第19話 確信と着信
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あれからオフィスから出る用事が無かったこともあり、何事もなく一日を終えた。
「ナマエさん、友達とメシ行くんすよね?店まで送りましょうか?」
昼間の事もあるので一人にするのは心配だった。だが、ナマエさんは危機感が無いのか、あっけらかんとしている。
「心配しすぎだよ、社外では何にもないからきっと大丈夫!流石に業務後まで迷惑かけるわけにはいかないしね。」
「いやでも、何かあってからじゃ遅いですし…。」
「大丈夫だよ、時間もまだ早いし。ね?」
これは、あれだ。恐らく説得は無理だろう。
「…明るい所しか通ったらダメですよ。あと、人通りの多い所を選ぶこと。何か違和感があればすぐ周りに助けを求めること。いいですね?」
「…過保護。」
「なんか言いました?」
「なんでもないです!気を付けます!」
本当に分かっているのか不安にはなるが、あまり言い過ぎてもよくないので引き下がることにした。
その後ナマエさんと別れて、会社を出た。週末ということも事もありいつもよりも人通りの多いオフィス街を抜けていく。
せっかくの金曜だ。最近忙しかったせいで飲みにも出ていなかったので少しアルコールが恋しい。誰か誘うか…とスマホを取り出しメッセージアプリを起動していると、背中にいきなり鈍い衝撃を受けた。
「うぉっ。」
「ジャン!久しぶり!」
「エリー?」
いきなり何だと振り返ると、見覚えのある女が背中に抱き着いてきていた。3か月くらい前か。合コンで知り合ったエリー。少し年下だったはずだ。こいつはどうやら俺の事をお気に召したようで何度か食事をした。…食事だけでもなかったが。付き合ってはいないが、つまり、そういう仲になった女だ。
この所忙しかった事もあり、しばらく会っていなかった。
「ねぇねぇ!暇?だれか一緒に飲みに行かないかなーって探してたところだったんだー。そしたらジャンが歩いてるのが見えて思わず飛びついちゃったよ。」
「どうせ酒代払わせるヤツ探してたんだろ?」
「ソンナコトナイヨ?ジャンニモズットアイタカッタンダヨ?」
「わざとらしくカタコトになってんじゃねぇよ。」
こいつは奢ってくれるヤツに割とホイホイ付いていくタイプだ。別に奢ってやること自体は何も問題ない。明るくサバサバしている性格も嫌いじゃねぇが、なんせ尻が軽い。
「もー、怒んないでよ。ジャンに会いたかったのはホントだよ?明日…お休みだよね?」
いまだ背中にくっついたまま上目遣いで見上げてくる。ほらな。こういうヤツだ。さて、どうするか…。こいつに付き合うっつーことは、つまりはそういうことだ。色々考えながら何気なく人波に目を移すと、少し離れた所でついさっきまで一緒に居た人が歩いているのが目に入った。…ナマエさんだ。同じ方面だったのか。そんなことを思いながら見ていると、誰かを見つけたようで小走りでそちらに向かった。
「リヴァイごめん!お待たせ!」
「走るな。焦らなくていい。」
…なんつった?俺は自分の目と耳をこれでもかと疑ったが。ざわざわとした人ごみの中、少し離れているものの、確かに聞こえた。
アッカーマン課長、ではなく、リヴァイ、と。
リヴァイ課長はナマエさんの少し乱れた髪を苦笑しながら直して、そのまま耳に掛けてやっている。ナマエさんも何の違和感もなく受け入れていた。
二人とも俺が近くにいる事には気づいていない。
この瞬間、今まで不思議に思っていたことがまるで欠けていたパズルのピースが埋まっていくように俺の中でカチリとハマった気がした。
ーナマエさんに恋人がいない理由。誰の誘いにも乗らない理由。ピクシス専務のあの言葉。土砂降り芋配達から帰った時の課長の様子。業務体制について相談したときのあの課長の言葉。
…そうか。オルブドのカフェで課長と一緒にいた女。あれもナマエさんってことか。
「…ン!ジャンってば!聞いてるー?」
「…あー、悪ぃ聞いてなかった。」
「えー、ひどいー!!」
エリーの声で我に返った。しばらく無視をし続けていたようだ。悪い。
もう一度二人の方を見てみたが、移動したのか既に居なくなっていた。
「ジャンー?行かないの?」
「…あぁ。行くよ。」
エリーは嬉しそうに横に並んで腕を絡めてきた。人通りの多い所でこういった事をされるのは好きではないが、今はどうでも良かった。
社内では内緒にしていたんだろうが、あそこまで普段他人行儀にする必要ねぇだろ、とか。別に隠す必要ねぇだろ、とか。食事をしながらも酒を飲みながらも、頭で考えるのはさっきの事ばかりだった。エリーがいろいろ話しているのも全く頭に入ってこないが、本人が何も文句を言ってこないのでそれなりに反応して会話は成立していたようだ。いつもよりペースも早く飲んでいるはずなのに今日は全く酔えない。
そもそも。俺は何をこんなに気にしているんだ。社内恋愛は全く問題ないし、二人は同期でずっと一緒にやってきた仲だ。くっついてたって何の不思議もないはずだ。
少し温くなったビールを一気に流し込む。
「ねぇ、ジャンー?そんなに飲んだら後でできなくなっちゃうよ?」
…そうだな。今は考えるのは止そう。
「このくらいじゃ酔わねぇよ。ほれ、お前ももっと飲め飲め!」
さんざん二人して飲んだ後、千鳥足になったエリーとタクシーに乗り、俺はエリーの部屋に来ていた。あいつは今さっきまで酔っていたのがウソみてぇに鼻歌交じりでシャワーを浴びている。
女はこえぇな。
エリーが出てくるまで暇つぶしにと深夜のバラエティ番組を見ていたらポケットのスマホが震えた。電話だ。ディスプレイを見て一瞬固まった。
[リヴァイ課長]
規則的な振動とともに表示された名前が早く出ろと急かす。
ここは寝たフリでいこう。
こんな時間に何だ?もうすぐ日付が変わる。…また死に急ぎ野郎の回収か?今日はいろんな意味で勘弁してほしい。あの人もきっと一緒に居るんだろう。
いつまでも鳴りやまない着信に、仕方なく出ることにした。
「お疲れ様です。…どうしました?」
「こんな時間にすまねぇ。だが緊急だ。」
「…何かあったんすか?」
「ーーーーーーーーーーーーーー。」
気づけば俺は部屋を飛び出し、タクシーに乗り込んでいた。
「お客さん、どちらまで?」
「トロスト総合病院まで。」
「ナマエさん、友達とメシ行くんすよね?店まで送りましょうか?」
昼間の事もあるので一人にするのは心配だった。だが、ナマエさんは危機感が無いのか、あっけらかんとしている。
「心配しすぎだよ、社外では何にもないからきっと大丈夫!流石に業務後まで迷惑かけるわけにはいかないしね。」
「いやでも、何かあってからじゃ遅いですし…。」
「大丈夫だよ、時間もまだ早いし。ね?」
これは、あれだ。恐らく説得は無理だろう。
「…明るい所しか通ったらダメですよ。あと、人通りの多い所を選ぶこと。何か違和感があればすぐ周りに助けを求めること。いいですね?」
「…過保護。」
「なんか言いました?」
「なんでもないです!気を付けます!」
本当に分かっているのか不安にはなるが、あまり言い過ぎてもよくないので引き下がることにした。
その後ナマエさんと別れて、会社を出た。週末ということも事もありいつもよりも人通りの多いオフィス街を抜けていく。
せっかくの金曜だ。最近忙しかったせいで飲みにも出ていなかったので少しアルコールが恋しい。誰か誘うか…とスマホを取り出しメッセージアプリを起動していると、背中にいきなり鈍い衝撃を受けた。
「うぉっ。」
「ジャン!久しぶり!」
「エリー?」
いきなり何だと振り返ると、見覚えのある女が背中に抱き着いてきていた。3か月くらい前か。合コンで知り合ったエリー。少し年下だったはずだ。こいつはどうやら俺の事をお気に召したようで何度か食事をした。…食事だけでもなかったが。付き合ってはいないが、つまり、そういう仲になった女だ。
この所忙しかった事もあり、しばらく会っていなかった。
「ねぇねぇ!暇?だれか一緒に飲みに行かないかなーって探してたところだったんだー。そしたらジャンが歩いてるのが見えて思わず飛びついちゃったよ。」
「どうせ酒代払わせるヤツ探してたんだろ?」
「ソンナコトナイヨ?ジャンニモズットアイタカッタンダヨ?」
「わざとらしくカタコトになってんじゃねぇよ。」
こいつは奢ってくれるヤツに割とホイホイ付いていくタイプだ。別に奢ってやること自体は何も問題ない。明るくサバサバしている性格も嫌いじゃねぇが、なんせ尻が軽い。
「もー、怒んないでよ。ジャンに会いたかったのはホントだよ?明日…お休みだよね?」
いまだ背中にくっついたまま上目遣いで見上げてくる。ほらな。こういうヤツだ。さて、どうするか…。こいつに付き合うっつーことは、つまりはそういうことだ。色々考えながら何気なく人波に目を移すと、少し離れた所でついさっきまで一緒に居た人が歩いているのが目に入った。…ナマエさんだ。同じ方面だったのか。そんなことを思いながら見ていると、誰かを見つけたようで小走りでそちらに向かった。
「リヴァイごめん!お待たせ!」
「走るな。焦らなくていい。」
…なんつった?俺は自分の目と耳をこれでもかと疑ったが。ざわざわとした人ごみの中、少し離れているものの、確かに聞こえた。
アッカーマン課長、ではなく、リヴァイ、と。
リヴァイ課長はナマエさんの少し乱れた髪を苦笑しながら直して、そのまま耳に掛けてやっている。ナマエさんも何の違和感もなく受け入れていた。
二人とも俺が近くにいる事には気づいていない。
この瞬間、今まで不思議に思っていたことがまるで欠けていたパズルのピースが埋まっていくように俺の中でカチリとハマった気がした。
ーナマエさんに恋人がいない理由。誰の誘いにも乗らない理由。ピクシス専務のあの言葉。土砂降り芋配達から帰った時の課長の様子。業務体制について相談したときのあの課長の言葉。
…そうか。オルブドのカフェで課長と一緒にいた女。あれもナマエさんってことか。
「…ン!ジャンってば!聞いてるー?」
「…あー、悪ぃ聞いてなかった。」
「えー、ひどいー!!」
エリーの声で我に返った。しばらく無視をし続けていたようだ。悪い。
もう一度二人の方を見てみたが、移動したのか既に居なくなっていた。
「ジャンー?行かないの?」
「…あぁ。行くよ。」
エリーは嬉しそうに横に並んで腕を絡めてきた。人通りの多い所でこういった事をされるのは好きではないが、今はどうでも良かった。
社内では内緒にしていたんだろうが、あそこまで普段他人行儀にする必要ねぇだろ、とか。別に隠す必要ねぇだろ、とか。食事をしながらも酒を飲みながらも、頭で考えるのはさっきの事ばかりだった。エリーがいろいろ話しているのも全く頭に入ってこないが、本人が何も文句を言ってこないのでそれなりに反応して会話は成立していたようだ。いつもよりペースも早く飲んでいるはずなのに今日は全く酔えない。
そもそも。俺は何をこんなに気にしているんだ。社内恋愛は全く問題ないし、二人は同期でずっと一緒にやってきた仲だ。くっついてたって何の不思議もないはずだ。
少し温くなったビールを一気に流し込む。
「ねぇ、ジャンー?そんなに飲んだら後でできなくなっちゃうよ?」
…そうだな。今は考えるのは止そう。
「このくらいじゃ酔わねぇよ。ほれ、お前ももっと飲め飲め!」
さんざん二人して飲んだ後、千鳥足になったエリーとタクシーに乗り、俺はエリーの部屋に来ていた。あいつは今さっきまで酔っていたのがウソみてぇに鼻歌交じりでシャワーを浴びている。
女はこえぇな。
エリーが出てくるまで暇つぶしにと深夜のバラエティ番組を見ていたらポケットのスマホが震えた。電話だ。ディスプレイを見て一瞬固まった。
[リヴァイ課長]
規則的な振動とともに表示された名前が早く出ろと急かす。
ここは寝たフリでいこう。
こんな時間に何だ?もうすぐ日付が変わる。…また死に急ぎ野郎の回収か?今日はいろんな意味で勘弁してほしい。あの人もきっと一緒に居るんだろう。
いつまでも鳴りやまない着信に、仕方なく出ることにした。
「お疲れ様です。…どうしました?」
「こんな時間にすまねぇ。だが緊急だ。」
「…何かあったんすか?」
「ーーーーーーーーーーーーーー。」
気づけば俺は部屋を飛び出し、タクシーに乗り込んでいた。
「お客さん、どちらまで?」
「トロスト総合病院まで。」