第32話 円卓を囲む
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聞き慣れた声に聞き慣れた名前。ゆっくりと体を起こして振り返ると、ナマエさんがマスターと仲良さげに言葉を交わしながら上着を脱いでいる所だった。
「ナマエさん?」
「うわっ!びっくりしたぁ。キルシュタインくん!」
まさか俺がいるとは思わなかったんだろう、ナマエさんは声を掛けられた瞬間に肩を跳ねさせるほど驚いていた。
「え?お前ら知り合い?おいおいナマエ、俺は聞いてねぇよ?どこでこのイケメン兄さん捕まえたんだよ。」
「もう、ファーラン!同じ会社の同僚だよ。営業部で一緒にチーム組んでるの。ごめんねキルシュタインくん、この人は…「ナマエーーーーー!!!」…きゃあ!」
ナマエさんの言葉を遮ってタックルをかましてきたのは赤い髪の店員だった。なんだこの状況。とりあえず二人ともナマエさんの知り合いらしいことは分かったが。店に入った時と二人とも雰囲気が違う。もっとクールな人たちかと思っていた。特に赤髪の子。ナマエさんにじゃれる様子は子供みたいだ。
「ナマエってばぜんぜん来てくんないんだもんなぁ。薄情だぜ全く!」
「イザベル!少し背が伸びた?それに、そのベストもすごくよく似合ってる!ファーランとお揃いにしたんだね、バーテンダーさんって感じ!」
「へへーん!そうだろ?もう何種類か酒も作れるようになったんだぜ!」
イザベルと呼ばれた女の子はナマエさんに頭を撫でられて嬉しそうにしている。傍から見たらまるで親子か姉妹みたいだ。そんなことを思っていたらウエスタンドアがギィと音を立てた。また新しい来客らしい。
「ナマエ、頼まれたものってこれで…あれ、あんたたちもここの知り合い?」
「アニ!うわぁ、久しぶりだね!」
「マルコ…あんたも変わってないね。」
入ってきたのは大きな花束を抱えたアニだった。会うのは先日の事件以来だ。ナマエさんに怪我をさせてしまった事を随分と気にしていたのが気掛かりだったがもう大丈夫そうだ。というか花束を抱えるアニ…。申し訳ないがちょっとイメージと合わない。
「アニちゃん!お遣い頼んじゃってごめんね?アニちゃんの方が予約してたお花屋さんに近かったからつい甘えちゃったよ。」
「別にそれはいいけど。」
「そのお花、ファーランに渡してあげて?ファーラン、オープン1周年おめでとう!私とアニちゃんからのお祝いだよ!」
アニから花束を受け取ったマスターは一度は目を丸くしたものの、すぐにその整った顔を破顔させくしゃりと笑った。
「1周年は来週だけどな。なんだよお前ら、わざわざこんな事しなくてもいいのに。これ、アルストロメリアか?さすがはナマエだな。」
「そうだよ!よくわかったね!ファーランってそんなにお花に詳しかったっけ?」
「そりゃそうだろ。誰かさんが高校の頃さんざん俺に花についてうんちく垂れてたら嫌でも覚えるわな。」
二人は高校の同級生らしい。ということはリヴァイ課長もか。アルス…?花の名前だろうか。俺が首を傾げているとマルコが補足してくれた。
「アルストロメリア。花言葉は持続とか、幸福な日々、未来への憧れ。後はエキゾチックとかの意味があるんだ。周年のお祝いにはもってこいだし、マスターさんのイメージにも合うよね。」
「マルコ…なんでそんなに詳しいんだよ。」
「えっ…と。彼女がフラワーコーディネーターだからね、僕も少し勉強したんだよ。」
そうだった。マルコの彼女は確か結婚式場で働いてるって言ってたな。彼女の職業に関する事を自分でも勉強するなんて、マルコらしいっちゃらしいか。
「うんちくって酷いな。ファーランだって興味深そうに聞いてくれてたじゃん。」
「そりゃあ、自分の女が目ぇキラッキラさせながら話してんだ。かわいくてしょうがないに決まってんだろ?」
頬を膨らませながら抗議しているナマエさんを宥めるように頭を撫でているマスター。
…なんつった?自分の女?ナマエさんの恋人は課長じゃねぇのか?
「お二人は恋人同士なんですか?あ、初めまして。僕はマルコ・ボットといいます。ジャンとは小さいころからの幼馴染であり親友なんです。」
衝撃を受けて固まっている俺の代弁をするように二人に聞いてくれたのはマルコだった。しっかり自己紹介もしている。はっきりと親友と言われるのは少し恥ずかしい。
「あっ、初めまして!私はナマエ・ミョウジと言います。よろしくね!」
「ナマエの知り合いなら俺も自己紹介がいるな。俺はファーラン・チャーチ。見ての通りここの店主をやってる。ナマエとは高校の頃からの馴染みでな、所謂元カレってやつだ。ついでに記念すべきこいつの初カレでもあるな!」
そう言ってニヤニヤしながらナマエさんの肩を組んでいる。ナマエさんは「余計なこと言わなくていいから!」と言いながらファーランさんを押しのけようとしている。全く効果がなさそうだが。こっちからすればイチャイチャしているようにしか見えない。
「イチャイチャするのは勝手だけどさ、お酒。出してくれないの?」
「お、悪ぃなアニちゃん!おいイザベル!今日は貸し切りだ、表閉めてこい!せっかく仲間がこんなに集まってんだ、今日は皆で飲むぞ!」
「よっしゃー!任せとけ!」
赤髪のイザベル…さん?は嬉しそうにCLOSEと書かれた看板を持って外に駆けて行った。マルコとまったり飲もうと思っていた俺の週末は賑やかでやかましい夜になりそうだ。
カウンターからテーブル席へと移動して皆で円卓を囲む。テーブルにはマスター自らが作っている燻製やさまざまな種類のチーズなどが並ぶ。先ほどのイエガーもちゃっかりテーブルの上で出番を待っていた。
「お!いいねぇジャン。いい飲みっぷりだな!もっといけいけ!」
「今日は酔いたい気分なんすよ、マスター。」
「さっき話してたやつか?おいナマエ、ジャンが仕事の事で悩んでるらしいぞ?お前らパートナーなんだろ?」
ちょっと待て、ナマエさんはだめだ。係長の一件は俺から彼女にまだ話してねぇ。それに先輩のナマエさんを差し置いて何いってんだと思われるかもしれねぇ。
「いや、違うんすよ、ナマエさん…」
「昇進の話、もしかしてキルシュタインくん嫌なの?確かにいきなりだったとは思うけど私は賛成だよ?」
「…知ってたんすか?」
「うん、もちろん。課長から私にも話があったからね。課長は私にもチャンスをくれたんだけど、お断りしたの。私には荷が重すぎますって。もっと適した人材がいますよって課長に言ったのは、私なの。」
まさかの話だった。ナマエさんに何て言えばいいのかと悩んでいたのは何だったんだ。もっと詳しく話を聞きたかったが、周りにはうちと関係ないヤツもたくさんいる。続きを話すか迷っていると、先にナマエさんが口を開いた。
「キルシュタインくん、場所が場所だしこの話はまた今度…ね?」
そう言って人差し指を口に添えてほほ笑んだ。そうだな、ここでする話じゃねぇな。
「分かりました。また、会社で。」
「なんだよお前らー意味深な会話コソコソすんなよ。俺にも聞かせろよー。」
そう言って俺の肩を組んでのしかかってくるファーランさん。どうやら既に酔っているようだ。バーのマスターがこんなに早く酔っていいのか?
「あ、ファーランさん!ナマエさんの学生の頃の話とか何かないんすか?」
話を逸らすために学生の頃について聞いてみた。思い付きで聞いた事だが興味はある。
「それは僕も聞きたいな。ナマエさんすごくお綺麗だから高校生なんて、きっとすごくかわいくてモテたんでしょうね!」
おい、マルコ。さらっと名前呼びした上に綺麗だのなんだの、これまたさらっと言いやがった。マルコのこういう所が俺は……いや、まぁ。今はやめておこう。
「聞きたい?聞きたいよなぁ!」
「ちょっとファーラン!何言うつもりなの!?キルシュタインくんもこの人の話なんてまともに聞いちゃだめだから!」
こう言われては余計に聞きたくなる。ファーランさんのグラスに酒をつぎ足し、話を促した。
「女子高生のナマエは…そりゃあもう可愛くて可愛くて、入学式で見かけた瞬間に、絶対落としてやるって固く決意したのを思い出すぜ。ナマエは入学当初から上級生からも目を付けられてたからな。もちろんいい意味でな。いっつも誰かに言い寄られてた。」
「それ、今と変わらねぇんですけど。」
「はははッ!だろうなぁ。でも、ナマエと仲良くなった俺とリヴァイがいつもこいつのボディガードみてぇなことしてたからな。俺らどっちかと付き合ってんじゃねぇか、両方食ってんじゃねぇかとかいろんな噂もあったなぁ。」
ナマエさんは少し不機嫌そうにグラスに口をつけながら聞いている。そりゃ元カレに昔の話されるのはあまりうれしい事ではないだろう。マルコは知ってか知らずか、ファーランさんに続きを話してくれとねだった。
「そんなナマエさんをどうやって落としたんですか?」
「そりゃ企業秘密だ。苦労したよ。それでもナマエが大好きで大好きで仕方なかったからな、OK貰えた時はめちゃくちゃ嬉しかったよ。」
「…浮気したくせによく言うよ。」
「ありゃあ若気の至りてやつだよ。でも本命はナマエだったんだぜ?」
「はいはい、ありがとうございますー。」
なんだか。昔の話とはいえ、よくこういう話を平気でできるな。しかも別れてからも友情は続いているようだ。俺は元カノと友達に戻ったことはない。
「浮気が原因で別れたのに、今でもお友達なんですね?すごいなぁ。」
マルコ、さっきからストレートすぎだ。酔ってんのか?
「お互い嫌いになったわけじゃねぇからな。まぁ、俺はいつでも元サヤ大歓迎だぜ?」
「それはどうも、もったいないお言葉ですー。」
ナマエさんは棒読みでファーランさんの言葉を流している。ファーランさんはつめてぇなぁ、おい、と言いながらも楽し気に酒を煽る。男女の友情はなくはないとは思うが、元恋人でもありえるんだな。リヴァイ課長
はどんな気持ちで二人を見ているんだろうか。
「そういやナマエ、今日はリヴァイは来ねぇの?さっき言ってた課長って、リヴァイの事だろ?」
「残ってる仕事を片付けてから顔を出すって言ってたよ。」
「えー!リヴァイの兄貴もくんの?やったー!ツマミ、追加で作ってくるよ!」
課長、来るのか。二人の前での課長の様子が気になるところではあるが。本人が来る前に一応聞いておこう。
「あの、リヴァイ課長は何も言わないんですか?お二人が一緒に居る事…。元とはいえ、あまりいい気はしねぇんじゃないっすか?」
「ん?」
「何のことだ?」
「…え?」
何故か意味が伝わってないようだ。もっとかみ砕いて説明しようとしたら、入り口から木の軋む音が聞こえた後、話題の張本人の声がした。
「おい、入り口CLOSEになってんぞ?今日はやってねぇのか?」
ネクタイを緩めながらリヴァイ課長が中に入ってきた。
「ナマエさん?」
「うわっ!びっくりしたぁ。キルシュタインくん!」
まさか俺がいるとは思わなかったんだろう、ナマエさんは声を掛けられた瞬間に肩を跳ねさせるほど驚いていた。
「え?お前ら知り合い?おいおいナマエ、俺は聞いてねぇよ?どこでこのイケメン兄さん捕まえたんだよ。」
「もう、ファーラン!同じ会社の同僚だよ。営業部で一緒にチーム組んでるの。ごめんねキルシュタインくん、この人は…「ナマエーーーーー!!!」…きゃあ!」
ナマエさんの言葉を遮ってタックルをかましてきたのは赤い髪の店員だった。なんだこの状況。とりあえず二人ともナマエさんの知り合いらしいことは分かったが。店に入った時と二人とも雰囲気が違う。もっとクールな人たちかと思っていた。特に赤髪の子。ナマエさんにじゃれる様子は子供みたいだ。
「ナマエってばぜんぜん来てくんないんだもんなぁ。薄情だぜ全く!」
「イザベル!少し背が伸びた?それに、そのベストもすごくよく似合ってる!ファーランとお揃いにしたんだね、バーテンダーさんって感じ!」
「へへーん!そうだろ?もう何種類か酒も作れるようになったんだぜ!」
イザベルと呼ばれた女の子はナマエさんに頭を撫でられて嬉しそうにしている。傍から見たらまるで親子か姉妹みたいだ。そんなことを思っていたらウエスタンドアがギィと音を立てた。また新しい来客らしい。
「ナマエ、頼まれたものってこれで…あれ、あんたたちもここの知り合い?」
「アニ!うわぁ、久しぶりだね!」
「マルコ…あんたも変わってないね。」
入ってきたのは大きな花束を抱えたアニだった。会うのは先日の事件以来だ。ナマエさんに怪我をさせてしまった事を随分と気にしていたのが気掛かりだったがもう大丈夫そうだ。というか花束を抱えるアニ…。申し訳ないがちょっとイメージと合わない。
「アニちゃん!お遣い頼んじゃってごめんね?アニちゃんの方が予約してたお花屋さんに近かったからつい甘えちゃったよ。」
「別にそれはいいけど。」
「そのお花、ファーランに渡してあげて?ファーラン、オープン1周年おめでとう!私とアニちゃんからのお祝いだよ!」
アニから花束を受け取ったマスターは一度は目を丸くしたものの、すぐにその整った顔を破顔させくしゃりと笑った。
「1周年は来週だけどな。なんだよお前ら、わざわざこんな事しなくてもいいのに。これ、アルストロメリアか?さすがはナマエだな。」
「そうだよ!よくわかったね!ファーランってそんなにお花に詳しかったっけ?」
「そりゃそうだろ。誰かさんが高校の頃さんざん俺に花についてうんちく垂れてたら嫌でも覚えるわな。」
二人は高校の同級生らしい。ということはリヴァイ課長もか。アルス…?花の名前だろうか。俺が首を傾げているとマルコが補足してくれた。
「アルストロメリア。花言葉は持続とか、幸福な日々、未来への憧れ。後はエキゾチックとかの意味があるんだ。周年のお祝いにはもってこいだし、マスターさんのイメージにも合うよね。」
「マルコ…なんでそんなに詳しいんだよ。」
「えっ…と。彼女がフラワーコーディネーターだからね、僕も少し勉強したんだよ。」
そうだった。マルコの彼女は確か結婚式場で働いてるって言ってたな。彼女の職業に関する事を自分でも勉強するなんて、マルコらしいっちゃらしいか。
「うんちくって酷いな。ファーランだって興味深そうに聞いてくれてたじゃん。」
「そりゃあ、自分の女が目ぇキラッキラさせながら話してんだ。かわいくてしょうがないに決まってんだろ?」
頬を膨らませながら抗議しているナマエさんを宥めるように頭を撫でているマスター。
…なんつった?自分の女?ナマエさんの恋人は課長じゃねぇのか?
「お二人は恋人同士なんですか?あ、初めまして。僕はマルコ・ボットといいます。ジャンとは小さいころからの幼馴染であり親友なんです。」
衝撃を受けて固まっている俺の代弁をするように二人に聞いてくれたのはマルコだった。しっかり自己紹介もしている。はっきりと親友と言われるのは少し恥ずかしい。
「あっ、初めまして!私はナマエ・ミョウジと言います。よろしくね!」
「ナマエの知り合いなら俺も自己紹介がいるな。俺はファーラン・チャーチ。見ての通りここの店主をやってる。ナマエとは高校の頃からの馴染みでな、所謂元カレってやつだ。ついでに記念すべきこいつの初カレでもあるな!」
そう言ってニヤニヤしながらナマエさんの肩を組んでいる。ナマエさんは「余計なこと言わなくていいから!」と言いながらファーランさんを押しのけようとしている。全く効果がなさそうだが。こっちからすればイチャイチャしているようにしか見えない。
「イチャイチャするのは勝手だけどさ、お酒。出してくれないの?」
「お、悪ぃなアニちゃん!おいイザベル!今日は貸し切りだ、表閉めてこい!せっかく仲間がこんなに集まってんだ、今日は皆で飲むぞ!」
「よっしゃー!任せとけ!」
赤髪のイザベル…さん?は嬉しそうにCLOSEと書かれた看板を持って外に駆けて行った。マルコとまったり飲もうと思っていた俺の週末は賑やかでやかましい夜になりそうだ。
カウンターからテーブル席へと移動して皆で円卓を囲む。テーブルにはマスター自らが作っている燻製やさまざまな種類のチーズなどが並ぶ。先ほどのイエガーもちゃっかりテーブルの上で出番を待っていた。
「お!いいねぇジャン。いい飲みっぷりだな!もっといけいけ!」
「今日は酔いたい気分なんすよ、マスター。」
「さっき話してたやつか?おいナマエ、ジャンが仕事の事で悩んでるらしいぞ?お前らパートナーなんだろ?」
ちょっと待て、ナマエさんはだめだ。係長の一件は俺から彼女にまだ話してねぇ。それに先輩のナマエさんを差し置いて何いってんだと思われるかもしれねぇ。
「いや、違うんすよ、ナマエさん…」
「昇進の話、もしかしてキルシュタインくん嫌なの?確かにいきなりだったとは思うけど私は賛成だよ?」
「…知ってたんすか?」
「うん、もちろん。課長から私にも話があったからね。課長は私にもチャンスをくれたんだけど、お断りしたの。私には荷が重すぎますって。もっと適した人材がいますよって課長に言ったのは、私なの。」
まさかの話だった。ナマエさんに何て言えばいいのかと悩んでいたのは何だったんだ。もっと詳しく話を聞きたかったが、周りにはうちと関係ないヤツもたくさんいる。続きを話すか迷っていると、先にナマエさんが口を開いた。
「キルシュタインくん、場所が場所だしこの話はまた今度…ね?」
そう言って人差し指を口に添えてほほ笑んだ。そうだな、ここでする話じゃねぇな。
「分かりました。また、会社で。」
「なんだよお前らー意味深な会話コソコソすんなよ。俺にも聞かせろよー。」
そう言って俺の肩を組んでのしかかってくるファーランさん。どうやら既に酔っているようだ。バーのマスターがこんなに早く酔っていいのか?
「あ、ファーランさん!ナマエさんの学生の頃の話とか何かないんすか?」
話を逸らすために学生の頃について聞いてみた。思い付きで聞いた事だが興味はある。
「それは僕も聞きたいな。ナマエさんすごくお綺麗だから高校生なんて、きっとすごくかわいくてモテたんでしょうね!」
おい、マルコ。さらっと名前呼びした上に綺麗だのなんだの、これまたさらっと言いやがった。マルコのこういう所が俺は……いや、まぁ。今はやめておこう。
「聞きたい?聞きたいよなぁ!」
「ちょっとファーラン!何言うつもりなの!?キルシュタインくんもこの人の話なんてまともに聞いちゃだめだから!」
こう言われては余計に聞きたくなる。ファーランさんのグラスに酒をつぎ足し、話を促した。
「女子高生のナマエは…そりゃあもう可愛くて可愛くて、入学式で見かけた瞬間に、絶対落としてやるって固く決意したのを思い出すぜ。ナマエは入学当初から上級生からも目を付けられてたからな。もちろんいい意味でな。いっつも誰かに言い寄られてた。」
「それ、今と変わらねぇんですけど。」
「はははッ!だろうなぁ。でも、ナマエと仲良くなった俺とリヴァイがいつもこいつのボディガードみてぇなことしてたからな。俺らどっちかと付き合ってんじゃねぇか、両方食ってんじゃねぇかとかいろんな噂もあったなぁ。」
ナマエさんは少し不機嫌そうにグラスに口をつけながら聞いている。そりゃ元カレに昔の話されるのはあまりうれしい事ではないだろう。マルコは知ってか知らずか、ファーランさんに続きを話してくれとねだった。
「そんなナマエさんをどうやって落としたんですか?」
「そりゃ企業秘密だ。苦労したよ。それでもナマエが大好きで大好きで仕方なかったからな、OK貰えた時はめちゃくちゃ嬉しかったよ。」
「…浮気したくせによく言うよ。」
「ありゃあ若気の至りてやつだよ。でも本命はナマエだったんだぜ?」
「はいはい、ありがとうございますー。」
なんだか。昔の話とはいえ、よくこういう話を平気でできるな。しかも別れてからも友情は続いているようだ。俺は元カノと友達に戻ったことはない。
「浮気が原因で別れたのに、今でもお友達なんですね?すごいなぁ。」
マルコ、さっきからストレートすぎだ。酔ってんのか?
「お互い嫌いになったわけじゃねぇからな。まぁ、俺はいつでも元サヤ大歓迎だぜ?」
「それはどうも、もったいないお言葉ですー。」
ナマエさんは棒読みでファーランさんの言葉を流している。ファーランさんはつめてぇなぁ、おい、と言いながらも楽し気に酒を煽る。男女の友情はなくはないとは思うが、元恋人でもありえるんだな。リヴァイ課長
はどんな気持ちで二人を見ているんだろうか。
「そういやナマエ、今日はリヴァイは来ねぇの?さっき言ってた課長って、リヴァイの事だろ?」
「残ってる仕事を片付けてから顔を出すって言ってたよ。」
「えー!リヴァイの兄貴もくんの?やったー!ツマミ、追加で作ってくるよ!」
課長、来るのか。二人の前での課長の様子が気になるところではあるが。本人が来る前に一応聞いておこう。
「あの、リヴァイ課長は何も言わないんですか?お二人が一緒に居る事…。元とはいえ、あまりいい気はしねぇんじゃないっすか?」
「ん?」
「何のことだ?」
「…え?」
何故か意味が伝わってないようだ。もっとかみ砕いて説明しようとしたら、入り口から木の軋む音が聞こえた後、話題の張本人の声がした。
「おい、入り口CLOSEになってんぞ?今日はやってねぇのか?」
ネクタイを緩めながらリヴァイ課長が中に入ってきた。