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七不思議チョコレート

***


翌日。

ソニック「さーて、行きますか!」

しっかり準備を整えたソニックが自室を出ると、

スネーク「ハリネズミ」

ソニック「あ、おっさん」

スネークが出待ちしていた。
腕を組み、壁に背を預けもたれかかるように立っていた。

スネーク「聞いたぞ、インクリングと七不思議とやらを探しているのか」

ソニック「ああそうさ」

スネーク「…お前達2人で大丈夫なのか?」

ソニック「No problem. 探検みたいなものだからな」

スネーク「……どうだ、俺も一緒に…」

ソニック「あーダメダメ!!おっさんはダメだ!!」

スネークが一緒では、あの光のことがバレてしまう。
同行を秒で拒否されたスネークは眉間に皺を寄せた。無理もない。

ソニック「じゃ、じゃああの、オレもう行くから…!」

自慢のスピードで逃げるようにその場を後にした。
これも全てはスネークに美味しいチョコレートを作ってプレゼントするためだ。ソニックはインクリングのもとに向かった。








インクリング「ミ"ーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

雪山、そこは一面雪景色、一点の曇りも汚れもない真っ白な世界。
防寒具に身を包んだインクリングはガタガタ震えていた。

ソニック「頑張れ、雪女を見つけるまでの辛抱だ」

インクリング「ソニックパイセンは何故にマッパで平気なんすか!!!!!!頭おかしいんじゃないの!?」

ソニック「うーん、雪女はどの辺りにいるのかな…」

インクリング「だぁーーーさむぅーーーー!!!!こういう時はかまくらをソッコーで作って暖を取るべしって任天ゼミでならったっす!」

ソニック「かまくらって、お前なぁ…」

インクリング「あ…」

ソニック「ん」

2人の進む方向の少し先に、小さなかまくらが見えた。

ソニック「マジか……」

インクリング「あれ任天ゼミで見たことあるやつだ…」

ソニック「誰か寒さで凍えているのかもしれないな…よし、行ってみよう」

2人はザクザクと雪を踏みしめ、かまくらに近付いていった。

ソニック「Excuse me?」

「アーハン?」

ソニック「ってお前かーーーーい!!!!」

かまくらの中には真っ白な長い髪、真っ白な肌、氷のような瞳をした女性……所謂雪女が座っていた。

「うそ!?やだ、私見つかっちゃったの!?」

インクリング「では、やはりあなたが雪女さんっすね!?写真撮らせてくださいっす!」

「い、いいけど……べ、別に、見つけてもらえたからって嬉しいわけじゃないんだからね!!」

ソニック(まさかのツンデレかぁ…)

インクリング「あ、これ、差し入れのアイスクリームっす!」

「あら、気が利くじゃない…。ってこれはロンロン牛乳とモーモーミルクで作られたバニラアイスじゃない!!美味し過ぎるが故に常に売り切れ状態だって言われているのに…!」

インクリング「はい!たまたま1個残ってたんで!ラッキーだったっす!」

「ふ…なかなかやるじゃない……ありがとうと言っておくわ」

ソニック「あの、オレ、光を集めてて…」

「ああ、あれね。はい」

雪女は傍に置いてある小型冷蔵庫から光を取り出しソニックとインクリングに手渡した。

ソニック「冷たっ!!!」

「その光は『愛情』。愛情は冷た過ぎても温か過ぎてもいけない。上手く使いなさいな」

インクリング「残る七不思議はあと4つっすね!」

「次の七不思議、ガイコツは少し手強いわよ。今の時期、城下町ではちょうどランタンフェスティバルが開催されているから……ガイコツは夜の人混みに自然と溶け込むのが上手いのよねぇ」

ソニック「ランタンフェスティバルか…懐かしいな…」

Xの頃、スネークと一度行ったことのある期間限定のお祭り。
バレンタインデーが無事に終わったら、彼を誘ってまた遊びに行きたいところだ。

「……って、別にアンタ達のためにアドバイスしてあげてるわけじゃないわよ?ガイコツも見つけてもらえなきゃ可哀想だから、そう、敢えて教えてあげてるだけなんだからね!!」

ソニック「ハハ、そういうことにしておくよ」

インクリング「ありがとうございます、雪女さん!!」


***

ソニックとインクリングが順調に七不思議を見つけている一方、

スネーク「…………」

スネークはイライラしていた。
この数日間、なかなか思うようにいっていない。
「今日はガイコツを探しに行く」とソニックが言っていた日には、何とか彼の気を引こうと色々した。そう、色々。



スネーク『インクリングと一緒にいるのがそんなに楽しいか?』

ソニック『なかなか楽しいぞ?アイツ元気だし、一生懸命なところあるし、退屈しないな』

スネーク『俺は退屈するってか。そうかそうか』

ソニック『は?誰もそんなこと言ってないだろ?あぁもう、オレそろそろ行くから』

スネーク『……』

無意識に手が出た。
ソニックの首根っこを咄嗟にむんずと掴んで、そのお子様サイズの身体を持ち上げる。

ソニック『Hey!何すんだよ!!』

スネーク『……別に』

ソニック『用がないなら離せよ、オレ急いでるんだから!』

スネーク『あんまり生き急ぐと早死にするぞ』

ソニック『っせーな、アンタよりは長生きするさ!』

スネーク『…っ』

じたばたと踠かれ、つい手を離してしまった。
手が情けなくも名残惜しそうに宙を掻く。

スネーク『俺のことが嫌いか?』

ソニック『今はな』

ソニックはフンとわざとらしく鼻を鳴らすと一瞬でその場から消えた。



また、ソニックが「空飛ぶコンニャクを探しに行く」と言っていた日には、スネークの他にも多くのファイターがソニックを捕まえたがっていた。

スネーク『おい、ハリネズミ…』

ピカチュウ『あーダメだよスネークさん!僕今日はソニックとお花を摘みに行きたいから!』

スネーク『何?』

ゲッコウガ『それは困ったでござるな。拙者もソニック殿とすごろくをしようと思っていたのでござるが…』

スネーク『すごろくなんぞいつでも出来るだろう』

ルカリオ『私はソニックと山菜採りに…』

スネーク『もっと天気のいい日に行くといい』

リヒター『何!?俺はカラオケに誘おうと思っていたんだが!』

スネーク『お前さんはいつからアイツとカラオケに行く仲になったんだ?』

ディディー『野球のメンバーがあと1人足りないから、ソニックに入ってもらいたいんだけどー!』

スネーク『キングクルールにでも入ってもらいなさい』

ピカチュウ『だめだめー!ただでさえ最近ソニックと遊べてないんだから!ソニックは誰にも譲らないよ!』

リヒター『だいたいスネークこそ、ソニックと何をする予定なんだ?』

スネーク『俺は……、………………』

ただ、アイツと一緒にいられれば、それでいいんだが。

スネーク『……そうだな、たとえば、その、ランタンフェスティバルとか……』

ディディー『ん?何?もっとハッキリ喋ってよ!聞こえないんですけど!』

スネーク『……お前さんこそ、野球のメンバーにソニックを誘う理由はちゃんとあるんだろうな?』

ディディー『はい??』

スネーク『100字以上150字以内で述べてみせろ』

ディディー『うわなんか言い出したよこの人!!』

ゲッコウガ『どうでござろう?ここはいっそのこと、皆で仲良くすごろくをするというのは……』

ルカリオ『すまない、すごろくとはなんだ?』

ゲッコウガ『あーそう来ちゃうでごさるかぁー』

リヒター『じゃあもうみんなで行くか?カラオケ!』

ルカリオ『カラオケとはなんだ?』

リヒター『(◜௰◝)』

ルカリオ『……す、すまない……』

ピカチュウ『とにかく!ソニックは僕と!遊ぶの!!』

ソニック『オレの為に争わないでッ!!』

スネーク達がやいのやいの言い合っていたところに、ソニックが割って入ってきた。

ソニック『みんな悪い、もうしばらくオレの好きにさせてくれ…!』

ピカチュウ『ソニック…!』

ソニックは申し訳なさそうな顔をしながら、そのまま颯爽とインクリングのもとへ駆けていった。





スネーク「………はぁ」

この胸をぎりぎりと締め付けるようなものは何だろう。
靄がかかっているようで、とても気持ちが悪い。
城の屋上で一服してこようかと自室を出て驚いた。

ソニック「あ」

隣人もまた、同じタイミングで部屋から出てきたからだ。

スネーク「……今日は何だ」

ソニック「トイレのスマ子さん探し」

ぎり、と、また胸を締め付けられる音。

マリオ「ふい~、今日のお昼は何食べようかな~っと……ん?」

廊下のトイレから出てきたマリオは、スネークとソニックに声をかけようとした、のだが。

スネーク「七不思議探しがそんなに楽しいか」

ソニック「ま、まぁね」

スネーク「……ランタンフェスティバル」

ソニックの耳がピクンと動いた。

スネーク「今城下町でやってるだろう」

ソニック「……」

スネーク「Xの頃、一緒に行ったよな」

ソニック「……」

スネーク「……お前が送ってくれた手紙に、『またいつか一緒に行こう』と書かれていたはずだ」

ソニック「………」

スネーク「それだけじゃない。俺がまた参戦出来たら、スキーに行こうだの、スノボがしたいだの、焼肉食べに行こうだの、イルミネーション見に行きたいだの、沢山、沢山書かれていた」

ソニック「……あぁ、…書いてたな」

スネーク「SPが始まってこの数ヶ月、色々と忙しかったから、今言ったことはまだ全部出来ていない。余裕が出てきたのは最近だ。やっと、お前と色々なことが出来ると思っていたのに」

眉間に皺を寄せながら、スネークが問い詰める。

スネーク「お前はインクリングを……七不思議を優先させるのか?」

ソニックは下唇を噛んだ。
ぐっと堪えてから、乾いた喉から何とか声を吐き出す。

ソニック「七不思議は、今じゃなきゃダメなんだよ…。なあ、もうしばらく待ってくれよ。後でちゃんと説明するから、」

スネーク「俺が先のはずだろう!?俺はもう随分前から手紙を貰っている!」

突然声を荒げたスネークに思わずぎょっとした。

マリオ(しゅ、しゅ、修羅場やこれ~~~!!!!)

廊下に出るタイミングを失ってしまったマリオは、手洗い場に隠れるようにしゃがみこんでいた。

感情的なスネークを見慣れていないソニックは動揺しながら返答する。

ソニック「あ、ああそうさ!アンタの言い分は正しいしよくわかる!でも頼むよ、もうちょっとだけ待ってくれ!そうだ、あと数日でいいから…」

スネーク「何故そうはぐらかす!?今この場でちゃんと説明してくれ!」

ソニック「今はどうしても言えないんだよ、なぁ頼むから…!」

スネーク「ランタンフェスティバルは今日で終わりだ!!」

ソニック「えっ」

言葉が出なかった。
まさかバレンタインデーを迎える前に終わってしまうなんて、思っていなかった。

ソニック「……知らなかった…」

スネーク「俺もさっき知った。…今年は例年より早く終わるらしい」

ソニック「……ごめん…」

スネーク「……行くのか」

ソニック「…………」

スネーク「……もういい」

スネークが舌打ちした。

スネーク「お前は、自由奔放で、いつも自分の心に従って自分のやりたいことをやっている」

ソニック「……」

スネーク「お前のそういう所が気に入らない」

ソニック「………っ」

気がつけば走り出していた。
これ以上スネークの歪んでいく顔を見たくなくて、…否、見られなくて、逃げ出した。


スネーク「……っ」

マリオ「す、スネーク!」

ずるずるとその場に崩れ落ちるスネークに、ようやくマリオが駆け寄った。

マリオ「だ、大丈夫かい…?顔色悪いよ?」

スネーク「……違う…違う、違う、」

スネークは両手で顔を覆うと頭を左右に振った。

スネーク「違う、俺は、あんなこと、言いたかった、わけじゃ、……!」

マリオ「スネーク、」

スネーク「俺は、ただ……ただ……!」

胸が苦しい。イライラする。ムカムカする。自分に腹が立つ。
これが一体何なのか、自分に問いかけても何もわからなかった。

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