第42話 原動力
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今日も今日とて、満員電車。せっかくさらに電車の時間を早めたのに、いつもの駅で乗客がなだれ込んでくるのは変わらなかった。この駅はどうなってんだ。この地区だけ人口がおかしいんじゃないかとすら思う。
「ナマエさん、こっち。また今日も雪崩が起きますよ。」
「あ、うん。」
こうやって反対側の乗車口でナマエさんを庇って盾になるのにも慣れてしまった。この押しつぶされる感覚はたまったもんじゃないが、俺にとってはおいしい時間にもなった。それはもちろん、ナマエさんと密着するからだ。下手したら変態のような発言にも聞こえるかもしれないが、惚れた女に無条件でくっつけるこんなおいしい時間、嬉しくないわけがない。
「ナマエさん、頭。」
「ん。」
以前彼女が電車の窓に頭をぶつけてからは、こうして俺が後頭部を支えて抱き込むような体制になるのもお決まりだ。最初はナマエさんも断っていたが、あれからまた頭をぶつけたので大人しく従ってくれている。
ガタンゴトンと電車の騒音が聞こえる中で、ナマエさんが小さな声で話しかけてきた。
「ねぇキルシュタインくん。」
「ん?」
「今更だけどさ、やっぱりこの体勢、あんまりよくないんじゃないかな。」
「なんで?」
周りにいる人に配慮しての小声だったのだろう。俺も合わせてささやくように答えた。が、本当に今更だ。ナマエさんは何やらもじもじしながら、なんでって…と困ったように見上げてきた。
…クソ可愛すぎる。自分の気持ちに気付いてからは、この人の一つ一つの行動すべてが俺のツボだ。
「だって…近いよ。距離。」
小声でそんなことを囁かれまたグッときたが、理性を総動員して冷静を装う。伏せられた目元に妙に色気を感じてしまうのはなぜだろう。気付く前は可愛らしい人だとは思っていたが、色気まで感じる事はなかった。見え方さえ変わったという事だろう。
「この人数ですからね。密着するのも仕方ないですよ。それとも俺とくっつくの、嫌ですか?」
我ながらずるい聞き方だと思う。この人が嫌だとかそんなことを言う筈がないと分かった上で聞いているのだ。
「嫌じゃないよ。けど…。」
ほらな。思った通りだ。そしてそんな表情をされたらこっちはこっちで期待してしまう。俺の事を男として意識してくれているのだと。そしてそのことを確かめたくなってしまう。
「けど、なに?」
「それは…」
「『キルシュタインくんも男の人だし。』…ですか?」
「っ!分かってるなら聞かないでよ…!」
「ははっ。すみません。言わせたいだけですから。」
彼女の耳元に顔を近づけて小声で囁くと更に顔を真っ赤にして固まってしまった。朝から好きな女を抱きしめて(少し語弊があるが)その匂いを身近で感じて(変態か俺は)、聞きたいセリフが聞けて。更にこの後オフィスに着いたら彼女が淹れてくれるコーヒーが待っている。これで今日の仕事も頑張れそうだ。今ならどんな無理難題を商談先に言われてもこなせる自信がある。それくらい俺にとってこの時間は貴重な時間だ。
「でも、良かったです。」
「え?」
「俺を男だと認識してくれてるようなので。」
「それは…まぁ。ていうか、なんか最近のキルシュタインくんキャラが違いすぎて追いつけないんだけど。」
それは自分でも十分自覚している。が、やめるつもりはない。リヴァイ課長に対抗するにはこうするしかない。あの人の存在はナマエさんにとってかなり大きい。出会ってからの期間も仕事の力量も、男としての器も全然俺は及ばない。そして課長はナマエさんへの気持ちをひた隠しにしているようだった。だったら、俺は自分に素直に行こうと決めたのだ。この人は鈍感だろうからナマエさん本人に気付かれるくらいがちょうどいい。
「そうですかね?前にナマエさんが俺に嘘をつきたくないって言ってくれたでしょ。だから俺もナマエさんに思った事はちゃんと言う事にしたんですよ。」
「…ソウデスカ。」
「ソウナンデスヨ。」
そう言って俺が満足げに笑うと、また目を逸らされてしまった。そんな顔も可愛いと言いたかったがさすがにこれ以上は口をきいてくれなくなりそうなのでやめておく。
電車は最寄りの駅に着き、俺の至福の時間は終わりを迎えてしまった。ナマエさんがどことなくホッとしたように見えたので、やりすぎもいかんな。と反省した。何事も適度に、だ。
そして予定通りナマエさんの淹れたコーヒーで冷えた体を温めて、いい気分のまま業務の準備を始めた。
「ジャーーーン―――くーーーんーーー。見たぜぇ?」
「んだよ、ライナー。今日は早いんだな。」
鬱陶しい絡みで肩を組んできたライナーをジトリと睨む。
「んな睨むなよ。さっきはそんな顔してなかっただろう?」
「…さっき?」
「満員電車でラブラブ抱擁出勤だよ。」
「……。」
見られてたのか。あの時間の電車に乗るうちの社員はいないと思い込んでいた。
「いやー、まいったな。お前もあんな顔するんだな。駄々洩れ。正直驚いたよ。朝一会議で早い便に乗ったおかげでいいもん見れたぜ。」
「おい、ライナー。」
「心配すんなよ。わかってるって。誰にも言ったりしねぇよ。でもお前、あれは社内のナマエさんファンを確実に怒らせるぞ?あんな噂がたってもあの人の人気は健在だからな。」
そうなのだ。あの噂があってからもナマエさんを応援するという輩が次から次へと出てきて、今では違う意味で本人も困っているようだった。
「なぁジャン。黙っててやるから、今日の夜飲みに付き合えよ。色々聞きたいこともあるしな。」
ライナーは元々兄貴気質で、ふざけて仲間内の事を噂するようなやつではない。なので別に黙っててやるからと言われても大して心配はしていない。でもまぁ。たまにはいいか。
「わかったよ。今日の夜な。」
「おっし!楽しみにしてるよ!」
じゃあな!そういって真っ白な歯をきらりと見せてライナーは去っていった。
最近早起きな分、夜は早く寝たかったんだが。まあいいか。
朝一で元気をもらっている分、平気な気がした。
「ナマエさん、こっち。また今日も雪崩が起きますよ。」
「あ、うん。」
こうやって反対側の乗車口でナマエさんを庇って盾になるのにも慣れてしまった。この押しつぶされる感覚はたまったもんじゃないが、俺にとってはおいしい時間にもなった。それはもちろん、ナマエさんと密着するからだ。下手したら変態のような発言にも聞こえるかもしれないが、惚れた女に無条件でくっつけるこんなおいしい時間、嬉しくないわけがない。
「ナマエさん、頭。」
「ん。」
以前彼女が電車の窓に頭をぶつけてからは、こうして俺が後頭部を支えて抱き込むような体制になるのもお決まりだ。最初はナマエさんも断っていたが、あれからまた頭をぶつけたので大人しく従ってくれている。
ガタンゴトンと電車の騒音が聞こえる中で、ナマエさんが小さな声で話しかけてきた。
「ねぇキルシュタインくん。」
「ん?」
「今更だけどさ、やっぱりこの体勢、あんまりよくないんじゃないかな。」
「なんで?」
周りにいる人に配慮しての小声だったのだろう。俺も合わせてささやくように答えた。が、本当に今更だ。ナマエさんは何やらもじもじしながら、なんでって…と困ったように見上げてきた。
…クソ可愛すぎる。自分の気持ちに気付いてからは、この人の一つ一つの行動すべてが俺のツボだ。
「だって…近いよ。距離。」
小声でそんなことを囁かれまたグッときたが、理性を総動員して冷静を装う。伏せられた目元に妙に色気を感じてしまうのはなぜだろう。気付く前は可愛らしい人だとは思っていたが、色気まで感じる事はなかった。見え方さえ変わったという事だろう。
「この人数ですからね。密着するのも仕方ないですよ。それとも俺とくっつくの、嫌ですか?」
我ながらずるい聞き方だと思う。この人が嫌だとかそんなことを言う筈がないと分かった上で聞いているのだ。
「嫌じゃないよ。けど…。」
ほらな。思った通りだ。そしてそんな表情をされたらこっちはこっちで期待してしまう。俺の事を男として意識してくれているのだと。そしてそのことを確かめたくなってしまう。
「けど、なに?」
「それは…」
「『キルシュタインくんも男の人だし。』…ですか?」
「っ!分かってるなら聞かないでよ…!」
「ははっ。すみません。言わせたいだけですから。」
彼女の耳元に顔を近づけて小声で囁くと更に顔を真っ赤にして固まってしまった。朝から好きな女を抱きしめて(少し語弊があるが)その匂いを身近で感じて(変態か俺は)、聞きたいセリフが聞けて。更にこの後オフィスに着いたら彼女が淹れてくれるコーヒーが待っている。これで今日の仕事も頑張れそうだ。今ならどんな無理難題を商談先に言われてもこなせる自信がある。それくらい俺にとってこの時間は貴重な時間だ。
「でも、良かったです。」
「え?」
「俺を男だと認識してくれてるようなので。」
「それは…まぁ。ていうか、なんか最近のキルシュタインくんキャラが違いすぎて追いつけないんだけど。」
それは自分でも十分自覚している。が、やめるつもりはない。リヴァイ課長に対抗するにはこうするしかない。あの人の存在はナマエさんにとってかなり大きい。出会ってからの期間も仕事の力量も、男としての器も全然俺は及ばない。そして課長はナマエさんへの気持ちをひた隠しにしているようだった。だったら、俺は自分に素直に行こうと決めたのだ。この人は鈍感だろうからナマエさん本人に気付かれるくらいがちょうどいい。
「そうですかね?前にナマエさんが俺に嘘をつきたくないって言ってくれたでしょ。だから俺もナマエさんに思った事はちゃんと言う事にしたんですよ。」
「…ソウデスカ。」
「ソウナンデスヨ。」
そう言って俺が満足げに笑うと、また目を逸らされてしまった。そんな顔も可愛いと言いたかったがさすがにこれ以上は口をきいてくれなくなりそうなのでやめておく。
電車は最寄りの駅に着き、俺の至福の時間は終わりを迎えてしまった。ナマエさんがどことなくホッとしたように見えたので、やりすぎもいかんな。と反省した。何事も適度に、だ。
そして予定通りナマエさんの淹れたコーヒーで冷えた体を温めて、いい気分のまま業務の準備を始めた。
「ジャーーーン―――くーーーんーーー。見たぜぇ?」
「んだよ、ライナー。今日は早いんだな。」
鬱陶しい絡みで肩を組んできたライナーをジトリと睨む。
「んな睨むなよ。さっきはそんな顔してなかっただろう?」
「…さっき?」
「満員電車でラブラブ抱擁出勤だよ。」
「……。」
見られてたのか。あの時間の電車に乗るうちの社員はいないと思い込んでいた。
「いやー、まいったな。お前もあんな顔するんだな。駄々洩れ。正直驚いたよ。朝一会議で早い便に乗ったおかげでいいもん見れたぜ。」
「おい、ライナー。」
「心配すんなよ。わかってるって。誰にも言ったりしねぇよ。でもお前、あれは社内のナマエさんファンを確実に怒らせるぞ?あんな噂がたってもあの人の人気は健在だからな。」
そうなのだ。あの噂があってからもナマエさんを応援するという輩が次から次へと出てきて、今では違う意味で本人も困っているようだった。
「なぁジャン。黙っててやるから、今日の夜飲みに付き合えよ。色々聞きたいこともあるしな。」
ライナーは元々兄貴気質で、ふざけて仲間内の事を噂するようなやつではない。なので別に黙っててやるからと言われても大して心配はしていない。でもまぁ。たまにはいいか。
「わかったよ。今日の夜な。」
「おっし!楽しみにしてるよ!」
じゃあな!そういって真っ白な歯をきらりと見せてライナーは去っていった。
最近早起きな分、夜は早く寝たかったんだが。まあいいか。
朝一で元気をもらっている分、平気な気がした。