第35話 いける口
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「まーたお前らかよ。忙しいってのも嘘じゃねぇのか?」
開口一番そんな事を言うファーランさんに苦笑いを零しながらカウンターへと二人で座る。
最近では俺たちの顔を見るといらっしゃいすら言われなくなった。
「売り上げに貢献してる上客に対してそれはないんじゃないの?」
「なぁにが上客だ。やっすい酒しか頼まないくせによく言うよ。」
「やっすい酒ばっかり置いてるファーランさんもファーランさんっすよね。」
「お前な…」
すごい顔をしてこちらを見てきた。それでも俺たちにおしぼりを差し出しナッツの小皿を置いてくるあたりはさすがはマスターと言ったところか。そういえば先月に開店一周年を迎えたっつってたな。
「ファーランさん、ここってラフロイグの15年置いてましたよね?お願いしていいっすか?ボトルで。」
「…お前!」
今度は少年のようなキラキラした眼差しで見つめられた。畏まりました!と姿勢を正してグラスを準備するこの店のマスターを見て、ははっと笑いながらナッツを口に放り込むとナマエさんが心配そうにこちらを見てきた。
「そんな高いお酒頼んで大丈夫なの?」
「俺はこの間周年のお祝いしてなかったんで、その代わりっすよ。」
「太っ腹~!あ、私も一緒に頂いていい?ラフロイグ、大好きなの!」
現金な人っすね、と眉をしかめて見せると、なんの悪気もない無邪気な笑みを寄こしてくる。ロックグラスを二つ並べてその真ん中にボトルをドンっと音を立てて置いたその人は先ほどと打って変わってご機嫌なご様子だ。
「ま、今夜はゆっくりしていけよ!」
鼻歌交じりのファーランさんは口から音符でも出しそうな勢いで他の客のところへ向かった。
「あーいうのを現金な人っていうんじゃない?」
「…間違いないっすね。んじゃ、まぁ、乾杯しますかね!」
お互いのグラスにそれぞれ注いで、軽く角を合わせた。涼やかなガラスの音がその場に響いた。ピクシス専務にウイスキーの旨さを教えて貰ってから好んで嗜むようになり、味も少しだが分かるようになってきた。それでも、やはりキツい。
「んー!やっぱ違うね!おいしーい!」
「さすがっすね。俺にはまだ少しキツいくらいですよ。この後はハイボールにしときます。」
「えー!せっかくいいお酒なのに!勿体ないよ!」
出た。酒好きの発言。ストレートで飲むには俺にはまだ早いようだ。
「酒に強いといろいろ楽しそうでいいっすね。俺、途中から気持ち悪くなっちまうんすよね。」
「そぉ?いいことばっかりでもないよ?たくさん飲める分高く付くし、女の癖に可愛げがないってよく言われるしね。幻滅したーって言われることなんて今まで何度あったかわかんないよ。」
ナマエさんらしくない言葉だと思った。なんつーか、ナマエさんでもそんなことを言うんだなと。
容姿にしろ性格にしろ仕事ぶりにしろ、「完璧な女性」を具現化したような人だと誰かが言っていた気がする。
「ナマエさんでも異性からの印象とか気にしたりするんすか?」
「どういう意味?そりゃ気になる人には印象良くしたいし、可愛いって思ってもらいたいし言って欲しいよ。だから、お酒もあんまりたくさん飲まないようにしたり、ご飯も少ししか食べないようにしたり努力はしてるんだよ?結局バレちゃうけどね。」
ため息を吐きながらも早速グラスの中は空っぽだ。だから飲むの早ぇよ。
そんなことを気にするタイプではないと思っていたし、そんなこと抜きにしてもこの人には男の方から勝手に寄ってくるから心配なんかしなくていいのに。今までは仕事上の付き合いしかしてこなかったのでこういった話は聞いた事が無かった。ある意味新鮮だ。
グラスに二杯目を注ぐと嬉しそうにありがとうと言われた。
「そんな事気にする必要なさそうですけどね。バケモノレベルで酒が強くても、大食いタレントとしてスカウトされんじゃねえかってくらい底なしの胃袋の持ち主でも、いい大人の癖して小学生でもそこまで酷くねぇよってくらい頬に食べかすつけてても、ナマエさんはナマエさんでしょ。」
「今私は、褒められてるの?バカにされてるの?」
「めちゃくちゃ褒めてますよ?いや、だから、ナマエさん自身を見てくれるやつを選べばいいだけの事でしょ。幻滅とかなんとか言う奴って、結局ナマエさんの外見しか見てないってことなんでしょうね。ナマエさん、男見る目ないんじゃないっすか?」
少し離れた所から、おい!聞こえてんぞ!という声が聞こえてきた。そういえばあの人は元彼だったか。そして地獄耳か。ナマエさんが何も言わないので様子を伺うと、固まったようにこちらを見ていてその大きな瞳がなぜかゆらゆらと揺れていた。前にもこんなことがあった気がする。いつだったか。
「ナマエさん?どうしました?あ…なんかマズイこと言っちまいましたかね。」
男見る目がないとか、失礼にもほどがあったか。すみませんと口を開こうとしたら、ハッとしたようになんでもないよ、と曖昧に笑った。まただ。この顔も見たことがある。
…思い出した。資料室で見た表情だ。
「なんでもないって顔じゃないですけどね。なんか、偉そうなこと言ってすみません。」
「ううん。本当になんでもないの。ただ…前に同じこと言ってくれた人がいてね、それでビックリしちゃっただけだよ。」
ナマエさんのその表情 が、なぜか泣きそうに見えた。これも資料室の時と同じだと思った。
「それって…昔の男…とかですか?」
「…え?」
「それとも、リヴァイ課長?」
一瞬戸惑いを見せたと思ったが、課長の名を聞いてホッとしたような顔になった。つまり、昔の男の方ってことか。ナマエさんの中に誰かが居るんだろうことを何となく察してしまった。何故だかわからないが、ナマエさんから俺の知らない男の話を聞きたくないと思った。
なんでリヴァイが出てくるの、とナマエさんは少し調子を取り戻したようだ。ここは彼女に合わせることにしよう。
「だって、課長とナマエさんって仲良すぎません?二人は付き合ってるもんだと思い込んでましたよ。課長もナマエさんの前だと表情少し柔らかいっつーか。」
「それは、学生の頃からの付き合いだからね。リヴァイにはもう恥ずかしい所も情けない所も全部バレちゃってるし。気心知れた親友って感じかな。」
親友…ねぇ。にしてはイチャイチャしてますよね、と言うのはやめた。イチャイチャと言っても、ナマエさんがベタベタしてるのでなく、課長がやたらとナマエさんに触れていると分かっていたから。そして、課長がナマエさんを見るときの目は、友情のそれとは違う、と確信していたからだ。
ナマエさん側の気持ちは正直俺にはわからないが。この人は一見嘘がつけない分かりやすそうなタイプに見えるが、実はそうではないと最近思うようになった。どうでもいい事はすぐにバレるような素振りを見せる癖に、知られたくないことは絶対に本心を出すことはない。動揺しているだろう所までは分かるようになったが。
そういえばさ、とナマエさんが頬杖をつきながらニヤニヤとこちらを見ながら話題を変えてきた。
「エリーちゃんだっけ?キルシュタインくんもあの子にお世話になってるの?やっぱりプロは違うの?」
「ぼふぉっ!…げほ。」
ラフロイグが鼻に入った。くそ痛ぇ。この人はなんつーこと言うんだ。大丈夫?と言いながらおしぼりをくれたが、楽しそうにニヤニヤしている。ちなみにナマエさんに咎められてハイボールは飲ませてもらえない。ずっとロックだ。原液は鼻に染みる。
そんなことよりも、ナマエさんから下ネタじみたことが出てくるなんて、誰が想像しただろうか。
「…げほ。違いますよ。あいつは合コンで知り合ったただの友達っすよ。アシュロフさんと一緒にしないでくださいよ。」
「騎乗位の魔術師?」
「ぶはっ!ナマエさん、何を平気な顔して下ネタ口にしてんすか…。」
キルシュタインくんならいいかなぁって。そう言いながら楽し気にグラスに口をつける。はぁ。俺も気心知れる人になれたってことだろうか。いいのか悪ぃのか。
「でもさ、騎乗位ってことは自分はあんまり動かないんだよね?プロ任せってこと?」
「いや、下は下でいろいろと…じゃなくて!何?ナマエさんて意外とそっちの話好きなんすか?普通同僚に平気で下ネタぶっこんでこないでしょ。恥ずかしいからやめてよ~とかいうキャラじゃないんすか?」
「ひどーい。私は私ってキルシュタインくんが言ってくれたのにー。だから着飾るのやめることにしたのになー。」
「着飾った服一度に脱ぎすぎだろ。」
やだ見ないでーエッチ―と言いながら笑うその顔は、普段のナマエさんの花のような笑顔と変わらないのに内容がおかしい。なんでもない顔してるが実は酔ってんのか?
「でもさ、ただの友達にしては抱き着いてきたりしてたしさ、それだけじゃないんでしょ?」
「いや、まぁ…。それは、その。俺も一応男ですし…。」
なんの罰ゲームだこれは。なぜ俺のこんな話になったんだ。俺の肯定ともとれる返事を聞いたナマエさんからはこれといって嫌悪や軽蔑と言った否定的な表情はされなかった。むしろ、あれだけ可愛かったら手を出したくもなるよね!と納得している様子だ。
「引かないんすね。」
「だって、男女の関わりなんてそれぞれでしょ?さすがにわかってるよ。これでも大人ですから。」
キルシュタインくん、おかわり!ニコニコしながらグラスを傾けてきた。ボトルキープするつもりだったが、このままだと今日で飲み干す気がする。ナマエさん、この酒高ぇんすよ。かっこつけて頼んだけど、高ぇんす。と心の中でだけ呟く。
「思ったんだけどね、魔術師ネタでさぁ、ケールくん大人しくならないかなぁ。」
「…脅そうとすんなよ。」
やっぱりダメか。しゅんと効果音が付きそうな面持ちで肩を落としたが。ダメだろ。
見た目良し、性格良し、仕事もできるうちの会社の高嶺の花は。
大酒飲みの大食らいで、下ネタも平気で話す。そしてー。
どうやら腹黒らしい。
開口一番そんな事を言うファーランさんに苦笑いを零しながらカウンターへと二人で座る。
最近では俺たちの顔を見るといらっしゃいすら言われなくなった。
「売り上げに貢献してる上客に対してそれはないんじゃないの?」
「なぁにが上客だ。やっすい酒しか頼まないくせによく言うよ。」
「やっすい酒ばっかり置いてるファーランさんもファーランさんっすよね。」
「お前な…」
すごい顔をしてこちらを見てきた。それでも俺たちにおしぼりを差し出しナッツの小皿を置いてくるあたりはさすがはマスターと言ったところか。そういえば先月に開店一周年を迎えたっつってたな。
「ファーランさん、ここってラフロイグの15年置いてましたよね?お願いしていいっすか?ボトルで。」
「…お前!」
今度は少年のようなキラキラした眼差しで見つめられた。畏まりました!と姿勢を正してグラスを準備するこの店のマスターを見て、ははっと笑いながらナッツを口に放り込むとナマエさんが心配そうにこちらを見てきた。
「そんな高いお酒頼んで大丈夫なの?」
「俺はこの間周年のお祝いしてなかったんで、その代わりっすよ。」
「太っ腹~!あ、私も一緒に頂いていい?ラフロイグ、大好きなの!」
現金な人っすね、と眉をしかめて見せると、なんの悪気もない無邪気な笑みを寄こしてくる。ロックグラスを二つ並べてその真ん中にボトルをドンっと音を立てて置いたその人は先ほどと打って変わってご機嫌なご様子だ。
「ま、今夜はゆっくりしていけよ!」
鼻歌交じりのファーランさんは口から音符でも出しそうな勢いで他の客のところへ向かった。
「あーいうのを現金な人っていうんじゃない?」
「…間違いないっすね。んじゃ、まぁ、乾杯しますかね!」
お互いのグラスにそれぞれ注いで、軽く角を合わせた。涼やかなガラスの音がその場に響いた。ピクシス専務にウイスキーの旨さを教えて貰ってから好んで嗜むようになり、味も少しだが分かるようになってきた。それでも、やはりキツい。
「んー!やっぱ違うね!おいしーい!」
「さすがっすね。俺にはまだ少しキツいくらいですよ。この後はハイボールにしときます。」
「えー!せっかくいいお酒なのに!勿体ないよ!」
出た。酒好きの発言。ストレートで飲むには俺にはまだ早いようだ。
「酒に強いといろいろ楽しそうでいいっすね。俺、途中から気持ち悪くなっちまうんすよね。」
「そぉ?いいことばっかりでもないよ?たくさん飲める分高く付くし、女の癖に可愛げがないってよく言われるしね。幻滅したーって言われることなんて今まで何度あったかわかんないよ。」
ナマエさんらしくない言葉だと思った。なんつーか、ナマエさんでもそんなことを言うんだなと。
容姿にしろ性格にしろ仕事ぶりにしろ、「完璧な女性」を具現化したような人だと誰かが言っていた気がする。
「ナマエさんでも異性からの印象とか気にしたりするんすか?」
「どういう意味?そりゃ気になる人には印象良くしたいし、可愛いって思ってもらいたいし言って欲しいよ。だから、お酒もあんまりたくさん飲まないようにしたり、ご飯も少ししか食べないようにしたり努力はしてるんだよ?結局バレちゃうけどね。」
ため息を吐きながらも早速グラスの中は空っぽだ。だから飲むの早ぇよ。
そんなことを気にするタイプではないと思っていたし、そんなこと抜きにしてもこの人には男の方から勝手に寄ってくるから心配なんかしなくていいのに。今までは仕事上の付き合いしかしてこなかったのでこういった話は聞いた事が無かった。ある意味新鮮だ。
グラスに二杯目を注ぐと嬉しそうにありがとうと言われた。
「そんな事気にする必要なさそうですけどね。バケモノレベルで酒が強くても、大食いタレントとしてスカウトされんじゃねえかってくらい底なしの胃袋の持ち主でも、いい大人の癖して小学生でもそこまで酷くねぇよってくらい頬に食べかすつけてても、ナマエさんはナマエさんでしょ。」
「今私は、褒められてるの?バカにされてるの?」
「めちゃくちゃ褒めてますよ?いや、だから、ナマエさん自身を見てくれるやつを選べばいいだけの事でしょ。幻滅とかなんとか言う奴って、結局ナマエさんの外見しか見てないってことなんでしょうね。ナマエさん、男見る目ないんじゃないっすか?」
少し離れた所から、おい!聞こえてんぞ!という声が聞こえてきた。そういえばあの人は元彼だったか。そして地獄耳か。ナマエさんが何も言わないので様子を伺うと、固まったようにこちらを見ていてその大きな瞳がなぜかゆらゆらと揺れていた。前にもこんなことがあった気がする。いつだったか。
「ナマエさん?どうしました?あ…なんかマズイこと言っちまいましたかね。」
男見る目がないとか、失礼にもほどがあったか。すみませんと口を開こうとしたら、ハッとしたようになんでもないよ、と曖昧に笑った。まただ。この顔も見たことがある。
…思い出した。資料室で見た表情だ。
「なんでもないって顔じゃないですけどね。なんか、偉そうなこと言ってすみません。」
「ううん。本当になんでもないの。ただ…前に同じこと言ってくれた人がいてね、それでビックリしちゃっただけだよ。」
ナマエさんのその
「それって…昔の男…とかですか?」
「…え?」
「それとも、リヴァイ課長?」
一瞬戸惑いを見せたと思ったが、課長の名を聞いてホッとしたような顔になった。つまり、昔の男の方ってことか。ナマエさんの中に誰かが居るんだろうことを何となく察してしまった。何故だかわからないが、ナマエさんから俺の知らない男の話を聞きたくないと思った。
なんでリヴァイが出てくるの、とナマエさんは少し調子を取り戻したようだ。ここは彼女に合わせることにしよう。
「だって、課長とナマエさんって仲良すぎません?二人は付き合ってるもんだと思い込んでましたよ。課長もナマエさんの前だと表情少し柔らかいっつーか。」
「それは、学生の頃からの付き合いだからね。リヴァイにはもう恥ずかしい所も情けない所も全部バレちゃってるし。気心知れた親友って感じかな。」
親友…ねぇ。にしてはイチャイチャしてますよね、と言うのはやめた。イチャイチャと言っても、ナマエさんがベタベタしてるのでなく、課長がやたらとナマエさんに触れていると分かっていたから。そして、課長がナマエさんを見るときの目は、友情のそれとは違う、と確信していたからだ。
ナマエさん側の気持ちは正直俺にはわからないが。この人は一見嘘がつけない分かりやすそうなタイプに見えるが、実はそうではないと最近思うようになった。どうでもいい事はすぐにバレるような素振りを見せる癖に、知られたくないことは絶対に本心を出すことはない。動揺しているだろう所までは分かるようになったが。
そういえばさ、とナマエさんが頬杖をつきながらニヤニヤとこちらを見ながら話題を変えてきた。
「エリーちゃんだっけ?キルシュタインくんもあの子にお世話になってるの?やっぱりプロは違うの?」
「ぼふぉっ!…げほ。」
ラフロイグが鼻に入った。くそ痛ぇ。この人はなんつーこと言うんだ。大丈夫?と言いながらおしぼりをくれたが、楽しそうにニヤニヤしている。ちなみにナマエさんに咎められてハイボールは飲ませてもらえない。ずっとロックだ。原液は鼻に染みる。
そんなことよりも、ナマエさんから下ネタじみたことが出てくるなんて、誰が想像しただろうか。
「…げほ。違いますよ。あいつは合コンで知り合ったただの友達っすよ。アシュロフさんと一緒にしないでくださいよ。」
「騎乗位の魔術師?」
「ぶはっ!ナマエさん、何を平気な顔して下ネタ口にしてんすか…。」
キルシュタインくんならいいかなぁって。そう言いながら楽し気にグラスに口をつける。はぁ。俺も気心知れる人になれたってことだろうか。いいのか悪ぃのか。
「でもさ、騎乗位ってことは自分はあんまり動かないんだよね?プロ任せってこと?」
「いや、下は下でいろいろと…じゃなくて!何?ナマエさんて意外とそっちの話好きなんすか?普通同僚に平気で下ネタぶっこんでこないでしょ。恥ずかしいからやめてよ~とかいうキャラじゃないんすか?」
「ひどーい。私は私ってキルシュタインくんが言ってくれたのにー。だから着飾るのやめることにしたのになー。」
「着飾った服一度に脱ぎすぎだろ。」
やだ見ないでーエッチ―と言いながら笑うその顔は、普段のナマエさんの花のような笑顔と変わらないのに内容がおかしい。なんでもない顔してるが実は酔ってんのか?
「でもさ、ただの友達にしては抱き着いてきたりしてたしさ、それだけじゃないんでしょ?」
「いや、まぁ…。それは、その。俺も一応男ですし…。」
なんの罰ゲームだこれは。なぜ俺のこんな話になったんだ。俺の肯定ともとれる返事を聞いたナマエさんからはこれといって嫌悪や軽蔑と言った否定的な表情はされなかった。むしろ、あれだけ可愛かったら手を出したくもなるよね!と納得している様子だ。
「引かないんすね。」
「だって、男女の関わりなんてそれぞれでしょ?さすがにわかってるよ。これでも大人ですから。」
キルシュタインくん、おかわり!ニコニコしながらグラスを傾けてきた。ボトルキープするつもりだったが、このままだと今日で飲み干す気がする。ナマエさん、この酒高ぇんすよ。かっこつけて頼んだけど、高ぇんす。と心の中でだけ呟く。
「思ったんだけどね、魔術師ネタでさぁ、ケールくん大人しくならないかなぁ。」
「…脅そうとすんなよ。」
やっぱりダメか。しゅんと効果音が付きそうな面持ちで肩を落としたが。ダメだろ。
見た目良し、性格良し、仕事もできるうちの会社の高嶺の花は。
大酒飲みの大食らいで、下ネタも平気で話す。そしてー。
どうやら腹黒らしい。