第20話 小さな用心棒
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「えらく粧し込んでどこか行くのか。」
就業時間を過ぎ、オフィス内も人が少なくなってきた所で、帰る準備をしているナマエに声を掛けた。馬との会話を聞く限り、誰かと食事に行くんだろう。いつもより気合が入った格好をしている。
「お疲れ様です、課長。」
「もうほとんど社員は残ってねぇよ。」
相変わらずON/OFFがはっきりしている。ナマエは周りを見渡した後、ホントだねと言って続けた。
「今日はね、アニちゃんとご飯食べに行くんだー!すごく久しぶりに会うから朝からずっと待ち遠しかったよ。」
アニ…あぁ、昔ナマエの家の近所に住んでたガキだな。マーレジムの一人娘で、あそこに通っているミカサとも確か同級生で、馴染みだったはずだ。
「一人で行くのか?」
「ん?もちろんそうだよ?」
分かっていたことだが、こいつはとことん危機感が無い。昼間に馬から聞いた話だと、誰かに見られていて、何かしらの感情を向けられているんだろう。恨みを買っているとは考えにくいが、悪意だろうが恋慕の類だろうが、影からこそこそ見てくるようなヤツだ。一人での行動は気を付けた方がいいに決まっている。
「ハァ。店はどこだ。そこまで俺も一緒に行く。」
「え?なんで?リヴァイもアニちゃんに会いたいの?」
「んなわけあるか。一人で行動すんなっつってんだ。」
「リヴァイまでそんなこと言うの?気にしすぎだと思うけど…。」
「何かあったらどうする。馬から報告は受けてるんだ。」
「今まで社外で気になったことはないから大丈夫だと思うんだけど…。おおげさだよ。」
この様子だと馬も同じことを言ったらしい。ナマエは中々言うことを聞かねぇからか、引き下がったようだ。まぁ、俺には通用しないが。
「うるせぇ。黙って言うことを聞け。」
「…頑固。」
どの口が言う。
「俺は…あんな思いをさせられるのは二度と御免だ。」
「…ごめん。分かったよ。じゃあ、お願いしてもいい?」
俺の一言でやっと大人しくなった。分かればいい。
出る前にキースへ渡す書類があるとかで、俺たちは一番近くの駅で待ち合わせることにした。この距離であればさすがに問題ねぇだろう。
時間的にも人通りの多い駅の入り口で待つ間。会社の方向から周りよりも頭一つ飛び出た、いつも見る馬面がこちらに向かって歩いてきている。スマホに目を落としているのでこちらには気づいていないようだ。今ここでナマエが来たら鉢合わせることになりそうだ。恐らくナマエは望んでいない展開だろう。見つからないよう建物の影に移動する。様子を伺っていると、馬は見たことのない女に抱き着かれて何やら話している。恋人という感じではなさそうなので、馬はどうやら女には困っていないタイプらしい。
そんなことを思っていると、ナマエが小走りでこちらに駆け寄ってきた。
「リヴァイごめん!お待たせ!」
「走るな。焦らなくていい。」
ナマエは少し息切れしており、せっかくきれいに巻いている髪も乱れてしまっている。息切れする距離じゃねぇだろうが、と言いながら耳に髪を掛けてやった。少しの雑談の後、そういえば馬面が近くにいたことを思い出した。そちらに目をやるとちょうど女と話している所のようなので、セーフだったらしい。見られていたら、その時は…その時だ。
「行くぞ。トロスト区の方だったな?」
「あ、うん!この間行ったカフェあるでしょ?あそこの系列で最近かわいい感じのワインバルができたんだって!」
「ワインか。俺には向かねぇな。」
「でしょ?ほんとは今度リヴァイと行こうかと思ったんだけどやめといて正解だね!」
リヴァイは日本酒だもんね、そんな話をしながらトロストへと向かった。
「アニちゃん!お待たせー!」
「ナマエ……………どうしてアンタがここに?」
開口一番アンタ呼ばわりか。訝しげな表情でこちらを見てくる。相変わらず不愛想なヤツだ。人の事は言えたもんじゃないが。
「しばらくぶりだな。…ちょっといいか。ナマエ、お前は先に中で席でも取っておけ。」
嫌そうな表情のアニにちょっと来い、と親指を立てて離れた所を指した。渋々やってきたアニに会社での出来事を話し、帰りは家まで送ってくれるよう頼む。
「なんか大変そうだね。要するに一人にしなきゃいいんだね?」
「あぁ、すまねぇな。何なら連絡くれりゃあ俺が迎えに行く。」
「へぇ、アンタたちついに付き合いだしたの?」
「…いや。付き合ってねぇよ。」
「ふーん。ま、どうでもいいけど。」
なら聞くなよ。ナマエとの繋がりでこいつとも昔なじみだが、この態度はどうにかならねぇのか。
「状況は分かったよ。何もないだろうけど一応気を付けておくよ。お宅のお姫さんは危なっかしいからね。」
「人気のない所は念のため避けてくれ。何かあってからじゃ遅ぇからな。」
「相変わらずお姫さんの事になると心配性だね。ミカサやアンタレベルの奴が来ない限りはナマエに指一本触れさせないから安心しなよ。」
そう。こいつはこの体躯ながらもさすがは老舗ジムの娘というだけあって、プロの格闘家でも尻尾を巻いて逃げるレベルの体術の持ち主だ。今のナマエにはこれ以上ない用心棒だろうな。
漠然と感じていた不安が少しだけ解消された気がした。
ナマエの元へ戻るとこいつは既に一人で始めてやがった。昔馴染みとはいえ、待ってやれよ。
「ナマエ、帰ったら一応連絡しろよ。明日、行きたがってた猫の写真展の日だろ?」
「そっか!明日だ!じゃあ酔い潰れないように気を付けるね!」
先週からの約束を忘れていたらしい。俺の方が覚えているとはどういうことだ。
「お前が酔い潰れたのなんざここ10年見てねぇよ。」
苦笑いでナマエの頭をひと撫でしてから店を出た。
休み前だというのに何となく酒を飲む気にはならねぇな。帰ったら忙しさで二日も放置してしまっていた寝室の掃除でもするか。
この時に酒を飲んでなくて本当に良かったと心底思うことになるまでー
ーあと数時間。
就業時間を過ぎ、オフィス内も人が少なくなってきた所で、帰る準備をしているナマエに声を掛けた。馬との会話を聞く限り、誰かと食事に行くんだろう。いつもより気合が入った格好をしている。
「お疲れ様です、課長。」
「もうほとんど社員は残ってねぇよ。」
相変わらずON/OFFがはっきりしている。ナマエは周りを見渡した後、ホントだねと言って続けた。
「今日はね、アニちゃんとご飯食べに行くんだー!すごく久しぶりに会うから朝からずっと待ち遠しかったよ。」
アニ…あぁ、昔ナマエの家の近所に住んでたガキだな。マーレジムの一人娘で、あそこに通っているミカサとも確か同級生で、馴染みだったはずだ。
「一人で行くのか?」
「ん?もちろんそうだよ?」
分かっていたことだが、こいつはとことん危機感が無い。昼間に馬から聞いた話だと、誰かに見られていて、何かしらの感情を向けられているんだろう。恨みを買っているとは考えにくいが、悪意だろうが恋慕の類だろうが、影からこそこそ見てくるようなヤツだ。一人での行動は気を付けた方がいいに決まっている。
「ハァ。店はどこだ。そこまで俺も一緒に行く。」
「え?なんで?リヴァイもアニちゃんに会いたいの?」
「んなわけあるか。一人で行動すんなっつってんだ。」
「リヴァイまでそんなこと言うの?気にしすぎだと思うけど…。」
「何かあったらどうする。馬から報告は受けてるんだ。」
「今まで社外で気になったことはないから大丈夫だと思うんだけど…。おおげさだよ。」
この様子だと馬も同じことを言ったらしい。ナマエは中々言うことを聞かねぇからか、引き下がったようだ。まぁ、俺には通用しないが。
「うるせぇ。黙って言うことを聞け。」
「…頑固。」
どの口が言う。
「俺は…あんな思いをさせられるのは二度と御免だ。」
「…ごめん。分かったよ。じゃあ、お願いしてもいい?」
俺の一言でやっと大人しくなった。分かればいい。
出る前にキースへ渡す書類があるとかで、俺たちは一番近くの駅で待ち合わせることにした。この距離であればさすがに問題ねぇだろう。
時間的にも人通りの多い駅の入り口で待つ間。会社の方向から周りよりも頭一つ飛び出た、いつも見る馬面がこちらに向かって歩いてきている。スマホに目を落としているのでこちらには気づいていないようだ。今ここでナマエが来たら鉢合わせることになりそうだ。恐らくナマエは望んでいない展開だろう。見つからないよう建物の影に移動する。様子を伺っていると、馬は見たことのない女に抱き着かれて何やら話している。恋人という感じではなさそうなので、馬はどうやら女には困っていないタイプらしい。
そんなことを思っていると、ナマエが小走りでこちらに駆け寄ってきた。
「リヴァイごめん!お待たせ!」
「走るな。焦らなくていい。」
ナマエは少し息切れしており、せっかくきれいに巻いている髪も乱れてしまっている。息切れする距離じゃねぇだろうが、と言いながら耳に髪を掛けてやった。少しの雑談の後、そういえば馬面が近くにいたことを思い出した。そちらに目をやるとちょうど女と話している所のようなので、セーフだったらしい。見られていたら、その時は…その時だ。
「行くぞ。トロスト区の方だったな?」
「あ、うん!この間行ったカフェあるでしょ?あそこの系列で最近かわいい感じのワインバルができたんだって!」
「ワインか。俺には向かねぇな。」
「でしょ?ほんとは今度リヴァイと行こうかと思ったんだけどやめといて正解だね!」
リヴァイは日本酒だもんね、そんな話をしながらトロストへと向かった。
「アニちゃん!お待たせー!」
「ナマエ……………どうしてアンタがここに?」
開口一番アンタ呼ばわりか。訝しげな表情でこちらを見てくる。相変わらず不愛想なヤツだ。人の事は言えたもんじゃないが。
「しばらくぶりだな。…ちょっといいか。ナマエ、お前は先に中で席でも取っておけ。」
嫌そうな表情のアニにちょっと来い、と親指を立てて離れた所を指した。渋々やってきたアニに会社での出来事を話し、帰りは家まで送ってくれるよう頼む。
「なんか大変そうだね。要するに一人にしなきゃいいんだね?」
「あぁ、すまねぇな。何なら連絡くれりゃあ俺が迎えに行く。」
「へぇ、アンタたちついに付き合いだしたの?」
「…いや。付き合ってねぇよ。」
「ふーん。ま、どうでもいいけど。」
なら聞くなよ。ナマエとの繋がりでこいつとも昔なじみだが、この態度はどうにかならねぇのか。
「状況は分かったよ。何もないだろうけど一応気を付けておくよ。お宅のお姫さんは危なっかしいからね。」
「人気のない所は念のため避けてくれ。何かあってからじゃ遅ぇからな。」
「相変わらずお姫さんの事になると心配性だね。ミカサやアンタレベルの奴が来ない限りはナマエに指一本触れさせないから安心しなよ。」
そう。こいつはこの体躯ながらもさすがは老舗ジムの娘というだけあって、プロの格闘家でも尻尾を巻いて逃げるレベルの体術の持ち主だ。今のナマエにはこれ以上ない用心棒だろうな。
漠然と感じていた不安が少しだけ解消された気がした。
ナマエの元へ戻るとこいつは既に一人で始めてやがった。昔馴染みとはいえ、待ってやれよ。
「ナマエ、帰ったら一応連絡しろよ。明日、行きたがってた猫の写真展の日だろ?」
「そっか!明日だ!じゃあ酔い潰れないように気を付けるね!」
先週からの約束を忘れていたらしい。俺の方が覚えているとはどういうことだ。
「お前が酔い潰れたのなんざここ10年見てねぇよ。」
苦笑いでナマエの頭をひと撫でしてから店を出た。
休み前だというのに何となく酒を飲む気にはならねぇな。帰ったら忙しさで二日も放置してしまっていた寝室の掃除でもするか。
この時に酒を飲んでなくて本当に良かったと心底思うことになるまでー
ーあと数時間。