第18話 視線
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「なんとか下期に間に合いそうですね。」
リヴァイ課長に業務の振り分けについて打診してからすぐに俺たちの案は採用された。自分たちが社員を説得することを条件にだが。
当初困難を極めるだろうと予想された説得だったが、思いの外スムーズに進んだ。
「割とすぐ分かってもらえたし良かったね!」
「ナマエさんが意外と口八丁だったおかげですね。」
「褒めてるの?それ。」
ナマエさんが腕を組みジトリとこちらを睨んでくる。
「褒めてますよ。いろんな意味で。」
さらにナマエさんは眉を吊り上げ文句を言ってくるが正直全く怖くない。でも、褒めているのは本当だ。
今回の話を振り分け対象の社員らにした時、やはりというか最初は俺らのお零れなんかできないと、実力に見合わないプライドを持ち出してきた奴ら、仕事が増えることをよしとしない情けない奴らがいた。分かってはいたが彼らの情けない言い分にだんだんイラついてきて俺はつい余計なことを言ってしまった。
『不満なら自力で取ってこいよ。それができるならな。仕事が貰えるだけ有難いと思えばいいだろ。ま、ボーナス査定の為にもやった方がいいんじゃねぇの?今の業務量のままだと雀の涙だろうな。』
正論を言ったつもりだが案の定怒りを買ってしまい、自分で蒔いた種とはいえどうしたもんかと思っていたが。
『アッカーマン課長は信頼できる人にしか自分たちの仕事を任せたりはしないと思うの。課長もあなたたちにだったら任せられるって仰ってるんだけど、ダメかな?』
んなこと課長は言ってねぇ。むしろ渋々了承したという感じだったはずだ。だがそのナマエさんの巧みな話術で話は纏まりを見せた。ものは言い様だとこれほど感じたことはない。
「ナマエさんのおかげで話が纏まったのは確かですからね。課長を利用したのには正直驚きましたけど。」
ニヤリと効果音が付きそうな顔でナマエさんに言ってやった。
「…課長には内緒だよ?」
負けじとナマエさんも口角を上げながら首を傾げ人差し指を口に当てる。これが無意識なのが恐ろしい。わざとだとしても恐ぇが。
ほら、資料室行くよー?と言いながらナマエさんが席を立つ。ともあれ、ナマエさんの説得のおかげでうまく事が運び、今俺たちは下期からの振り分けを行っている。資料室へ向かう途中、俺は朝から気になっていたことを聞いてみることにした。
「そういえば、今日はナマエさんなんか雰囲気違いますね。業務後どこか行くんすか?」
普段のナマエさんは割とキッチリめのオフィススタイルという印象だが、今日はなんとなくいつもより緩めというか華やかな印象だ。柔らかそうな素材のスカートが歩く度に膝元で揺れているし、いつもきれいにまとめている髪も珍しく下ろしていた。
「ほんとよく見てるなぁ。今日はね、終わったら食事に行く予定なんだけど、行くお店が可愛らしい感じの所だから合わせたの。商談も会議の予定もないからいいかなって。」
カッチリスーツだと浮いちゃうかもだしね。と、肩をすくめた。こんな風におしゃれをしているナマエさんを見たらどうしても聞きたくなった。誰と行くのか、を。
「…デートっすか?」
「まさかぁ!そんな人いないもん。友達と約束してるんだよ。」
何となくホッとした。いや…なぜホッとした?別にナマエさんに男がいても何の不思議もないし、むしろいねぇ方がおかしいと思っていたくらいだ。元々ナマエさんはどんな男からの誘いにも乗らない。分かっていたはずだ。男と行くのかもしれないと思った時のモヤモヤがよく分からない。
そんなことを悶々と考え込んでいた時、ふとどこかから視線を感じた。気になってそちらを見てみたが特に誰もいない。…なんだ?
気味が悪いと思いながらナマエさんの方を見ると、顔を真っ青にしながら下を向いていた。
「ナマエさん?大丈夫ですか?」
俯いたまま首を振りながらなんでもないと言うが、大丈夫な顔をしていない。…もしかして、と思い当たる節を聞いてみる。
「ナマエさん。最近移動中に様子がおかしいのって、もしかしなくてもこの視線ですか?」
「…っ!」
ナマエさんはハッとしたように顔を上げるが、気づかれてないと思う方がおかしい。
「時々周り見てキョロキョロして、その後この世の終わりみたいな顔してますよね。何かあるんですね?」
「…。」
何も言わないがビンゴのようだ。
「とりあえず、早いとこ資料室行きましょう。話はそこで。」
誰かに聞かれるのもあまりよくないだろうと思ったので、ナマエさんに急ぐよう促した。
「ーそれで?いつからですか?」
資料室に就きナマエさんに一番奥の作業デスクで待つよう伝えて、室内に俺たち以外居ないことを一通り確認したあとに切り出した。しばらくナマエさんは黙っていたが、誤魔化しは効かないと諦めたのか、ポツポツと話し出した。
「8月…の頭くらい、かな。どこかから見られてるような感覚があって…」
8月って…二か月近く前じゃねぇか。
室内ではその視線を感じる事はないようで、いつも移動中だけどこかから視線を感じるらしい。社外では感じないようなので、どうやら社内の人間の仕業らしい。
「どうして相談しねぇんですか。やべぇやつだったらどうするんすか。」
ナマエさんは何も悪くないのに相談されなかったことに少し苛立ち、つい口調がキツくなってしまう。
「これが…初めてじゃないから。いつもいつの間にか収まってるから今回も…大丈夫かな…と。それに、ただ見られてる感じがするだけだし。もしかしたら私の勘違いかもしれないし…迷惑かけてもいけないし。」
初めてじゃねぇのかよ。思わずため息が出る。
「…分かりました。とりあえず、課長には報告します。どうせ課長にも言ってないんでしょ?それから、これからは解決するまでは絶対一人で行動しないこと。そうですね、必ず俺かリヴァイ班のメンバーと一緒に行動してください。」
いいですね?そう強めに言うと、渋々ながらも了承してくれた。
「それから、今後は視線を感じたらその場で俺に言ってください。俺が気づけない事もあると思うので。」
「でも…それでキルシュタインくんに何かあったら…」
「俺の心配より自分の心配してくださいね?これまで何もなくて…ほんとに良かった。」
「あ…の…。」
戸惑うナマエさんの声でハッとする。なぜか俺の手がナマエさんの頬に手を当てていたからだ。
「…っ。すみません。」
「っううん、私こそっ。心配かけてごめんね。」
パッと手を離して謝る。まただ。また勝手に触れてしまった。
「…とにかく。この後リヴァイ課長には俺から伝えときますから。」
やるべき仕事さっさと終わらせましょう。そういってこの話を半ば強制的に終わらせた。
その後オフィスに戻った俺はすぐにリヴァイ課長へと報告をした。課長はこれでもかと眉間に皺を寄せながら聞き、俺とリヴァイ班とで、ナマエさんを一人にしないことを承諾してくれた。
ナマエさんを見ているやつがただのナマエさんファンで。遠くから見ているだけ。それだけならいいが。まぁ、あれだけ怯えさせてるだけで、もうアウトだな。
視線の主を見つけるにはどうするか…。頭の片隅でそんなことばかり考えながら残りの業務時間は過ぎていった。
リヴァイ課長に業務の振り分けについて打診してからすぐに俺たちの案は採用された。自分たちが社員を説得することを条件にだが。
当初困難を極めるだろうと予想された説得だったが、思いの外スムーズに進んだ。
「割とすぐ分かってもらえたし良かったね!」
「ナマエさんが意外と口八丁だったおかげですね。」
「褒めてるの?それ。」
ナマエさんが腕を組みジトリとこちらを睨んでくる。
「褒めてますよ。いろんな意味で。」
さらにナマエさんは眉を吊り上げ文句を言ってくるが正直全く怖くない。でも、褒めているのは本当だ。
今回の話を振り分け対象の社員らにした時、やはりというか最初は俺らのお零れなんかできないと、実力に見合わないプライドを持ち出してきた奴ら、仕事が増えることをよしとしない情けない奴らがいた。分かってはいたが彼らの情けない言い分にだんだんイラついてきて俺はつい余計なことを言ってしまった。
『不満なら自力で取ってこいよ。それができるならな。仕事が貰えるだけ有難いと思えばいいだろ。ま、ボーナス査定の為にもやった方がいいんじゃねぇの?今の業務量のままだと雀の涙だろうな。』
正論を言ったつもりだが案の定怒りを買ってしまい、自分で蒔いた種とはいえどうしたもんかと思っていたが。
『アッカーマン課長は信頼できる人にしか自分たちの仕事を任せたりはしないと思うの。課長もあなたたちにだったら任せられるって仰ってるんだけど、ダメかな?』
んなこと課長は言ってねぇ。むしろ渋々了承したという感じだったはずだ。だがそのナマエさんの巧みな話術で話は纏まりを見せた。ものは言い様だとこれほど感じたことはない。
「ナマエさんのおかげで話が纏まったのは確かですからね。課長を利用したのには正直驚きましたけど。」
ニヤリと効果音が付きそうな顔でナマエさんに言ってやった。
「…課長には内緒だよ?」
負けじとナマエさんも口角を上げながら首を傾げ人差し指を口に当てる。これが無意識なのが恐ろしい。わざとだとしても恐ぇが。
ほら、資料室行くよー?と言いながらナマエさんが席を立つ。ともあれ、ナマエさんの説得のおかげでうまく事が運び、今俺たちは下期からの振り分けを行っている。資料室へ向かう途中、俺は朝から気になっていたことを聞いてみることにした。
「そういえば、今日はナマエさんなんか雰囲気違いますね。業務後どこか行くんすか?」
普段のナマエさんは割とキッチリめのオフィススタイルという印象だが、今日はなんとなくいつもより緩めというか華やかな印象だ。柔らかそうな素材のスカートが歩く度に膝元で揺れているし、いつもきれいにまとめている髪も珍しく下ろしていた。
「ほんとよく見てるなぁ。今日はね、終わったら食事に行く予定なんだけど、行くお店が可愛らしい感じの所だから合わせたの。商談も会議の予定もないからいいかなって。」
カッチリスーツだと浮いちゃうかもだしね。と、肩をすくめた。こんな風におしゃれをしているナマエさんを見たらどうしても聞きたくなった。誰と行くのか、を。
「…デートっすか?」
「まさかぁ!そんな人いないもん。友達と約束してるんだよ。」
何となくホッとした。いや…なぜホッとした?別にナマエさんに男がいても何の不思議もないし、むしろいねぇ方がおかしいと思っていたくらいだ。元々ナマエさんはどんな男からの誘いにも乗らない。分かっていたはずだ。男と行くのかもしれないと思った時のモヤモヤがよく分からない。
そんなことを悶々と考え込んでいた時、ふとどこかから視線を感じた。気になってそちらを見てみたが特に誰もいない。…なんだ?
気味が悪いと思いながらナマエさんの方を見ると、顔を真っ青にしながら下を向いていた。
「ナマエさん?大丈夫ですか?」
俯いたまま首を振りながらなんでもないと言うが、大丈夫な顔をしていない。…もしかして、と思い当たる節を聞いてみる。
「ナマエさん。最近移動中に様子がおかしいのって、もしかしなくてもこの視線ですか?」
「…っ!」
ナマエさんはハッとしたように顔を上げるが、気づかれてないと思う方がおかしい。
「時々周り見てキョロキョロして、その後この世の終わりみたいな顔してますよね。何かあるんですね?」
「…。」
何も言わないがビンゴのようだ。
「とりあえず、早いとこ資料室行きましょう。話はそこで。」
誰かに聞かれるのもあまりよくないだろうと思ったので、ナマエさんに急ぐよう促した。
「ーそれで?いつからですか?」
資料室に就きナマエさんに一番奥の作業デスクで待つよう伝えて、室内に俺たち以外居ないことを一通り確認したあとに切り出した。しばらくナマエさんは黙っていたが、誤魔化しは効かないと諦めたのか、ポツポツと話し出した。
「8月…の頭くらい、かな。どこかから見られてるような感覚があって…」
8月って…二か月近く前じゃねぇか。
室内ではその視線を感じる事はないようで、いつも移動中だけどこかから視線を感じるらしい。社外では感じないようなので、どうやら社内の人間の仕業らしい。
「どうして相談しねぇんですか。やべぇやつだったらどうするんすか。」
ナマエさんは何も悪くないのに相談されなかったことに少し苛立ち、つい口調がキツくなってしまう。
「これが…初めてじゃないから。いつもいつの間にか収まってるから今回も…大丈夫かな…と。それに、ただ見られてる感じがするだけだし。もしかしたら私の勘違いかもしれないし…迷惑かけてもいけないし。」
初めてじゃねぇのかよ。思わずため息が出る。
「…分かりました。とりあえず、課長には報告します。どうせ課長にも言ってないんでしょ?それから、これからは解決するまでは絶対一人で行動しないこと。そうですね、必ず俺かリヴァイ班のメンバーと一緒に行動してください。」
いいですね?そう強めに言うと、渋々ながらも了承してくれた。
「それから、今後は視線を感じたらその場で俺に言ってください。俺が気づけない事もあると思うので。」
「でも…それでキルシュタインくんに何かあったら…」
「俺の心配より自分の心配してくださいね?これまで何もなくて…ほんとに良かった。」
「あ…の…。」
戸惑うナマエさんの声でハッとする。なぜか俺の手がナマエさんの頬に手を当てていたからだ。
「…っ。すみません。」
「っううん、私こそっ。心配かけてごめんね。」
パッと手を離して謝る。まただ。また勝手に触れてしまった。
「…とにかく。この後リヴァイ課長には俺から伝えときますから。」
やるべき仕事さっさと終わらせましょう。そういってこの話を半ば強制的に終わらせた。
その後オフィスに戻った俺はすぐにリヴァイ課長へと報告をした。課長はこれでもかと眉間に皺を寄せながら聞き、俺とリヴァイ班とで、ナマエさんを一人にしないことを承諾してくれた。
ナマエさんを見ているやつがただのナマエさんファンで。遠くから見ているだけ。それだけならいいが。まぁ、あれだけ怯えさせてるだけで、もうアウトだな。
視線の主を見つけるにはどうするか…。頭の片隅でそんなことばかり考えながら残りの業務時間は過ぎていった。