第4話 小鹿と変人
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あれから、どうやって営業部まで戻ってきたのかがさっぱり思い出せない。部長室からの帰り道にリヴァイ課長が何やら言っていたが全く耳に残っておらず生返事をしていたようで、課長の眉間がこれでもかと寄ってしまっていたそうだ。『課長の眉毛がこのままくっついちゃうんじゃないかと思ったよ。』と後からナマエさんに苦笑しながら言われた。…次に課長に会うのが恐ぇ。
やっと意識が戻ったのは二人と別れて自席に着いた時にゲルガーさんに声をかけられてからだ。
「よぉ、ジャン!ナイル部長何て言ってた?」
…この顔は知ってたな。絶対知ってた顔だ。クソ。
「大したことじゃないっすよ。担当する会社が増えただけです。」
我ながら生意気である。
「ほーほー。そうかそうか。増えただけ、な。ま、頑張れよ!期待のエース!」
意味ありげにそういってバシバシと肩を叩いて(殴って)ゲルガーさんはまたニヤニヤしながら去っていった。痛ぇよ。
呼び出されたのを聞いていたライナーとベルトルトも俺の渋い顔を気にして話しかけてきた。
「ナイル部長になにか言われたのかい?」
心配してくれていたらしい。
「あー…ローゼカンパニーの担当がリヴァイ課長から俺になった。」
部長室での経緯を簡単に説明すると
「ローゼって…あの ローゼか!?さっきの今ですごいタイムリーだな。」
「やっぱりジャンはすごいよ!早速大口を任されてるじゃないか!」
「まぁ、あれだ。色々あるだろうが剥げねぇようにがんばれよ。」
…最後の一言は余計だ。
───それから数日後、俺とナマエさんはローゼに出向きキッツ氏に挨拶も兼ねて報告をしたんだが…
俺みたいな若造が担当になったことに納得が
いかないんだろう、彼は案の定、『君たちの話は聞く必要はない!』と言った。全くもって聞く耳を持ってはくれないようで、どうしたもんかとキッツ氏の態度に少しイラつきつつ思い悩んでいたところへ──救世主が現れた。
「相変わらず、図体の割に小鹿のような男じゃのう。少しは話を聞いてやらんか。」
ツルリとした剃髪に立派な口髭を蓄えたその人は、ドット・ピクシス氏だった。
「ピクシス専務!ご無沙汰しております!」
ナマエさんが花のような笑顔で立ち上がるのを見て、俺も慌てて立ち上がった。
「おぉナマエ、久しぶりじゃのぉ。元気にしとったか?
また今度はえらくデカイ坊主を連れて来おったな。リヴァイとは正反対じゃないか。」
ハッハッハと豪快に笑いながらナマエさんに話しかける。
「それで?お主が連れてくるくらいの奴じゃ。若造じゃが信用できるんじゃろうな?」
「もちろんですピクシス専務!確かにまだ若いかもしれませんが、彼の事は私も信頼していますし、アッカーマンに代わりしっかりと勤めさせていただきます!」
…言いすぎじゃないだろうかとナマエさんの発言に目を丸くしていると、ピクシス氏…いや、ピクシス
専務は満足そうに自慢であろう口髭を撫でながら言った。
「そうかそうか。リヴァイを連れてきたナマエの目に狂いはないと思っておるぞ。何せ超絶美女の言うことには間違いがないからのぅ。」
「ふふふ…またそうやってご冗談を。誉めても何も出ませんよ?それに専務はそういった理由で人を選ぶようなお方ではないでしょう?」
「なんじゃ、ナマエのご機嫌を取って酒の席にでも付き合ってもらおうと思うとったが、また振られてしもうたか!」
二人は和気あいあいと会話をしている。
…なんだこれは。ナマエさんどんだけ気に入られてんだ。しかも「また」ってなんだ。いつもこの調子なのか?
そして会話の内容からすると、ナマエさんがリヴァイ課長とピクシス専務を会わせたのか。ナマエさん、一体何者…。
俺は、そんな二人の会話をただ眺めることしかできなかった。
しかし、そこからは早かった。ピクシス専務の鶴の一声でキッツ氏は大人しくなり、俺の話をまともに聞いてくれるようになったのだ。更に言うと、新規で一件、商品を仕入れてくれるようにまでなったのだった。いつもの俺なら挨拶だけで済ませて一旦社に戻ってから対策を練った上で挑んでいただろう。
それが、雰囲気に呑まれたせいか、ナマエさんが一緒に居ることで気が大きくなったのか、普段なら絶対しない見切り発車でのプレゼンを始めていたのだ。
帰りの社用車の中で、新規一件、おめでとう!と、助手席でナマエさんが嬉しそうに言ってくれた。
「いや、ピクシス専務が来なかったらどうなることかと思いましたよ。ってか、ナマエさんがいなかったら確実に終わってました。まじで。」
冗談抜きで。もしナマエさんがいなかったらあれは完全に無理ゲーだった。リヴァイ課長の『ナマエを残してやった』の意味を身に染みて理解した。
「でも、ヴェールマンさんも、キルシュタインくんの話に納得したから決めてくれたんだと思うよ?あの人も、ピクシス専務が言ったからっていうだけで判断するような人ではないはずだから。実際、キルシュタインくんの話してた内容、凄くわかりやすかったし熱意も伝わったよ!」
だからやっぱりキルシュタインくんの頑張りのおかげだよ!と、目尻を下げて微笑んだ。
「…っす。」
照れ隠しのせいで素っ気ない返事しかできなかった。
例えば他のヤツなら、取ってきた結果対して、数字に対して凄いと言っただろう。そして俺はきっと鼻高々で自慢していたことだろう。
でも、それができないのは、商談の中身が、俺自身が誉められたからなのか、相手がナマエさんだからなのか…
このザワザワするような感覚の理由は自分でもよくわからなかった。
とにかく、今ハッキリしていることは、
…クッソ疲れた。それだけだった。
やっと意識が戻ったのは二人と別れて自席に着いた時にゲルガーさんに声をかけられてからだ。
「よぉ、ジャン!ナイル部長何て言ってた?」
…この顔は知ってたな。絶対知ってた顔だ。クソ。
「大したことじゃないっすよ。担当する会社が増えただけです。」
我ながら生意気である。
「ほーほー。そうかそうか。増えただけ、な。ま、頑張れよ!期待のエース!」
意味ありげにそういってバシバシと肩を叩いて(殴って)ゲルガーさんはまたニヤニヤしながら去っていった。痛ぇよ。
呼び出されたのを聞いていたライナーとベルトルトも俺の渋い顔を気にして話しかけてきた。
「ナイル部長になにか言われたのかい?」
心配してくれていたらしい。
「あー…ローゼカンパニーの担当がリヴァイ課長から俺になった。」
部長室での経緯を簡単に説明すると
「ローゼって…
「やっぱりジャンはすごいよ!早速大口を任されてるじゃないか!」
「まぁ、あれだ。色々あるだろうが剥げねぇようにがんばれよ。」
…最後の一言は余計だ。
───それから数日後、俺とナマエさんはローゼに出向きキッツ氏に挨拶も兼ねて報告をしたんだが…
俺みたいな若造が担当になったことに納得が
いかないんだろう、彼は案の定、『君たちの話は聞く必要はない!』と言った。全くもって聞く耳を持ってはくれないようで、どうしたもんかとキッツ氏の態度に少しイラつきつつ思い悩んでいたところへ──救世主が現れた。
「相変わらず、図体の割に小鹿のような男じゃのう。少しは話を聞いてやらんか。」
ツルリとした剃髪に立派な口髭を蓄えたその人は、ドット・ピクシス氏だった。
「ピクシス専務!ご無沙汰しております!」
ナマエさんが花のような笑顔で立ち上がるのを見て、俺も慌てて立ち上がった。
「おぉナマエ、久しぶりじゃのぉ。元気にしとったか?
また今度はえらくデカイ坊主を連れて来おったな。リヴァイとは正反対じゃないか。」
ハッハッハと豪快に笑いながらナマエさんに話しかける。
「それで?お主が連れてくるくらいの奴じゃ。若造じゃが信用できるんじゃろうな?」
「もちろんですピクシス専務!確かにまだ若いかもしれませんが、彼の事は私も信頼していますし、アッカーマンに代わりしっかりと勤めさせていただきます!」
…言いすぎじゃないだろうかとナマエさんの発言に目を丸くしていると、ピクシス氏…いや、ピクシス
専務は満足そうに自慢であろう口髭を撫でながら言った。
「そうかそうか。リヴァイを連れてきたナマエの目に狂いはないと思っておるぞ。何せ超絶美女の言うことには間違いがないからのぅ。」
「ふふふ…またそうやってご冗談を。誉めても何も出ませんよ?それに専務はそういった理由で人を選ぶようなお方ではないでしょう?」
「なんじゃ、ナマエのご機嫌を取って酒の席にでも付き合ってもらおうと思うとったが、また振られてしもうたか!」
二人は和気あいあいと会話をしている。
…なんだこれは。ナマエさんどんだけ気に入られてんだ。しかも「また」ってなんだ。いつもこの調子なのか?
そして会話の内容からすると、ナマエさんがリヴァイ課長とピクシス専務を会わせたのか。ナマエさん、一体何者…。
俺は、そんな二人の会話をただ眺めることしかできなかった。
しかし、そこからは早かった。ピクシス専務の鶴の一声でキッツ氏は大人しくなり、俺の話をまともに聞いてくれるようになったのだ。更に言うと、新規で一件、商品を仕入れてくれるようにまでなったのだった。いつもの俺なら挨拶だけで済ませて一旦社に戻ってから対策を練った上で挑んでいただろう。
それが、雰囲気に呑まれたせいか、ナマエさんが一緒に居ることで気が大きくなったのか、普段なら絶対しない見切り発車でのプレゼンを始めていたのだ。
帰りの社用車の中で、新規一件、おめでとう!と、助手席でナマエさんが嬉しそうに言ってくれた。
「いや、ピクシス専務が来なかったらどうなることかと思いましたよ。ってか、ナマエさんがいなかったら確実に終わってました。まじで。」
冗談抜きで。もしナマエさんがいなかったらあれは完全に無理ゲーだった。リヴァイ課長の『ナマエを残してやった』の意味を身に染みて理解した。
「でも、ヴェールマンさんも、キルシュタインくんの話に納得したから決めてくれたんだと思うよ?あの人も、ピクシス専務が言ったからっていうだけで判断するような人ではないはずだから。実際、キルシュタインくんの話してた内容、凄くわかりやすかったし熱意も伝わったよ!」
だからやっぱりキルシュタインくんの頑張りのおかげだよ!と、目尻を下げて微笑んだ。
「…っす。」
照れ隠しのせいで素っ気ない返事しかできなかった。
例えば他のヤツなら、取ってきた結果対して、数字に対して凄いと言っただろう。そして俺はきっと鼻高々で自慢していたことだろう。
でも、それができないのは、商談の中身が、俺自身が誉められたからなのか、相手がナマエさんだからなのか…
このザワザワするような感覚の理由は自分でもよくわからなかった。
とにかく、今ハッキリしていることは、
…クッソ疲れた。それだけだった。