第25話 内緒の抱擁
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さわさわと前髪をくすぐる感触でまどろみの中から意識が少し浮上する。ぼんやりとした意識の中、手探りでその感触の元へと手を伸ばした。柔らかくて暖かい何かが俺の頭に触れていた。なんだ?そのままぎゅっと握ってみる。するとそれは逃げるように俺の手から離れていった。
「…ん…?」
だんだんと意識が覚醒してきて、あの後うっかり眠ってしまったことを思い出す。ゆっくりと瞼を持ち上げ顔を上げると、さっきまで目を覚ましていなかったその人がこちらを心配そうに覗き込んでいた。
「っ!ナマエさん!」
「わっ!」
がばっと起き上がりナマエさんの両肩に手を置いて無事を確かめる。無遠慮にぺたぺたと頭やら頬やらを撫でまわしてしまったが今は許してほしい。
「おはよう。体、辛くない?」
すごい体勢で寝てたね、と言いながら眉を下げて笑った。
「それは…こっちのセリフっすよ。何やってんすか。あれだけ気をつけろって言ったじゃねぇか。」
「…ごめんなさい。」
ナマエさんが悪くないだろうことは分かっている。それでも咎めずにはいられなかった。
申し訳なさそうに俯いている彼女に俺は更に続けた。
「アニから聞きました。危ない所を庇って代わりに殴られたって。打ち所が悪かったらどうするんすか。」
「気づいたら、勝手に体が動いてたの。私のせいでアニちゃんに怪我をさせるわけにはいかないし…。」
「だからって飛び出すことねぇだろ。アニの強さ、幼馴染のナマエさんなら知ってんだろ?」
目が覚めて良かったと思っているのに、口をついて出るのはナマエさんを責めるような言葉ばかりで。こんなことを言いたいわけじゃねぇのに。ナマエさんは納得がいかないのか下を向いたまま何も言わない。
「…そんな顔、しねぇでくださいよ。」
居たたまれなくなった俺は、そう言ってナマエさんの右手をそっと掴み、そのまま自分の方へと引き寄せた。恐る恐る彼女の背中に腕を回す。
「…え?」
「ちょっとだけ…このままで。」
「………。」
ナマエさんは戸惑っているんだろう、体が強張ってしまっている。それでも申し訳ないが今は離すことはできそうもない。そのまま両腕に力を込めてナマエさんを腕の中に閉じ込めた。初めて抱きしめて思ったが、想像以上に華奢で小さい。これ以上力を入れたら壊れてしまいそうだ。
「心配…したんすよ。」
「…うん。」
「大した怪我じゃなくて良かった。…本当に。」
普段はほんのりとしか感じる事のないナマエさんの香りがダイレクトに鼻に届く。その香りとこの柔らかい感触が、彼女がここにいるんだと教えてくれているようだった。
「褒められたことじゃねぇけど。絶対褒めたりはしねぇけど。ナマエさんのおかげでアニにはかすり傷一つ見当たりませんでしたよ。」
「…っ。」
ナマエさんが一瞬息を飲んだのが腕の中で分かった。それが何故かは分からなかったが俺はそのまま続けた。
「だから、絶対褒めませんけど。……よく頑張りましたね。」
怖かったでしょう?そう言いながらナマエさんの小さな頭を撫でてやる。殴られたところであろう、包帯のある場所は避けて。
するとナマエさんは震えながら俺の胸元に顔を押し付け鼻を啜りだした。
「…ぅっ。………っく。」
「ナマエさん?」
これは泣いているんだと思った俺は顔を覗き込もうとナマエさんの肩を持ち体から離そうとした。が、あろうことかナマエさんは俺の背中に腕を回してしがみついてきた。宥めようと思った俺は、ポンポンと背中を叩いてやる。
「…すごく、痛かったし、怖かったの。」
「はい。」
「その人が怖いんじゃなくて…ううん、怖かったけど。」
「…どっちだよ。」
突っ込みを入れるとふふっと笑ってくれた。ナマエさんは俺の胸に顔を埋めたまま続ける。
「アニちゃんが…大事な人が私のせいで傷ついちゃうかも、居なくなるかもって思ったら。怖くて怖くてどうにかなりそうだった。」
「もう大丈夫っすよ。ナマエさんのおかげでアニはぴんぴんしてましたから。」
そのまましばらく頭を撫でていたが、ナマエさんも落ち着いたようなのでそろそろ離すか、と先ほどのように肩に両手を置いて離そうとしたが、結構な力でしがみついているので離れない。
「ナマエさん?そろそろ…。」
「…ちょっとだけ。このままで。」
さっきの俺と同じことを言って、背中のシャツを握りしめた。
「真似すんなよ。」
少し悪態をつくとクスクスと笑っている。もう泣いてはいないようだ。
しかし、この体勢はどうなんだろうか。感情が高ぶって勢いで腕の中に閉じ込めたはいいが。まずくないか?
それでも、ナマエさんはしがみついたままだし、俺自身もまだ離したくないと思った。
「つーか、外は薄暗いみたいっすけど。今、何時ですか?」
「もうすぐ6時ってところかな。」
まじか。俺はそこそこの時間眠ってしまっていたらしい。
「寝てなくていいんすか?午前中、警察の人が来るって聞きましたけど。」
「どちらにしても7時くらいに病院の朝食が来るって言ってたから、もう起きとくよ。」
「そっすか。あ、リヴァイ課長は?」
「家族用の仮眠室で休むって言ってた。朝食の時間には来られるんじゃないかな。」
アッカーマン課長にもご迷惑をかけちゃったよ。とナマエさんは言う。そうか、彼女は俺が気付いていることにまだ気付いていないのか。
…つーか。今更だがこれは本格的にまずい。人様の、それもリヴァイ課長の女を抱きしめている状況に冷や汗をかいてきた。ナマエさんもナマエさんだ。何を思って他の男に抱きしめられてんだよ。
「ナマエさん、これはそろそろ離れた方が良さそうっすね。こんな恋人同士みたいな姿見られたら、浮気してると思われますよ。俺、リヴァイ課長にまだ殺されたくねぇです。」
「こっ…恋人って…!…ん?何で課長に殺されるの?」
「え、だってお二人は…」
―カラカラカラ…
俺が言い終わる前に病室のドアが静かに開いた。
俺たちは弾けるように体を離して入ってくる人物を確認した。
「あ、ミョウジさん、起きてらっしゃったんですね。お体の具合はいかがですか?」
…入ってきたのは巡回中の看護師だった。良かった…生き延びた。そっとため息をつく。
「あっ、はい!痛み止めをいただいたおかげでかなり楽になりました。」
「あら?少しお顔が赤いようですが、大丈夫ですか?発熱かしら。念のため、検温しておきましょうね。」
「…はい。」
真っ赤になっているナマエさんに片眉をあげてニヤリと笑うと、頬を膨らませて睨ませてしまった。
その後朝食の時間になり、リヴァイ課長も起きてきて一緒に食事をして、ついに警察の人たちがやってきた。
ナマエさんは先ほどよりも少し顔色が悪い。そりゃそうか。思い出したくもないことを話さねぇといけない。
俺は席を外そうとしたが、犯人の視線に最初に気付いた当事者として無関係ではないので一緒に聞いてほしいと言われた。
ナマエさんは、目を瞑って大きく深呼吸をしたあと、すっと前を見据えて昨日の事をポツポツと話し出した。
「…ん…?」
だんだんと意識が覚醒してきて、あの後うっかり眠ってしまったことを思い出す。ゆっくりと瞼を持ち上げ顔を上げると、さっきまで目を覚ましていなかったその人がこちらを心配そうに覗き込んでいた。
「っ!ナマエさん!」
「わっ!」
がばっと起き上がりナマエさんの両肩に手を置いて無事を確かめる。無遠慮にぺたぺたと頭やら頬やらを撫でまわしてしまったが今は許してほしい。
「おはよう。体、辛くない?」
すごい体勢で寝てたね、と言いながら眉を下げて笑った。
「それは…こっちのセリフっすよ。何やってんすか。あれだけ気をつけろって言ったじゃねぇか。」
「…ごめんなさい。」
ナマエさんが悪くないだろうことは分かっている。それでも咎めずにはいられなかった。
申し訳なさそうに俯いている彼女に俺は更に続けた。
「アニから聞きました。危ない所を庇って代わりに殴られたって。打ち所が悪かったらどうするんすか。」
「気づいたら、勝手に体が動いてたの。私のせいでアニちゃんに怪我をさせるわけにはいかないし…。」
「だからって飛び出すことねぇだろ。アニの強さ、幼馴染のナマエさんなら知ってんだろ?」
目が覚めて良かったと思っているのに、口をついて出るのはナマエさんを責めるような言葉ばかりで。こんなことを言いたいわけじゃねぇのに。ナマエさんは納得がいかないのか下を向いたまま何も言わない。
「…そんな顔、しねぇでくださいよ。」
居たたまれなくなった俺は、そう言ってナマエさんの右手をそっと掴み、そのまま自分の方へと引き寄せた。恐る恐る彼女の背中に腕を回す。
「…え?」
「ちょっとだけ…このままで。」
「………。」
ナマエさんは戸惑っているんだろう、体が強張ってしまっている。それでも申し訳ないが今は離すことはできそうもない。そのまま両腕に力を込めてナマエさんを腕の中に閉じ込めた。初めて抱きしめて思ったが、想像以上に華奢で小さい。これ以上力を入れたら壊れてしまいそうだ。
「心配…したんすよ。」
「…うん。」
「大した怪我じゃなくて良かった。…本当に。」
普段はほんのりとしか感じる事のないナマエさんの香りがダイレクトに鼻に届く。その香りとこの柔らかい感触が、彼女がここにいるんだと教えてくれているようだった。
「褒められたことじゃねぇけど。絶対褒めたりはしねぇけど。ナマエさんのおかげでアニにはかすり傷一つ見当たりませんでしたよ。」
「…っ。」
ナマエさんが一瞬息を飲んだのが腕の中で分かった。それが何故かは分からなかったが俺はそのまま続けた。
「だから、絶対褒めませんけど。……よく頑張りましたね。」
怖かったでしょう?そう言いながらナマエさんの小さな頭を撫でてやる。殴られたところであろう、包帯のある場所は避けて。
するとナマエさんは震えながら俺の胸元に顔を押し付け鼻を啜りだした。
「…ぅっ。………っく。」
「ナマエさん?」
これは泣いているんだと思った俺は顔を覗き込もうとナマエさんの肩を持ち体から離そうとした。が、あろうことかナマエさんは俺の背中に腕を回してしがみついてきた。宥めようと思った俺は、ポンポンと背中を叩いてやる。
「…すごく、痛かったし、怖かったの。」
「はい。」
「その人が怖いんじゃなくて…ううん、怖かったけど。」
「…どっちだよ。」
突っ込みを入れるとふふっと笑ってくれた。ナマエさんは俺の胸に顔を埋めたまま続ける。
「アニちゃんが…大事な人が私のせいで傷ついちゃうかも、居なくなるかもって思ったら。怖くて怖くてどうにかなりそうだった。」
「もう大丈夫っすよ。ナマエさんのおかげでアニはぴんぴんしてましたから。」
そのまましばらく頭を撫でていたが、ナマエさんも落ち着いたようなのでそろそろ離すか、と先ほどのように肩に両手を置いて離そうとしたが、結構な力でしがみついているので離れない。
「ナマエさん?そろそろ…。」
「…ちょっとだけ。このままで。」
さっきの俺と同じことを言って、背中のシャツを握りしめた。
「真似すんなよ。」
少し悪態をつくとクスクスと笑っている。もう泣いてはいないようだ。
しかし、この体勢はどうなんだろうか。感情が高ぶって勢いで腕の中に閉じ込めたはいいが。まずくないか?
それでも、ナマエさんはしがみついたままだし、俺自身もまだ離したくないと思った。
「つーか、外は薄暗いみたいっすけど。今、何時ですか?」
「もうすぐ6時ってところかな。」
まじか。俺はそこそこの時間眠ってしまっていたらしい。
「寝てなくていいんすか?午前中、警察の人が来るって聞きましたけど。」
「どちらにしても7時くらいに病院の朝食が来るって言ってたから、もう起きとくよ。」
「そっすか。あ、リヴァイ課長は?」
「家族用の仮眠室で休むって言ってた。朝食の時間には来られるんじゃないかな。」
アッカーマン課長にもご迷惑をかけちゃったよ。とナマエさんは言う。そうか、彼女は俺が気付いていることにまだ気付いていないのか。
…つーか。今更だがこれは本格的にまずい。人様の、それもリヴァイ課長の女を抱きしめている状況に冷や汗をかいてきた。ナマエさんもナマエさんだ。何を思って他の男に抱きしめられてんだよ。
「ナマエさん、これはそろそろ離れた方が良さそうっすね。こんな恋人同士みたいな姿見られたら、浮気してると思われますよ。俺、リヴァイ課長にまだ殺されたくねぇです。」
「こっ…恋人って…!…ん?何で課長に殺されるの?」
「え、だってお二人は…」
―カラカラカラ…
俺が言い終わる前に病室のドアが静かに開いた。
俺たちは弾けるように体を離して入ってくる人物を確認した。
「あ、ミョウジさん、起きてらっしゃったんですね。お体の具合はいかがですか?」
…入ってきたのは巡回中の看護師だった。良かった…生き延びた。そっとため息をつく。
「あっ、はい!痛み止めをいただいたおかげでかなり楽になりました。」
「あら?少しお顔が赤いようですが、大丈夫ですか?発熱かしら。念のため、検温しておきましょうね。」
「…はい。」
真っ赤になっているナマエさんに片眉をあげてニヤリと笑うと、頬を膨らませて睨ませてしまった。
その後朝食の時間になり、リヴァイ課長も起きてきて一緒に食事をして、ついに警察の人たちがやってきた。
ナマエさんは先ほどよりも少し顔色が悪い。そりゃそうか。思い出したくもないことを話さねぇといけない。
俺は席を外そうとしたが、犯人の視線に最初に気付いた当事者として無関係ではないので一緒に聞いてほしいと言われた。
ナマエさんは、目を瞑って大きく深呼吸をしたあと、すっと前を見据えて昨日の事をポツポツと話し出した。