七不思議チョコレート
***
インクリング「トイレのスマ子さん、いい人でよかったっすね!まさかこんな公園の公衆トイレにいらっしゃったとは…」
ソニック「……あぁ」
インクリング「見つけるのに時間かかっちゃいましたね。もう夜っすよ」
ソニック「……あぁ」
公園の公衆トイレから出てきてみれば、辺りはすっかり暗くなっていて。
ランタンフェスティバルのランタンが祭りの最終日を全うするかの如く、温かな光を放っていた。
ソニックの手には、先程スマ子さんから貰った光があった。
インクリング「いやぁ、その光…とっても綺麗っすよね~。えっと、河童さんが希望で、ニッシーさんが素直。雪女さんが愛情、ガイコツさんが勇気、コンニャクさんが祈りで、このスマ子さんのが…」
ソニック「信頼、だ」
インクリング「……ソニック先輩。なんか今日の先輩、ちょっと元気ないっす。何かあったっすか?」
ソニック「……ハハ…」
ソニックが近くのブランコに腰掛けると、インクリングもそれに倣って隣のブランコに腰掛けた。
それから、ソニックは数時間前のスネークとの出来事を話した。
インクリング「そ、そんな…」
ソニック「…オレさ、この光を全部集めて作ったチョコを、スネークにあげるつもりだったんだ」
インクリング「そうだったんすか…」
ソニック「スネークには内緒にしておきたくて、何も言わず七不思議探しに没頭してたけど……まさか、スネークを傷付けることになるなんて思わなかった」
インクリング「そんな、先輩は何も悪くないっす!アタシが…アタシが元々先輩を七不思議探しに誘わなければ、その、そんなことには…」
ソニック「……もうやめちまおうかな、チョコレート作り…」
インクリング「それはダメっす!」
インクリングが立ち上がった。
乗り手を失ったブランコが虚しく揺れる。
インクリング「今どきバレンタインに男も女もイカも針鼠も関係ないっす!チョコを作りたいなら作ればいいんです!チョコを贈りたい人がいるのなら自分の納得のいくチョコを作って、その最高のチョコをその人にプレゼントするべきっす!」
ソニック「インクリング…」
インクリング「でなきゃそれこそ一生後悔するっすよ!アタシ達は元々住む世界が違うんすから、贈りたい物はきちんと贈っておかないと!伝えたい想いがあるのなら、きちんと伝えておかないと!!」
インクリングがソニックの手を取る。
インクリング「もうここまで来たら、最後の七不思議もバッチリ見つけちゃいましょう!そして全ての光を使って最高のチョコを作ってくださいっす!それで渡す時に事情を説明すれば、スネーク先輩もきっとわかってくれるっすよ!…いや、もしわかってくれないようならアタシが土下座でもなんでもしますから!任せてくださいっす!」
ソニック「……ふふ、ハハハハ」
インクリング「……??」
ソニック「Sorry. ありがとう、元気出たよ。…そうだな、そうでもしなきゃ、今までの苦労が水の泡だからな!」
インクリング「その意気っす!」
ソニックは勢いよく立ち上がった。
ソニック「そうと決まれば、今夜のうちに無人列車の情報を集めておこうぜ、インクリング」
インクリングはにっと笑ってみせた。
インクリング「イカちゃん、でいいっすよ!ソニック先輩!」
翌日、ソニックとインクリングは一日中様々な駅を虱潰しに見てまわった。
だが無人列車らしき列車は見当たらない。
インクリング「七不思議っすから、人が多い時間帯には出てこないんすかね…」
ソニック「『今はなき無人列車』、だったか?今はなき、ってことは……今現役で走っていない列車、ってことか?」
インクリング「えぇ!?もしそうだとしたらそれって……幽霊列車ってやつじゃないっすか!?」
ソニック「……まずは無人駅を探そう。そして夜まで待つんだ」
スマブラ城からかなり離れた廃墟に、その無人駅はあった。
ベンチや看板は錆びれ、あちこちに苔が生えている。
窓ガラスは割れ、ホームの天井の電気はもはや光を失っていた。
インクリング「うう……真っ暗で何も見えないっす……」
ソニック「懐中電灯~」ピカー
インクリング「ひぃぃ、虫が寄ってくるっす…!」
ソニック「何か手がかりはないかな…」
ソニックが懐中電灯をあちこちに向けていると、壁に掛かっている時刻表を見つけた。
ソニック「イカちゃん、今何時かわかるかい?」
インクリング「えっと、23:45っす…」
ソニック「おい見ろよ。ここの23時の欄、55って書いてある。つまり、本来なら10分後、この駅に列車が来ていたんだ。しかもそれが最終便」
インクリング「まぁ、もうこの駅は使われていないみたいっすから、列車が来ることはないでしょうけど…」
ソニック「さぁて、どうかな」
そうして待つこと10分。
遠くの暗がりから微かな光が見えた。
ソニック「!」
インクリング「!?」
ガッタン、ゴットン、
その音は次第に大きくなっていき、
インクリング「ミ"ーーーーーーーー!!!!????????」
列車が来るはずのない駅のホームに、ボロボロの列車が入ってきた。
列車は減速し、やがて2人の目の前でゆっくり止まった。
インクリング「み、見た感じ誰も乗ってないっす…!!」
ソニック「無人列車!!」
「やーーっと見つけてくれたかよ!!待ちくたびれたぜコノヤロー!!」
インクリング「ぎゃーーー列車が喋ったっす!!!!!」
ソニック「じゃあやっぱり、アンタが七不思議の…」
「そう!俺こそがァァァ!空ーーーー前絶後のォォォ!!無人ンンンンンンーーーー列ッッッ車!!!」
インクリング「いえーーーいっす!!!これで七不思議コンプリートっす!!写真、撮らせていただくっす!!」
ソニック「なんか、見た目に似合わずやかましいなこの列車……」
「俺ァな!100年前までは現役バリバリでなぁ!人々を乗せてどこまでもどこまでも走ってたんだぜぇ!!」
ソニック「そういう設定なんだな」
インクリング「ガイコツさんも、500年前城下町で流行った病で死んだ海賊って設定でしたね」
「つーわけで!!俺を見つけてくれたお礼にぃ!コイツをプレゼントしちゃうっぜーーーー!!!!ジャァァスティィス!!!!」
無人列車の窓から2つの光が飛んできた。
ソニック「これは……」
「そいつぁな、『喜び』の光さ!!大丈夫、その光の混ざったチョコを食べた奴ァきっと喜んでくれるぜぇ!!」
インクリング「これでスネーク先輩に最高のチョコを作ってあげられるっすね、ソニック先輩!」
ソニック「ああ…」
「おっと、もう日付が変わっちまったなぁ」
ソニック「…?今何日だ??」
「13日、バレンタインデー前日だぜ!!」
インクリング「はわわ!!早いとこ城に戻って作り始めないと間に合わないかもしれないっすよ!?」
「っしゃぁ!これも何かの縁だ、俺に乗りなぁ!スマブラ城まで運んでやるぜ!というか運ばせて!!!たまには誰かを乗せて走りたい!!!!切実に!!!」
インクリング「先輩…」
ソニック「…じゃあ、お言葉に甘えるとするか」
「イェェエエイ!!!!!!!!!!」
こうして、2人は無人列車に城まで送ってもらった。
道中、ソニックは窓から外の景色を眺めるインクリングに話しかけていた。
ソニック「なぁ、……イカちゃん。せっかくイカちゃんの分の光も貰ってきたんだ。この際イカちゃんもチョコレートを作ってみたらどうだ?」
インクリング「えぇっ、あ、アタシが…っすか…?」
ソニック「誰かチョコを贈りたい人はいないのかい?日頃特にお世話になっている人とか……」
インクリング「お世話に………」
インクリングは少し考え込んでからハッとした顔をすると、大きく頷いた。
インクリング「……わかったっす。アタシもチョコ、作ってみるっす!」
ソニック「じゃあ一緒に……」
インクリング「いえ、アタシがいては先輩の足を引っ張ってしまうっす。七不思議探しも先輩に頼ってばかりでしたから……今度は、自分1人で頑張ってみたいんす!」
ソニック「…そっか、わかった。それじゃ、お互い頑張ろうぜ」
インクリング「はいっす!」
インクリング「トイレのスマ子さん、いい人でよかったっすね!まさかこんな公園の公衆トイレにいらっしゃったとは…」
ソニック「……あぁ」
インクリング「見つけるのに時間かかっちゃいましたね。もう夜っすよ」
ソニック「……あぁ」
公園の公衆トイレから出てきてみれば、辺りはすっかり暗くなっていて。
ランタンフェスティバルのランタンが祭りの最終日を全うするかの如く、温かな光を放っていた。
ソニックの手には、先程スマ子さんから貰った光があった。
インクリング「いやぁ、その光…とっても綺麗っすよね~。えっと、河童さんが希望で、ニッシーさんが素直。雪女さんが愛情、ガイコツさんが勇気、コンニャクさんが祈りで、このスマ子さんのが…」
ソニック「信頼、だ」
インクリング「……ソニック先輩。なんか今日の先輩、ちょっと元気ないっす。何かあったっすか?」
ソニック「……ハハ…」
ソニックが近くのブランコに腰掛けると、インクリングもそれに倣って隣のブランコに腰掛けた。
それから、ソニックは数時間前のスネークとの出来事を話した。
インクリング「そ、そんな…」
ソニック「…オレさ、この光を全部集めて作ったチョコを、スネークにあげるつもりだったんだ」
インクリング「そうだったんすか…」
ソニック「スネークには内緒にしておきたくて、何も言わず七不思議探しに没頭してたけど……まさか、スネークを傷付けることになるなんて思わなかった」
インクリング「そんな、先輩は何も悪くないっす!アタシが…アタシが元々先輩を七不思議探しに誘わなければ、その、そんなことには…」
ソニック「……もうやめちまおうかな、チョコレート作り…」
インクリング「それはダメっす!」
インクリングが立ち上がった。
乗り手を失ったブランコが虚しく揺れる。
インクリング「今どきバレンタインに男も女もイカも針鼠も関係ないっす!チョコを作りたいなら作ればいいんです!チョコを贈りたい人がいるのなら自分の納得のいくチョコを作って、その最高のチョコをその人にプレゼントするべきっす!」
ソニック「インクリング…」
インクリング「でなきゃそれこそ一生後悔するっすよ!アタシ達は元々住む世界が違うんすから、贈りたい物はきちんと贈っておかないと!伝えたい想いがあるのなら、きちんと伝えておかないと!!」
インクリングがソニックの手を取る。
インクリング「もうここまで来たら、最後の七不思議もバッチリ見つけちゃいましょう!そして全ての光を使って最高のチョコを作ってくださいっす!それで渡す時に事情を説明すれば、スネーク先輩もきっとわかってくれるっすよ!…いや、もしわかってくれないようならアタシが土下座でもなんでもしますから!任せてくださいっす!」
ソニック「……ふふ、ハハハハ」
インクリング「……??」
ソニック「Sorry. ありがとう、元気出たよ。…そうだな、そうでもしなきゃ、今までの苦労が水の泡だからな!」
インクリング「その意気っす!」
ソニックは勢いよく立ち上がった。
ソニック「そうと決まれば、今夜のうちに無人列車の情報を集めておこうぜ、インクリング」
インクリングはにっと笑ってみせた。
インクリング「イカちゃん、でいいっすよ!ソニック先輩!」
翌日、ソニックとインクリングは一日中様々な駅を虱潰しに見てまわった。
だが無人列車らしき列車は見当たらない。
インクリング「七不思議っすから、人が多い時間帯には出てこないんすかね…」
ソニック「『今はなき無人列車』、だったか?今はなき、ってことは……今現役で走っていない列車、ってことか?」
インクリング「えぇ!?もしそうだとしたらそれって……幽霊列車ってやつじゃないっすか!?」
ソニック「……まずは無人駅を探そう。そして夜まで待つんだ」
スマブラ城からかなり離れた廃墟に、その無人駅はあった。
ベンチや看板は錆びれ、あちこちに苔が生えている。
窓ガラスは割れ、ホームの天井の電気はもはや光を失っていた。
インクリング「うう……真っ暗で何も見えないっす……」
ソニック「懐中電灯~」ピカー
インクリング「ひぃぃ、虫が寄ってくるっす…!」
ソニック「何か手がかりはないかな…」
ソニックが懐中電灯をあちこちに向けていると、壁に掛かっている時刻表を見つけた。
ソニック「イカちゃん、今何時かわかるかい?」
インクリング「えっと、23:45っす…」
ソニック「おい見ろよ。ここの23時の欄、55って書いてある。つまり、本来なら10分後、この駅に列車が来ていたんだ。しかもそれが最終便」
インクリング「まぁ、もうこの駅は使われていないみたいっすから、列車が来ることはないでしょうけど…」
ソニック「さぁて、どうかな」
そうして待つこと10分。
遠くの暗がりから微かな光が見えた。
ソニック「!」
インクリング「!?」
ガッタン、ゴットン、
その音は次第に大きくなっていき、
インクリング「ミ"ーーーーーーーー!!!!????????」
列車が来るはずのない駅のホームに、ボロボロの列車が入ってきた。
列車は減速し、やがて2人の目の前でゆっくり止まった。
インクリング「み、見た感じ誰も乗ってないっす…!!」
ソニック「無人列車!!」
「やーーっと見つけてくれたかよ!!待ちくたびれたぜコノヤロー!!」
インクリング「ぎゃーーー列車が喋ったっす!!!!!」
ソニック「じゃあやっぱり、アンタが七不思議の…」
「そう!俺こそがァァァ!空ーーーー前絶後のォォォ!!無人ンンンンンンーーーー列ッッッ車!!!」
インクリング「いえーーーいっす!!!これで七不思議コンプリートっす!!写真、撮らせていただくっす!!」
ソニック「なんか、見た目に似合わずやかましいなこの列車……」
「俺ァな!100年前までは現役バリバリでなぁ!人々を乗せてどこまでもどこまでも走ってたんだぜぇ!!」
ソニック「そういう設定なんだな」
インクリング「ガイコツさんも、500年前城下町で流行った病で死んだ海賊って設定でしたね」
「つーわけで!!俺を見つけてくれたお礼にぃ!コイツをプレゼントしちゃうっぜーーーー!!!!ジャァァスティィス!!!!」
無人列車の窓から2つの光が飛んできた。
ソニック「これは……」
「そいつぁな、『喜び』の光さ!!大丈夫、その光の混ざったチョコを食べた奴ァきっと喜んでくれるぜぇ!!」
インクリング「これでスネーク先輩に最高のチョコを作ってあげられるっすね、ソニック先輩!」
ソニック「ああ…」
「おっと、もう日付が変わっちまったなぁ」
ソニック「…?今何日だ??」
「13日、バレンタインデー前日だぜ!!」
インクリング「はわわ!!早いとこ城に戻って作り始めないと間に合わないかもしれないっすよ!?」
「っしゃぁ!これも何かの縁だ、俺に乗りなぁ!スマブラ城まで運んでやるぜ!というか運ばせて!!!たまには誰かを乗せて走りたい!!!!切実に!!!」
インクリング「先輩…」
ソニック「…じゃあ、お言葉に甘えるとするか」
「イェェエエイ!!!!!!!!!!」
こうして、2人は無人列車に城まで送ってもらった。
道中、ソニックは窓から外の景色を眺めるインクリングに話しかけていた。
ソニック「なぁ、……イカちゃん。せっかくイカちゃんの分の光も貰ってきたんだ。この際イカちゃんもチョコレートを作ってみたらどうだ?」
インクリング「えぇっ、あ、アタシが…っすか…?」
ソニック「誰かチョコを贈りたい人はいないのかい?日頃特にお世話になっている人とか……」
インクリング「お世話に………」
インクリングは少し考え込んでからハッとした顔をすると、大きく頷いた。
インクリング「……わかったっす。アタシもチョコ、作ってみるっす!」
ソニック「じゃあ一緒に……」
インクリング「いえ、アタシがいては先輩の足を引っ張ってしまうっす。七不思議探しも先輩に頼ってばかりでしたから……今度は、自分1人で頑張ってみたいんす!」
ソニック「…そっか、わかった。それじゃ、お互い頑張ろうぜ」
インクリング「はいっす!」