ちょっと真面目な話をしようか
スマブラ城に、一羽の小鳥がやってきた。
やってきた、といっても、ソニックが偶然見つけて連れてきたのである。
ソニック「野原を走ってたら、コイツが倒れてたんだ」
羽に傷のついて飛べなくなった、全身薄紫色の綺麗な小鳥だった。
マリオ「枝か何かで傷つけたのかな。まぁ、ちゃんと手当てすれば傷も治るし、また飛べるようになるよ」
ソニック「オレに世話させてくれよ!連れてきたのはオレだし」
マリオ「大丈夫?」
ソニック「No problem. みんなには迷惑かけないから」
それから、ソニックはマリオに手当ての仕方を習って、小鳥の世話を開始した。
こまめに包帯を巻いてやったり、城下町で買ってきた鳥のエサを与えてやったり。
最初にソニックを手伝い始めたのは、ピカチュウだった。
ピカチュウ「新しい包帯、マリオからもらってくるね!」
そう言って、ソニックに沢山の包帯をもってきてくれた。
そんなピカチュウを見たスマメン達も、小鳥のことがほうっておけず。
ポポ「みんなで小鳥の名前を考えたんだよ!」
トゥーン「『ピー』っていうんだよ!」
ナナ「可愛い名前でしょ?」
ソニック「はは、そうだな」
リュカ「ピー、元気になりますよね?」
ネス「また飛べるようになるよね?」
ソニック「なるさ」
ゼルダ「ピーが食べられるような栄養のある食べ物を、私達で作れないでしょうか」
ルイージ「そうだね、本やパソコンで調べてみようよ」
ピット「飛ぶ練習なら、僕らも手伝うよ!ね、ファルコさん」
ファルコ「あぁ。・・・え?」
アイク「焼き鳥」ボソッ
マルス「ダメだよアイク!絶対ダメだからね!!」
ソニックを中心に、みんな小鳥のピーを助けようと頑張るようになった。
***
数日後。
ソニック「あるぇ?」
ソニックがピーにエサをやるため、自室に入ると、いつもカゴの中でお利口に佇んでいるハズのピーがいなかった。
ソニック「ピカチュウがどこかに連れて行ったのかな」
ソニックはそう思い、また自室を出る。
自室の窓が開けっ放しになっていたのに気づかなかった。
リビングに行ってみると、
ソニック「Hey, みんなどうした?」
他のスマメン達が集まっていた。
みんなが暗い顔をしている。
その中で、リンクが子供達に何か話していた。
リンク「何で野球なんかやってたんだ!」
トゥーン「ごめんなさい・・・」
リンク「全く・・・お前ってヤツは・・・!!」
オリマー「まあまあリンクさん、子供達も、トゥーン君も悪気があったワケじゃありませんし・・・」
リンク「そんなこと言ったって、どうすんだよ?こんなのソニックが知ったら・・・」
ガノンドロフ「・・・もう遅い」
リンクや子供達がソニックに気付いた。
ソニック「・・・何があったんだい?」
リュカ「ごめんなさい・・・ソニックさん」
トゥーン「ピーが・・・ピーが・・・!」
ネスがソニックの近くに歩み寄り、両手のひらを差し出すと、そこにはグッタリとしてうずくまった小鳥の姿があった。
目を瞑り、全く動かない。
薄紫色の綺麗な身体は、生気のない紫色に変わっていた。
ネス「僕達、いつもみたいに庭で野球してたんだ・・・」
ポポ「そしたら、トゥーンがホームラン打って・・・」
ナナ「ピーに当たったの・・・!ピーが空を飛んでたのよ・・・!」
ソニック「・・・・・・ぇ」
ピット「ピーは、飛べるようになってたんだよ。それが嬉しくて、窓かどこかから外に飛び出したんじゃないかな・・・」
その時、ソニックはピーに新鮮な空気を与えてやろうと、自室の窓を開けっ放しにしていたのを思い出した。
トゥーン「ごめんなさい・・・ソニック、僕がホームランなんか打たなかったら、ピーは、ピーは・・・!!」
トゥーンが声をあげて泣き出した。
それにつられて、リュカやポポも涙を流し始める。
マリオ「すぐに治療を施したけど、駄目だった。・・・即死だったよ」
マリオが俯いた。ピーチやルイージも俯く。
しばらく沈黙と子供達の泣き声が続いて、
先に声を発したのは、ソニックだった。
ソニック「・・・そっか。ありがとう、トゥーン」
トゥーン「ふぇ・・・?」
ソニック「よく正直に話してくれたな。大丈夫、お前は悪くないよ」
トゥーン「で、でも、」
ソニック「元はといえば、部屋の窓を開けっ放しにしてたオレが悪いんだ。ごめんな、せっかく頑張ってピーの世話、手伝ってくれたのに」
トゥーン「ソニック・・・」
ソニック「みんなもごめん。みんなが手伝ってくれたから、アイツはちゃんと飛べるようになったのに、こんなことになっちまった」
ネスから小鳥を受けとると、
ソニック「コイツの墓、つくってやらないとな。ピカチュウ、手伝ってくれるかい?」
ピカチュウ「・・・うん」
ピカチュウとリビングを出て行った。
ロボット「・・・ソニックサン、ナキマセンデシタ」
サムス「彼が一番辛いだろうに」
マリオ「俺達、ソニックとは結構オリンピックとかで長い付き合いだけど、アイツが泣いてるとこ、見たことないな」
マリオの発言に、ピーチやルイージ、クッパが頷く。
スネーク「・・・・・・」
成り行きを見守っていたスネークは、リビングをあとにした。
***
スネークがソニックの自室に入ってみると、ソニックは空っぽになったカゴに触れていた。
スネーク「・・・ピカチュウは」
ソニック「墓の前で泣いてる」
スネーク「もう弔ったのか」
ソニック「庭の木の下に埋めてやった」
小鳥の世話をするソニックを、スネークはずっと眺めていた。
小鳥がピィピィとさえずる度に微笑んで。
また飛べるようになるよとか、風を受けるのって気持ちいいだろとか、話しかけて。
そんなソニックが微笑ましかったのに、今の彼の背中は寂しそうで。
慰めてやるべきか迷いながら、ゆっくり近付くと、
ソニック「死んじまうもんだな」
低い声が聞こえた。
ソニック「あんな野球ボール一つでさ。笑っちまうよ」
スネーク「・・・生き物は遅かれ早かれいつか死ぬ。どの生き物も避けては通れない道だ」
ソニック「アンタもかい」
スネーク「・・・あぁ。俺は普通の人間とは違う。身体の老化が早いから、・・・」
何を言ってるんだ、俺は。
スネーク「・・・ピーは幸せだったと思うぞ。最期にお前に出会えて」
ソニック「そんな慰めいらないね」
ソニックが振り返る。
ただ真っ直ぐスネークを見つめて。
スネーク「何故泣かない」
ソニック「泣かなきゃならない決まりなんてないだろ」
スネーク「そうだが」
ソニック「オレが泣いたら、誰がオレの涙を受け止めて、前に進んでくれるんだい?」
スネーク「・・・俺が受け止めてやる」
ソニック「・・・バァカ、マジになるなよ」
ソニックが笑うが、どこか元気がない。
ソニック「オレは誰よりも前を走っていたいのさ。大切な人を助けられなかったのは悲しいけど、泣いて立ち止まってるヒマはない。誰かが代わりに泣いてくれればいい。誰かが悲しんで泣いて、オレがソイツを慰めて、誰よりも先に立ち直って前を走る。そんなオレを見て、このままじゃダメだって、悲しみを乗り越えて、ソイツがまた前を見て歩いていければそれでいい。
大事なのは、誰かの死を受け止めて、これからどうしていくか、じゃないのか?」
ソニックが言い終わった途端、スネークはソニックを抱き締めた。
スネーク「お前はなんでも背負い込み過ぎだ。餓鬼は餓鬼らしく泣きわめいてろ」
ソニック「子供扱いすんな」
スネーク「たまには立ち止まっていいじゃないか」
ソニック「それがイヤなんだ、ピーにも申し訳ない」
スネーク「何も考えるな」
ソニック「ピーの分まで走っていたいんだ、ピーの分まで風を受けたいんだ」
スネーク「焦らなくたっていい、俺も付き合うから」
キツく抱き締める。
ソニック「・・・死ぬなよ、長生きしろよ、おっさんが死んでも、泣いてやらねぇからな」
スネーク「ん」
ソニック「ずっとそばにいてくれよ、ピーみたいに突然いなくなるなよ」
スネーク「わかってる」
キスをして、もう一度抱き締めた。
トゲのついた背中をさすってやる。
それでも、この針鼠の少年が泣くことはなかった。
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