第34話 魔術師
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偶々ファーランさんのバーで一緒に飲むことになってから、俺とナマエさんの関係に少し変化が起きた。
今年に入ってパートナーとして過ごすようになり昼こそ一緒に食事を取ったり、合間の休憩で一階のカフェに二人で行ったりはしていた。
あくまでも業務時間中だけの事だった。就業のチャイムが鳴ればそこまで。まさに仕事とプライベートは別と言う感じだった。
「キルシュタインくん、今日はどうする?行く?」
「いいですよ。ファーランさんのとこにします?」
だね!秘書課に用事があるから先に一階のロビーで待ってて?
そう言って先にオフィスを出て行った。
そう、あの一件から俺たちは仕事の後もよく一緒に飲みに行ったり夕食を共にするようになったのだ。少し前のナマエさんからは想像もつかない。ただの同僚から、友人枠へと昇格したらしい。
「よぉ、ジャン。ナマエと飲みに行くのか?俺も一緒に行ってやってもいいぜ?」
「あ!ずるーい!あたしもジャンくんと飲みに行きたぁい!」
問題児二人登場。プライベートの時間までこの二人に振り回されるのは勘弁してほしい。
最近はこの二人の問題行動の処理をするのが何故か俺とナマエさんの仕事になっていた。リヴァイ課長からのお達しだ。
営業部全体の数字管理を俺が主体となり行う事。
社員のフォローを率先して行う事。
そして、俺自身はエースクラスの実績を出すこと。
それをナマエさんがフォローする事。
勘弁してくれと思った。これまでよりも明らかに業務量が増えている。何の為に業務の振り分けをしたんだと頭を抱えたくなる。
昇進を視野に入れたことだとは分かっていても、キツい。ナマエさんも業務が増えて疲れているんだろう。
飲みに誘われるのもストレス発散がしたいからだと思う。
「アシュロフさん、イーゼルさんお疲れ様です。残念ですが今日は俺の友人も一緒なのでまたの機会でお願いします。」
もちろん来ない。嘘も方便だ。
ちなみに、名前で呼べとうるさくてしつこかったため、呼び方は変えた。
「そんなこと言うなよ!俺とお前の仲だろ?その友人とやらも俺に紹介しろよ。」
どんな仲だ。ただの同僚だ。マジで勘弁してくれ。どうあしらうか、断るか、考えながらロビーへ向かう。
右側からアシュロフさんに肩を組まれ、左側には腕を絡めて寄りかかってくるイーゼルさん。
重てぇ。気持ちだけでなく物理的にまで重くなってしまった。周りからはドンマイという視線を感じる。誰か助けてくれ。
解決策を思いつけないままロビーへついてしまった。そのままセキュリティゲートを抜ける。
「おーーーーい!」
入り口の方から女の呼びかける声がしたので顔を上げると、そこにいたのはエリーだった。手を振りながら駆け寄ってくる。
さらに悩みの種が増える…と思っていたら、右側から小さな声で「エリー?なんでこんな所に…。俺は職場を教えてねぇぞ。」とブツブツ呟く声が聞こえた。…知り合いか?
「ジャーンー!会いたかったよー!」
「うぉっ!あぶねぇ。」
正面から俺目掛けてタックルをかましてきた。知らない間にアシュロフさんが俺から離れていたおかげでなんとか踏ん張れた。イーゼルさんはそのまま離れていない。
「ちょっと!あんた誰?ジャンくんから離れなさいよ!」
「はぁ?私はジャンのお友達ですー!あんたこそ誰よ。どうせただの同僚か何かでしょ?オバサン。」
「はぁぁぁ!?オバサン!?」
「キルシュタインくんお待たせー…ってどうしたの?これ…」
…なんの辱めだこれは。いきなり二人が罵り合いを始めてしまった。呆然としていたところへ、ついにナマエさんも追いついてここまで来てしまった。退社した社員が続々と出てくる中、周りもなんだなんだという目で見てくる…どうするか。
「ジャンー、今日こそこの間の埋め合わせしてくれるよねー?って、あれ?この人…」
エリーはアシュロフさんの方を見て何度か瞬きをした後、あ!とひと際大きな声を出した。
「あーー!!魔術師だ!きじょ…もごっ!」
魔術師?なんだそれ。疑問に思っているとアシュロフさんが突然エリーの口を慌てたように塞いだ。
「エリー!偶然だな!ジャンと知り合いだったのか?」
それともこいつも客の一人か?と小さな声で怯えたようにエリーに話しかけた。客…あぁ、そういう…。
「違うよー!ジャンはちゃんとしたお友達だよ!ジャンがお店に来るほど困ってるわけないじゃん。」
きっぱりと言い放つエリーに苦虫を嚙みつぶしたような表情をしたアシュロフさんは、そのままイーゼルさんの腕を掴み慌てたように言った。
「イーゼル!帰るぞ!」
「えーーー!ジャンくんと飲みに行きたぁい!」
「今日は俺が奢ってやるから来い!」
そうして騒ぐだけ騒いで嵐のように去っていった。
「何が…あったの?」
ナマエさんが去っていく二人の方を見てポツリと呟いた。俺もよくわかりません…としか言えなかった。
「ねぇねぇ、ジャン、あの人ここの会社の人だったの?」
「あ?あぁ。うちの部署の先輩だよ。異動してきたばっかだけどな。」
「それで最近いきなり指名が増えたんだー。」
「お前のとこによく来るのか?」
知り合って暫くしてから知ったことだが、エリーは所謂『プロ』だ。俺はプロにお世話になったことがねぇから知らなかったが、テクニックはもちろん、元々の性格も相まってかなりの人気らしいと、ライナーから聞いた。
最初聞いた時は驚いたが彼女は自分の仕事に自信と誇りを持っていたし、いろんな事情でいろんな職業の人がいることも理解しているつもりではあったので否定的な気持ちにはならなかったことを覚えている。
「あんまりお客さんのこと悪く言いたくはないんだけどさぁ。あの人はちょっとねー。こうしろとか、あぁしろとか、めっちゃウザいの。プロより俺のテクの方がすごいとか語ってくるんだけどさ、下手くそすぎて、痛みすら感じないのー。それでね、『騎乗位の魔術師』って自分で言いまわってて、他の女の子たちも困ってるみたいだよ。」
「「………。」」
あ、これ私が言ってたって言わないでねー?俺に抱き着いたまま話すエリーの言葉に絶句した。エリーが人の事を悪く言うのを聞いた事がなので、よっぽど酷いんだろうことが伺える。
ナマエさんにももちろん聞こえていて、様子を伺うと、なんとも言えない表情をしていた。
「されでさ、ジャン!今日は空いてる?」
「今日は先約アリだよ。また今度な。」
「えー、ざんねーん!ま、仕方ないよね!また今度誘うからその時は一緒に遊んでね?」
そう言うとあっさり俺から離れてナマエさんの方に向かってお邪魔しましたぁ!とニコニコしながら元気よく挨拶をした。相変わらず切り替えが早い。そしてまじまじとナマエさんを観察した後、とんでもないことをぶっこんできた。
「わぁ!おねーさんすんごい可愛いね!うちに来たらソッコー売れっ子間違いなしだよ!副業とか興味あったらいつでも連絡してね?はい、これ名刺!」
「…ソレハドウモ。」
じゃぁまたねー!と言って颯爽と帰っていった。あいつも嵐か。
「「………。」」
何となく気まずい空気が流れる。幸い周りの社員たちも興味をなくしたらしく、いつも通りのロビーの様子に戻った。
「…行きますか。」
「…そうだね。」
今年に入ってパートナーとして過ごすようになり昼こそ一緒に食事を取ったり、合間の休憩で一階のカフェに二人で行ったりはしていた。
あくまでも業務時間中だけの事だった。就業のチャイムが鳴ればそこまで。まさに仕事とプライベートは別と言う感じだった。
「キルシュタインくん、今日はどうする?行く?」
「いいですよ。ファーランさんのとこにします?」
だね!秘書課に用事があるから先に一階のロビーで待ってて?
そう言って先にオフィスを出て行った。
そう、あの一件から俺たちは仕事の後もよく一緒に飲みに行ったり夕食を共にするようになったのだ。少し前のナマエさんからは想像もつかない。ただの同僚から、友人枠へと昇格したらしい。
「よぉ、ジャン。ナマエと飲みに行くのか?俺も一緒に行ってやってもいいぜ?」
「あ!ずるーい!あたしもジャンくんと飲みに行きたぁい!」
問題児二人登場。プライベートの時間までこの二人に振り回されるのは勘弁してほしい。
最近はこの二人の問題行動の処理をするのが何故か俺とナマエさんの仕事になっていた。リヴァイ課長からのお達しだ。
営業部全体の数字管理を俺が主体となり行う事。
社員のフォローを率先して行う事。
そして、俺自身はエースクラスの実績を出すこと。
それをナマエさんがフォローする事。
勘弁してくれと思った。これまでよりも明らかに業務量が増えている。何の為に業務の振り分けをしたんだと頭を抱えたくなる。
昇進を視野に入れたことだとは分かっていても、キツい。ナマエさんも業務が増えて疲れているんだろう。
飲みに誘われるのもストレス発散がしたいからだと思う。
「アシュロフさん、イーゼルさんお疲れ様です。残念ですが今日は俺の友人も一緒なのでまたの機会でお願いします。」
もちろん来ない。嘘も方便だ。
ちなみに、名前で呼べとうるさくてしつこかったため、呼び方は変えた。
「そんなこと言うなよ!俺とお前の仲だろ?その友人とやらも俺に紹介しろよ。」
どんな仲だ。ただの同僚だ。マジで勘弁してくれ。どうあしらうか、断るか、考えながらロビーへ向かう。
右側からアシュロフさんに肩を組まれ、左側には腕を絡めて寄りかかってくるイーゼルさん。
重てぇ。気持ちだけでなく物理的にまで重くなってしまった。周りからはドンマイという視線を感じる。誰か助けてくれ。
解決策を思いつけないままロビーへついてしまった。そのままセキュリティゲートを抜ける。
「おーーーーい!」
入り口の方から女の呼びかける声がしたので顔を上げると、そこにいたのはエリーだった。手を振りながら駆け寄ってくる。
さらに悩みの種が増える…と思っていたら、右側から小さな声で「エリー?なんでこんな所に…。俺は職場を教えてねぇぞ。」とブツブツ呟く声が聞こえた。…知り合いか?
「ジャーンー!会いたかったよー!」
「うぉっ!あぶねぇ。」
正面から俺目掛けてタックルをかましてきた。知らない間にアシュロフさんが俺から離れていたおかげでなんとか踏ん張れた。イーゼルさんはそのまま離れていない。
「ちょっと!あんた誰?ジャンくんから離れなさいよ!」
「はぁ?私はジャンのお友達ですー!あんたこそ誰よ。どうせただの同僚か何かでしょ?オバサン。」
「はぁぁぁ!?オバサン!?」
「キルシュタインくんお待たせー…ってどうしたの?これ…」
…なんの辱めだこれは。いきなり二人が罵り合いを始めてしまった。呆然としていたところへ、ついにナマエさんも追いついてここまで来てしまった。退社した社員が続々と出てくる中、周りもなんだなんだという目で見てくる…どうするか。
「ジャンー、今日こそこの間の埋め合わせしてくれるよねー?って、あれ?この人…」
エリーはアシュロフさんの方を見て何度か瞬きをした後、あ!とひと際大きな声を出した。
「あーー!!魔術師だ!きじょ…もごっ!」
魔術師?なんだそれ。疑問に思っているとアシュロフさんが突然エリーの口を慌てたように塞いだ。
「エリー!偶然だな!ジャンと知り合いだったのか?」
それともこいつも客の一人か?と小さな声で怯えたようにエリーに話しかけた。客…あぁ、そういう…。
「違うよー!ジャンはちゃんとしたお友達だよ!ジャンがお店に来るほど困ってるわけないじゃん。」
きっぱりと言い放つエリーに苦虫を嚙みつぶしたような表情をしたアシュロフさんは、そのままイーゼルさんの腕を掴み慌てたように言った。
「イーゼル!帰るぞ!」
「えーーー!ジャンくんと飲みに行きたぁい!」
「今日は俺が奢ってやるから来い!」
そうして騒ぐだけ騒いで嵐のように去っていった。
「何が…あったの?」
ナマエさんが去っていく二人の方を見てポツリと呟いた。俺もよくわかりません…としか言えなかった。
「ねぇねぇ、ジャン、あの人ここの会社の人だったの?」
「あ?あぁ。うちの部署の先輩だよ。異動してきたばっかだけどな。」
「それで最近いきなり指名が増えたんだー。」
「お前のとこによく来るのか?」
知り合って暫くしてから知ったことだが、エリーは所謂『プロ』だ。俺はプロにお世話になったことがねぇから知らなかったが、テクニックはもちろん、元々の性格も相まってかなりの人気らしいと、ライナーから聞いた。
最初聞いた時は驚いたが彼女は自分の仕事に自信と誇りを持っていたし、いろんな事情でいろんな職業の人がいることも理解しているつもりではあったので否定的な気持ちにはならなかったことを覚えている。
「あんまりお客さんのこと悪く言いたくはないんだけどさぁ。あの人はちょっとねー。こうしろとか、あぁしろとか、めっちゃウザいの。プロより俺のテクの方がすごいとか語ってくるんだけどさ、下手くそすぎて、痛みすら感じないのー。それでね、『騎乗位の魔術師』って自分で言いまわってて、他の女の子たちも困ってるみたいだよ。」
「「………。」」
あ、これ私が言ってたって言わないでねー?俺に抱き着いたまま話すエリーの言葉に絶句した。エリーが人の事を悪く言うのを聞いた事がなので、よっぽど酷いんだろうことが伺える。
ナマエさんにももちろん聞こえていて、様子を伺うと、なんとも言えない表情をしていた。
「されでさ、ジャン!今日は空いてる?」
「今日は先約アリだよ。また今度な。」
「えー、ざんねーん!ま、仕方ないよね!また今度誘うからその時は一緒に遊んでね?」
そう言うとあっさり俺から離れてナマエさんの方に向かってお邪魔しましたぁ!とニコニコしながら元気よく挨拶をした。相変わらず切り替えが早い。そしてまじまじとナマエさんを観察した後、とんでもないことをぶっこんできた。
「わぁ!おねーさんすんごい可愛いね!うちに来たらソッコー売れっ子間違いなしだよ!副業とか興味あったらいつでも連絡してね?はい、これ名刺!」
「…ソレハドウモ。」
じゃぁまたねー!と言って颯爽と帰っていった。あいつも嵐か。
「「………。」」
何となく気まずい空気が流れる。幸い周りの社員たちも興味をなくしたらしく、いつも通りのロビーの様子に戻った。
「…行きますか。」
「…そうだね。」