第41話 駄々洩れ
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「上カルビとハラミ、上ロースをタレと塩それぞれ二人前。あと、塩タン、豚トロ、鶏もも、海鮮盛り合わせも二人前ずつお願いします。あ、あと、野菜の盛り合わせとたまごスープ、ごはんは大盛で。それから…」
「しょ、少々お待ちください…!」
まるで呪文か何かのようにつらつらと淀みなく出てくる注文の数々。この呪文を唱えているのは他でもない、ナマエさんだ。店員はナマエさんの注文に追い付けずに慌てふためいている。普段の彼女なら店員にも気を配っていただろうが今日はどこか様子がおかしい。
「ナマエさん、そんな一度に頼んでもテーブルに乗りきらねぇっすよ。」
「あ、そっか。じゃぁ、さっきのを一人前ずつで!」
そこじゃねぇ。一人前ならどうにかなるという量ではない。
「あー…すんません。とりあえず、肉は上カルビとハラミと塩タンだけで。あとは野菜の盛り合わせと…ごはんは大盛と中盛をひとつずつお願いします。他はまた追加で注文するんで。」
「あっ!はい!かしこまりました!」
店員はホッとしたような表情になり、俺の注文を復唱してから去っていった。ナマエさんはというと全然足りない…と口を尖らせている。
「そんなに肉が食いたかったんですか?」
「そう!食べたかったの!ガツンと!」
『今日は何食べます?』
『お肉!絶対お肉!』
『肉っすか?あ、近くにローストビーフ丼がうまい店ができたらしいですよ。』
『んーん。焼肉にしよう!今はすんごく焼肉の気分だよ!』
『昼から焼肉かよ。』
『お昼だからだよ?夜だとお酒が入るから少ししか食べられないもん。』
『夜でもこの間さんざん食ってたでしょ。まぁ、今日は商談ねぇからいいっすけどね。』
『やったぁ!早くいこ!』
子供の様にキラキラした目でメニューをガン見しているナマエさんを見ながらここに来るまでのやり取りを思い出していた。よっぽど肉が食いたかったんだろうことがよくわかる。
そして注文した品が届いた瞬間、ナマエさんは追加で次の肉を頼んだ。
「早速かよ。注文分けた意味がねぇ。」
「食べてから注文したんじゃ遅いもん。大丈夫、すぐにお皿空けるから!」
そう言って腕まくりをしたナマエさんは既に臨戦態勢だ。キルシュタインくんのも焼いたげるねー!とゴキゲンになったナマエさんを見て思わず笑ってしまった。
網の上は肉と野菜で一杯で、焼けた傍から俺とナマエさんの皿の上に次々と乗せられていく。自分と俺の分も焼きつつ、ちゃっかり自分の腹の中にもどんどん肉を収めていくナマエさんはさすがだ。その手際の良さをぼーっと眺めながら俺はさっきのアシュロフさんの言葉を思い出していた。
『惚れた女がこんな噂されてたらそりゃ堪んねぇよなぁ。』
さっきは苛立ちであんまりしっかり考えてなかったが、そういうことなんだろうか。
ナマエさんの一挙手一投足が気になるのも、仕事で無理をしている様子に腹が立つのも。ついつい彼女に触れてしまったり、抱きしめてしまったり。終いには先日キスまでしてしまった。しかも深い方。俺は男だと分からせるつもりでも普通はあそこまではしないだろう。
そして、何よりは。リヴァイ課長。あの事件の夜、病室でナマエさんに付き添う課長を見た時のあの心臓を握り潰されるような感覚。
そう考えるとこれまでの違和感が全てしっくりくる。まさか自分が…と思っていた。俺の教育係で尊敬する上司で。タイプの女ともまた違う。綺麗系というか、ミカサのような女が俺はタイプだったはずだ。これまで付き合ってきたのもそういうクールな女が多かった…と思う。
「どうしたの?お箸が止まってるよ?もうおなか一杯?」
ナマエさんに声を掛けられて現実に戻った。気づけば皿の中は肉で一杯で俺は苦笑いを零した。
「いや、幸せそうに肉を頬張ってるナマエさん見て、可愛いなぁと思ってただけですよ。」
「…なに?どうしたの?お肉ちゃんと焼けてなかったのかな…食あたり?」
「思った事言っただけなんですけどね。ちゃんと焼けてますよ。さすが食べるの大好きナマエさんっすね。焼き具合完璧。」
「…なんかストレートで怖いんだけど。」
「そっすか?いつも通りですけどね。」
自覚すると自分でも驚くほどすらすらと言葉が出てくる。アシュロフさんの言葉がきっかけになったのはものすごく癪だが。それでも喉の奥につっかえていた何かが取れたように今俺はすっきりとしている。
「ほら、トング貸してください。今度は俺が焼いてあげますよ。肉、死ぬほど食いたい気分なんでしょ?焼くばっかりしてたら時間なくなりますよ。」
「あ…うん。ありがとう。」
不思議そうにしながらもトングを渡してくれた。正直俺はもう腹が一杯だが、ナマエさんはまだまだだろう。本来なら俺ももっと食べられるが、今は違う意味で腹が一杯だった。
「んで、また米粒ついてますよ。」
「え?うそ!」
「ほら。ちょっと顔こっち寄せて。」
「自分で取るからいいよ…」
「どうせどこに付いてるか分かってねぇでしょ。いいからほら。」
そう言うと渋々こちらに顔を寄せてくれた。伏せがちに少し恥ずかしそうに目を逸らすナマエさんにドキリとした。今までの俺、よくこんな表情見て平気だったな。と称賛したい気持ちになる。
「はい、取れましたよ。ったく、ほんとこういう時だけ子供みたいっすよね。」
「…ごめんなさい。」
「まぁ、そこがナマエさんの可愛い所なんですけどね。」
「また…!ほんとどうしたの!」
「何が?」
「何が…って。その可愛いとか…そういうの…今までそんなこと言わなかったよ。」
「変ですかね?いつも思ってましたけどね。」
「っ!」
ナマエさんは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。そんな表情も今の俺には可愛くて仕方がない。そして俺はこんなにも思った事をストレートに言葉にするタイプではないのだが。俺の頭のネジは一本どこかに落としてきてしまったのだろうか。でもそれでもいいかと思ってしまっているので実は俺は結構恋愛体質なのかもしれない。
「ほら、昼休みは限られてるんですから。しっかり食べてくださいね。周りから変な目で見られてストレス溜まってるんでしょ?肉食って発散しましょうね。」
「…気づいてたの?」
「昼から肉肉肉肉言われたらさすがに感付きますって。伊達に毎日ナマエさんのこと見てねぇですよ。」
「…!またそういう…。でも、ありがとうね。」
「どーいたしまして。」
照れくさそうにしながらも嬉しそうなナマエさんを見て俺も癒され大満足だ。さっきのアシュロフさんやどこぞの部署の見知らぬ男に抱いていた苛立ちはすっかり形を潜め、ナマエさんとの焼肉を存分に楽しんだのだった。
「あ、塩タンとロース、あとイカの一夜干し追加で!」
ただし、ナマエさんの胃袋はまだまだ満足しそうもないようだ。
「しょ、少々お待ちください…!」
まるで呪文か何かのようにつらつらと淀みなく出てくる注文の数々。この呪文を唱えているのは他でもない、ナマエさんだ。店員はナマエさんの注文に追い付けずに慌てふためいている。普段の彼女なら店員にも気を配っていただろうが今日はどこか様子がおかしい。
「ナマエさん、そんな一度に頼んでもテーブルに乗りきらねぇっすよ。」
「あ、そっか。じゃぁ、さっきのを一人前ずつで!」
そこじゃねぇ。一人前ならどうにかなるという量ではない。
「あー…すんません。とりあえず、肉は上カルビとハラミと塩タンだけで。あとは野菜の盛り合わせと…ごはんは大盛と中盛をひとつずつお願いします。他はまた追加で注文するんで。」
「あっ!はい!かしこまりました!」
店員はホッとしたような表情になり、俺の注文を復唱してから去っていった。ナマエさんはというと全然足りない…と口を尖らせている。
「そんなに肉が食いたかったんですか?」
「そう!食べたかったの!ガツンと!」
『今日は何食べます?』
『お肉!絶対お肉!』
『肉っすか?あ、近くにローストビーフ丼がうまい店ができたらしいですよ。』
『んーん。焼肉にしよう!今はすんごく焼肉の気分だよ!』
『昼から焼肉かよ。』
『お昼だからだよ?夜だとお酒が入るから少ししか食べられないもん。』
『夜でもこの間さんざん食ってたでしょ。まぁ、今日は商談ねぇからいいっすけどね。』
『やったぁ!早くいこ!』
子供の様にキラキラした目でメニューをガン見しているナマエさんを見ながらここに来るまでのやり取りを思い出していた。よっぽど肉が食いたかったんだろうことがよくわかる。
そして注文した品が届いた瞬間、ナマエさんは追加で次の肉を頼んだ。
「早速かよ。注文分けた意味がねぇ。」
「食べてから注文したんじゃ遅いもん。大丈夫、すぐにお皿空けるから!」
そう言って腕まくりをしたナマエさんは既に臨戦態勢だ。キルシュタインくんのも焼いたげるねー!とゴキゲンになったナマエさんを見て思わず笑ってしまった。
網の上は肉と野菜で一杯で、焼けた傍から俺とナマエさんの皿の上に次々と乗せられていく。自分と俺の分も焼きつつ、ちゃっかり自分の腹の中にもどんどん肉を収めていくナマエさんはさすがだ。その手際の良さをぼーっと眺めながら俺はさっきのアシュロフさんの言葉を思い出していた。
『惚れた女がこんな噂されてたらそりゃ堪んねぇよなぁ。』
さっきは苛立ちであんまりしっかり考えてなかったが、そういうことなんだろうか。
ナマエさんの一挙手一投足が気になるのも、仕事で無理をしている様子に腹が立つのも。ついつい彼女に触れてしまったり、抱きしめてしまったり。終いには先日キスまでしてしまった。しかも深い方。俺は男だと分からせるつもりでも普通はあそこまではしないだろう。
そして、何よりは。リヴァイ課長。あの事件の夜、病室でナマエさんに付き添う課長を見た時のあの心臓を握り潰されるような感覚。
そう考えるとこれまでの違和感が全てしっくりくる。まさか自分が…と思っていた。俺の教育係で尊敬する上司で。タイプの女ともまた違う。綺麗系というか、ミカサのような女が俺はタイプだったはずだ。これまで付き合ってきたのもそういうクールな女が多かった…と思う。
「どうしたの?お箸が止まってるよ?もうおなか一杯?」
ナマエさんに声を掛けられて現実に戻った。気づけば皿の中は肉で一杯で俺は苦笑いを零した。
「いや、幸せそうに肉を頬張ってるナマエさん見て、可愛いなぁと思ってただけですよ。」
「…なに?どうしたの?お肉ちゃんと焼けてなかったのかな…食あたり?」
「思った事言っただけなんですけどね。ちゃんと焼けてますよ。さすが食べるの大好きナマエさんっすね。焼き具合完璧。」
「…なんかストレートで怖いんだけど。」
「そっすか?いつも通りですけどね。」
自覚すると自分でも驚くほどすらすらと言葉が出てくる。アシュロフさんの言葉がきっかけになったのはものすごく癪だが。それでも喉の奥につっかえていた何かが取れたように今俺はすっきりとしている。
「ほら、トング貸してください。今度は俺が焼いてあげますよ。肉、死ぬほど食いたい気分なんでしょ?焼くばっかりしてたら時間なくなりますよ。」
「あ…うん。ありがとう。」
不思議そうにしながらもトングを渡してくれた。正直俺はもう腹が一杯だが、ナマエさんはまだまだだろう。本来なら俺ももっと食べられるが、今は違う意味で腹が一杯だった。
「んで、また米粒ついてますよ。」
「え?うそ!」
「ほら。ちょっと顔こっち寄せて。」
「自分で取るからいいよ…」
「どうせどこに付いてるか分かってねぇでしょ。いいからほら。」
そう言うと渋々こちらに顔を寄せてくれた。伏せがちに少し恥ずかしそうに目を逸らすナマエさんにドキリとした。今までの俺、よくこんな表情見て平気だったな。と称賛したい気持ちになる。
「はい、取れましたよ。ったく、ほんとこういう時だけ子供みたいっすよね。」
「…ごめんなさい。」
「まぁ、そこがナマエさんの可愛い所なんですけどね。」
「また…!ほんとどうしたの!」
「何が?」
「何が…って。その可愛いとか…そういうの…今までそんなこと言わなかったよ。」
「変ですかね?いつも思ってましたけどね。」
「っ!」
ナマエさんは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。そんな表情も今の俺には可愛くて仕方がない。そして俺はこんなにも思った事をストレートに言葉にするタイプではないのだが。俺の頭のネジは一本どこかに落としてきてしまったのだろうか。でもそれでもいいかと思ってしまっているので実は俺は結構恋愛体質なのかもしれない。
「ほら、昼休みは限られてるんですから。しっかり食べてくださいね。周りから変な目で見られてストレス溜まってるんでしょ?肉食って発散しましょうね。」
「…気づいてたの?」
「昼から肉肉肉肉言われたらさすがに感付きますって。伊達に毎日ナマエさんのこと見てねぇですよ。」
「…!またそういう…。でも、ありがとうね。」
「どーいたしまして。」
照れくさそうにしながらも嬉しそうなナマエさんを見て俺も癒され大満足だ。さっきのアシュロフさんやどこぞの部署の見知らぬ男に抱いていた苛立ちはすっかり形を潜め、ナマエさんとの焼肉を存分に楽しんだのだった。
「あ、塩タンとロース、あとイカの一夜干し追加で!」
ただし、ナマエさんの胃袋はまだまだ満足しそうもないようだ。