祭りは血が騒ぐ
ある秋の日。
スネークがリビングで煙草を吸いながらくつろいでいると。
ソニック「おっさーん!」
ソニックが駆け寄ってきた。
スネーク「何だ騒々しい」
ソニック「これこれ!見てくれよ」
ソニックが、手に持っていたチラシをスネークに渡した。
スネークは口から煙を吐き出しながら、受け取ったチラシに目を通す。
スネーク「・・・『秋祭り』?」
ソニック「That's right!明日、城下町で開催されるんだとよ!」
スネーク「そうか、で、これがどうした」
ソニック「・・・おっさん、興味ない?」
スネーク「人混みは苦手だ」
ソニック「・・・そっか」
スネーク「・・・?」
ソニックは急に顔を赤らめて、俯きつつスネークをチラチラ見ている。
ソニック「その・・・マリオとかピカチュウとか、今までスマブラに出てたみんなは秋祭り行ったことあるらしくてさ。お、おっさんさえよければ、せ、せっかくだし、一緒に行こうかなぁとか思ったんだけど・・・」ブツブツ
スネーク「!!!」
スネークは口にくわえていた煙草を落っことしそうになった。
あのソニックがデレている・・・!!
一緒に行こう=二人で行こう=デートに行こう!!!!!!!
スネークのIQ180の脳内で、それはもう凄まじい速度でその方程式は完成した。
ソニック「Sorry. 祭り事が苦手なら仕方ないな、じゃオレはこれで・・・」
早口で述べて音速で立ち去ろうとしたソニックを、スネークは捕まえた。
ソニック「おっさん!?」
スネーク「明日の朝10時に行くぞ」
ソニック「えっちょ、おっさんさっき人混み苦手って、」
スネーク「いいか俺とお前の二人で行くんだからな絶対他に誰か誘うなよわかったか」
ソニック「お・・・OK・・・」
ソニックが立ち去ると、スネークは煙草の吸い殻を携帯灰皿にしまい込んで、
スネーク「デートだああああああぁぁぁぁあああああ」
奇妙に動きながらめちゃくちゃ叫んだ。
その直後にリビングに入ってきたヨッシーにどん引きされた。
***
そして次の日。
運命の秋祭り。
あらかじめマスターハンドに一日乱闘休みの許可を得ているので、心置きなく祭りを楽しむことが出来る。
スネークはイロコィ・プリスキンの変装をしていた。
ソニック「そんなに城下の人たちに正体バレるの嫌?」
スネーク「騒がれるのは苦手だ」
ソニック「いや、オレがソニックだってバレる時点で騒がれるから一緒だと思うんだけど」
ゲストである二人は、城下町の人々から特に注目を浴びやすいのである。
スネーク「だから、今日はお前も変装しろ」
ソニック「は?」
スネーク「今日は大事な日だからな」
せっかくのデートを邪魔されたくはない、とスネークが取り出したのは、フード付きのまっ黒なパーカーだった。
スネーク「昨日タブーに繕ってもらった」
ソニック「そういやアイツ裁縫得意だったな・・・」
てっきり女装させられるのではないかとドキドキしていたソニックは、ホッとした。
パーカーを着てフードを被ると、ソニックの青色の身体が隠れた。
スネーク「お前の青色は目立つから」
ソニックの右手をギュッと握って、スネークは歩き出した。
ソニック「ちょ、親子じゃあるまいし・・・」
スネーク「いいじゃないか、今日くらい」
ソニック「・・・仕方ないな・・・」
顔を赤くしながら、ソニックはスネークの手を握り返した。
ソニック「おぉ~っ!」
城下町のメインストリートには、沢山の種類の屋台がキレイに並んでいた。
人々が行き交っていて、城下町は普段以上に賑わっている。
スネーク「どこか、行きたい店はあるのか」
ソニック「えっとね、あそこ!」
ソニックが指差したのは、射的のお店だった。
スネーク「なんだ、これ」
スネークがコルク栓式銃を手に取る。
ソニック「おっさん、射的知らないのか?」
スネーク「・・・・・・」
ソニック「あそこにいろんな賞品が置いてあるだろ?ここからこの銃でコルク栓を撃って、落とした賞品をゲット出来るんだよ」
スネーク「撃ち落とせばいいんだな?」
スネークは店主に代金を払うと、銃を受け取った。
「弾は全部で六つですからね~」
スネーク「それだけあれば十分だ」
スネークは銃を構えた。
傭兵なだけあって、その姿はとても様になっている。
スネーク「どれが欲しいんだ、とってやる」
ソニック「Really?じゃ、お手並み拝見といこうか」
ソニックは賞品を眺め回して、
ソニック「あれ、あの一番上の、一番左にある蛇の人形!」
早口でそう言った。
スネークは銃を人形の方に向かって銃を構えると、すぐさま引き金を引いた。
ソニック「あっ」
コルク栓は人形の頭の部分にヒットし、グラグラと揺れて台から落ちた。
「お客さん、よく一発でとったねー!はい、これ、賞品ねー」
受け取った人形を、スネークはソニックに手渡した。
スネーク「ほれ」
ソニック「サンキューおっさん!流石だぜ」
嬉しそうなソニックを見て、スネークはテンションが上がった。
スネーク「ほら、次に欲しいのは?言ってみろ」
ソニック「え?あー・・・」
蛇の人形さえ貰えればそれで満足だったソニックは悩んだ。
ソニック「じゃあ・・・二段目の、左から二番目のお菓子詰め合わせ」
スネーク「OK」
またしてもコルク栓がヒットし、お菓子詰め合わせも貰えた。
それから、スネークはソニックの言った賞品を次々と撃ち落とし、残り一発となった。
スネーク「最後は?」
ソニック「・・・・・・」
ソニックは賞品を眺めてから、
ソニック「・・・一番下の、右から四番目のやつ」
針鼠の人形を指差した。
これもスネークは容易に撃ち落としてみせた。
「スゴいねお客さん!持ち弾全部当てちまったよ!」
スネーク「ほら、」
受け取った人形をソニックに手渡そうとすると、ソニックは首を振った。
ソニック「それはおっさんにやるよ」
スネーク「いや、でも・・・」
ソニック「いいから!恋人の善意は素直に受け取るもんだぜ?」
スネーク「・・・わかった」
スネークに針鼠の人形を手渡すと、ソニックは蛇の人形を大事そうに抱きしめた。
お昼頃、ソニックはたこ焼きを、スネークはフランクフルトを購入した。
開いているベンチに座り、空腹のお腹を満たす。
ソニック「このたこ焼きマジうめぇ」モッチョモッチョ
スネーク「それはよかったな」
ソニック「おっさん、アーン」
スネーク「!!」
ソニック「一つやるから、ほら、」
ソニックがたこ焼きの刺さった爪楊枝を、スネークの口に運んだ。
スネーク「・・・」モッチョモッチョ
ソニック「どう?」
スネーク「・・・うますぎる」
ソニック「だろー?おっさんのも一口くれ」
スネーク「・・・ん」
スネークがフランクフルトをソニックの口に運ぶと、
ソニック「んふっ」
ソニックが自らくわえ込んだのを見て、めちゃくちゃ興奮した。
ソニック「んん、こっちもうまいな」
スネーク「・・・」
ソニック「どうしたおっさん」
スネーク「いや、ちょっとムラムラして」
ソニック「?」
その後、いろいろな屋台を見てまわった二人は、休憩も兼ねて、再びベンチに座り紅葉を眺めた。
ソニック「もうすっかり秋だなー」
スネーク「祭りは楽しめたか」
ソニック「そりゃあもう!やっぱ祭りは誰かと一緒じゃなきゃな」
スネーク「誰かって?ここに来れるなら誰でもよかったのか」
スネークの問いに、ソニックはドキッとしたように俯いた。
頬が赤くなっている。
スネーク「リュカやウルフ、祭りを知らない奴らは他にもいただろう」
ソニック「・・・あーもぉ・・・!」
頭をわしゃわしゃと掻いて、ソニックは吐き捨てるように言った。
ソニック「アンタじゃなきゃダメだったの!アンタと一緒だから楽しかったんだ・・・!」
きょとんとしていたスネークだったが、ソニックの真意がわかると口角を上げた。
スネーク「俺も、お前じゃなかったらこんな祭りに来てなかった」
片手でソニックを抱き寄せる。
ソニック「おっさん、」
スネーク「・・・欲しいものがあるんなら、今のうちに言え」
スネークの言葉に、ソニックは少し躊躇って。
ソニック「・・・キス、ちょうだい」
ベンチで二人、唇を重ね合わせた。
***
秋祭りも終わり、城下町もいつもの姿に戻った。
マリオ「秋祭り、楽しいんだけどねー。キノコ掴み放題の屋台があるともっと素晴らしい祭りになると思うのだよ」
ソニック「ふーん」
ソニックの自室で、マリオはお菓子を頬張っていた。
ソニック「そのお菓子詰め合わせ、おっさんが射的で取ってくれたんだぜー」
マリオ「スネークが?流石、伝説の傭兵だな」
ソニック「銃の構え方がめちゃくちゃリアルでさ!しかも百発百中!目つきとかすっげー鋭くて真剣で・・・」
マリオ「・・・ほほう?」
ニヤニヤしているマリオを見て、ソニックはしまったと口を噤んだ。
マリオ「つまり、スネークがスゴくかっこよかったってことで・・・おk?」
ソニック「う・・・」
マリオ「恥ずかしがるなよ~、素直に『惚れた』って言ってもいいんだからさ」
ソニック「・・・うん」
マリオ「あるぇ?ベッドの上の、そのぬいぐるみは?」
ソニック「あぁ、これ?」
ソニックが蛇の人形を手に取った。
ソニック「これも射的の景品さ。・・・スネークが最初にオレにくれた、祭りの思い出」
スネークの部屋のベッドには、針鼠の人形がたたずんでいる。
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