2018.12.07
久々に戻ってきたスマブラ城は、至るところがリニューアルされていた。
ファイターが多くなったこともあり、部屋を増やしたり施設をパワーアップさせた結果、城自体を完全リフォームすることになったらしい。
SPからの新ファイター達、そして復活を果たした元リストラファイター達の自己紹介も終わり、解散となった。
翌朝はSP始めての朝食だ。今作からは朝食はバイキングに、昼食は各々で自由に、夕食はマスターバンドが生み出したエキストラ扱いの料理人達が作った豪華ディナーになるらしい。
理由はこれもファイターが増えたから。ルイージやゼルダの負担が大きくなるとマスターバンドが危惧した結果らしい。
これには皆賛成だった。
さて、復活を果たしたファイターの1人であるスネークは、新しい自分の部屋で日記を書いていた。
あれから己の世界で色々あり、蛇ではなく人として生きるようになった彼に、戦友であり親友のオタコンが進めてきたのである。
オタコン『これからは頑張り過ぎなくていいからね。1日1日を大切に過ごせるんだ。だからさ、日記を書いてみたらどうだい?あとから読み返すと楽しいよ、きっと』
そう笑顔で話す相棒に「読み返すのは俺ではなくお前だろう」と苦笑して言ってやると、相棒は目を伏せてしまったのでスネークは少しだけ発言したことを後悔した。
とはいえ、今回のスマブラでは、
マスター『その老人の姿じゃメタルギアを知らない子ども世代がなんだこのじいさんキャラ!ってビックリするからね!私のパワ~でXの頃と同じくらいの外見にさせていただきまーす!!』
というマスターバンドの気遣いで、スネークはXの頃とさほど変わらない外見・肉体に戻されている。
再び蛇として生きることになったのだと、スネークは気を引き締めた。
見知っているファイター達は皆スネークを快く迎え入れてくれた。
forから参戦していたファイター達は、1人ずつスネークと挨拶した。
今作からの新ファイター含め、やはりここには色々な外見・種族の者が集うのだなと苦笑した。
Xの頃はやたら驚いていたが、今ではもう慣れっこだ。
日記を書き終え、時計を見る。
明日から早速乱闘に参加する。朝食を終え、乱闘前にトレーニングルームで軽く身体を慣らしておきたい。そのためには今夜は早く寝て明日は早起きしなければ。
スネークは椅子から立ち上がり、洗面台へ向かった。
スネーク「………あるぇ」
歯ブラシはあるが、歯磨き粉が見当たらない。
スネークは歯ブラシを手に取り暫し見つめた後、特にどうしようかと悩むことは無く、自然と足を動かし自室を出た。
***
どれだけ城がリフォームされようが、やはりあの針鼠の部屋は隣だった。
スネークは廊下に出てから隣の扉のドアノブを捻る。
「鍵がかかっているのでは?」等という心配は無かった。アイツは基本俺がいつでも入ってこられるようにわざと鍵をかけていなかった。それはスネークも同じだった。
スネーク「ハリネズミ、邪魔するぞ」
ずかずかと部屋へ入っていけば、
ソニック「よぉ……おっさん」
1人テレビで新ファイター・復活ファイター特集の番組を観ていたソニックが振り返った。
歯ブラシ片手に乗り込んできたスネークを見て一瞬ぽかんとしていたが、すぐにじわじわと笑顔を浮かべた。
ソニック「はは、なんだいおっさん、歯ブラシで聖火ランナーでもやるつもりかい?」
スネーク「残念だったな、トーキョーオリンピックはもう少し先だ」
ソニック「オレがマリオとまたオリンピックやることになったら、おっさん聖火ランナーやってくれる?」
スネーク「他の皆が一緒にやってくれるなら、やらないこともないかな」
2人して噴き出した。
2人とも、確かに幸せだった。
スネーク「歯磨き粉を借りにきた」
ソニック「またかよ~~仕方ないな~~」
嬉しそうにニヤニヤしながら、ソニックは洗面台から歯磨き粉を取ってきた。
そしてスネークの歯ブラシにぶちゅりとかけてやった。
スネーク「ん、すまんな」
ソニック「どういたしまして」
スネーク「……この歯磨き粉、まだ使ってるんだな。別の種類とか試してみないのか」
ソニック「これが気に入ってんだよ。それとも何か不満でも?」
スネーク「いや。ただ……お前は何も変わらないなと思ってな。いい意味でだぞ」
スネークが頬を掻く。
スネーク「俺がいない間、お前が変わってたら少し不安だなと思っていた」
ソニック「…安心しろよ、オレはオレだからさ」
ソニックがにっと笑う。それだけでスネークは「この世界に戻ってきたんだな」と強く実感することが出来た。
ソニック「おっさんは……あれから何か変わったか?なんか……ふっきれた!って雰囲気が漂ってるぜ」
スネーク「ふふ、そうか。まぁそうだな。俺は色々と……変わったかもな」
スネークは一瞬歯磨き粉の乗った歯ブラシをチラと見てから、ソニックに言った。
スネーク「明日の乱闘、お前はマリオとシュルクとダークサムスと戦うんだろう?」
ソニック「あぁ、それが?」
スネーク「その乱闘でお前が1位になったら、俺の名前を教えてやるよ」
ソニックがあんぐりと口を開ける。
ソニック「なま……は?名前?」
スネーク「俺の、人としての名前だ」
その言葉にピンときたのか、ソニックの顔がみるみる興奮で真っ赤になっていく。
ソニック「Really!?えっうそ、ほんとに?マジで!?」
スネーク「今の俺は気分がいいからな。約束するなら今のうちだぞ」
ソニック「するする!1位だな?楽勝だぜ!」
スネークは1人はしゃぐソニックに苦笑しながら、部屋を出ていった。
「あ、ちょっと!」というソニックの声はわざと無視し、さっさと自室に退散する。
勿論鍵はかけない。
あの針鼠は夜眠れない時は決まって隣のスネークの部屋を訪ねるのだ。
ごしごしと歯を磨いていれば、問答無用でドアの開く音。ほら来た。
ソニック「スネーク!」
まだまだ話し足りないようで、ソニックはにこにこしながらスネークに駆け寄ってきた。
一緒にいるだけで飽きない。懐かしくも全く変わらない針鼠。
これからはまた一緒にいられるのだと思うだけで、スネークは幸せだった。
蛇に戻るのも悪くない、そう思った。
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