしい誤魔化し方だったが、何とか信じてもらえた。危ない。
それから俺たちが元々座っていたソファ席で4人で飲むことにした。
ナマエさんと酒を飲む機会なんて今まで会社の行事でしかなかったから知らなかった。
この人、めちゃくちゃ酒に強い。ジャンも強いようだが、比じゃない。顔色一つ変えずに飲み続けるこの人は尋常じゃないと思った。
ジャンが高い酒を頼ませなかった理由がよく分かった。この人に高い酒を与えたらあっという間に破産だ。
俺は早々にペースを落としたが、ペトラは頑張ってナマエさんに合わせて飲んでいたせいか、段々と呂律が回らなくなってきた。
「ナマエさぁぁん、わたしもよんでくらさぁあい。」
「ん?ラルさんどうしたの?」
「ちがぁう!ラルさんじゃなーい!わたしもペトラって呼んでくらさい〜〜」
あーーー。バカ。
「ちょっと!やっぱりさっきの聞いてたんでしょ!!」
俺とジャンは明後日の方へ視線を逸らすことしかできなかった。
「なんでそれで係長になれると思ったんだろう…。」
そうだったのか。ジャンの話でやっと全容が分かった。現係長が今年いっぱいで退職するのは聞いていたが。それがこんな事になるなんて。それにしても。
「(ねぇ、あの人って、バカなの?)」
「(…だな。)」
ペトラはそれはもう心底呆れたというような表情で呟いた。ナマエさんの言う通りだ。そんなことで人事が決まるわけないだろうに。
「それにさ、私をターゲットにしても意味ないよね?係長候補はキルシュタインくんなのに。」
え?そうなのか?
ペトラの方を見たが、知らない知らないと首をブンブン振っている。
「それもまだ分からないでしょ。俺よりも相応しい人なんて沢山いますし。」
「でもリヴァイも言ってたよ?あいつは周りをよく見てるって。人を動かすことにも長けてるからマネジメント向きだって。私もキルシュタインくんが上司だったらもっと仕事がやりやすいだろうなって思うもん。」
「買い被りすぎっすよ。」
ジャンは少し照れ臭そうにグラスに口を付けている。課長がジャンのことをそんな風に評価していたことにも少し驚いたが、現在部下であるジャンが自分の上司になるかもしれないのに、それを嬉しそうに話すナマエさんの方に驚きだ。
懐が深いのか、昇格への向上心がないのか…。
「ナマエさんは、俺が昇格しても平気なんすか?俺はただの平社員で、ナマエさんより経験も実績もないのに。」
「適材適所ってあると思うの。リヴァイ班の皆みたいにプレーヤーとしてガンガン前に出る人たちや、リヴァイみたいに人の上に立って全体を見て、時には自らがやって見せるっていうプレイングマネージャー。そして、私自身は皆のフォローとかサポート役が向いてるって思ってる。キルシュタインくんはね、色んな人の立場に立って物事が考えられるでしょ?上の人の立場も、一般社員の立場も。だから、そういう人こそ上に立つべきだって私は思うな。」
ナマエさんの言葉はジャンにどう聞こえただろうか。もちろん本心だとは思うが、彼女の言葉は人を前向きにさせる不思議な力を持っている。そう思った。
「まぁ、ちゃんと俺も考えてみますよ。」
ナマエさんがせっかくジャンにちゃんと向き合って話をしているのにジャンはそっけなく返事をした。ペトラも(はぁ!?)と少し怒りを露わにしたが、ジャンをよく見ると耳が真っ赤だ。
照れているだけらしい。
その証拠にナマエさんもニコニコとジャンを見ながら満足そうだ。
「話は戻るけどね、今回のこと、キルシュタインくんはなんでそんなに詳しいの?誰かから聞いたの?」
「アルミンから聞いたんですよ。あとは秘書課に俺の同期結構多いんで。」
アルミンというジャンの同期は人事部で、そこから聞いたらしい。なるほどな。人事部ならいろんな情報が集まりそうだ。人事部の情報通ってのも気になるが。
「そっかぁ。ふふっ。アルミンくんとこの情報通さんってどうやって情報仕入れてるんだろうね。」
「それ。」
「え?」
「アルミン。」
「ん?」
楽しげに話すナマエさんにいきなりジャンは不機嫌になったようだ。なぜだ?
「なんでアルミンの事は普通にアルミンって呼ぶんすか。」
「なんでって…」
「ナマエさんて、基本苗字で呼びますよね。特に男性社員。俺の事も。職場では課長の事も。」
「あ、うん。」
「でもアルミンの事は最初からアルミンだった。なんで?」
たかが名前の呼び方くらいでと思うかもしれないが、ジャンが気にするのは当然だと思った。好きな女の事だから尚更だ。ペトラは横で、(ちっさ。)と呟いたが。俺には分かるぞ。ジャン。
「えーっと…何でだろう。」
「え?理由ないんすか?」
「言われるまで気づかなかった。」
「まじか。」
「ミカサちゃんとかが当たり前に呼んでるからかな?」
「それは他のやつらも一緒でしょ。」
「うーん…。」
ナマエさん自身もよく分かってないらしい。当然ジャンは納得がいかないらしい。
「じゃあ、なんで苗字で呼ぶんですか?」
「え?」
「なんか理由あるんでしょ?今まで聞いたこと無かったけど。」
「あー、うん。恥ずかしい話なんだけど…私ね、男性とお話するのがあんまり得意じゃないんだ。だから、何となく壁を作っちゃうというか何というか…。その人が嫌いとかではもちろんないんだけど…。」
そんな理由だったのか。誰とでも分け隔てなく接している印象だったから、少し驚いた。得意じゃないというか、もしかしたら男が苦手なのかもなと、何となく思った。あんなにモテるのに。いや、モテるからか?
「俺と話すのもまだ壁あります?」
「ううん、それはないよ。じゃなかったら一緒に飲みに来たりなんかしないよ。」
「良かった。じゃあ大丈夫ですね。」
「ん?なにが?」
先程とは違い、ジャンは何やらニコニコしている。カウンターに肘を付き、頬杖を付くような姿勢でナマエさんに微笑みかけた。
「ナマエさん、俺の名前は何ですか?」
「え?キルシュ…」
「じゃなくて。」
「…えっ…と。」
分かってますよね?と言わんばかりの顔で見つめるジャン。ナマエさんは少し顔を赤くして瞬きをした。
「(ちょっと!何これ!こっちが恥ずかしいんだけど!!)」
「(しーっ!聞こえるぞ!)」
「ナマエさん?ほら。」
「えっ…と。ジャン・キルシュタインくん。」
「そうじゃなくて。」
「ジャンくん。」
「くんはいらねぇ。」
「…っ、ジャン。」
「良くできました。」
「~~~~ッ!!」
大満足のジャンを見てナマエさんは居た堪れなくなったのか俯いてしまった。そんなナマエさんの落ちてきた髪をジャンは耳に掛けながら嬉しそうに笑った。
「うっわ、何あれ。ゲロ甘かよ。」
!!!
すぐ傍で声が聞こえて俺とペトラが驚いて振り向くと、すぐ近くにマスターの顔があった。心臓に悪い。やめてくれ。
「(なぁなぁ、さっきからコソコソしてると思ったら、あんたらジャンの知り合い?)」
驚きすぎた俺たちはコクコクと頷くことしかできなかった。ジャンたちにバレないようにマスターも小声で話してくれている。
「(つーかあれ何。なぁ?恥ずかしくねーの?あいつ。)」
そこは激しく同意だ。2人の周りだけピンク色に見える気がする。
徐に立ち上がったマスターは2人の元へ向かってしまった。まさか、バラされる?
「おいおいお前ら、何俺の前でイチャイチャしてくれてんの。」
「ファーランっ!そんなんじゃないから!」
「そんな事言ってお前顔ヤバいくらい真っ赤だからな。」
「…!私、お手洗い行ってきます!」
ナマエさんは恥ずかしさが限界突破したらしい。逃げてしまった。
「ジャン。」
「…なんすか。」
「イチャイチャすんのはいいけど、他の客がいるってことも忘れんなよ。」
「は?」
そう言ってマスターは俺たちの方を顎でクイッと差した。あーーー…バレた。
「な!…んでここに…!」
「よ、よぉジャン!」
「アハハ…ぐうぜーーん!」
俺たちはぎこちなく挨拶をするしかなかった。
「はぁー…偶然な訳ないでしょ…」
ナマエさんには黙っておいたほうがいいですよ、ジャンがため息をつきながら額に手を当てて項垂れている所へ、ナマエさんが帰ってきてしまった。
「え?ラルさん?ジンくん?」
「こんばんは〜お二人からこのお店のこと聞いて私たちも来たくなっちゃったんですよー!」
「ナマエさん、せっかくなんで一緒に飲みませんか?」
「あ…うん。ねぇ、さっきの…見てた?」
隣のペトラから面白いくらいにドキーンという効果音が聞こえた気がした。
「な、何がですか?私たちもお二人がいることにさっき気づいたばっかりなんですよぉ〜」
「そう…なの?それならいいんだけど…。」
明らかに態とらしい誤魔化し方だったが、何とか信じてもらえた。危ない。
それから俺たちが元々座っていたソファ席で4人で飲むことにした。
ナマエさんと酒を飲む機会なんて今まで会社の行事でしかなかったから知らなかった。
この人、めちゃくちゃ酒に強い。ジャンも強いようだが、比じゃない。顔色一つ変えずに飲み続けるこの人は尋常じゃないと思った。
ジャンが高い酒を頼ませなかった理由がよく分かった。この人に高い酒を与えたらあっという間に破産だ。
俺は早々にペースを落としたが、ペトラは頑張ってナマエさんに合わせて飲んでいたせいか、段々と呂律が回らなくなってきた。
「ナマエさぁぁん、わたしもよんでくらさぁあい。」
「ん?ラルさんどうしたの?」
「ちがぁう!ラルさんじゃなーい!わたしもペトラって呼んでくらさい〜〜」
あーーー。バカ。
「ちょっと!やっぱりさっきの聞いてたんでしょ!!」
俺とジャンは明後日の方へ視線を逸らすことしかできなかった。